突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


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突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
第20話 文化祭開催



文化祭が始まった。
中高一貫の我が校において、最大のイベントになる文化祭には多くの一般来場者も詰めかけ、今年も地元のテレビ局が報道にやってきている。

悠気
 「よし、パンケーキセット、8番テーブルに!」

そんな中、俺は調理実習室でひたすらスイーツ作りに格闘していた。

女生徒A
 「はわわ〜、若葉先輩の手さばき見た!? まるでパティシエよ!?」

女生徒B
 「料理部に欲しい人材よね……!」

調理実習室は当然料理部が使っているが、今回は俺がメインで実技を見せることを条件にここが使えるようになった。
料理部は料理部で、他の飲食系とも提携しており、さっきからてんてこ舞いだった。

悠気
 「いいかお前ら、料理人に一番必要なのは何か? それは気遣いだ。最も怖れないといけないのは異物混入! くれぐれも忘れるなよ!?」

女生徒C
 「わかりましたっ!」



***



瑞香
 「はーい♪ お帰りなさいませご主人様♪」


 「幸太郎〜、ちょっとお客を捌ききれそうにないよ〜?」

私はクラスの出し物であるメイドに扮して接客を行うも、客入りは予想以上だった。
キッチンを調理実習室に出来た事で、教室一杯が客席に出来たが、それでも教室の外には長者の列が出来ている。

幸太郎
 「ち、増援は見込めん! 昼さえ過ぎれば少し落ち着く筈だ!」


 「それ、後3時間はこの調子って事!?」

お客
 「あの〜、注文〜!」


 「あっ、畏まりました〜♪ ご主人様、ご注文の品をお伺いします♪」

私はなるだけ練習の通り笑顔を作るが、何時間も続けていたら表情が釣りそうだ。
こういう時、瑞香って凄いよね。
さっきから下手な子の2倍は働いている気がする。
もしかして接客のアルバイト経験でもあるのかな?

お客
 「このコーヒーセットを」


 「コーヒーセットですね! 畏まりましたご主人様!」

注文を受けると、教壇のタブレット端末にオーダーを入力すると、オーダーは調理実習室に届く。
完成品は2階の調理実習室からここまでウェイターが何往復もしており、皆僅か一時間で疲労の色を見せていた。

瑞香
 「宵大丈夫? 疲れてない?」


 「まだ大丈夫、耐久力には自信あるから」

仕事の合間の隙を見て瑞香が寄ってくると、私を心配してくれた。
私はなるべく笑顔で大丈夫と言うが、何時まで持つかは本当に分からない。
それより瑞香は平気なんだろうか?


 「瑞香こそ、馴れてるよね?」

瑞香
 「まぁね、喫茶店で少しだけアルバイトした事あったし、後は適性でしょ?」

なるほど、瑞香はそもそも職業適性があるということみたい。
瑞香の凄いところってこういう器用さだと思う。
瑞香は明るいし、人当たりもそんなに悪くない。
何より活動的で、なんでも卒無く熟している。

幸太郎
 「そこ! 余裕があるならウェイターを手伝ってやれ!」


 「あっ! はーい!」

幸太郎は総支配人のように教室を見渡し、声を張り上げる。
体育会系特有の気合の入り方で、お客さんビックリしないかな?

瑞香
 「肉体労働だから大変だけど、多分接客よりマシでしょ?」


 「うん! 行ってくるね!」

現在絶賛注文待ちが大量にいる状況。
と言うのも、絶対的にウェイターが足りていない。
何故ならクラスの半分は何らかの部活動で駆り出されているのだ。
今頃琴音ちゃんは体育館で吹奏楽部のリハーサルをしている頃かな?


 「月代! ウエイターの加勢に参ります!」

私はそう言うと教室を飛び出した。
教室の通路も入場制限されてなお、生徒と一般客でごった返している。
調理実習室は別の棟にあり、一度渡り廊下を抜けなければならない。
私は色んな人に妙な目で見られながらも、その脇を越えて調理室に向かうのだった。


 「おやメイド?」


 「?」

渡り廊下まで来ると大分人は捌けていた。
そんなある程度快適性の確保できた渡り廊下で妙な目線を感じて振り返った。


 「うん、巨乳度は悪くないわね、それでいてある程度無抵抗そう」

なんだか凄く不穏な言葉だった。
それを呟いたのは喪服のような真っ黒い洋服を袖まで通した少し背の低めの女性だった。
全身を真っ黒に染め上げているため、右手の白い腕輪が妙に目立つ。
瞳が青い焔のように揺らめくPKMだった。


 「40点ね、早く坊ちゃんの元に向かいましょう」

女性は私に一瞥(視姦?)するとスタスタと歩き去った。
私はなんとなくその女性の背中を追うが、何か不穏な気配を覚える。


 「早く悠気の所に行こう!」

私はなるべく駆け足で調理室に向かう。
調理室周辺は人混みも少なく、私は直ぐに駆け込んだ。

悠気
 「よし、コーヒーセットの準備完了、次はパフェか」

調理実習室では数名がてんてこ舞いに働いていた。
どこ見ても忙しさは変わらないらしく、悠気もさっきからひっきりなしに指示を出している。


 「悠気、このコーヒーセットは運んで良いのよね?」

悠気
 「ん? 月代か? お前……」


 「?」

悠気は私を見ると急に目を逸らした。
気のせいか少しだけ顔も紅い。
昨日から悠気の様子がおかしい。

悠気
 「なんでもない、コーヒーセット10番テーブル! 落とすなよ?」


 「はーい!」

私はお盆を受け取ると、踵を返す。
これ以上悠気の邪魔はしたくないし、悠気の様子がおかしいのは事実だけど、それを追及する権利は私にはないように思える。



***



悠気
 (大丈夫、月代は大丈夫)

俺は突然メイド姿の月代が現れた事で、気が動転してしまった。
だが、今日の月代の姿は昨日のメイド服より幾分肌面積が抑えられていた。
昨日のような気分にはならない。

柚香
 「悠気さん、大丈夫ですか?」

悠気
 「ああ、心配しなくても大丈夫だよユズちゃん」

俺の動転っぷりはユズちゃんでも分かるレベルだったらしい。
そうか、結構そういうのは顔に出てくるんだな。
恥ずかしい話だが、俺もメンタルは高校生。
一度意識してしまった相手の事をすんなり受け入れられる程大人じゃない。

柚香
 「そう言えば、ゲーム研究会の発表って午後からですよね?」

悠気
 「ああ、14時から10分だけ図書室を使わせて貰えるんだったな」

萌衣先輩は昨日マスターデータを持って家へと帰った。
300枚前後ダビングして、配布する予定なのだ。

悠気
 「なんとか発表までには時間を作りたいな」

柚香
 「そうですね、私も参加しましたし」

ユズちゃんは特に脚本を任せただけに、人一倍気にしているだろう。
一応サウンドノベルというジャンル上、ユズちゃんの役割は大きい。
可能なら発表に立ち会いたいが、いつになったら時間が空くやら。



***




 「あ、お母さん〜♪」

学校は人で溢れかえっている。
それだけに目当ての人を見つけるとなると、困難を極めた。
そんな中私はあの特徴的な耳を発見し、直ぐに駆け寄った。
常葉茜、私のお母さんだった。


 「命、来ちゃった♪」

お母さんはとても無口だけど、ちょっとお茶目だ。
容姿は今でも中学生で通用するほど幼くて、私にとても似ている。
というかお父さん成分の遺伝がどの程度働いているのか疑問なレベルで似てるんだよね。
性格だけは、お母さんは物静かで、私は賑やか。
そんなお母さんも少しだけ口角を緩ませて、娘の晴れ舞台を喜んでくれているようだ。


 「お父さんは?」


 「お仕事、私だけ」

お父さんは会社の社長さんだから、きっと来られないだろう。
それが少し寂しいけど、でもとりあえずお母さんを案内しないと。


 「高校生ってどういうことをするの?」

お母さんは第一世代PKMだから、学校に通うことなく私を身籠もった。
お陰で学校という物を良く知らず、そういう所にお嬢様気質を感じてしまう。


 「文化祭って言っても学校によって様々だよ? 私のクラスなんてお化け屋敷だし」


 「お化け?」


 「そうそう〜、お化けっていうのはこうやってナデナデ、揉み揉みしちゃうんですよ〜♪」

お母さんが首を傾げたその瞬間、突然どこからともなくお母さんの胸を揉み拉く女性が現れた!
しかしその瞬間、お母さんの温和な笑みが一瞬失せる。
大胆にたわわな胸を歪ませるその手首を掴むと、一瞬で捻った。


 「ぬぐぁ〜!? 久し振りでも容赦なし!?」

手首を捻られ、地面でのたうち回る女性は母さんや私にとっては既知の相手だった。
これが見ず知らずの痴漢だったら私は悲鳴を上げていただろう。
だが、この相手なら哀れみの目で見るだけだった。


 「久し振りね、セローラ」

セローラ
 「な、何事もなかったかのように話し出す茜ちゃんも素敵……100点」

セローラという女性はランプラーのPKMだ。
身長は少し低いが、それでもお母さんより大きく、髪の毛が自然と上にカールした特徴的な髪型をして、目はプロパンガスの炎のように燃えていた。
セローラさんはお母さんとは私が生まれる前から付き合いがあるらしく、よくこうやってセクハラをしていた。
だけど、私達が引っ越してから、そんなにセローラさんと顔を会わす機会はなくなっていた。

セローラ
 「命ちゃんもお母さんに似てきたね〜」


 「セクハラはメッ! ですよ?」

セローラさんは巨乳少女となると、見境なくなる所がある。
私もセクハラされたことがあるし、いつか警察に捕まるんじゃないか不安になってくる。


 「セローラ、会わないうちに気性戻った?」

セローラ
 「いや〜、坊ちゃんも独り立ちしましたし、暇を持て余してますからね〜」

セローラはあるご家庭で家政婦をしている正真正銘のメイドだった。
今でこそメイド服ではないが、喪服のように真っ黒な洋服はメイド服の下の部分だと分かる。
あの特徴的な白いエプロンを着ければ、恐らく直ぐにでもメイドの姿に戻るだろう。

セローラ
 「それにしても茜ちゃん今も中学生の潤いボディで羨ましいですね〜」


「セローラも、まだまだ若いと思うけど?」

お母さんの言う通りセローラさんの見た目は20代前半と言っていいレベルだ。
それでも老いを気にしているのかセローラさんは頬に手をつくと。

セローラ
 「いや〜、こう見えても筋肉は衰えてくるし、老いを感じるわけですよ?」


 「私もちょっと太ったかも……」


 (第一世代PKMってずるいよね〜、容姿が恵まれすぎじゃん)

第一世代PKMでも程度の差はあるけれど、老化しづらいって特徴がある。
お母さんなんか最たる例だけど、30代でも20代に思える人も多く、その点第二世代は人間の血が濃くなってるから、多少異なるみたい。
なんにせよ、子供から見ても贅沢な悩みだった。

セローラ
 「あ、それでは皆さん! 私(わたくし)目的の相手を見つけたので吶喊してきます!」

私達が居たのは1階だ。
だがセローラさんに高さは関係がない。
ゴーストタイプの特有の移動方法、通称ゴーストステップで2階へと昇って行く。


 「セローラ……制御装置切ってるわね」


 「セローラさんらしいけど、本当に警察に捕まらないかな?」

いや、寧ろ捕まった方が良いのかな?
あれはゲロを吐いて泣いて詫びさせないと、理解しないタイプだもんね。



***



幸太郎
 「っ!? 今……悪寒が?」

俺は接客を行いながら、支配人のようにクラスを見渡していた。
誰かがオーバーワークになっていないか、気に掛けていると、自分の身に何か悪いことが起きる気がした。

幸太郎
 「まさか……っ!?」

俺は悪寒の正体を見つけて狼狽した。
それは青い炎の瞳だった。
こちらを見て、ニヘラと笑っている。
ゴーストタイプ特有の不気味な微笑み。
彼女が来てしまったのか……!

幸太郎
 「いらっしゃいませお客様、ご注文は如何致しましょう?」

俺は覚悟を決めて、その女性の前にやってくる。
女性の名前はセローラ、我が家でメイドとして働いているPKMだった。

セローラ
 「いやいや〜、坊ちゃん。メイドフェチとはいえメイド喫茶とは思い切りましたね〜」

幸太郎
 「〜〜〜!」

俺はこの人には一生頭が上がらない。
セローラさんは、ある意味俺の第二の母と呼べる女性だった。
俺が赤子の頃から俺の傍にいて、俺を育ててくれたのはセローラさんだ。
だが、セローラさんは変態だ。
それを自覚したのは10歳の頃だ。
当時まだセローラさんが変態なんて認識はなくて、他人との違いに気付いた時、俺はこの人が苦手になった。

セローラ
 「うふふ〜、嬉しいですよ〜? メイドに興味を持ってるって事ですもんね?」

幸太郎
 「お、おおお、俺は……!」

俺はそれを否定しようとした。
認めれば、セローラさんはいとも容易く暴走するだろう。
この人の気性は一度放たれるとそう簡単には止まらない。
だけど、セローラさんは俺の唇に人差し指を当てると、ニコリと微笑んだ。

セローラ
 「ふふ、今は見逃してあげます♪ とりあえずこのショートケーキを下さいな」

幸太郎
 (自制、してくれた?)

セローラさんは俺の倍近く生きている大人だ。
こうやって時折大人の態度を見せて、俺の心を掴んでしまう。

幸太郎
 「畏まりました。ショートケーキですね」

俺は直ぐに教壇に置いてあるタブレット端末にオーダーを入力した。
そして教壇からクラスを見渡しても、今や俺はセローラさんに釘付けだった。

幸太郎
 (……俺がメイドにフェチなのって、セローラさんの性ですよ、セローラさんが好きだから俺は……)

瑞香
 「こーら! どうしたしんみりしやがって!」

俺がしんみりしていると、突然瑞香が頭をメニュー表で叩いてきた。
俺はビックリするも、瑞香は怒り顔で。

瑞香
 「このクソ忙しい時に、アンタが駄目になったらここ崩壊するわよ?」

幸太郎
 「! そう、だな」

俺は瑞香に叱責されると、自分の立場を思い出す。
今も慣れない接客に皆四苦ハ苦する中、俺が駄目になってどうする!
俺は自分に気合を入れ直すと、店内に檄を飛ばした。

幸太郎
 「皆、もう少しで休憩だ、そこまで頑張ってくれ!」

瑞香
 「さってと、それじゃもう少し頑張りましょうか!」

店内の盛況っぷりも時期に収まるだろう。
だがそれまで誰一人とて、倒れさせる訳にはいかない。
俺は責任を持って、この場を収めている。
皆無事この文化祭を終えることが俺の望みだ。



『突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語』


第20話 文化祭開催 完

第21話に続く。


KaZuKiNa ( 2021/05/21(金) 19:20 )