突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


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突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
第33話 好きって気持ち



瑞香
 「さて、我々にはもう時間が無いのは承知の上ね?」

悠気とどうやってクリスマスを過ごすか、その決定は遂に23日まで来てしまった。
私達女子達は、未だ宵との差を埋められず苦渋の日を過ごしてきたのだ。

萌衣
 「やはり最終作戦の発令が必要みたいね!」

琴音
 「ゴクリ……!」

最終作戦、それは私達が考えた末の最終手段である。
その内容には誰もが息を呑み、ここまでそれは行われなかった。

瑞香
 「……ここまで芳しい成果なし! 思い出すのよ! その哀しみを!」

そう、それはこの1週間の出来事だ。
私達はそれを回想していく。



***



ワイワイ、ガヤガヤ!

琴音
 「……」

放課後、もうすぐ冬休みに皆が浮かれる中、私はターゲットを注視する。


 「ねぇねぇ〜悠気〜」

悠気
 「鬱陶しい! 一体なんだ?」


 「こうしていると癒やされるの〜」

そう言って宵ちゃんは若葉君の背中にしな垂れた。
その光景は思いっきりバカップルのそれだが、今やクラスメートの誰もが突っ込まなくなってしまった。
そう! もはや公然と若葉君と宵ちゃんは付き合っていると認識されているのだ!
実際その甘え方はハンパではなく、私は静かに嫉妬に燃えるほどだ。

悠気
 「とりあえずさっさと離れろ、さもなくば明日のランチの質は覚悟しろよ?」


 「はい! サーセンでしたっ!」

琴音
 (相変わらず胃袋握られているわね……)

宵ちゃんは、そう言うとビッと背筋を立てて離れた。
気持ち若葉君は笑っているようにも見えて、私は複雑な思いだった。
だけどそれもこれまでよ!
奮起しろ大城琴音! お父さんの血を持つ私に出来ない筈がないでしょ!?


 「それじゃ、バイト行ってきまーす!」

琴音
 (宵ちゃんが離れた! 今よ!)

私は離れた場所から二人の様子を見ていると、遂に宵ちゃんが教室を出て行った。
私は今まさにに若葉君に迫る!
しかし、それは無情にも起きた。

男子生徒
 「あ、あのっ! 大城さん! クリスマスの予定とかは!?」

琴音
 「えっ? あの?」

それは見知らぬ男子生徒だった。
若葉君に比べると落ち着きがなく、如何にも子供っぽい。
顔を真っ赤にして、ガタガタと震えているのだ。

男子生徒
 「もし、良かったら! 俺と付き合ってください!」

幸太郎
 「ほお、勇気のある奴だな」

悠気
 「これで何度目だ?」

琴音
 「………」

この男子生徒のせいで私は絶好のチャンスを失ってしまった。
今や誰もが私に注目している。
因みに今月に入って告白は20回を越えている。
肝心の若葉君からの告白もないのに、これって私への嫌がらせ?

男子生徒
 「あ、あの?」

琴音
 「ごめんなさい、目の前から消えて下さい」

ガヤ
 「松葉が散ったー! それにしても我らがアイドル大城女子のあの冷たい視線もいいーっ!」

悠気
 「やれやれ、変態もいるのか……コウタ、久し振りに一緒に帰るか?」

幸太郎
 「ああいいぞ、部活もないしな」

琴音
 「………ッ!」

私は唇を噛んだ。
泣け無しの勇気を振り絞って、こっちは若葉君にクリスマスの誘いを入れようとした時に、それを阻止されたのよ?
女子高生のメンタルじゃ、この時点で再起不能(リタイア)よ……!



***




 「クリスマスは家族と一緒に過ごすのです!」

柚香
 「相変わらず家族仲が良いね、まぁパパラブなんでしょうけど」

命ちゃんは重度のファザコンだから、ある意味その話題も父親絡みだ。
そんな仲良しの命ちゃんと一緒に校門まで来ると私はあの人を発見する。

悠気
 「……」

柚香
 (悠気さん!)

悠気さんが一人で校門に向かっている。
今ならチャンスだ!


 「柚香ちゃん?」

柚香
 「御免ね命ちゃん! 私は勝利の栄光を勝ち取ってくるわ!」

私はそう言うと、命ちゃんと別れて悠気さんの背中に迫る。


 「よせー! それは死亡フラグだー!」

柚香
 「悠気さ……!」

命ちゃんのボケも無視して、悠気さんに声を掛けようとしたその瞬間だ。

みなも
 「あ、あのっ!」

悠気
 「みなもさん!? どうして学校に!?」

みなも
 「その、たまたま近くに寄ったので……」

柚香
 (あれ? あの人は確か夏の旅行で……!?)

そう、確か出海みなもさんだ!
あのおっとりそうな顔や、命ちゃんをも凌駕する爆乳の持ち主!
それが如何にも初心な顔で悠気さんを誘っているのだ。

悠気
 「そう、それじゃ一緒に帰ろうか?」

みなも
 「はい♪  あ、少し寄り道をしてもよろしいでしょうか?」

柚香
 「……」

私はただ呆然とそれを見送ることしか出来なかった。
ただ、ポンと肩を叩かれると、私は横に振り向くとそこには御影先生がいた。


 「どう? 負け犬同士一杯飲む?」

柚香
 「……はい」

私は涙ながらに頷いた。



***



萌衣
 (ふ、ふふ! メンタル弱い私だけどここで年上の魅力を見せつけてやろうじゃない!)

私はそんなやけっぱちのヘタレたメンタルを鼓舞する。
はっきり言って、私のメンタルの弱さは多分琴音ちゃんや柚香ちゃん以下だ。
それでも私には幼馴染みのアドバンテージがある!

悠気
 「……」

丁度目の前には悠気が!
休み時間、渡り廊下を一人で歩く悠気を発見すると、持ち前の素早さで駆け込む!
私は悠気に一気に迫ると……!

萌衣
 「ぐはぁ!? 躓いたーっ!?」

悠気
 「ビクリッ!?」

私はワザと悠気の前の前で大きく躓いた!
ふふふ! このインパクトある登場には悠気も戸惑うわよね!?
私はゆっくりと起き上がると。

萌衣
 「やぁ悠気、ちょっと私と付き……」

悠気
 「血が出てる!」

萌衣
 「へ?」

悠気は私の膝を見て、深刻な顔をした。
擦り傷で血が出ているが、こんなもの陸上部にいた頃は割とよくある物だった。

悠気
 「萌衣姉さん、保健室行くよ!? 歩けないなら、俺がおぶっていく!」

萌衣
 「え!? ええっ!?」

悠気はそう言うと私をおぶるために屈んで背中を見せた。
私はそれに顔を真っ赤にしてしまう。

悠気
 「ほら、遠慮しないで!」

萌衣
 「む、無理無理ーっ!?」

私は恥ずかしすぎて、この豆腐メンタルでは受け入れられず逃げてしまう。
悠気は優しくて真面目な子だから、些細な傷でも心配するのだろうけど、その優しさが私の滑稽な演技には致命的な一撃となり、逃亡するしかなかったのだ。

萌衣
 (うわ〜ん! やっぱり無理よ〜! 悠気をクリスマスに誘うなんて−!)



***



琴音&柚香&萌衣
 「「「はぁ……」」」

皆回想を終えると、ただ溜息が零れた。

瑞香
 「全くさぁ、そもそも誰もクリスマスの話持ち出してないじゃん?」

柚香
 「そ、そういうお姉ちゃんはどうなの!?」

萌衣
 「そうよ! そもそも貴方は回想を語っていないじゃない!」

瑞香
 「ふははは! そもそも私は誘ってないからね!」

琴音
 「それ私達以下じゃない!?」

瑞香
 「ふ、何を言っている? そもそも手も足も出す以前の問題だからまだ戦ってすらいないわ!」

萌衣
 「それって結局瑞香ちゃんもヘタレただけじゃない!?」

瑞香
 「ふ、自慢じゃないけど、大概のことにはへこたれない私も、悠気に振られたら流石に凹むからね……!」

琴音
 「私達じゃ、凹むじゃ済まないけどね……」

結局ここにいる全員、そもそも誘っていないのだ。
私もその点では甘いと言えるだろう。
とはいえ、私にとって悠気は最後の寄る標、これを失う恐怖には抗えなかった。

柚香
 「やはり最終計画は……」

萌衣
 「うむ……」

琴音
 「では議長?」

瑞香
 「いいでしょう! 最終計画の実行を発令する!」

全員
 「「「聖夜のために! 死に逝く者のために!」」」



***



悠気
 「ゾクリ!?」

俺は不意にやってくる背筋の寒気に凍えた。
なんだろうか、嫌な悪寒って感じだったが?

幸太郎
 「明日は終業式か」

悠気
 「あ、ああ……コウタはどうするんだ?」

幸太郎
 「特に予定はない、今年も家族と過ごすさ」

そう言うとコウタは微笑した。
コイツ、武人肌でイケメンなこともあって、女子から抜群の人気を誇るが、女子高生には一切靡かない。
それもそのはず、本人は重度のメイドフェチだからな!
来年柔道部部長を務める男が、有り金をメイドカフェに注いでいるなど絶対に話せないだろう!

悠気
 「ニヤニヤ」

幸太郎
 「なんだ、そのにやけ顔は?」

悠気
 「いや、ポケにゃんには行かないのかなってな〜」

幸太郎
 「!?!?!?」

俺が少しわざとらしく話題を振ると、コウタは凄まじく狼狽えた。
ポケにゃんはPKM専門のメイドカフェだ。
当然この秘密を知っている者は限られる。

幸太郎
 「な、ななな、なんのことかな悠気君〜?」

悠気
 「おーおー、声が上ずっているぞ、カミングアウトした方が気が楽にならないか?」

幸太郎
 「知らん! 俺はポケにゃんなんて一切知らんからなーっ?」

コウタは普段は俺より大人びている癖に、この話題になると面白いくらい狼狽えてくれる。
ぶっちゃけなんでメイドに拗らせてしまったのか、俺も知らんのだがコイツは真性だからな。

悠気
 「やはり持っているAVもメイド物か?」

幸太郎
 「どうしてそれを……ハッ!?」

おお、やはりそうなのか!
俺はさり気なくコウタの秘密を入手すると、更にいやらしく笑った。
だが、流石に親友で遊ぶのも度が過ぎたか、コウタは顔を真っ赤にして。

幸太郎
 「もう知らん!」

そう言って幸太郎はその場から逃げるように飛び出していった。

悠気
 (ちょっと弄り過ぎたかな?)

まぁでも普段はコウタの方が俺を弄ってくるから、たまには良いだろう。
アイツはアイツで誰と付き合うか早く選べと煩いからな。

悠気
 (しかし、選ぶ……か)

そうだ、俺の周りには確かに気になる女子がいる。
いつも俺を支えてくれて、甲斐甲斐しいみなもさん。
悪友であり、親友とも呼べる仲の良い女子瑞香。
その妹で、やはり俺に好意を寄せてくれるユズちゃん。
いつも俺に視線を向けて、それでも奥ゆかしく見守る大城。
俺のことを好きって今でも言ってくれた、俺にとって大切なお姉ちゃんの萌衣先輩。

悠気
 (それでも……俺は)

そうだ、俺はこれだけ想われている。
傍から見れば余程滑稽な事だろう。
幸せだろうが、それでもケジメが必要になる。

悠気
 (俺が好きなのは……)


 「悠気〜! なんか幸太郎が怒ってたよ〜!」

それはまだ幼げな顔を持ち、その背中に美しい羽を備えた少女。
月の光のような美しい髪は後ろで団子状に纏められて、そのスタイルは一般的な女子よりも良いと言えるだろう。
誰よりも彼女のことを考えて、誰よりも彼女のことを気が付けば想っていた。

悠気
 「宵、一緒に帰るか」


 「うん♪」

そう、彼女の名前は月代宵、クレセリアのPKMで俺が好きになってしまった少女だ。
彼女は屈託のない笑顔を向けると、俺の隣に立つのだった。

悠気
 (告白は……やっぱり明日が一番だよな)

12月24日、俺は一生を共にしても良いと思う人を選ぶ。
それはこれまでの甘くむず痒い日々と別れる事を意味するだろう。
でもそれで良いと思ったんだ、俺にとってそれはなにより大切なケジメだから。



『突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語』


第33話 好きって気持ち

第34話に続く。


KaZuKiNa ( 2021/08/21(土) 18:37 )