突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


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突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
SP03



「お前はもう弱体効果でロクに戦う事も出来ない惨めなラスボスだ!」



「結局、こんなバトルはゲームの演出に過ぎない」



「不公平だろ…! 俺のはすぐに汚くなっていったのに…!!」



「さぁ、これで全部終わらせてやる!!」



「悔しいよな…もうひとりの俺は、俺の知らない絆も持っていた」



……負けた。
ある意味必然の結果だったんだろう。
俺は何故失敗したのか、その意味を知らなかった。
そして成功した奴を妬んだ。
だが、結局は全部奴の掌の上で躍っていただけなのかもしれない……。


 「ああ、どうしてこうなっちまったのか……」

フーパ
 「奥義! しみったれブルース!!」


 「なっ!?!?!?」

ここは終わった世界。
もう俺の家族が帰ってくることもなく、ただ怠惰に終わるだけの世界。
そこに突然褐色の幼女が降臨した!?
幼女は不意打ちのように俺の背中にドロップキックを仕掛け、俺は前のめりに倒れる。
くそ……アイツと違って身体鍛えてないからな……。

フーパ
 「へい! 貴様には大切な人を利用した罪として16分の15殺しをしたいところだが、今回は許してやるぜジャリボーイ!」


 「た、大切な人……?」

幼女は背中にマウントすると、俺は身動きがとれない。
ただ大切な人という言葉に嫌が応にも動揺してしまう。
俺は大罪を犯した、その恨みが巡り巡ったんだろう……。

フーパ
 「アタシの要求は一つ! 雫を渡しな!」


 「なっ!? 雫をだと!?」

俺は心底驚いた。
何故この幼女は雫を知っている?
だが俺が念じて取り出した雫はどす黒い程真っ黒だった。
間違いなくもう一度使えば、世界が壊れる。

フーパ
 「それがアンタの雫か、真っ黒だね……だけど僅かだが艶がある」


 「分かるのか?」

俺は奴の雫の使い方を見て、初めて気付いた。
奴は使用できないほど荒んだ俺の雫と交換して、世界を崩壊させなかった。
そして俺もここまで真っ黒にしておきながら、まだ世界は滅んでいない。

フーパ
 「雫と言っても、世界ごとに異なる……この世界の雫は差し詰め、黒の雫か」


 「黒の雫?」

雫は元々透き通った透明な物だった。
だが異なる世界では異なる色に染まったりするんだろうか?

フーパ
 「アタシの渡された雫は元々蒼穹の雫だった……今じゃどれ程くすんでるのか……」


 「君も雫の継承者なのか……?」

俺はそれを聞くと、彼女はその顔を一瞬曇らせた。
だが、直ぐに顔色を怒りに染めて、顔を近づけると彼女は横暴にも言う。

フーパ
 「無駄話はここまでだ! 渡すのか!? 渡さないのか!?」


 「……!」

俺はこの期に及んで迷ってしまう。
だが幼女はそれに苛立たせ、俺の胸ぐらを掴んで言った。

フーパ
 「いいか!? ドロップアウト野郎!? アタシはアンタが大嫌いだ! 大切な人を利用されただけでも腸煮えくり返るってのに、アンタはここで諦めた! だがアタシは諦めねぇ! 護り抜きたいもんがあるんだよ!? そのためには最低野郎のアンタにだって頭下げなきゃなんねぇんだよ!!!」

さっきから酷い罵詈雑言を幼女は繰り返すが、俺は反論が出来なかった。
ただ、俺は彼女の言葉に自分の大切な者たちが去来する。


 「うぅ……守連ぁ、阿須那ぁ……華澄ぃ……菜胤ぇ」

俺は大切な人達を諦めてしまった。
何度やっても勝てず、そして雫は濁り絶望を繰り返した。
俺は精神をボロボロにすり減らせ、その結果異なる俺を呼び寄せることに成功した。
だけど負けたんだ……。
でもその結果、俺はキッチリアイツらが笑っていられる世界があることを知ることが出来たんだ。

フーパ
 「やっぱりポーションさんは4番手なんだな、まぁそれはどうでもいいとして……もうテメェには戦う勇気がねぇ、それなら必要ないんじゃないか?」


 「教えてくれ……何故君はそんなに必死になれるんだ?」

フーパ
 「だからお前は阿呆なのだー! 何故一つも守連さえ孕ませた世界線が存在しないのか貴様の胸に聞けぃ!」


 「り、理不尽!? ていうか俺は高校生なんでまだ早いです!」

フーパ
 「何を躊躇う必要がある!? 貴様ハーレムを築く勇気も無く、一人の女を愛する勇気も無し! これをヘタレと言わず何という!?」


 「ぐふっ!?」

ヘタレ……そうだよな、俺ってヘタレだよな。

『安心してよ、ボクはキミの嫁なんだから♪』

ふと、懐かしい言葉が蘇った。
きっと彼女は今も待っているんだろう。
きっと今でも、帰ったら平然と「何から始める?」って聞いてくれるに違いない。
そうか……俺は彼女さえ裏切ったんだな……。


 「ごめん、やっぱり雫は渡せない……!」

そうだ、俺がまだ未練がましく継承しているのには意味があったんだ。
俺の大切な人たちは皆死んでいった。
それでも待ってくれる子が一人だけいるんだ……。

俺は幼女を退かすと立ち上がった。
そして考えうる格好いいポーズを取ると、高々と宣言する


 「フゥーハッハッハ! 俺は魔更聖(まさらさとし)! 諦めの悪さは世界一ぃ!!」

フーパ
 「……やれやれこれだからジャリボーイは」

幼女は起き上がると、呆れたように首を振る。


 「どうした幼女!? 雫が欲しいんだろう? ほら頭を下げれば考えてやらんでも……ぶべら!?」

俺は突然顔面を殴打された。
痛い……本気で殴られた。

フーパ
 「ごめん、イラッとした」


 「殴る前に言って!?」

俺はあっさりと虚勢を潰され、元に戻ってしまう。
元々オタクで引きこもりの俺は、虚勢を張るぐらいしか出来なかった。
そう言えば成功したアイツは驚くくらい真っ直ぐだったなぁ……。


 「で? 幼女は何者だ?」

幼女の見てくれは褐色金髪で、おでこに金のリングの模様、そして両腕に大きなリングを引っかけている。
予想通りならあのポケモンだろうが。

フーパ
 「フーパだよ、アンタには大切な人を利用された恨みと、自暴自棄になったジラーチを助けて貰った感謝の両方がある……」


 「ジラーチ?」

それは俺が一度も会ったことのないポケモンだ。
おそらくだが別の世界線の俺が救ったんだろう。
なんとなくだが、あいつな気がして俺はふっと微笑を浮かべた。
きっとアイツなら今でも誰かを救ってるんだろうな。

フーパ
 「とりあえずアンタはその虚勢がお似合いだし、闇聖とでも呼ぼうか」


 「ちょっと待て! それではゲットだぜぇ! になってしまう!?」

フーパ
 「別にジャリボーイは、相当中二病だし問題ないだろう?」


 「ていうか今更だけどジャリボーイっての止めて!? アニメと混同する!」

この幼女、予想通りだったがフーパだった。
分類名いたずらポケモンの名に恥じず、相当引っかき回してくる。

フーパ
 「はぁ……なんとなく予想していたけど、やっぱりアンタもジャリボーイだった訳だ、結局は無駄骨か」


 「ふっ! 何を勘違いしている!? 確かに俺は諦めの悪い男だ! だが、お前を救わないなんて一言も言ってないぜ!?」

そう、彼女は紛れもなく俺に救いを求めたんだ。
きっと、アイツなら迷うことすら無かったんじゃねぇかな?
救いたいと思ったら理屈じゃない、アイツはそういうタイプのヒーローだったから……。


 「貴様に協力はする! ただし雫は渡さん! 繰り返す! 協力はするが雫は渡さん!」

フーパ
 「任務、了解……!」

うーむ、フーパはノリがいいな。
俺は空を見上げると、空は蒼かった。
そして俺は彼女に謝った。


 (ごめん恵里香……、迎えに行くのはもう少し遅くなるわ)

もはや彼女の声は聞こえない。
でもきっと、彼女は微笑んで俺をいつまでも待っていてくれるだろう。


 (俺だって魔更聖だ、アイツのようなヒーローになれるだろ!?)

俺はくすみきった夢見の雫を握りしめ、決意を固める。
フーパを助けたら、今度こそ大切な家族を助けよう!
おそらく雫の濁りから挑める回数は次がラスト、だがもう絶望はしない!
そんなのもう飽きた、そして絶対変えてやる!

フーパ
 「ふぅん、目の色変えやがって……いいよ、ならギブアンドテイクだ!」

フーパはそう言うと金のリングを大きくした。
金のリングの内側には表現のしようのない異相空間が広がっている。
曰くフーパはこの金のリングであらゆる物を呼び込んで使役するという。
映画では伝説のポケモン達でさえ抗えない程強力みたいだからな。

フーパ
 「駄賃は無料、アフターサービスも完備! 入りな」


 「そいつは重畳」

俺は金のリングを通過すると、後ろからフーパが着いてくる。
さて、俺の最初の慈善活動はどうなるかな?



***



悠気
 (結局丸一日……無駄足だったか)

俺とニアさんは必死に雫とは何か探したが、それを発見する事は出来なかった。
魔神とやらも、対策を急いでいるようだが果たして間に合うのか。
そして俺達は家へと帰り、皆に事情を説明するのだった。

みなも
 「雫ですか……水タイプの威力を上げるアイテムなら存じてますが……」

ニア
 「……」

家には母さんはいなかった。
なんでも旧友と旅行に行ったらしい。
こういう時だが、母さんは本当に暢気だなぁと思う。
月代は学校に行っているのか、ここにはいない。
時刻は正午、今は3人だけだ。

みなも
 「とりあえずお昼ご飯に致しましょう……そのニア様の言は信用に値するのか私には分かりません。ですからここはユウさまを信じます」

みなもさんは当初よりニアさんを険悪に見ていた。
そりゃみなもさんの気にくわない相手なのは確かだろう。
だから信用は出来ないが、俺を立てる訳だ。

悠気
 「ありがとうみなもさん」

みなも
 「私はユウさまのメイドですから……これ位当然です」

みなもさんはやはり嫉妬心は強い方なのだろう。
多分必要以上にニアさんを敵対視していると思う。
一度でも俺に危害を加えたんだ、みなもさんは俺以上に許せないと思っているんだろう。

ニア
 「ごめんなさい……償いはするから」

ニアさんは気を落としてそう言った。
ニアさんは初見のイメージこそ、暗殺者のような恐ろしい物だったが、普通の女の子なんだなと気付く。

みなも
 「それを決めるのはユウさまです。私は何も求めません」

しかしみなもさんはそう言ってそっぽを向いた。
やはり本人としては全く納得いってないんだろうな。
みなもさんは意外と不満が顔に出る方だから分かりやすい。
とはいえここまで露骨なのもニアさんが初めてだが。

悠気
 「俺はニアさんを信じる、だから何か求めたりはしな――っ!?」

突然俺は背中にぞわっと来る物を感じた。
視線が一気に強くなった!?
俺は立ち上がると、急いで家を出る。

みなも
 「ユウさま!?」

悠気
 「……く! まさか、来る!?」



***



アイリス
 『ゲートに動きあり! 空間に異常発生! 表面境界、決壊します!』


 「何をするにしても時間が足りなかったか……」

俺はゲートの真下から直径100kmの超巨大ゲートを見た。
ゲートは正に今、空間を湾曲させて、異相空間と繋げようとしている。
大きい分ゆっくりで、こういう時は観察するとフーパのリングとそっくりだな。


 「久し振りね、常葉さん」

俺は横に顔を向けると、久し振りに見る顔がそこにあった。


 「御影さん、貴方が現場に出ていいんですか?」

そこにいたのは御影真莉愛(みかげまりあ)。
かつてPKM対策部で俺と協力して様々な事件に挑み、今はその後発組織のPKM管理局の局長を勤めている。
歳の性か皺も目立ち始めているが、それはお互い様で老いという物だ。
昔と同じようにメンインブラックみたいな格好から、今でも昔と変わらぬ意欲が感じられる。

真莉愛
 「さて、鬼が出るか蛇が出るか」

御影さんは愛用のサングラスを取ると、ゲートを直視する。


 「万が一に備えて、PKM対策班の配備は?」

真莉愛
 「流石に全域は無理ね、何せ相手は東京一円を丸ごと覆う超巨大ゲートよ? どこに出現するか分からないんじゃね……」


 「マスター、太陽が……」

突然御影さんの影から迫り出して来たのは、ダークライの愛紗さんだった。
第一世代PKMは老けにくいことで知られるが、愛紗さんも例外ではなく、20代の若さがある。
昔と変わらず黒一色の姿は闇のようだ。

真莉愛
 「日食……?」

辺りは急速に暗くなっていく。
それは超巨大なゲートが太陽を覆ったからだ。

アイリス
 『ゲートから顕現を確認! 未確認のPKMと思われます!』


 「なに!? ち……真っ暗で!?」

それはまるで日食を待っていたかのようなタイミングだった。
ゲートは放出を終えると、後は自然消滅するだけ、俺達は目を点にして空を睨む。
やがて、ゲートが完全に消え去ると太陽の中心に真っ黒い点があった。

愛紗
 「く……アレでは確認が……!」


 「アイリス、過去のポケモンから最も近いと予測出来るのは?」

アイリス
 『……検索結果、ネクロズマと推測します!』

真莉愛
 「禁止伝説!? そりゃ大物が来たわね」

とはいえ、上空何メートルにいるんだ?
その姿は正に黒点、これじゃ地上の俺達は何にもできんか。


 (妙な胸騒ぎがしたが、こいつは白か黒か?)


 『胸騒ぎ? 白か黒かとは?』


 「っ!?」

突然脳に声が響いた。
それはテレパシーであり、俺はその正体不明の声に周囲を見渡す。
だが、それは不正解だった。
その声の主は……既に目の前にいる!

ネクロズマ
 「特異点、名前の記述が見えない……何者だお前は?」

それはスピードなのか?
ネクロズマは誰にも反応されることなく、俺の目の前に現れたのだ。
その姿は正に黒、愛紗さんが闇なら、こいつは純黒だ。
やや幼い顔つきで瞳は赤く、そして異様な能面顔。
豊満な胸を持っており、全身をラバースーツのような物で覆う様は異質感をより強調する。

真莉愛
 「な!? 常葉さん!?」

ネクロズマ
 「対象を認識、ホモサピエンスサピエンスの御影真莉愛、観測完了」

真莉愛
 「え?」

その直後だった。
ネクロズマは不意に浮かび、俺を持ち上げる。

ネクロズマ
 「特異点……私は探し求めた。お前は誰だ?」


 「常葉茂……! お前こそ何者だ……っ!?」

首を絞めるように乱暴に俺を持ち上げるネクロズマに俺は呻く。
まるで人を人形かなにかのように扱う様は、子供のようだ。
最も規格外の怪物の子供のようだが……!

愛紗
 「常葉さん! このダークホールで……!?」

ネクロズマ
 「対象の観測完了、ダークライの愛紗の攻撃を分析、ダークホールに対する解答を確認」

愛紗さんはどんな物でも触れれば一瞬で眠らせるダークホールを構えた。
しかしまるでマシーンか何かのようなネクロズマは、すかさず俺を振り下ろすと、今度は愛紗さんの目の前にいた。

愛紗
 「な!?」

ネクロズマ
 「解答、速攻撃破が最も望ましいと判断」


 「げほっ!? 何なんだ!?」

ネクロズマの咄嗟に見せる瞬足。
しかしネクロズマはテレポートなんか出来はしない。
かといって高速移動を覚える訳でもない、この速度はなんだ!?

ネクロズマ
 「!」

ネクロズマはただ淡々とまるでマシーンのように熟す。
咄嗟に相手を逃した愛紗さんは致命的で、ネクロズマはその大きな爪で愛紗さんを切り裂く。

愛紗
 「ああっ!?」

真莉愛
 「な、愛紗ーっ!?」

ネクロズマ
 「……回避を確認、ダメージ中」

愛紗さんはなんとか闇の中へと逃げ込む。
致命打をギリギリ逃れたようだ。

真莉愛
 「く!? ネクロズマもう止めなさい! これ以上は貴方の身の保証は出来ません!」

ネクロズマ
 「身の保証? 私は知りたい、私は誰だ?」


 「は?」

ネクロズマには邪悪さはない。
だが無邪気なのか言えば、それもノーだろう。
生物らしさがまるで無いのだ。

ネクロズマ
 「特異点、お前は自分が分かるのか?」


 「当たり前だろ!?」

ネクロズマ
 「そうか……では、まずは環境を整え、別の特異点を探そう」

ネクロズマはそう言うと、ゆっくりと空に浮かんでいく。

真莉愛
 「なっ!? 待ちなさい!」

御影さんが追いかけるが、それは少し遅い。
今度は緩慢、一体どうなってんだ?


 「アイリス、奴の分析は?」

アイリス
 『おそらくですが、そもそものスピード自体は普通と思われます。瞬間移動の正体はサイドチェンジの応用ではないでしょうか?』


 「サイドチェンジ!? 確かネクロズマはレベルで覚えたな!」

そうこうしている間にも、ネクロズマは高く浮かび上がる。
ネクロズマはエスパータイプのポケモン、浮遊やテレキネシスはお手の物だろう。
だが、それよりもネクロズマに注意すべき点は……!

ネクロズマ
 「!」

ネクロズマが両手を広げる。
まるで太陽の光を全身で浴びるように。
だが、それはネクロズマの恐るべき力の一端だ!

ネクロズマの周囲から光が奪われると、太陽が真っ黒く蝕まれていく。
そのスピードは尋常ではなく、あっという間に真昼の空が闇夜に飲まれていく!


 「まさかと思ったが本当にやりやがった!」

ネクロズマは光を奪うポケモン。
それ故にこの結果は予想できなかった訳ではない。
ただ、余りにも対策を用意する時間が無かったんだ。
御影さんはガラケーを取り出すと、直ぐに号令を放った。

真莉愛
 「各員! ネクロズマを捕捉次第確保! 技の使用も許可します!」

愛紗
 「……く、マスター、戦線に復帰します」

愛紗さんは闇から迫り出すと、正面から切り裂かれたダメージを見せつける。

真莉愛
 「駄目よ! 安静にしてなさい! それと着替え!」

真莉愛さんは黒スーツを脱ぐと、それを愛紗さんに着せる。
服が見事に切り裂かれた結果、大変目のやり場に困る事になったので、これは仕方ないだろう。

アイリス
 『マスター、大変です!』


 「今度はなんだ!?」

アイリス
 『この現象、全天球で闇に覆われたのですが、衛星と通信が繋がらなくなりました!』

真莉愛
 「え? それってこの闇の性?」

アイリスはホログラムを地球の映像に切り替えると、これから起きる現象を説明する。

アイリス
 『あの闇は単に光を奪うだけではありません。地球を宇宙から孤立させる檻だと考えられます。更にこの結果地球は太陽から受ける熱エネルギーを失った事になります!』


 「それって……!?」

真莉愛
 「地球が寒くなるっていうこと!?」

俺達は戦慄するしかなかった。
ゲームの上で起きていた現象と、現実で起きうる現象。
このままでは全球凍結もあり得るってのか!?


 「ネクロズマは!? くっ! いない!」

ネクロズマは言葉通りならば特異点を捜しに行ったと思われる。
だけど、特異点って何の事だ?
俺が特異点に関係しているとすれば、神々の王と関係するってことか?
事態には謎も多い、だが人類に残された時間は後以下ほどなのか?



***



悠気
 「ネクロ、ズマ……!」

視線だ、それはおそらくネクロズマの視線だったんだ。
ゲートが消えて数分後、世界は闇に包まれた。

ニア
 「災厄! 後幾つ世界を滅ぼせば気が済むんだ!?」

隣にいたニアさんはただ憎しみを空の闇へとぶつける。
だが、闇は何も答えない。
そもそもこの闇はなんだ?
星は瞬かない、かといって人工の光が消えた訳でもない。

ネクロズマ
 『見つけた、特異点』

悠気
 「っ!?」

今度は声だ。
女の声で俺を特異点だと言った。
そしてそれが災厄ネクロズマだと確信する!

ニア
 「!」

ネクロズマ
 「……お前。間違いないゾロアークのニア?」

ネクロズマは頭上に出現すると、俺達を見下した。
ニアさんは激しい憎悪をぶつけ、ネクロズマは意外そう……とも言えない無表情だった。

ニア
 「お前は倒す! 必ず!」

ネクロズマ
 「それは限りなく不可能だと解答する」

ニア
 「それでも!」

ニアさんはネクロズマに闇を放った。
ナイトバーストは、闇の奔流となってネクロズマを襲うが、ネクロズマは微動だにしない。

ネクロズマ
 「……損傷無し、プリズムアーマーの展開率、正常」

悠気
 「まじか!? 抜群の筈だろ!?」

ネクロズマ
 「……」

ネクロズマは俺を見ると、僅かに目を細めた気がした。
そもそもネクロズマは何しにこの世界に来たんだ?
滅ぼすのが目的のようにも思えるが、それは過程に過ぎないのか?

ネクロズマ
 「特異点……私は――」

ゴォウ!

直後、プロミネンスのように輝く炎がネクロズマを横から襲う。
俺達はネクロズマに奇襲を掛けた相手を見るとゴウカザルのPKMだった。

ゴウカザル
 「野郎共! 気合入れてけよ!?」

ニア
 「あれは?」

悠気
 「PKM管理局だ、その対テロ部隊か!」

先頭を行くのはコンバットスーツを纏ったゴウカザルの女性で、その後ろに数名同様のコンバットスーツを纏ったPKMが構える。

ネクロズマ
 「……!」

ネクロズマは炎を吹き飛ばすと、そちらを向いた。
ゴウカザルの女性は更に攻撃を叩き込む!

ゴウカザル
 「くらいやがれぇ!」

両腕に炎を纏わせて、ネクロズマの顔面を殴り抜ける。

ゴウカザル
 「どうだ!?」

ネクロズマ
 「……問題なし」

ネクロズマが手を構えた。
直後ネクロズマの手が一瞬だけ輝いた!

ゴウカザル
 「がはっ!?」

ゴウカザルは身体をくの字に曲げて、地面に倒れた。
「隊長がやられた!」等と、その仲間たちは響めくが、無情なネクロズマは冷静に残りの相手をロックしたかのようだ。

ネクロズマ
 「ミラーショット」

直後、再びネクロズマの手が3回瞬く。
その瞬間にも、残りのPKM対策班が音もなく倒れていった。

悠気
 「嘘だろ……? こっちの攻撃は何も通じねぇ、だが相手の攻撃は全部一撃必殺なのかよ?」

それが圧倒的レベル差によるものなのか、それとも外因があるのかは分からない。
ただ冗談抜きに、コイツには世界を滅ぼせるだけの力があるって事は分かった。

ネクロズマ
 「さて……? ゾロアークがいない?」

悠気
 「ニアさん?」

ネクロズマは雑兵を片づけると、直ぐに此方を向くが、気が付けばニアさんの姿が無かった。

ネクロズマ
 「ゾロアークのニアをサーチ、後ろ?」

その直後、ネクロズマが振り返ろうとしたその刹那。
突然闇の中からニアさんが現れる!
イリュージョンの特性により、その姿を風景に擬態させたのだ。

ニア
 「辻斬り!」

ニアさんが闇を纏わせた短刀でネクロズマを切りつける。

ネクロズマ
 「……!」

しかしネクロズマは尚もその体を傷つけられないのか。
その大きな手でニアさんの頭を握る!

ニア
 「あああっ!?」

悠気
 (どうなってんだ!? 本気で不死身って言うつもりかよ!?)

ニアさんの奇襲は失敗した。
辻斬りが当たる直前、光の膜がそれを受け止めたのだ。
まずあのプリズムアーマーとやらを破らないとどうにもならんぞ!?


ネクロズマ
 「ニア……お前の定義情報が変わっている、どういうことだ?」

ニア
 「ふ、ふふ……! 変わるわよ、それが生命でしょう!?」

ニアさんは顔面を捕まれ、苦しい中も短刀は振り落とさずネクロズマの手首に放つ。
しかしやはりプリズムアーマーはその攻撃さえも儚く打ち消した。

ネクロズマ
 「仕留めるのは容易い……!?」

ネクロズマが明後日の方向を振り向いた。
それまで何事にも動じなかったネクロズマが一瞬顔色を変えたのだ。
直後ネクロズマをピンク色のビームが襲った。

ネクロズマ
 「くっ!? ダメージ……!」

咄嗟にニアさんを振り下ろすと、四枚の光の翼を輝かせて、彼女が現れたのだ……!

ネクロズマ
 「お、お前は誰だ?」


 「アンタこそ誰よ? 私の何なのよ!?」

クレセリアとしての全力の姿。
それは闇の中でさえ美しく輝いた。
俺は動けないニアさんを抱きかかえると、月代に叫んだ。

悠気
 「月代! お前どうしてここに!?」


 「……ごめん悠気」

しかし月代の反応はいつもと違った。
いつものおちゃらけた娘ではなく、どこか遠い存在のような雰囲気だった。


 「アンタなんでしょう……ぐっ!?」

ネクロズマ
 「ぐあ!? 止めろ……精神が逆流する……っ!?」

悠気
 「?」

突然月代とネクロズマが頭を抱えて苦しみ出す。
月代の方はまだ耐えているが、ネクロズマは半狂乱になっている!

悠気
 「月代!」


 「分かってる……! ムーンフォース!」

四枚の光の翼が輝くと、その光はビームとなった。

ドォン!

回避することも、プリズムアーマーを展開することもままならないネクロズマは初めてまともなダメージを受ける!
だが、宵の一撃では打倒には至らない。

ネクロズマ
 「うく……! はぁはぁ、撤退する……!」

ネクロズマはそう言うと、その場から飛び去った。


 「……っ」

緊張が解かれたのか、宵はそのまま力尽きると地面へと落下してくる。
俺は慌てて彼女を受け止めた。
月代の身体は軽く、柔らかい。
PKMと言っても普通の女の子だ。

悠気
 「月代……一体どうなってんだよ?」

なんとかネクロズマを一度は撃退出来たものの、気が付けばその場には気絶して起き上がらない死屍累々の状況だった。
これだけの人数で戦って、ダメージを与えたのが一番の弱さを誇るだろう月代だけ。
思えば、最初の一撃の時点で、突然ネクロズマが顔色を変えていた。
あの時点でアイツはもう半狂乱だったのか?
謎は多いが、月代はネクロズマの天敵なのかもしれない。

悠気
 「一先ず、家に避難させるか」

俺は月代とニアさんをなんとか抱きかかえると、家を目指すのだった。



突ポ娘USP #3 完

#4に続く。


KaZuKiNa ( 2021/05/31(月) 18:00 )