突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


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突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
第4話 日常



4月末、学園生活も新入生が慣れる頃、俺は晩ご飯を母さんと一緒に食べていた。

育美
 「どう? 宵ちゃんとは仲良くやってる?」

悠気
 「まぁね、とりあえず仲は……良いかな?」

俺は焼き魚を頬張りながら、目線を逸らす。
テレビではもうすぐゴールデンウィークという事もあり、そういう長期休暇の特集が組まれていた。
俺は興味もなく、最後のおかずをつまむと、使った食器を集める。

悠気
 「さてと、ご馳走様。食器下げとくね」

俺は食べ終えると、食器を洗い場に下げて、2階の自室に向かう。

ガチャリ。

自分の部屋に入ると、まず目に映るのが隣の家の光だ。
月代と俺が隣り合って生活するのも既に1カ月、その結果は……。


 「帰ってきた! ねぇ数学教えて!」

窓から乗り出して俺の部屋の窓を開ける月代。
一度関係が改善すると、今度は急激に馴れ馴れしくなった。

悠気
 「危ないぞ、戻れ」


 「どうもこの三角方程式? sainとかcosainとか覚えられないー!」

そう言って両手を振ってジタバタする月代に俺は溜息をはく。

悠気
 「俺は先生じゃないんだぞ……」


 「でも私より頭が良い!」

5月、そろそろ気温も上がりカーテンが活きる頃、しかし月代がカーテンを拒むので、お互いのプライバシーは皆無だと言える。
月代の部屋は全く私物がないようで、汚くはないが質素なものだ。
だが、月代のベッドで俺はある物を発見する。

悠気
 「ところで月代、お前のベッドに見覚えのあるマンガがあるんだが?」


 「うん♪ ちょっと借りてる♪」

悠気
 「うん、じゃねぇ−!? 住居不法侵入罪!」

お互いの部屋は飛び込もうと思えば飛び込める距離だ。
落ちる危険性もあるが、向こうも腕輪を外せば飛べるんだから恐怖感と言うものは感じないらしい。
俺は自分の本棚から抜き取られたマンガを見て頭を抱える。
これはマジでプライバシーの欠片もないな。
対策としては窓を閉めて鍵を掛けることが重要だろうが、月代は以前割ろうとした前科があるので掛けられない。


 「ねぇー、数学ー!」

悠気
 「はいはい! とりあえず分かんないページを見せろ!」

月代の良いところは、宿題を忘れない所だ。
お陰でノートを写させろと言った事は一度もない。
ちゃんと自分で考えて、努力している点を俺は高く評価した。

悠気
 「それにしても、お前よく高校入試通れたよな?」

月代の頭の悪さは本人が中間テストに焦っている現状でよく分かる物だった。
恐らく中学生位までの知識しかなく、場合によっては去年の教科書を引っ張り出す事もあった。
しかし月代はシャーペンを顎に当てて、上の空のなると、当時のことを言った。


 「よく分からないけど〜、面接したら合格になった〜」

悠気
 「試験は?」


 「したけど、こんなに難しくなかった〜」

そう言って教科書を見て頭を傾げる。
いくら今はどこも定員割れで、私立は入学し易いとはいえどんな入試だったのか。
ただ月代は真面目だから、3年生までには瑞香を越えられる気はする。

悠気
 「で、三角方程式だったな」



***



食後の1〜2時間は、談笑しながら勉強会が恒例になっていた。
アイツはアレからも料理の特訓をしていたし、まだまだ俺には追いつかないが確実に改善している。
今は当面俺がアイツの弁当を作っているが、ちゃんと毎日空っぽにしてくれるのは嬉しかった。


 「疲れた〜」

悠気
 「もう夜9時か」

俺は掛け時計で時間を確認するともう2時間勉強していたことになる。
月代は聞く回数が多い、出来の悪い生徒だがそれでも努力家だ。
それに触発されて、俺も復習する機会が多くなって、次の中間は先輩に頼らなくても大丈夫そうだ。


 「私お風呂入ってくる〜」

月代はそう言うと、勉強道具を机に散らかして部屋を出て行った。
俺はそれを見届けると、自室を見渡す。

悠気
 (今の所、俺の秘蔵書には気付かれていないようだな……!)

月代が勝手に俺の部屋に侵入していることが判明した今、重要なのはトップシークレットの保持!
俺はベッドの下に隠してある段ボールをすかさず別の場所に移した。
そして模様替えすること30分、月代が戻ってくる頃には終わった。


 「ふんふんふ〜ん♪ アレ? 模様替え?」

悠気
 「まぁな、どこぞの泥棒ポケモンから俺の持ち物を守らねばならんからな」


 「ええ? 泥棒なんて怖いねー!?」

……お前のことだ。
素朴なのはいいが、皮肉が全く通用せん奴だな。
ともかく、マンガならいくら持っていかれても構わんが、秘蔵書だけは絶対に死守だ。
俺はそれを誓い、ガッツポーズで月代の方を振り返ると……!

悠気
 「つ、月代上!」


 「上ー? 天井しかないけど?」

悠気
 「そうじゃなくて上着!」

月代は風呂上りとはいえ、白いパンツだけ穿いて、上はバスタオルを掛けただけなのだ。
まるで男がいることを忘れているかのような反応に俺は顔を真っ赤にして目を背けた。
月代も意味を理解したのか、目線を自分の胸元に戻すと。


 「キャアアアアアア!? 忘れてたー!?」

月代は慌てて胸を隠して部屋を出て行く。
アイツにとって俺はもう空気みたいな物なのか?

悠気
 「くそ……意外と巨乳じゃねぇか」

制服の上からでは分からなかったが、その横乳は素晴らしかった。
発育が良いようで、男子としては喜べばいいか、困惑すれば良いのか。

悠気
 「……俺も風呂用意するか」

俺はゆっくり立ち上がり、部屋を出る。
ただのハプニングだと言うのに、俺の息子がズボンの下でハッスルしやがって、こんなの月代に見せられる訳ねぇ。
月代はいつも寝るのが早いから、後で抜けば良いだろう。



***



翌日、まるで示し合わせたかのように俺と月代は一緒に家を出た。
月代は俺を見つけると笑顔で駆け寄ってくる。


 「おはよう悠気!」

悠気
 「おはよう月代、これ今日の分」


 「えへへ、いつもありがとうね!」

月代もすっかり明るくなった。
というか地を隠さなくなったといった所か。
俺は弁当を渡すと、月代はそれをバッグに入れて一緒に登校する。


 「今日のメインディッシュは?」

悠気
 「鶏の照り焼きで御座います」


 「むむ? 使っている部位は!?」

悠気
 「味を良くしみこませたモモ肉」

月代は早速涎を零そうかというほど顔を歪ませる。
幸い月代に好き嫌いは今の所確認出来ない。
胃袋掴まされた月代はもはや犬同然だな。

瑞香
 「オーハーー! 二人とも!」


 「あ、おはよう瑞香、それに柚香も」

柚香
 「はい、おはようございます」

悠気
 「おはよう、瑞香、今のはなんだ?」

瑞香は朝から本当にハイテンションな奴だ、挨拶一つ取っても声のがデカイ。
俺達はいつものように道の途中で合流すると一つの塊になって学校へ行く。
四人集まれば、会話も花が咲き、特に山吹姉妹と仲の良い月代は気兼ねなく明るく振る舞った。

瑞香
 「ねぇ、宵は次のテスト大丈夫?」


 「う、うん! なんとかしてみせる!」

悠気
 「そういう瑞香こそ大丈夫か?」

瑞香はいつも俺より下の成績だ。
確か去年の期末成績は平均45点だったな。
俺が平均60だったから、瑞香の赤点ラインはいつもギリギリだ。

瑞香
 「あはは! 細かい事を気にしてたら禿げるわよー!? 大体数字に拘るんじゃないわよ!」

悠気
 「その割には1問間違えとか気にするよな」

瑞香は大雑把な奴だが、妙にキリの悪い数字を嫌う。
特に99とか、49とかこういう後もうちょっと良い数字というのを妙に拘るからな。

瑞香
 「人の話に水差すんじゃないわよっ!」

ビシッ!

今日はチョップだった。
しかし斜め45度の頸椎を狙うチョップは殺意がないとは思えない。
幸運なことに月代は暴力的でなかったのが良かった。
とはいえ段々瑞香に染まってきている気がして怖い。

幸太郎
 「おはよう皆」


 「百代、おはよう」

悠気
 「よ、おはよう」

俺はチョップで曲がった首を戻すと、挨拶する。
相変わらず瑞香の暴力はダメージがあるな、流石ダメージSのチョップ。
こうして最近お馴染みとなった5人で学校に向かうと、今日も校門でいつもの先輩が走っていた。

萌衣
 「よーし! 今日も間に合ったー!」


 「あの人別にギリギリでもないのになんで走ってるの?」

萌衣
 「おっ? ユウたちじゃん! おはよー!」

悠気
 「おはよう、先輩」

萌衣先輩は、別に遅刻を怖れて走っている訳ではない。
彼女の家が遠いのは事実だが、これについては多くの者が知りはしない。

萌衣
 「あ、私もう行かないと!」

萌衣先輩はそう言うとせっかちに校舎に向かった。


 「……知り合い?」

悠気
 「まぁな」

瑞香
 「去年は大変だったわよねぇ……」

俺と瑞香は去年の事を思い出すと、溜息が出た。
宵やユズちゃんは知る由もないが。

柚香
 「それじゃ、私は別だから」

ユズちゃんと別れて、俺たちは2年生用の下駄箱に向かう。
そしてそのまま余裕を持って教室に入るのだった。



***




 「む〜」

昼飯後、月代は相変わらず俺の前で教科書を開いて勉強を講う。
まだまだ授業についていけてないから、遊ぶよりこれを選んだのだ。
俺も別に休憩時間で何かしようって事もないから、コイツの先生を請け負う。

悠気
 「そう、だからそこにXを代入して……」

男子高生A
 「相変わらず若葉と月代はベタベタしてんなぁ!」

男子高生B
 「やっぱり付き合ってるんじゃね? あーあ、無いと思ってたのになぁ!」

悠気
 (随分勝手なことを……)

月代の女の部分を否定する訳じゃないが、少なくとも彼女にしたいとは思わない。
友人としては付き合いやすいが、交際となるとやはり別だよな。
一方で月代の方は野次をどう思っているのか、顔色を見るが、その目は真剣そのもの。
どうやら野次なんてそもそも聞こえてないらしい、こいつ時々凄まじい集中力見せるよな。

男子高生A
 「あ、見ろよ大城さん、いつもどこで昼飯食べてんのかな?」

男子高生B
 「何気に大城さんって、ミステリアスだよなぁ」

噂していたゴシップ好きの男子たちは直ぐに注目を大城に変える。
大城の昼は何気に謎だ、何せ大城に友達らしい友達が見当たらない。
それ故に彼女の単独行動は余人の理解できる場所にはないのだ。
しかし、真面目な大城が教室に帰ってきたという事はもうすぐチャイムか。

悠気
 「勉強はここまで」


 「うん、ありがと」

それから1分ほどでチャイムが鳴る。
生徒たちも続々と着席し、先生が現れると5限目の授業が始まる。



***




 「よーし、ホームルーム始めるわよー! 皆も分かっていると思うけどもうすぐ中間テストだから気を引き締めてねー!」

担任の御影先生はそう言うと、報告がないか聞くが、特に何もないと分かると、直ぐにホームルームを終える。


 「あ、月代さん! 後で担任室に来て!」


 「え? あ、はい!」

御影先生が教室から出ようとするところで、思い出したように顔を出すと、月代を呼ぶ。
月代はなんだろうと不思議がるが、恐らく悪い事では無いと思うが。
月代は授業態度も真面目だし、先生の評価も悪くないはずだ。
としたら、御影先生の個人的な話かな?

悠気
 「それじゃあな、月代」


 「うん」

俺は鞄を背負うと、一足先に帰る事にする。
特に部活もしていない俺はこうなると、帰るのは速いのだ。



***



悠気
 「ただいま〜、て誰もいないか」

母さんは日によって仕事時間が変わる。
今日は事前連絡で17時頃に帰ると言っていたから、鍵を開けて中に入ると静かな物だ。
月代も今日は帰りが遅れるだろうし、暫く暇になるな。

悠気
 「変だよな……新学期が始まるまではこれが普通だったんだぜ?」

誰もいない時間、それが当たり前で気が付いたら寂しさなんて覚えなくなった。
ところが月代が来てから、こっちは一人の時間が激減した。
何せ部屋にいても、アイツはずっと俺を見ているし、寝るまで直ぐ近くにいつもアイツの顔がある。
寧ろ鬱陶しいと思うほどだ。

悠気
 「荷物置いていこう」

俺は2階に昇って、自分の部屋のドアを開けるとベッドに鞄を放って制服から私服に着替える。
そして鞄から教科書を取り出すと、アイツとやるべき場所を復習する。

30分後、遅れて月代は帰ってきた。



***



悠気
 「で、先生の用事はなんだったんだ?」


 「う、うん! その、問題集譲り受けちゃった!」

そう言って月代が鞄から取り出したのは随分使い古された参考書だった。


 「杏先生、大学時代に使ってたんだって」

悠気
 「とすると15年前のか」

御影先生は第一世代だから、恐らく月代以上に苦労しただろう。
そんな御影先生だから、必死に授業に食らいつく月代を想ったんだろうな。
ぶっきらぼうでガサツ、美貌は凄まじいが男性との交際で上手くいった試しはないと有名な御影先生に同情されたなら、月代も大概やばいか。

悠気
 「それじゃ、今日はそれで勉強か?」


 「うん! 杏先生も無茶苦茶努力して大学を首席卒業したんだよ! 私だって!」

御影先生と月代では才能が違うと思うが、まぁ努力は素晴らしいことだ。
だけど本当にもしかしたら、コイツも卒業までに学年トップを取ることもあるのかねぇ?

悠気
 「まぁ、その参考書じゃ俺もどれ位協力できるか分からんが、分からない時は聞けよ?」


 「うん! あ、そうだ! お昼ご飯美味しかった!」

悠気
 「おう♪ 毎日空っぽの弁当で俺も嬉しいぞ!」


 「私……育美さんより、悠気の御飯の方が好みかも……」

悠気
 「母さんより……お、おう! そりゃ光栄だな!」

俺自身は母さんを越えているとは思っていない。
でも誰かにそれを言われると、嬉しいけれど戸惑ってしまう。

悠気
 「ちょっと、トイレ行ってくる」


 「う、うん!」

俺は部屋を出ると、2階のトイレの前ドアに手を付ける。

悠気
 「母さんより……か、はは。これに喜んじゃ俺もまだまだだな」

俺はまだ納得していない。
自分が納得する所まで改善あるのみ!



***



21時、晩ご飯を食べ終えて月代も風呂に行ったので1階のリビングに行くと母さんは洗い物をしていた。

育美
 「あ、悠気、明日からの事なんだけど……」

悠気
 「どうせ、親父のところだろ? 別に気にしなくても良いよ!」

母さんが遠慮がちに言うときは、いつも親父絡みだ。
俺は親父を意識すると、語尾を強めてしまう。

育美
 「多分、1週間位になるの……それでね」

悠気
 「……」

俺は何も言わない。
俺は親父が嫌いだが、母さんはあんな親父を愛している。
そしてそれは俺が口出しすべき事じゃないのもz二人で暮らしながら理解していた。
母さんも大変だ、本当なら親父こそ母さんとずっと一緒にいるべきだろうに。

育美
 「お手伝いさん雇ちゃった! 悠気が寂しがらないようにね♪」

悠気
 「……はい?」

俺は目を丸くした。
あれ? そういう流れだった?
母さんはテヘペロとウインクすると誤魔化すが、俺の聞き間違えじゃなければお手伝いさんを雇った?

悠気
 「なんで!? 俺別に一人でもへっちゃらだし、それにそんなお金どこから!?」

育美
 「ウフフ♪ 明日から来るから宜しくね♪」

悠気
 「可愛くしても駄目ー!?」



『突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語』


第4話 日常

第5話に続く。


KaZuKiNa ( 2021/02/05(金) 19:42 )