突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


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突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
SP06



悠気
 「……ただいま」

みなも
 「ユウさま! ご無事でしたか!? それで月代様は?」

あの後、俺は一旦家へと帰された。
ニアさんは任意同行の末、御影さんに着いていき、俺は一般人という事で、帰ることが出来た訳だ。
同じ一般人の月代が帰られないというのに……だ。

みなも
 「ユウさま……?」

みなもさんは心配そうに俺を見つめるが、俺は悔しいがそれを誤魔化すことも出来なかった。

悠気
 「何もかも失敗だ……月代はネクロズマの産み出した闇に飲まれた」

みなも
 「そ、そうですか……」

俺のそんな姿を見て、みなもさんはまた哀しげに肩を落とす。
しかしみなもさんはこんな時だからこそ彼女なりのバイタリティを見せる。

みなも
 「お風呂が沸いています、その、温かいご飯も用意致しますので、今は何もかも忘れてください!」

みなもさんは優しく微笑むと俺の手を引っ張る。
こういう時にこそ、みなもさんは気丈に俺を励ましてくれるのか。
俺は何も言えなかった。

みなも
 「ユウさま、何があっても私だけは貴方の味方です……だから今は」

俺が苦しいときは、みなもさんも苦しい。
だけど俺が嬉しいときは、みなもさんも笑ってくれる。
そうだ、俺は何を失念している。
俺をこんなにも献身的に支えてくれる人にどうして不敬を働ける!

悠気
 (改善、改善あるのみ……そうだろ俺!)

俺は自分に活を入れ直す。
母さんはいない、月代は護れなかった、そして世界はやばいと異常事態が続いてヘタレていたが、それがどうした。
それでみなもさんを悲しませて良い理由にはならないだろう!

みなも
 「ユウさま?」

悠気
 「お風呂頂きます」

俺はそう言うと浴槽に向かった。
そうだ、まだヘタレていいタイミングじゃない。
月代は最後まで笑っていた、アイツは絶望もしてなきゃ、諦めてもいない。
アイツはネクロズマを信じるって言ったんだ!
なら俺が月代を信じる! そして絶対に助ける手立てを見つけてやる!



***



アイリス
 『どうやら、ネクロズマが展開した闇は全天を覆う次元境界膜と同様の機能を有しているようです』


 「つまり侵入も脱出も不可能って事か」

最初のネクロズマへのアタックから2時間後、状況の分析は進んでいた。
アメリカの空間物理学研究所からの解答もあり、俺は状況を精査する。


 「だがだ、御影さんの話じゃミニオンって奴らは出てきた訳だろう?」

アイリス
 『サテライトサーチが使えないため、旧式の監視システムを使わざるをえませんが、ミニオンたちに関しても不明な点が多いです』

ミニオンたちの目的は世界を滅ぼすこと、という分かりやすい名目を掲げている。
だが、今の所動きはなく、不気味な時間だけが過ぎていた。
御影さんからもミニオンとの対話は不可能と判断を出しており、ある意味で敵意らしい悪意のなかったネクロズマに比べて、より厄介だとも言える。


 「で? 政府の発表は?」

アイリス
 『あのネクロズマの引き籠もった物をスフィアと呼称、そこからの脅威の出現に関してはまだ発表していません』


 「おいおい……大丈夫かよ」

俺は相変わらず政府の秘匿主義には辟易するが、ある意味で政府の臆病さも分からないでもない。
いきなり世界を滅ぼす者が現れたなんて言っても、頭を疑われるか、無秩序な暴走が起きるだけ。
最悪国が崩壊しかねない事件だ。
最も最悪のシナリオには人類の生存なんてシナリオは無さそうだけどな。

だがミニオンは遅かれ早かれ活動する。
政府は完全に早期解決をするつもりだろう。
こりゃ最悪内閣総辞職だな。

アイリス
 『御影様は、作戦名『天岩戸』を発案しています』


 「アマノイワト? ああ、天照大神が引き籠もったていう逸話か」

スフィアの中には今も月代宵という少女とネクロズマがいると思われている。
御影さんは、ネクロズマの打倒よりもおそらく少女の救出を優先させたいんだろう。
御影さんはきっと可能ならネクロズマだって救いたいと考えるような人だ。
正にお人好し、だが……今回ばかりはな。

アイリス
 『現状の問題は物理的障害となるミニオン、それら全てを討伐したとしても、問題として立ちはだかるのはネクロズマです』


 「少女一人にネクロズマ対策を押し付けた人類の罪だな」

ネクロズマの圧倒的な力、そして今や明確に示された滅びという言葉。
ネクロズマは今や知的生命体の天敵になろうとしているのか?

アイリス
 『! 着信です。御影様からです』


 「おっ、繋げて」



***



状況は過去最悪だ。
これほど気分まで陰鬱なのは、15年前以来かしら。
スリーパーが企てたクーデター、そしてその後全世界を震撼させた核ミサイル一斉発射。
何れも水際で事なきを得たが、あれらは文明崩壊を起こす規模の事件だった。
もしかすればパラレルワールドにはそんな地獄の世界も存在したのかしら?
だけど、そんな世界は誰も望んでいない。

愛紗
 「マスター、これからどうなるんでしょうか?」

真莉愛
 「なんとかしないとね……今は人類にとって夜なのよ……」

私はマイカーの中で項垂れる。
とりあえず四十代には無茶をさせないで欲しいものだわ。
美容に関しては気を付けているっていっても、人間だから皺は隠せないし、肉体もかなりの衰えてる。

真莉愛
 「もう一踏ん張り、しないとか……」

現場に出るのは今回で最後にしよう。
そのためには後継者の育成も必要だ。

ブルル、ブルル!

愛紗
 「マスター、着信です」

真莉愛
 「あら誰かしら……若葉さん?」

それは若葉悠気君からの着信だった。
別れる前に、何かあったらと連絡先を交換しあったが、早速何かあったのかしら。

真莉愛
 「もしもし、若葉さん?」

悠気
 『御影さん、突然申し訳ございません!』

真莉愛
 「若葉さん、一体どうしたの? 何か問題が?」

私は電話の先の声から、ある程度彼の真剣さを感じ取る。
少なくとも世間話ではないらしく、彼は通話越しに言った。

悠気
 『月代を助けられるかもしれない鍵、雫というキーワードに心当たりはありませんか!?』

真莉愛
 「雫? それは一体……」

悠気
 『俺にも正直言って分かりません……でもニアさんの話じゃそれが鍵になると……俺は兎に角雫を探してみます!』

ニアさんが?
私は車の外を見ると、今は彼女はここにはいない。
彼女には改めて事情聴取を行ったけれど、この世界に正規でない方法で来たことと、そして共通の敵だけが分かった。
彼女は彼女でネクロズマを憎んでいる。
考えれば、世界を滅ぼされかけている状態で、相手を許せる訳はないだろう。

真莉愛
 「若葉さん、私はもしかしたら知っているかもしれない人に心当たりがあります。私の方でもなんとかしますから貴方は無理をしないでください!」

悠気
 『はい……可能な限りは』

そう言うと、電話は切れた。
うーん、あの調子だと無茶しかねないかも。

真莉愛
 「とりあえず……先に聞いてみるか」

奇跡の体現者常葉茂に。

真莉愛
 「もしもし〜、常葉さん?」

私は彼の情報端末に通話をする。
コールは数回鳴ると、彼の声は返ってきた。


 『はいよー、どうしました?』

真莉愛
 「かなーり、突拍子もないことを聞きますけど雫というキーワードご存じかしら」


 『は……しず―――』

プツン! ツーツーツー。

真莉愛
 「え? 電波障害?」

私はガラケーの画面を見ると、突然電波が無くなっていることに気付く。
どうして突然……しかし異変は直ぐに襲ってくる。

愛紗
 「ま、マスター!? そ、外を!?」

真莉愛
 「え? な、なにこれ!?」

私は、外を見るとそこには真っ白い泥人形のような小人が無数に蔓延っていた。
それらは目に見える生き物を襲う習性でもあるのか、逃げ惑う人間を襲っている!

真莉愛
 「あ、愛紗! 急いで沈黙を!」

愛紗
 「わ、分かりました!」

私達は車の外に出ると、愛紗は全方位にダークホールを放つ。
それらは体長30センチ程の小さな怪物にヒットするが、怪物が眠る事はなかった。
逆に私達を得物と認識した怪物たちは無数に迫る!

真莉愛
  「く! このぉ!?」

私はその小さな怪物を蹴り飛ばすと、怪物は簡単に宙を飛び、電柱にぶつかると溶けるように消えた。


 「くくく……下級ミニオンは弱く頼りないな……しかし我々上級ミニオンだけでは手間が掛かりすぎる」

愛紗
 「誰ですか!?」

その声はクククと嫌みな笑い声を浮かべると、電柱の柱の影から迫り出してくる。
全身を丁寧に燕尾服に身を纏い、シルクハットを被った端整な青年。
だが、その顔は直視すればおぞましく吐き気がしそうな顔をしていた。
目は大きく周りの肉がそぎ落とされ、瞼が無い。
そして口は裂けるほど広がりギザギザの歯が綺麗に並ぶ。

テラー
 「俺はテラー、恐怖を運ぶものなり……!」

愛紗
 「その名前……貴方もネクロズマの負のミニオンですか!?」

テラー
 「如何にも! さぁ黒き姫よ、その顔を恐怖に貼り付けろ!!」

真莉愛
 「愛紗!?」

テラーは邪悪な笑みを浮かべると、その像を大きくする。
おそらくゴーストタイプの技、『驚かす』だろう。

愛紗
 「目標の攻撃性を確認、マスターご命令を」

真莉愛
 「……承認します、でも気を付けて!」

私は少し後ろに下がると、愛紗を見守った。
愛紗は静かに頷くと、相手を冷徹な目で睨みつける。

愛紗
 「シャドーが、暗黒に挑むと? 良いでしょう、貴方のその邪悪さを私が真の黒をもって鎮圧します!」

真莉愛
 (愛紗……怒ってる!)

愛紗は優しい子だが、今目の前で起きている暴虐に黙っていられる程日和見じゃない。
ただ、その美しい瞳がテラーを睨みつけた。

テラー
 「クク、貴様相手を眠らせるのが得意なのかな? 奇遇だな! それは俺も得意なのだ! そして俺は相手の夢の中に入る事が出来る!」

愛紗
 「ほう? そうですか……ですがそれは無意味です」

テラー
 「なに?」

気が付けば真莉愛はそこにいなかった。
否、無数にいた下級ミニオンさえいないのだ。
テラーがその異変に気付いた時にはもう遅かった。
ただ愛紗の目は紅く光っていた。

愛紗
 「普段これは危険すぎて禁止されていますが、貴方は不愉快です」

テラー
 「こ、これは一体……!?」

愛紗
 「ようこそ、私の『ナイトメアシフト』へ」

愛紗は両手を広げると、世界はぐにゃぐにゃに歪み、気が付けばゴシックホラー調の町に変貌する。
そして真っ黒なレンガの地面の隙間から噴き出すように真っ黒な手が無数に生えだしたのだ。

テラー
 「な、なんだとぉ!? 貴様何をした!?」

テラーはシャドーボールを精製すると飛び上がって愛紗に放つ。
しかしシャドーボールは愛紗に当たるも、愛紗の胸は貫通され胸に大きな風穴が空くが、愛紗は動じなかった。

愛紗
 「無駄です」

テラー
 「ば、馬鹿な!? 」

テラーは驚愕した、彼の本質は恐怖。
しかし彼の力は絶望的に愛紗とは悪かったと言うほか無い。
愛紗の顔には微塵も恐怖などない。
本来ならば、下級ミニオンと自分自身で効率よく恐怖させる筈だった。
相手の夢の中で無茶苦茶に夢を書き換え、相手を恐怖のどん底に陥れる。
しかし、今は自分が恐怖していた。

テラー
 「馬鹿な!? 馬鹿な馬鹿なぁぁぁ!?」

やがて、テラーを覆うように真っ黒な手が周囲から襲いかかる。
テラーはその手足を真っ黒な手に捕まれると、蝕まれるように次々と手がその体を削り落とす。

愛紗
 「無限エクリプス……さようなら」

……そう、ダークライを前にしてテラーは相手の本質をまるで知らなかった。
悪夢を制御出来るダークライが如何に恐ろしい存在か。



***



愛紗
 「……鎮圧完了」

私はテラーが出現すると同時に、テラーを眠らせた。
そのまま私はテラーの夢に入り込み、彼の精神を蝕んだ。
これは場合によっては相手を殺すかもしれない危険な技だから自分自身封印していた。
だけど、人々を踏みにじる邪悪に対してなら私は躊躇いはしない。

テラー
 「く……クク、想定外だった、ぞ」

愛紗
 「!? 貴方まだ無事なのですか!?」

本来なら一生植物人間でもおかしくないダメージを与えたはずだ。
だが、テラーは痙攣しながらも笑っている。
もはや動けそうにないが、それは上級ミニオンの意地だろうか。

テラー
 「ほ、滅びの王よ……我が恐怖を受け止めよ……!」

テラーは両手を上げた。
するとテラーの身体は光となって消滅してしまう。

真莉愛
 「愛紗!? 片づいたの!?」

マスターは今も必死に白い小人のような怪物、下級ミニオンを排除している。
既に警察と連携してPKMもその力を奮って、なんとか戦っていた。
だが依然下級ミニオンの数が多い。

愛紗
 (光になった……死んだの? ううん、今は人命救助が優先!)



***




 「おいおいおい!? 突然外で何が起きているわけ!?」

それは正にパニックだ。
その直前、突然電波が遮断され、混乱している所に突然無数の白い泥人形みたいな小人が沸いてきたのだ。


 「アイリス、状況分かる!?」

アイリス
 『通信回線切断、接触回線なら使用できると思いますが……』


 「電波塔をやられたってのか?」

それはまさかあのミニオンたちが計画してやった事とは思わなかった。
何故ならネクロズマにこれといった作戦行動は見られず、ただ無秩序だったからだ。
それがいきなり人間側を混乱させる作戦をとるようになった?



***



ニア
 「ネオ……お前が言っていたのはこれだったのか?」

私は高い屋根の上で状況を精査した。
今や、街は白い怪物に埋め尽くされている。
更に恐ろしいことに、奴らは人間染みた策略を練っているらしい。
ネオは知的生命体の抹殺が最もネクロズマに有効だと言っていた。
それはつまり、ネクロズマに学習させるなと言うこと……?

女の子
 「きゃーっ!?」

ニア
 「不味い!?」

眼下で女子高生位の女の子が足を取られ、転倒してしまう。
怪物は単体では然程恐ろしくないが、だからといって何十も集まれば脅威となる。
女の子は顔を恐怖に貼り付けると、ガタガタ震えて動けなかった。
私は急いで女の子の元に飛び込む。
しかし一瞬速く……!


 「はぁ! エアスラッシュ!」

手に風を纏わり付かせ、それを一刃、剣のように振り払うと、怪物たちはなぎ払われて、溶けて消えていく。


 「大丈夫か、そこの学生!?」

怪物をなぎ払い、女の子を助けたのは大きく美しい翼を携えたピジョットだ。
その女性は身長もあり、やや老け始めているがまだまだ美しい姿をしていた。

ニア
 (まさかナギー?)

ピジョット
 「そこの君! この子と共に安全な場所まで!」

ニア
 「それはいいけど、貴方は!?」

ピジョット
 「上を見たまえ、敵意がダダ漏れだ」

私はそれを言われて上を見上げた。
するとあの女が恨めがましくピジョットの女性を睨んでいた。

ジェラシー
 「あのピジョット……嫉妬するわ……何故あんなにも美しいの?」

ニア
 「ミニオン……たしかジェラシー?」

そこにいたのは嫉妬を象徴するバルジーナの女だった。
私を追ってきたのかもしれないが、今はその憎悪をピジョットに向けている。

ピジョット
 「私が相手をする……だから君は!」

ニア
 「……わかった」

私は止むことのない怪物たちを気にして、女の子の手を取ると走り出す。
最後に、ピジョットの背中を見ると、彼女は空へと飛び上がる。



***



ジェラシー
 「貴方、お名前は?」

ピジョット
 「名乗るほどでもない、ただ地元の中学校で体育教師をしているしがない社会人だよ」

私は戯けてみせるが、久し振りの実戦に身体が動くか少々心配だった。
相手は同じ鳥ポケモンのようだが、姿は浮浪者のように見窄らしく、バルジーナとしても特に酷い方だろう。

ジェラシー
 「そうやって上から見る……! いいわ、最初の犠牲者は貴方! その美しい顔がぐちゃぐちゃになるまで潰してやるわ!」

ピジョット
 「ジェラシーか、感情としてはあって当然だが、肥大化させればロクな事がないようだな」

兎に角、私はあの女の子と、ゾロアークの少女を護らなければならない。

ピジョット
 (どことなくニアに似ていたが、まぁ他人の空似だろう)

もし私の知っているニアならば、この程度の難局軽く乗り越えただろう。
一方で私はロートル、肉体も衰え始めている。
だが……それでも私は!

ピジョット
 「さぁ掛かってこい! 悪逆の限りを尽くすならば、私は人々の盾となろう!」

ジェラシー
 「その翼、ズタズタにしてやる!」

バルジーナの女はその場から悪の波動を放つ。
私はそれを回避すると、中距離を維持しようと近づくが……。

ピジョット
 「ち……夜目が効かん!」

バルジーナの女は高度を上げると、それは徐々に地上の光を失うという事だ。
今空は閨に閉ざされたように真っ暗で、それが丸一日続いている。
地上では人工の光が瞬いているが、その光は空には届かなかった。

ジェラシー
 「うふふ、私は貴方がしっかりと捉えられるわ! そぉら!」

バルジーナの女はあくまで上を維持する。
近づけまいと放たれるエアスラッシュ、私はそれを同じ技で相殺する。

ピジョット
 「……ふぅ、日々身体は鍛えているつもりなんだが、歳には勝てんか」

ジェラシー
 「なに? 諦めたの?」

バルジーナの女はそれを見てけたたましく笑う。
まるで勝ち誇られたようだが、私は微笑する。

ピジョット
 「違うな、無傷で捕縛が無理だと諦めただけだ」

ジェラシー
 「え?」

私は翼を全力で羽ばたかせると、一気に雲より上へと飛び上がった。
その速度はバルジーナとは比較にならない。

ジェラシー
 「速い!? 上をとられた!?」

ピジョット
 「久し振りだからな……身体壊して明日出校出来ないなど、子供に笑われたくはない!」

私は風を巻き上げる。
それは雲の形を歪め、全身に巻き付く。

ピジョット
 「暴風……!」

私は吹き荒れる暴風をコントロールし、その身に纏った。
少しでもコントロールを外せば、即座に自爆してしまう。
あまりにも久々だけに、出来れば頼りたくはなかった。

ピジョット
 「行くぞ!」

私は暴風を纏い、1個の弾丸のようになってバルジーナの女に突撃する。
それは音速を越え、全ての音は遠くなる。

ジェラシー
 「…! ……!?」

私は拳を振り抜いた。

ジェラシーの顔面は歪み、飛ぶこともままならず、地に落ちる。
私はその瞬間、暴風を解除した。

ピジョット
 「待ってろ! 今助ける!」

私は息を整える間もなくバルジーナに近寄った、が……!

ジェラシー
 「う、うふふ、凄い技……だけど!?」

バルジーナの女は意識がある!
その醜い顔を歪ませて笑うと、彼女は風を纏い始めた。

ピジョット
 「なに!? 貴様も暴風を!?」

ジェラシー
 「オウム返し……! 今度は貴方が同じ目に遭う番!」

それはオウム返しだった。
徐々に風を纏うバルジーナの女。
だが、私は彼女に言った!

ピジョット
 「止めろ! 暴走すれば一溜まりもないぞ!?」

アレは見よう見まねで出来る技じゃない。
私が苦難の末に会得した奥義だ。
やがて、緩やかな風は、遂に近づくことも出来ない暴風へと変わる。

ジェラシー
 「あっはっは! この力でお前をズタズタに……!?」

その直後だった。

ブチン!

突然その嫌な音が響いた一瞬、バルジーナの女は後ろを振り向く。
バルジーナの女の翼が細切れになって飛んだ。
バルジーナの女がそれに気付くのは全てが遅かった。

ジェラシー
 「ぎひっ!?」

ピジョット
 「く……!?」

一度コントロールを失えば、暴風は真空波を無尽蔵に発生させて、自らを細切れにする。
このような命がけの技を一朝一夕で使わせる訳にはいかない。
バルジーナの女は全身に血の華を咲かせる。

そして、爆発音が鳴り響くと周囲の大気が吹き飛ばされた!
私はなんとかバランスを維持して墜落しないようにして、バルジーナの女を見た。
バルジーナの女は翼を失い、無残な姿は自業自得だった。
やがて、その姿は光に変わり、もうそこにバルジーナの女はいなかった。

ピジョット
 「……私の名だったな、一応答えようか。常葉凪、しがない体育教師だ」

私はもはやいない相手にそう答えると、着陸態勢に入る。
大地は相変わらず白い小人で溢れかえっている。


 「熱風!」

私は着陸場所の小人を焼き払うと、着陸した。
さて……今の私は神話の乙女と言えるだろうか?
まぁどちらでもいい、結局のところ私がやる事に変わりはないのだから。


 「誰か助けが必要な者はいないかー!?」



***



悠気
 「くそ!? いきなり通信回線が切断されやがった!?」

みなも
 「ユウさま、テレビを見てください!」

みなもさんはテレビを差すと、そこには地獄絵図があった。
白い粘土状の小人が定点カメラで無数に捉えられている。
それらはまるで沸くように、出現して街の住民を襲っているのだ。

悠気
 「ミニオン……奴らまさか!?」

俺は家の外に出た。
外にはまだ白い小人は発生していない。
だが、目の前には明らかにやばいであろう存在が俺を見つめた。

アンガー
 「特異点発見……♪ ヒヒヒ、俺が燃やし尽くしてやるぜぇ!」

やばい、そいつは見たことはないが、確実にミニオンだという事は分かる。
全身が真っ赤に燃えて、背中に固まった溶岩の殻を背負うその姿はマグカルゴ!
マグカルゴの男は全身から火を噴くと、片手を俺に向けた。
死が直感される、だがどうしろという?

アンガー
 「我が名はアンガー! 我が怒りを受けよ!」

アンガーはその手から無尽蔵の炎を噴き出した!
俺を身を縮ませる。
だが、俺より先に反応したのは。

みなも
 「ユウさまに触れさせません!」

みなもさんは水を足に纏うとサマソールトのように一回転して、炎を蹴散らした。
そのまま水は防壁のように真上に高く昇る。
みなもさんの滝登りだった。

アンガー
 「女、我が怒りを受け止めるか!?」

みなも
 「ユウさま、避難を」

みなもさんは怒っている。
アレで結構顔には出るタイプであり、いきなり俺を攻撃したアンガーに怒っているんだ。

悠気
 「わかった、けどみなもさんも無理だけはしないで!」

みなも
 「畏まりました」

俺はそれだけ言うと、みなもさんの横を走り抜ける。

アンガー
 「ちっ!」

アンガーはそんな俺に熱風を放つ。
だが、それもみなもさんは盾となった。
俺はそのままその危険地帯から脱出する!



突ポ娘USP #6 完

#7に続く。

KaZuKiNa ( 2021/06/02(水) 12:32 )