突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


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突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
SP01


 「はぁ、はぁ! クソが! 何者だよアイツは!?」

それは少女だった。
浅黒い肌、そして金の煌びやかなリングを両手に付けた少女。
少女は金色のリングを次々と目の前に広げ、リングをゲートにして飛び回る。
しかし焦燥しきった少女は、頻りに周囲を気にして、ただ我武者羅に世界を飛び越えていく。
この少女、世界線さえも支配しうる強大な力の持ち主だが、その少女をここまで焦燥させる者は何者なのか。
息を切らし、平常心も失せて、やがて到達したのは……小さな世界だった。

浅黒い少女
 「ここは、神の座か?」

そこは星の海のような煌びやかな空間に存在する宮殿だ。
かつて神々の王と10柱の神々がここで暮らしていた。
しかし放棄されて15年、そこは今や遺跡のようなものだ。

浅黒い少女
 「ここは時の流れが意味を持たない……だから15年と言っても綺麗なもんだな」

浅黒い少女は宮殿を歩く。
未だそこに居た神々の匂いが残っている気がした。
宮殿は荘厳で古代ギリシャを思わせる、大きな白柱が幾重にも聳える。
やがてエントランスを抜けると、目の前には椅子が見えた。
王の座、玉座だ。


 『神々の座、観測』

浅黒い少女
 「っ!? ここまで侵入してきたのか!?」

少女は警戒感を顕わにして、周囲を伺った。
しかし声は、無機質な女の声は全方位から聞こえてくる。


 『その回答はノー、私はあらゆる次元を観測できる、よって場所に意味はない』

浅黒い少女
 (クソッタレ!? 神々にこんな奴はいなかった筈! だとしたら何者だ!?)

浅黒い少女はこの謎の存在にひたすら追われていた。
いや、監視されていたのが正解かもしれない。


 『対象確認、観測完了、フーパよ、私は求める』

浅黒い少女、フーパは苦虫をかみ潰すような顔をしたことだろう。
目の前に、突如顕現した者は『見えない』のだから。

フーパ
 (透明? それとも認識阻害? いずれにしても巫山戯た奴だ!)

フーパは覚悟を決めた。
これ以上逃げても、こいつはどこまでも追ってくるだろう。
ならば得体の知れない相手とはいえ、戦わなければならない。

フーパ
 「そっちがその気なら……覚悟しやがれ!」

フーパは金のリングから古びた壺を取り出した。
戒めの壺、其処にはフーパの本当の力が隠されている。
壺の口を抑えていた紙は自然と剥がれ、そこから現れた煙はフーパを覆う。
だが、その存在はそれを求めていた!


 「その力だ、私はその『雫』を求める!」

フーパ
 「なにっ!?」

見えない何かの手が壺の中へと伸びる。
戒めの壺にはフーパの本性と共に、ある物が隠されていた。
それは、かつてフーパが封印を命じられていたものだ。


 「『雫』を観測……完了」

フーパ
 「てめぇ! それに触れ―――」

その瞬間だった。
世界の定義が変わったのだ。
それは混沌を越えて終末へと加速する事象なのか……。
あらゆる世界を巻き込む混沌は、時空崩壊を意味するのか……。



突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語 スペシャル

 『輝く者』



西暦20XX年。
PKMが顕現して16年が経った世界。
アメリカ空間物理学研究所にある解析データが届いていた。

研究員
 「白チーフ、この観測データですが」

幾人も白衣の研究員が狭いオフィスで働く中、一際目立ったのは一見子供にしか見えない御影白(みかげしろ)だ、彼女はPKM制御装置の開発をし、空間物理学の権威だった。
白はミカルゲのPKM、白い腕輪は彼女にとって忌々しい御影石と引き離す事に成功し、こうして研究者として生活している。
彼女は仲間の研究員からデータを受け取ると、正確に分析し、そして驚愕した。


 「日本の上空で空間異常? それに何よこれ……想定されるゲートのサイズは100キロメートル? 東京を丸ごと覆える程なんて……!」

それは世界各地で観測されていた。
誰もが目を疑ったが、何度計算し直しても、関東上空にこの超巨大なゲートが出現するのは確実だった。



***




 (超巨大ゲート……記憶にあるのはあの世界大戦の世界線……だな)

かつて超巨大なゲートを見たことのある者もいた。
彼の名は常葉茂、幾重もの世界線を乗り越えた男だ。
彼はかつて空を覆うほどの巨大なゲートを見たことがある。
そしてそこから何が現れたのかも勿論知っている。


 (神々が現れるクラスの大きさってのは確かだが、それでもあの時は10柱の神々の顕現でやっとの大きさだった……まさかまだあのイベントは終わってないのか?)

かつて世界を救った男もまた、混沌は無情にも巻き込むのか。



***



悠気
 「ゲート、ねぇ?」

俺の名は若葉悠気、ごく普通の高校生だ。
俺は朝ご飯を食べながらテレビの情報を見た。
日本政府は1週間から1ヶ月以内にこの超巨大ゲートが出現すると宣言している。
早速SNSでは混乱が見られるが、政府の見解はゲートは放出型で、落ち着いて日常生活を送って欲しいと言っている。

みなも
 「放出型とは?」

育美
 「ゲートには吸い込み型と放出型ってのがあってね、今回のはそれだけ大きな物が出てくるってこと」

我が家のメイド、みなもさんは「まぁ!」と驚いた顔をしていたが、一体何が出てくると想像したのだろう。
一方で俺の母さん、若葉育美はケタケタ笑っている。

みなも
 「どんな怪獣が現れるのでしょうか? 東京がペシャンコになってしまいます!」

悠気
 「いくら何でもそれはないんじゃないか……て、言い切れんか」

何せこれ程超巨大なゲートは歴史上初。
それだけ巨大なら、それだけ大きな物が現れる可能性は高い。
今や多元世界が肯定されている時代、異世界には何があるか分からないのだ。

育美
 「案外直径10キロメートルの隕石だったり?」

悠気
 「恐竜を絶滅させた奴だっけ? 人類死滅するな」

みなも
 「そんなっ! ユウさまだけは絶対にお守りします!」

みなもさんはそう言って震えながらも俺を庇うように覆う。
母さんは更にケタケタ笑っていた。

悠気
 (うむ、我が家は今日も平和です)

俺はそんな平凡な日常に満足しながら朝ご飯を食べ終える。
鞄を持って、そろそろ月代を迎えに行こうかと思っていると、母さんが。

育美
 「悠気、母さん今日は帰り遅くなるかも」

悠気
 「? オッケー。晩ご飯は先に食べて大丈夫だよね?」

育美
 「ええ、みなもちゃんと仲良くね?」

みなも
 「畏まりました」

俺はふといつもと母さんの様子が違う気がしたから、違和感を覚えたが気にせず鞄を持って家を出る。

悠気
 「行ってきます!」

母さんも結構訳ありだから、俺にも言えない事だってあるんだろう。
親父からして謎だし、触れないのが家庭のマナーだろう。
そうして家を出ると、玄関で待っていたのは月代だ。


 「おはよう♪」

悠気
 「ああ、おはよう」

月代は今日も上機嫌だ。
脳天気というか、毎日を楽しんでいる。
だが、それが微笑ましくも思えるのはなんでだろうな?
俺達は横に並んで、いつものように通学を始めた。



***



育美
 (超巨大なゲート……一体この世界に何が?)

私はある方に会うため、小さな公園で待ち合わせをしていた。
だが、最初に現れたのはあの方ではなかった。


 「アンタ、あのゲートは何? アンタが犯人な訳?」

いきなり私を疑いだす、勝ち気な少女の名は常葉永遠(ときわとわ)。
ディアルガのPKMで、ある意味私の娘とも言える少女だ。
伝説のポケモン故か容姿は過去から殆ど変わっていない。
青い髪を腰まで真っ直ぐ伸ばして、胸元にブルーダイヤが埋め込まれており、見た目だけなら身長もあり巨乳なのに、いまだ子供っぽさの抜けない子だ。

育美
 「いきなり私を疑うことから始めるとは感心しませんな。全く最近の元神はやんちゃで困る」

永遠
 「私をそういう風に産んだのはアンタでしょうが!?」

永遠は基本的に私を信用してない。
まぁ信用されないのは過去の事件の性なんだけど、永遠もいい加減大人になって欲しいものだわ。


 「久し振りね育美」

そこへ、小さな少女が現れた。
身長は150センチ程、茶髪でピンと立った大きな耳、筆のような大きな尻尾を持ち、見た目に似合わない大きな胸を持った、中学生位の女性。
これでも一児の母であり、そして元神々の王だ。
常葉茜、今でも絶大な力をその身に秘めた神そのものだ。

育美
 「お久しぶりです、その御身も麗しゅう御座いますね」

私は半ば無意識に片膝を立てて、敬服する。
茜様は軽く手を振ると、私は顔を上げた。


 「貴方も律儀ね……、もう私は普通の女よ?」

育美
 「それを言えば私もです」

私は顔を上げると、茜様は微笑を浮かべた。
それになんだか面白くなさそうなのは永遠だけだった。

育美
 「では茜様、あのゲートについてはどうお考えで?」

私は単刀直入に今世界を騒がせる問題について聞いた。
茜様は一瞬不安そうに顔を曇らせたが、直ぐに毅然とした態度で解答を見せる。


 「恐らく混沌……それも未曾有の」

育美
 「やはり? それではお覚悟は?」


 「心配要らない……必要ならばするけれど、きっと大丈夫よ」

永遠
 「そんな楽観的な」

楽観的、確かに昼行灯な解答だ。
とはいえ、今でもこの方の言は絶対だと言える。
茜様なりに考えた末に、混沌を受け入れると言うのだろう。

育美
 「畏まりました、それではゲートに関しては、それぞれ自由に」


 「ん、何が現れるのかな?」

茜様はもうのんびりした事を言っている。
永遠もあきれ顔だが、かつてはピーピー喧しく泣いていた子供が、ここまでどっしり構えて落ち着いて居られるようになったのだ。
私は嬉しく思うと同時に、やっぱりこの世界を選んで良かったと思う。

永遠
 「茜様ってば、何かが起きてからじゃ遅いんですよ?」

育美
 「永遠も大人の余裕を身につけなさい、とりあえず早く結婚して孫を見せてください」

永遠
 「五月蝿いわっ! 今更親の顔すんな!」

永遠はそう言うと、時間を操って消えた。
彼女なりに考える事はあるのだろう。
元10柱で結婚した者も幾らかいる。
行き遅れとは言わないが、彼女なりに焦っているのだろう。


 「永遠は貴女の悪い子の面ばかりが出ちゃったね」

育美
 「お恥ずかしい限りです、大人になれば良い女になると確信しているのですが」

神堕ちし15年も経って未だに子供なのは……少し哀しいものだ。


 「それで……貴女はどうしたいの?」

育美
 「……私は大切な物を奪うのならば、戦います。たとえ混沌が相手でも」

そう、もしその時が来るならば私は最強の尖兵にもなろう。
完璧の二つ名の元神、それが私だから。



***



瑞香
 「ゲートでしょ? おっかないわねぇ」

学校でも話題はゲートの事で一杯だ。
実際何が現れるのか分からん以上、思ったより皆不安なんだと分かる。
陰謀論者は某国の実験だの、遅れてやってきたアンゴルモアの王だなんて言っている。
実際怪獣にしろ隕石にしろ、そんな物が現れたら東京は壊滅だ。
早速疎開運動だの、行われているらしいがウチはその点まだ平和だった。


 「よく分からないけど、そんな大きいPKMが現れるの?」

幸太郎
 「PKMが現れるゲートは通常2メートルから4メートルだ、キロ単位なんて初耳だからな……」

悠気
 「つか、もうこの多元社会において、何が現れても然るべき対処をするしかないだろう?」

未だに人類はゲートを掌握出来ていない。
世界に現れる歪み、それが時にこの世界の物を吸い込み、時に異世界から放出する。
それを制御できない限り、人類は永遠にゲートに躍らされるだろう。

幸太郎
 「違いない、とはいえ巨人のような物が現れたとき、人類に対処出来るのか……」

コウタも瑞香もやはり不安なようだ。
ある意味で当然で、だが俺には何故かそう言う不安が生まれない。
一体何故なのか? 俺は恐怖が麻痺しているのだろうか?
ただこれから起きる事象をあるがままに受け入れようとしている。


 「はーい! ガキ共ー! ホームルーム始めるわよー!」

幸太郎
 「ふ、まずは学生の本分を済ませよう」

あーだこうだ言っても、俺達は学生だ。
結局世界がどうこう言っても学校は休みにはならないし、普段通りなんだよな。

悠気
 (……ま、どの道来たるべき物を受け入れるしかないんだろうな)



***



ワイワイガヤガヤ!

東京では件のゲート出現が確実視されており、誰もが空を見上げていた。
ゲートの出現はもはや避けられない事実。
だが、その類例のない巨大さに人々は畏怖することしか出来ない。
そして、そんな人混みの中、俯いて歩くPKMがいた。
場違いな漆黒の民族服を着たPKMは髪が真紅で先端が黒い。
あまり身なりが綺麗とは言えず、そのPKMは髪がボサボサだ。
尻尾は長く真っ黒で、此方も毛深いが光沢はあった。
身長は160程か、色っぽくも見える女性で、ゾロアークのPKMだった。

ゾロアーク
 「……五月蝿い町」


 『東京だからな、1000万人が行き交う大都市だぜ?』

ゾロアークの女性は独り言のように呟くと、彼女の脳に声が帰ってきた。
声を送ったのは通称『魔神』と呼ばれるポケモンだ。
彼女は魔神の力を借りて、ある物を求めてこの世界にやってきたのだ。

魔神
 『アタシは訳あってそっちにはいけない、特異点。やれるな?』

ゾロアーク
 「……分かってる」

特異点、そう呼ばれたゾロアークは確かな足取りで目的の場所に向かう。



***



キーンコーンカーンコーン。


 「教えて杏せんせ……じゃなかった!?」


 「月代ちゃん! 一般公開版にはおまけはないのよ!」

終業時刻、今日も平和に授業は終わった。
なんか月代と御影先生が漫才を始めたが、俺は突っ込まず帰宅準備を進める。

瑞香
 「あー、部活怠ーい」

悠気
 「さっさと行け」

瑞香
 「そこはサボろうぜって誘うとこでしょう?」

悠気
 「……さっさと行け」

瑞香
 「2回言われた……チェ!」

瑞香は項垂れると、用意を進めた。
俺はさっさと荷物を纏めると帰宅する。



***



悠気
 「……」

学校を一人で出て、通学路を歩いていると俺は頻りに後ろを気にしていた。
なんだか視線を感じるのだ。

悠気
 (誰もいない……よなぁ?)

俺は足を止めて後ろを振り返るが、しかしそこには誰もいない。
通学路は人も少なく、必然的にいれば目立つはずだ。

悠気
 (……なんか、嫌な雰囲気だよなぁ)

視線は方角は分からないが、何故かを感じる。
俺はその妙な視線から逃げるように足を速めた。
最初は早歩きで、次第に走り出し、気が付いたら全力で走っていた。

みなも
 「! ユウさま!? 如何なさいました!?」

俺が家の前まで走り込むと、庭の掃除をしていたみなもさんが大慌てで駆け寄ってくる。
俺は家に辿り着くと、激しく息をして止まった。

悠気
 「……なんか分からないけど、付けられていた感じがしたんだ」

みなも
 「付けられた?」

みなもさんはそれを聞くと目くじらを立て、側道に顔を出す。
そこには車は通れど、怪しい影はない。

みなも
 「兎に角家に入りましょう!」

みなもさんは掃除道具を素早く片づけると、そう言って家へと押し込む。
家の中まで入ると、流石に視線は感じなかった。

悠気
 「はぁ……」

俺は溜息を吐いた。
みなもさんはダイニングに向かうと、手招きした。

みなも
 「お茶をどうぞ」

悠気
 「ありがとう、みなもさん」

俺はテーブルに腰掛け、みなもさんに注いで貰ったお茶を頂く。
一先ず息をつくと、ようやく落ち着くことが出来た。

みなも
 「それにしてもストーカーでしょうか?」

悠気
 「……俺、頭おかしいと思うかもしれないけど、何もない見えない空間から見られた気がするんだよな」

みなも
 「何もない空間に? 相手は透明……それとも別の空間から覗かれた?」

こんな馬鹿な話なのにみなもさんは真剣に考えてくれているらしい。

みなも
 「透明な相手ならカクレオンでしょうか?」

悠気
 「一体なんの理由でストーキングされなきゃいけないんだよ」

俺は想像するとゲンナリする。
透明になれるPKMは存在する。
ただ、それならそれでストーキングする理由があるはずだ。

みなも
 「いざとなればユウさまは私が身を挺してでも御守りします!」

悠気
 「うん、まぁそうならない事を祈ってるよ」

俺はお茶を飲み干すと、荷物を抱えて自室に戻る。
とりあえず着替えないとな。

悠気
 (それにしても世間ではデカいゲートで話題なのに、こっちはストーカーかよ)

俺は自室に入ると、直ぐに制服を脱ぎ始めた。
一様直ぐ目の前の家の部屋を見るが、向こうの家主はまだ帰ってきてないようだ。
相変わらず月代は無神経にカーテンも掛けずに留守にしており、プライバシーの欠片もない。
もしかしたら鍵も掛けてないんじゃないだろうか?

悠気
 (つか、月代の奴、大丈夫かな?)

俺は私服に着替え終えると、適当に腰掛ける。
そのまま俺は適当に時間を潰して過ごした。



***



夜……都市部の空には星は瞬かない。
しかし空には三日月が大地を照らしていた。

ゾロアーク
 「……綺麗」

ゾロアークは自分の世界とはあまりに違いすぎる夜に驚いていた。
既に故国は光を奪われた、それ故にこの国は夜にも関わらず明るく輝いていた。
豊かだ、真っ先に浮かんだのはそれだった。

ゾロアーク
 「さて、どうやって接触しようか」

彼女はある男子学生に接触する必要がある。
その名は若葉悠気、魔神曰く雫に関係するらしい。
その魔神だが、今は連絡がつかない。
寝ているのか、忙しいのか不明だ。

ゾロアーク
 「特異点……」

魔神が言っていたが、私は特異点という物になったらしい。
特異点は二度と元の世界には帰れないと言うし、そうなると国に帰るのは不可能か。

ゾロアーク
 「少し寒いかな……」

今この国は冬に向かっているらしく、夜は冷えてきた。
私はイリュージョンで不自然ではない格好にはなれるが、あくまでも異邦人だ。
しかも通常の方法でこの世界に来た訳ではない。
魔神によって導かれたのだ。

ゾロアーク
 「とりあえず寝床を探そうかな? ん?」

私はふと、ある一団に注目してしまう。

アルカ
 「ズラ〜! 2件目行こうよ〜!」


 「誰がズラだ! 俺は嫁が心配するからダメ!」

関西弁の男
 「か〜! 嫁嫁! 羨ましいのう!」

サトー
 「私は一足先に失礼します」

ゾロアーク
 (あの人……お兄ちゃんに似ている気がする)

その一団は7名程で、個性豊かなポケモン達だった。
一番偉そうなおじさんにだらしなく酔っ払って肩をかけるポリゴン娘、パリッとしたスーツを着こなすメタグロス娘、更に後ろには優しそうに微笑んで見守るラプラス娘、豪快に笑ったゴーリキー男に肩を貸す目付きの鋭いハブネーク娘。
他に数名おそらく人間という種族が含まれていた。
その中でも真ん中を歩くおじさんは、お兄ちゃんと似た……いや、同じ雰囲気を持っていた。

ゾロアーク
 「……っ」

声をかけようか、そう思ったが踏みとどまる。
おそらくお酒を嗜んだ後で、楽しい余興の時間だろう。
人違いの可能性もあるし、何より自分が踏み込んではいけないと思えた。


 「誰かー、アルカを引き取ってくれねぇか?」

関西弁の男
 「しゃーないな! 俺が送ったるわ!」

アルカ
 「葛〜! あたしに変な事したら、アンタのエッチな画像ファイルばらまくからなぁ〜!」

ラプラス娘
 「紅恋さん……?」


 「ちょ、ご、誤解や栞那(カンナ)はん! 俺は健全やで!?」

アルカ
 「ありえね〜! 童貞が一つも無い筈がねぇ〜!」


 「黙れ酔っ払い! ああもう〜、やぶ蛇や〜……」


 「……! き、君……!」

突然真ん中を歩いていたおじさんが私の方を振り返ると、足を止めた。


 「君、もしかしてゾロアーク?」

ゾロアーク
 「……そうです」

おじさんは私を見ると涙ぐんでいる。
私はどうしていいか分からず、目を逸らした。


 「昔知り合いにゾロアがいてね? 似ていると思ったんだよ」

サトー
 「社長? 如何いたしました?」


 「! ああ、ごめん! 私は常葉茂、しがない会社の社長でね」

ゾロアーク
 「っ!?」

ときわ、しげる……?
私はその名前を忘れる訳がなかった。
それじゃ……本当にこの人は?

アルカ
 「ズラー! 奥さんいるのにナンパしていいんすかー!?」


 「な、ナンパではない! あと茜には内緒な!?」

おじさん……いや、お兄ちゃんはそう言うと慌てて一団に戻っていく。
私は胸を抑えると、そのまま背中を向けた。
私にとってお兄ちゃんとの別れはたった2年だった。
それでもお兄ちゃんにとっては10年以上の開きがあったのかも知れない。
何より……今更だった。

ゾロアーク
 (……やっぱり残酷ね、出会わなければ良かった……)

お兄ちゃんは私を覚えていたみたい。
もし叶うなら、一杯甘えたかった。
でも時は残酷で、それはもう不可能なんだろう。
何より私は特異点になってしまった以上、目的を終えればこの世界にはいられないだろう。
だから……気付かなければ良かった。



***



フーパ
 「災厄……! 絶対に奴だけは許さねぇ」

私からある物を奪った奴は、今や文字通り神そのものだろう。
私は奴を倒すために暗躍を続けた。
同じように災厄に奪われたゾロアークを文字通り利用して、そして更に多くを利用しようとしている。
だが、状況は最悪だ。
災厄は次に目を付けたのがよりにも寄って大変な世界だった。

災厄の目的は分からない。
だが分かりたくもない。
奴は侵略者に過ぎない。
私は急ぐ必要があった。
ゲートを越えて、ある人物のいる世界に辿り着くと、そこは荒廃した街だった。
大凡人など一人もいない。
ただ終わった世界……。



突ポ娘USP #1 完

#2に続く。


KaZuKiNa ( 2021/05/29(土) 19:13 )