突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語 - 突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
SP04



富士
 「ふむ……件の怪物が現れたか」

フーパ
 「へい! クソ爺、帰ってきたぞ!」


 「ここは?」

アタシたちが帰ってくると、ひげもじゃのクソ爺こと富士は振り返った。

富士
 「クックク……! 面白い、ワシは雫を持ってこいと言ったつもりだが、継承者ごととはな?」


 「アンタ誰だ?」

富士
 「富士だ、そうだな……貴様の先々代の継承者とでも言っておこう。貴様なら楽に我が野望成就したろうなぁ?」

フーパ
 「なんて時代だ! 悪党だけが笑っている!」


 「そんな時代が気にくわねぇ!」

アタシと聖はそう言うとビシッと富士を指差す。
うむ、流石ジャリボーイの可能性、キッチリネタの神も宿っていて、ご満悦だろう。

フーパ
 「言っておくがな富士、このジャリボーイはアンタとは直接関係はないぜ?」

富士
 「で、あろうな……あの子供はもう少し利口そうな顔をしておった。一先ず自己紹介じゃな。ワシは富士じゃ」


 「魔更聖……アンタもコイツが狙いか?」

聖はそう言うと手元に雫を出現させる。
富士はそれを見て、眉を顰める。

富士
 「あの少年の可能性としては随分黒ずんでおるな、まぁいい」

富士は暗黙に雫が狙いだと教えている。
聖は雫を戻すと、テレビに注目した。


 「アレは……ネクロズマか!?」

ここはあらゆる次元に繋がっているが、どの世界線にも属さない特別な場所。
ある意味で神の座に近い座標上にあると言える。
テレビには漆黒のPKMが映っており、来るべき相手を片っ端からなぎ倒していた。
この映像は勿論テレビ中継ではなく、一種の念視だが、アタシは歯ぎしりした。

富士
 「くくっ、憎いか? あのネクロズマが?」

フーパ
 「アタシの管理不行き届きだ……そのケジメを必ず付ける。その覚悟だよ」

憎しみには囚われてはならない。
これは雫を渡される時、アルセウスに言われた事だ。
アルセウスにとって神々の王がいたから、雫に大した意味なんてなかった。
だからアタシに使っても良いし、ただ単純に封印しててもいいと言ったんだ。
アタシは奇跡なんて欲しくなかった、だから永い刻の中ずっと戒めの壺の中に封印していたんだ。
だからネクロズマはどうやって知ったのか、不明だが誰の所持品でもないアタシの雫を狙った。
今の所ネクロズマは身の回りに関する奇跡にのみ限定して使用しているため、暴走する危険はないが、だからといって出鱈目に使っても良いものじゃない。

フーパ
 「クソじじい! ジャリボーイ! アタシらの目的はネクロズマから雫を取り戻す! そのための結託だ!」

富士
 「ククク……良いだろう、研究しがいのある雫もあることだしな!」


 「敢えて言おう! 任務了解!」



***




 (く……う!?)

それは何度も訪れる頭痛だった。
悠気が掠われるよりもっと前から、謎の頭痛に悩まされていた。
そして、あの日……世界が闇に包まれる日、あの日は最悪だった。
暗闇に包まれると、昼休みの学校はパニックになり、私は凄まじい頭痛の原因をその時知った。


 (アンタが誰か知らないけど……私の中から出て行け!)

私は無意識に制御装置を解除すると、飛び上がっていた。
そしてどこに飛べば良いか、私にはよく分かった。
だって、アイツの居場所が勝手に流れてくるもの!

ネクロズマ
 (お前こそ止めろ!? 私の中に入ってくるなぁ!?)

そいつの中に名前はなかったが、ネクロズマというポケモン娘である事は勝手に脳に流れてきた。
ネクロズマは私の表面部分に触れる事で発狂、私も彼女の漆黒の闇の表層に触れて精神に異常をきたした。

分かった事はただ一つ、お互いの精神が共有されているんだと言うことだ。



***




 「……っ、頭痛い」

私は目を覚ますと、そこは悠気の部屋だった。
正直ネクロズマの狂気を抑えるので精一杯で、前後の記憶が曖昧だ。
だけど、なんとなくネクロズマが逃げるとき、悠気が傍にいた気がする。

ガチャリ。

悠気
 「おっ、やっと目を覚ましたか」


 「悠気……?」

目を覚ますと、丁度部屋に入ってきたのは悠気だった。
悠気は相変わらず不器用な仏頂面だけど少し心配そうだった。
私は外を見ると真っ暗闇で、街灯の光に気付く。


 「夜まで寝ちゃったんだ……」

悠気
 「夜じゃない、今は朝の10時。お前がネクロズマを撃退してから18時間、お前は昏睡状態だったんだよ」


 「……え?」

それはあまりに衝撃的な事だった。
悠気は私を立ち上がらせると、私達は階下に向かった。



***



みなも
 「あ、おはようございます月代様」


 「え、えと……おはよう、ございます」

月代は1階に降りると、見慣れない女性に注目した。
一人はニアさん、ニアさんは仏頂面で両腕を組んで黙している。
その隣にいたのは、御影真莉愛さん、PKM管理局の局長さんだ。
メンインブラックのような真っ黒なスーツに身を包んだ彼女は気軽に宵に手を振った。

真莉愛
 「ハロー♪ 初めまして、御影真莉愛です」


 「え、えと……月代宵です?」

流石に人懐っこい月代でもこれは戸惑うらしい。
まぁ見てくれから怪しい女性だからな。

真莉愛
 「えと、月代さんは現状をご存じかしら?」


 「夜に覆われた事ですか?」

悠気
 「月代はずっと眠ってましたから、殆ど分からないと思いますよ?」

俺は戸惑う月代に変わって説明すると、御影さんは「うんうん」と頷く。

真莉愛
 「ま、とりあえずテレビでも見ながら、現状を説明しましょうか!」

御影さんはそう言うとリモコンを手に取り、テレビを灯けた。
しかし、テレビは通常の運行はどの局でも行われていない。
当然だ、非常事態宣言下だからな。

『現在空が闇に覆われて1日経とうとしていますが、内閣府からは一切の情報が出ていない状態になります! 皆様は家で待機して―――!』

テレビはどの局もこんな有様だ。
未だ現実感のない宵は愕然とした。


 「なに……これ?」

真莉愛
 「前日11時54分、ネクロズマの顕現からあっという間に、地球は宇宙から孤立したわ」

俺も情報を聞かされた時は月代みたいに呆然としたことだろう。
だが、俺はニアさんに脅威を聞かされていただけマシかもしれない。

真莉愛
 「現状分析の限り出た答えだけど、ネクロズマは地球を覆う規模の次元境界線を操り、地球はあらゆる現象が地球に入り込まない結界を作った事になるわ」

それは掻い摘まんで説明すると、太陽や星月が単純に見えなくなったんじゃない。
GPSの電波も遮断され、勿論物理的な現象は通らない。
そしてそれが如何に問題かと言えば。

真莉愛
 「太陽の恵みを失った地球はゆっくりと寒冷化を始めているわ、更に消費電力の増加、植物の生育も致命的ね」


 「その、私馬鹿だからよく分からないんですけど、それって?」

真莉愛
 「近い将来……多くの生命体が滅ぶでしょうね、勿論人間もPKMも例外なく」

ニア
 「っ! 災厄……ネクロズマめ!」

ニアさんは御影さんの説明に悔しそうに歯ぎしりした。

真莉愛
 「まぁ……現在の科学プランからいえば、今の80億全ては無理でも、その0.01%を生き残らせる事は出来るんだけどね……」

みなも
 「人類保存計画でしたっけ……?」

人類保存計画、御影さんの話では数十年も前から計画だけは存在したプランらしい。
それは完全自立可能なシェルターに数百人を収納し、何万年も地下数十キロという深い場所で、コールドスリープなども用いて、種を保存するプランだという。
既に日本にもジェネレーターを内蔵して、1000人前後を完全自立して生活させるシェルターは存在する。
本来は天体レベルでの災害に備えて、地球環境の再生まで耐え忍ぶ施設だった。
しかし今、それが現実レベルで必要になりつつあるのだ。

だがこれはノアの箱舟だ……人類の99.9%を見捨てる計画だ。

真莉愛
 「……勿論そんな計画は実行しない方がいいわ」


 「それで……どうして私に説明するんですか?」

月代は不安そうだった。
当然だろうな、これまで普通の女の子として育ってきたんだ。
だが、御影さんだって、なんの理由もなく尋ねてきたんじゃない。
もはや頼れる手段はなんであれ、使うしかないのだ。

真莉愛
 「月代宵さん、改めまして貴方に願いがあります……人類を救ってください!」

御影さんはそう言うとフローリングの上で土下座した。
それは絶望の中に綴られた蜘蛛の糸なんだろう。
年端もいかない普通の女の子に人類の命運を掛けないといけない事に彼女は腹を切る覚悟だ。


 「あ、あのっ! 頭を上げてください!」

月代は驚いて、頭を上げるように促すが、御影さんは頭を上げない。

真莉愛
 「分析の結果、貴方のムーンフォースがネクロズマにダメージを与えた事を確認しました! 貴方だけなんです! ネクロズマを倒せる可能性があるのは!」

この24時間、人類はただ指を咥えて見ていた訳ではない。
ネクロズマを倒すため、万策を尽くしたが、何一つ通用せず、そして全て撃退されたのだ。
対PKM戦さえ想定した、特殊部隊すら……完膚なきまでにやられたのだ。


 「ネクロズマは……どうやら私が天敵みたいです。なんとなくですけど分かりました。私なんかが貴方の土下座を受けるに値するか分かりませんけど、頑張ります」

その言葉を聞いて、ようやく御影さんは頭を上げた。
その顔には涙を湛えている。

真莉愛
 「ありがとう……ありがとうございます……っ!」

みなも
 「こんな時奥様がいないなんて……」

悠気
 「母さんどこ行ったんだよ……!」


 「そう言えば確かに……育美さん、帰ってきてないの?」

悠気
 「昨日、旧友に会うって言って出かけてから、連絡なしだ」

はっきり言って異常である。
母さんはいつだって、連絡だけは欠かさない人だった。
むかつく親父のところにいる時だって、毎日連絡を欠かさない。
そういう完璧なまでに事を欠かさなかった母さんがここに来て音信不通。
何かあったのかも知れないが、生憎母さんが誰に会いに行ったのかも分からない状況では捜索のしようもないのだ。


 「ね、ねぇ……悠気、ちょっと二人で話をしたいんだけど」

悠気
 「なに? 分かった……俺の部屋に行こう」

俺は目配せで許可を取ると、二人で2階に向かう。

ガチャリ。

もはや二人には馴染みの俺の部屋。
月代は部屋に入ると、不安そうに胸に手を当てて、ゆっくりはなしだした。


 「私、よく分からないけどネクロズマと繋がっているみたいなの……」

悠気
 「繋がっている? どういう意味だ?」


 「精神が同調している……あの子が苦しむと私も苦しむように、あの子の気持ちが少しだけ私に干渉してくるの……!」

月代は次第に気持ち悪くなったのか、自分の両肩を抱きしめて震える。
俺は月代を優しく抱きしめて、安心させようとした。
それにしてもネクロズマと月代の精神が同調している?
そういえば、月代が現れた時のネクロズマの様子がおかしかった。
まるで発狂しており、正常にプリズムアーマーを展開出来ていなかったように思える。

悠気
 「それじゃ、今も繋がってるのか?」

月代は俺の胸の中で震えると、首を横に振った。


 「ううん、今は繋がらない……きっと彼女が眠っているからだと思う」

悠気
 「眠ってる?」


 「多分だけど……彼女は……」



***



ネクロズマ
 「………」

ネクロズマは暗闇で体育座りするようにして眠りについていた。
圧倒的な強さを誇り、人類軍を圧倒的な力で押し返した彼女でも、疲労はあるのだ。
だがそれは戦いの疲労ではない。

ガシャン!

不意に彼女に近づく憐れな気配をネクロズマは感じ取った。

ネクロズマ
 「対象の観測開始」


 『はっ! ネクロズマねぇ? 楽しませてくれよぉ!?』

それは一見すると人間かPKMなのか判然としなかった。
ただ、人工物に覆われた人型と形容出来るほど、異形のパワードスーツを纏っているのだ。
その肩部アーマーにはR&Aのロゴが刻まれている。

ネクロズマ
 「観測完了、素体はオーベムと認識」

そう、オーベム娘のPKMだ。
かつて15年前、ある組織が完成させた完全自立型ロボット、対PKM兵器を完成させていた。
対PKM兵器は優秀ではあるが、鈍重さが欠点であった、だがあの技術を吸収したのが総合軍需メーカーのR&Aだ。
PKMが装備することを前提とした、異形のパワードスーツはこれまでのソレとは一線を画す性能を誇っている。
正にたった一人のPKMで戦局を覆す究極の機動兵器だった。

オーベム
 『対象をアナライズ! シャドーボールをくらいな!』

オーベムは両手を左右に広げる。
すると両腕に装備された無数のエネルギー発生装置から、オーベム周辺に20近くのシャドーボールが精製される。
ネクロズマはただ無表情にそれを見ていた。
そこに驚きはない、なぜなら分析の結果オールグリーンなのだから。

オーベム
 『全弾貰っときな!』

全てのシャドーボールは複雑な軌道を描いてネクロズマに襲いかかる!
これが通常のエスパーポケモンなら何回殺せるか分からない殺傷力があるだろう!
だが、ネクロズマは静かにソレを言葉にする。

ネクロズマ
 「プリズムアーマー展開」

ドドドドドド!

シャドーボールは一斉射がネクロズマに食らいつく!
効果抜群の攻撃を同時に20発だ、オーベムは高笑いする!

オーベム
 『アッハッハ! どうだいアタシの火力は!? 今のアタシのCPは34000! 並じゃないんだよ!』

確かにそれは戦略級と言うほかない。
PKM管理局の対PKM部隊のトップエースですらCPは6000台、一般のPKMはそれこそ1000以下なのだ。
このオーベム自身CP2000前後で取り立てて優秀なPKMという訳でもない。
だが人類の技術力は誰もが普遍的に得られるパフォーマンス性にある。
このパワードスーツは特別製だが、今や誰もが戦略級になれる時代なのだ。

ネクロズマ
 「成る程……雑だがパワーはある」

オーベム
 『なっ無傷!? ちっ! なら!』

オーベムは全身についてバーニアを展開し、噴かせる!
一瞬で音速に到達したオーベムはネクロズマにショルダータックル!

ネクロズマ
 「……」

ネクロズマはそれもプリズムアーマーで防ぐ。
しかしオーベムはそこから、頭部を光り輝かせる。

オーベム
 『思念の頭突き!』

それは通常の数十倍に引き上げられた念動力が及ぼす視覚可能なほど圧縮された思念だ!
それがネクロズマの頭部を砕きに行く!

オーベム
 『化け物がぁぁ! くたばりやがれぇぇ!』

ネクロズマ
 「……っ! 雑念……!」

ネクロズマは不意に不快な顔をした。
それはオーベムの思考を読み、そのどす黒い感情を見てしまったからだ。
ネクロズマは異様に大きなその腕でオーベムの頭を掴んだ!
オーベムの思念の頭突きはネクロズマの手の中で封じられる!

ネクロズマ
 「ミラーショット」

パン! パンパン!

ネクロズマの手から閃光が放たれる!
アイアンクローのようにオーベムの頭を掴んだネクロズマはその頭部に接射を行ったのだ。
しかしただのミラーショットではオーベムのパワードスーツは貫けない!

オーベム
 『ちっ!? だが無駄だぁ! アンタの攻撃は既に解析済み! アタシの念動力でカバーされたこのパワードスーツはアンタには貫通できないよ!?』

そう、それはただ単純な機械ではない。
リフレクターと光の壁が同時に張られた特殊装甲で、並大抵の攻撃は跳ね返すのだ。
これまでの蓄積データから、ネクロズマのミラーショットには致死ダメージを与えるほどの効力はないことが認められている。
その結果、派遣されたのがこのオーベムだったのだ。

オーベム
 『アンタだってポケモンだろう!? それなら無限に活動できるわけじゃない! こんな場所で休んでいたのもそれが理由だろう!?』

ネクロズマ
 「……その通りだ、だがお前は私を見誤った。雫にアクセス、ミラーショット」

オーベム
 『無駄……が!?』

ドォン! プスプス……!

再度放たれる閃光、オーベムはその結果を予測できなかった。
まるで装甲を無効化したかのようなミラーショットがパワードスーツを貫通したのだ。
その一撃はオーベムの頭部を損傷させて、彼女は意識を失い、ダラリとその体を地面に垂らした。
ただパワードスーツからは黒煙が立ち上る。

ネクロズマ
 「……」

ネクロズマは無表情にオーベムを投げ捨てた。
ただ、その顔は無表情の中に影があるようだった。
だが……この戦いはある者たちが観戦していた事をネクロズマは知らない。



***



准一
 『……被害損害額は1800億円かな?』


 「……はぁ」

俺はマサラコーポレーションの准一会長とR&Aの社長とテレビ会談をしていた。
まずはR&Aの虎の子、決戦兵器のデモンストレーションだったが、それは無残な結果だった。
R&Aの社長は随分と息を巻いていたが、この結果に大きく焦っている。

R&A社長
 『ふ、ふん! 損害なぞ必要経費だ! それに我が社のパワードスーツは幾らでも用意できる!』

准一
 『お言葉だけどね、PKMに替えは効かないよ?』


 「……同感ですね」

結果はどうあれ、不要な損害であった事は確かだ。
せめてあのPKMが生きている事を願おう。

R&A社長
 『だから……だから我が社に貴様のお抱え人工知能を貸し出せと言っている! 無人であればそれこそ数百を用意も出来ると言うのに!?』

R&Aは昔からアイリスにご執心だ。
確かにアイリスは世界一優秀な人工知能だとは親馬鹿を抜きにしても思う。
だが、所詮は人工知能だぞ? なぜR&Aはそこまで執拗にアイリスを狙うんだ?


 「お断りです、本人も嫌がって協力せんと思いますがね」

俺は呆れながらそう言うと、画面の向こうのバーコードハゲのR&A社長は。

R&A社長
 『地球が滅びるかどうかの一大事なのだぞ!?』

准一
 『だからと言って、君たちの得体のしれない計画に利用させる訳にはいかない』

准一さんはあくまで毅然とした態度でR&A社長に忠告した。
はっきり言って両者の格の違いは歴然としている。
R&A社長はぐうの音も出せなかった。

R&A社長
 『き、機械天使さえおれば、あのような異物に……!』


 (機械天使? angel……rocket & angel?)

天使はR&Aの社章ロゴにも使われている、代表的なデザインだ。
主にそのロゴは中央にロケットを描き、それを純白の羽が包むデザインだ。
有名だが、その理由は実は公表されていない。
機械天使……単純に考えれば無人機動兵器の類いかと推測出来るが、それならアイリスでなくとも用意できるのではないか?
人工知能自体は既にありふれている。
強いてアイリスの優れた点と言えば、本人が誇らしく語る通りシンギュラリティ(技術特異点)を越えている事だが……。

准一
 『いずれにせよ、ネクロズマを不用意に興奮させるだけの結果は控えたいね』


 「我々が光を取り戻すには、まだ時間が足りません」

R&A社長
 『……くっ!』

直後R&Aはチャンネルを切断する。
本人の最後の悔しそうな顔、正に負け犬だったな。
一部始終を見ていたアイリスは、チャンネルが切断されるとホログラフィを展開する。

アイリス
 『あの禿げに求婚されるの死んでも御免です』


 「心配せんでも、絶対にやらんよ」

アイリス
 『……マスター、それと先ほど真莉愛様から連絡が』


 「彼女が力を貸してくれるのか!?」

それは人類の希望だった。



***



悠気
 「それにしてもネクロズマが世界を滅ぼす理由ってなんだ?」

月代の承諾後、俺は御影さんの用意した車の後部座席に乗っていた。
俺自身なんの役にも立たないかも知れないが、月代を孤独にすることは俺には出来なかった。
同様に、元々ネクロズマを倒して自分の住んでいた世界を救う為にやってきたニアさんも腕を組んで眠るように目を閉じている。

真莉愛
 「そうね、それが分かればもっと違う解決も見つけられそうなのに……」

現在車はネクロズマの潜伏する場所に向かっている。
政府はネクロズマの存在を公表していない。
個で地球を滅ぼせる存在など、発表できる訳もないのだ。
既に政府はネクロズマを『抹消』する為に動いているが、状況は芳しくない。
住民も不可解に思いながら、当該地域から避難という名目の立ち退きが勧告された。

ネクロズマの潜伏地域に入ると、一切の光が失せた街並みに突入して、補助席に座る月代は不安そうに顔を俯かせた。

真莉愛
 「ネクロズマは光を嫌うと推測されるの、正確な所は光を奪ってエネルギー源に変換するとも言われるけれど、不明ね」


 「月の光もない……ネクロズマは寂しくないのかな?」

ニア
 「どうして、そう思うの?」

ニアさんが目を開いた。
そのキツめの口調と目線は月代を怯ませるが、本人に悪気はないだろう。


 「だ、だって……独りぼっちだよ? 真っ暗闇で独りぼっち……私なら嫌だ」

ニア
 「あの怪物にそんな感情が有ればだけどね……」

ニアさんはそういう辛辣な意見を述べると、月代は黙ってしまう。
月代はおそらくネクロズマと同調してしまった性で、ネクロズマの心に触れて、同情心が生まれたのだろう。
月代は瑞香と違い、生粋のSではない。
少々苛烈な物言いもあるが、中身はただ優しい女の子だ。

悠気
 (月代は俺だけに教えてくれた……それは不安の表れだ、そして月代自身も助けて欲しいのか……)

普段の月代は月と言うよりは太陽みたいな明るい女の子だ。
ところが今は宵月のように暗い。

真莉愛
 「もうすぐ当該地点に着くわよ、議論は後! 一先ずネクロズマをなんとかしないと!」

車が真っ暗闇のゴーストタウンで停車する。
各々は車を降りると、ライトを手に取った。

真莉愛
 「この地域は電力の供給がカットされているからね……。近い将来、計画停電は相次ぐでしょうけど」

真莉愛さんはそう言うと皮肉めいて苦笑した。
この人はこんな時でも戯けられて凄いな。

ニア
 「その眼鏡……見えるの?」

真莉愛
 「はっはっは! もはやトレードマークだからね! まぁぶっちゃけ見えないわ!」

御影さんはそう言うとサングラスを外す。
トレードマークだそうだが、0ルクス下でサングラスも何もないだろうが。


 「……っ」

月代が頭を抱えた。
俺は月代に近寄ると。


 「いる……! 多分彼女も感じてる……!」



***



ネクロズマ
 「ぐぅ……一体何だと言うのだ!? 月代宵……アイツは一体……!?」

ネクロズマは宵の接近に会わせて、頭痛に頭を抑えた。
ネクロズマにとって月代宵は理不尽な存在だ。
何人たりとも、例え神とて今のネクロズマには敵わない。
だが、ネクロズマには月代宵に勝てると思えなかった。


 『なんでアンタはそんな弱そうな泣き言、言ってんのよ!?』

ネクロズマ
 (うる、さい……! 貴様に何が分かる……!)


 『アンタこそ私の何が分かるのよ!?』

ネクロズマ
 「ああっ!? アアアアアアアアア!!?」

宵がネクロズマの心に触れた、それだけでネクロズマは発狂する。
同様に宵もその反動に晒されるが、宵はそれを耐えた!
肉体的には圧倒的にネクロズマが上、だが精神においては宵が上回ったのだ!


 『アンタがなんだろうと、空は返して貰うんだから!』



突ポ娘USP #4 完

#5に続く。


KaZuKiNa ( 2021/06/01(火) 15:32 )