突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語




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突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
第2話 月代宵との付き合い方



最悪だ。
隣に引っ越して来たのは、俺のことを妙に敵視する月代宵。
俺はこれから毎日あの女と顔を合わさないといけないのか……。


 「ねぇー、ちょっと〜」

そもそも、パンツパンツ五月蠅えよタコ。
あの角度で見えるわけないし、それより羽の方に目が行くわ。


 「おーい!」

最初ちょっと可愛いかなって思った俺が馬鹿だった。
兎に角今は如何にしてアイツを無に帰すか……。

カコン!

悠気
 「ぬ!? 貴様何した……ておい!?」

俺は今2階の自室にいる。
そしてさっきから五月蝿い月代も俺の向かいに自室があるらしく、俺はなるべく無視したが、なにかが窓を叩いたのを聞いて振り返った。
すると月代は窓から乗り出して、手に尖った何かを持って投げつけようとしていた。

悠気
 「貴様! それはなんだ!?」


 「ドライバー、+の!」

悠気
 「窓ガラス割れるから止めろー!?」

俺は全力で静止すると、窓の下を見た。
窓に当たったのは空き缶のようで、凹んだ空き缶が落ちていた。

悠気
 「お前な……人の個人時間を奪ってなにが目的なんだ!?」


 「部屋変えて」

悠気
 「は?」


 「部屋変えてって言ってるの! 気になって仕方ないのよ!?」

悠気
 (ぼ、暴君か……!?)

瑞香も暴君であるが、コイツはベクトルの違う暴君だ……!
俺は怒りを抑え、鎮めると無言でカーテンを掛けた。
部屋の中が暗くなるが、あの馬鹿と関わるよりマシだ。

悠気
 「はぁ……掃除でもしよう」

今日は母さんの帰りは夕方になる。
その間に俺は洗濯を終わらせて、ついでに掃除もしておくことにする。
母さんはしばしば家にはいない事がある。
仕事の時もあるし、たまに親父のところにも行っているみたいで2〜3日家を空ける事もあった。

その性で高校生としては、少し独り立ちしていると思っている。
小腹が空いたら一品作る位出来るし、家事は覚えておいて損はしない。
一方で、俺は一応隣の事は考えている。
関係最悪で何年も付き合い続けるのは困るし、向こうの親御さんと挨拶もまだ出来ていない。

悠気
 「そう言えば、母さん。隣の引っ越し知ってたかな?」

俺は初耳だった。
もしかしたら聞き逃していたのかも知れないが。

悠気
 (はぁ、改善、改善……!)

俺のモットーは改善すること。
とりあえず月代との関係は他人程度までは改善したい。
掃除も改善だ、掃除してないところを重点的に行って家全体を綺麗にしていく。

悠気
 「あ……たく」

俺はふと、家の外を思い出した。
仕方なく玄関を出ると、俺の部屋の下に向かう。
割と俺の家と月代の家の壁は近く、その間は狭い。
俺はなんとか窓の下まで辿り着くと空き缶を回収した。

悠気
 (なんだろねぇ……普通なら美少女の飲んだ缶だぜ? こんなに有り難くないなんて)

俺は透明なビニール袋に空き缶を入れるとアルミリサイクルの方に回す。
脱プラスチックも進んで10年、まだ不完全だが国内リサイクル率も上がり、プラスチック製品も減ってきた。
海洋汚染は依然深刻だが、毒タイプの幾つかのPKMチームが、浄化に当たっているなんて情報もあったし、世界は一歩づつ進んでいる。
俺にとっては当たり前の10年も、20年前の人にとっては当たり前じゃないのかな。

悠気
 「夕日……風呂場の掃除急ぐか」

俺は夕日から時刻を計算して、急いで風呂場に向かうのだった。



***



育美
 「そう言えばお隣の月代さんとはもうご挨拶した?」

悠気
 「……正式にはまだ」

育美
 「宵ちゃん、悠気とも同い年だし、気が合うと思うな〜♪」

悠気
 (ありえん……笑)

仲良くなるどころか険悪からスタートですよ?
母さんとしては、友達以上を期待しているのかも知れないが、俺は無理だ。
一学友の一人としては見れるが、それ以上はお互い望まないだろう。

悠気
 「母さん、引っ越しは聞いてた?」

育美
 「聞いていたというか、知り合いね」

悠気
 「は?」

俺は予想外の言葉に素っ頓狂な声を出してしまう。
母さんは「言ってなかった?」と言うが、聞いた覚えがありません。

育美
 「少し事情があってね、宵ちゃんだけお隣に来て貰ったの」

悠気
 「じゃあ月代は母さんの事を知ってるの?」

育美
 「まぁね! 母さんこう見えても顔広いのよ?」

まぁ母さんのミステリアスさは俺も周知だ。
自称40歳、見た目年齢は未だに20前半。
PKMなのか人間なのか、母さんは人間だと言っているし、俺も種族判定では陰性だったから間違いないと思うが、どうにも人間関係は謎だらけだ。

悠気
 (母さん結婚前の写真とか持ってないし、過去に何やってたのかさっぱり分からないんだよな)

ただこの辺りで若葉育美と言えば有名だ。
決して裕福ではないが、住民の信頼は厚く、母さんに感謝する人は多い。

悠気
 (月代……母さんの紹介で来たのか)

ということは、あの一軒家に今はアイツ一人なんだな。
俺はふとその時、月代って寂しくないか考えてしまう。
PKMと言っても第二世代なら人間となんら変わらない。
俺は昔は泣き虫で一人だと家が広くて怖かった。
今じゃ気にしなくなったが、月代は一人でいるんだよな……。

悠気
 (て! アイツの心配なぞ無駄だ! どうせ神経も太くて、図太いんだろう! 一番メジャーな性格じゃないか!)

等とかつてリリースしていたゲームの事を思い出す。
ポケットモンスター、PKMはその略であり、種族を現す単語だ。
PKMの出現以後、モンスター物の見方は変わり、気が付いたらポケモンは終焉を迎えていた。
母さんが昔のポケモンを遊んでいた頃、俺も初めて触れたのはポケットモンスターサファイアだった。
母さん曰く誕生前のゲームだからね、と言って何故かよく遊んでいた事を思い出す。
今では世界で100万人近くがPKMだと言われている時代、擬人化物も難しくなったし、それが時代の変化だった。

悠気
 「はぁ、馬鹿らし……風呂湧かしてくる」

俺はあんな女の事を考えるのが馬鹿らしくなり風呂場に向かった。



***




 「……」

私は灯りも付けず、自分の部屋で枕を抱いてベッドで横になっていた。
こうしていると、思い浮かぶのは寂しさ。
それでも眠ればきっと忘れることが出来る。
でも時々、窓の向こうを見た。
カーテンで閉められた彼の部屋。
今は電気がついていない、きっと家族と晩ご飯を食べてるのかな?


 (お腹空いたなぁ……)

私は枕をギュッと抱きしめて眠りについた。
自分の身体なのに僅かな光でも反射して光り輝く羽が眩しくて鬱陶しかった。
だけどクレセリアは月を象徴するポケモン。
この中途半端な人間とポケモンの間、それが少し嫌だった。



***



悠気
 「行ってきます」

俺は今日も遅れない程度に家を出ると、一応隣の家を見た。
もう出たのか、それとも出ていないのか……まぁ関係ないか。
俺は通学路を進んで行くと、途中で見知った顔を見つけた。

悠気
 「おはよう二人とも」

柚香
 「あ、おはようございます悠気さん!」

瑞香
 「ふあ……! おはよう〜」

最初に発見したのは山吹姉妹、今日は昨日と違い姉が眠そうだ。

悠気
 「寝坊でもしたのか?」

瑞香
 「昨日面白い番組があってね〜」

瑞香はそう言うと大きな欠伸をした。
そのズボラっぷりをユズちゃんは笑っていた。
姉と違い、私生活もしっかりしてそうで、大人しいし付き合いも良い。

悠気
 「うん、ユズちゃんが姉なら俺の学園生活はもっと平穏だったろうな……」

瑞香
 「うん? それって私じゃ不満ってこと?」

悠気
 「おっと……」

俺は慌てて口を塞ぐと、瑞香はム〜と頬を膨らませた。

柚香
 「そんな……私なんてお姉ちゃんには敵わないよ……」

そう言ってユズちゃんは鞄で顔を隠して、照れを隠した。
うんうん、姉もこれ位謙虚になって欲しいものだ。

瑞香
 「ん〜? アンタ妹が好みなの?」

柚香
 「ええ!? お姉ちゃん!?」

悠気
 「それは瑞香よりは妹だろ、第一暴力的じゃない」

瑞香
 「それは! 余計な! お世話よっ!」

瑞香はそう言うとハイキックを俺の背中に放ってきた。
俺はその衝撃で顔面から地面に激突する。

柚香
 「きゃあ!? 大丈夫ですか悠気さん!?」

悠気
 「だ、大丈夫……!」

ユズちゃんは慌てて屈み込んで俺の心配をしてくれた。
俺はよろよろと立ち上がると、更にユズちゃんが悲鳴を上げた。

柚香
 「きゃあ!? 血が出てます! 大変!」

ユズちゃんは懐からハンカチを取り出すと俺の口元を抑えてくれた。
血の味が滲み、唇を切ったようだ。

瑞香
 「な、なによ……大袈裟ねっ」

柚香
 「お姉ちゃん……! 謝って……!」

ユズちゃんは滅多に怒らない。
だけど本気で怒ると、その恐ろしさは瑞香の比ではない。
普段が菩薩なら、怒ると阿修羅かなにかだろう。

瑞香
 「ご、ごめん……」

柚香
 「ちゃんと相手の顔見て!」

瑞香
 「ごめんなさい!」

ユズちゃんの大きな怒鳴り声に瑞香もすんなり頭を降ろした。
俺はハンカチを口に当てて、立ち上がるとユズちゃんは何度も姉以上に謝った。

柚香
 「ごめんなさいごめんなさい! お姉ちゃんがいつもご迷惑を!」

幸太郎
 「相変わらずだな……お前ら」

悠気
 「おはようコウタ」

幸太郎
 「ああ、皆おはよう」

最後に幸太郎も合流すると俺たちは学校を目指す。
毎度毎度コントみたいな事をしていると本当に時間なくなるからな。

幸太郎
 「悠気、お前口どうした?」

悠気
 「名誉の負傷だ」

ユズちゃんは今も申し訳なさそうな顔をしていた。
一方姉の方も流石にやり過ぎたと思ったのか、いつもよりは大人しかった。

悠気
 「ユズちゃん、ハンカチだけど明日洗って返すから」

柚香
 「い、いえ! そんなそのまま返して頂けたら!」

幸太郎
 (ほう、そういうことか)

瑞香
 「なに? 百代?」

幸太郎
 「いや、なんでもない」

コウタはそう言うと逞しい腕を組んでうんうんと頷く。
時折「青春か」などと呟き、生暖かげに後ろからついてくるコウタを不気味に思いながら、俺たちは校門に辿り着いた。

萌衣
 「よっしゃー! 今日もセーフ!」

瑞香
 「あの先輩、相変わらず走ってるわね……」

悠気
 「名物みたいな物だろ」

学園名物走る先輩……ちとワードが弱いな。

柚香
 「それじゃ、私はここで」

ユズちゃんは下級生だから入口が違う。
俺たちはユズちゃんと別れて、2年生用の入口に向かう。
なんの奇妙か同じクラスの三人ということもあり、それなりに言葉も弾んで教室に入った。

幸太郎
 「それじゃあな」

瑞香
 「席替えって今日かしら?」

俺たちはそれぞれの席に座ると、後は始業を待つ。
だが、当然だがアイツは学校に現れた。

男子高生
 「おい、来たぞ……!」

悠気
 「……」


 「……ふん!」

月代は一人で教室に入ると、良くも悪くも注目を集める。
俺は月代を見ると、彼女は鼻を鳴らして俺の後ろを歩いた。
相変わらず向こうの印象は最悪だな。
俺も改善はしようと思うものの、これは時間が掛かりそうだ。


 「ガキ共ー! 出席取るわよー?」

始業のチャイムが鳴ると、出席簿を持って御影先生が教室に入った。
俺たちは静かに出席確認を待つと、御影先生は1時限前にやりたい事があるらしく、箱を用意していた。


 「さっさと席替えするから、皆この箱から一枚用紙を取って!」

悠気
 「席替えか……」

俺の希望はやはり出口最寄りかな。
運は良いとも悪いとも言えないが、まぁ最悪のパターンじゃなければどうでもいい。
皆がクジを引く中、御影先生は黒板に席の番号を書いていく。


 「全員引いた? それじゃ黒板に書いた番号の席の移動して!」

俺が引いたのは25番、一番窓際か。
第一希望の真逆とか、運は悪いらしい。


 「げ……」

俺は直ぐに席を移動すると、俺の隣に最も最悪の女がやってきた。


 「嘘? 番号間違えた!?」

悠気
 「席くらいガタガタ言うな」


 「うぅ……!」

何が不満なのかジト目で睨まれるが、俺は無視して窓の外を見た。
窓の外はグラウンドで、今はまだ誰もいなかった。


 「それじゃ、プリントを幾つか渡すから、後ろに回してね!」

授業初日、まだ暫くは忙しそうだ。
プリントは先頭から回されてくる、俺の前に座っていたのは大城だ。

琴音
 「若葉君、これから1年よろしくね」

悠気
 「ああ、こっちこそよろしく大城」

どうやら目の前にはこのクラスでは上位にまともな相手で安心する。
そのまま、先生は教室を出ると1時間目の授業は始まった。



***



授業自体は平凡だった。
まぁ二年目の最初にそんな躓くって程不真面目でもないからな。
そのまま授業が進むと12時はあっという間だった。



キーンコーンカーンコーン!

瑞香
 「お昼だー!」

悠気
 「さてと」

俺は鞄から弁当箱を出すと、それを机に広げる。
俺の家は基本的に弁当だ、母さんがいるときは母さんが、俺しかいないときは俺が作る。
こういうところで節約が活きたりする。

俺は隣を見ると、月代も弁当のようだった。
だが、月代が弁当箱を開くと、俺はギョッとした。

悠気
 「おま、日の丸弁当?」

月代の弁当箱は普通のステンレス製だろう。
量も不足しなさそうだが、内容はというと白御飯がびっしり詰まって申し訳なさそうに梅干しが一つ載っていた。
おかずは……ないらしい。


 「う、五月蝿いわねぇ! きょ、今日は用意する時間がなかっただけだもん!」

悠気
 (そう言えばコイツ……今一人で住んでるんだっけ)

ふと、俺はコイツのちょっと特殊な事情を思い出す。
母さんの話だと先にこの街に来たらしいが、そういえばどうして一緒じゃないんだろう。
俺はコイツが一人で生きていけるのか甚だ疑問である。

悠気
 「……卵焼きをやる」

俺はそう言うと、月代の弁当に卵焼きを乗せた。
月代はポカンとすると。


 「え? なんで? もしかして哀れんでるの!?」

悠気
 「研いだ白米は殊の外栄養面で心許ない、代表的にはかつて脚気に悩まされたんだぞ」

まして成長期の俺たち、ご飯だけで満足するのも厳しいだろう。
月代は俺の弁当を見て、自分の弁当を見る。
明らかに月代が無理をしているのは明白だった。


 「う……ありがとう……と言うとでも思ったか!?」

月代はそう言うと顔を真っ赤にして卵焼きを素早く口に運ぶ。
涙目になって、白米を描き込む姿は、寧ろ哀れすぎて何も言えない。

悠気
 「明日からちゃんと作れよ」

俺はそれ以降はなるべく無視して弁当を食べる。
月代もそれ以上は絡まず、パクパク小さな口で食べていた。



***



お昼休みも残り30分を切る頃には、大体の奴は食い終わっている。
その結果時間を持て余した女子たちが月代の辺りに集まり始めていた。

女子高生A
 「この羽綺麗ねぇ〜、触ってもいい?」


 「う、うん」

女子高生B
 「月代さん、前の学校ではどんな生活だったの?」


 「ま、前はその〜……」

女子高生C
 「若葉君とはどうなの!?」



幸太郎
 「良くも悪くも転校生とは人気者だな」

昼飯になると教室を出て行ったコウタは俺の席まで来ると、そう言って月代を見る。
普段の月代に比べると、女子たちの知的好奇心は凄まじくタジタジだ。
第一印象が強烈だった性で、昨日こそ敬遠されたが、今日はどこ吹く風の質問ラッシュだ。

悠気
 「1週間で飽きるだろう、今日びティーンはゴシップに躍らされる立場だ」

幸太郎
 「ふ、まるで月代の保護者のようだな」

悠気
 「は? コウタ、冗談は止めろ」

幸太郎
 「ふ、すまん」

コウタはそう言うと腕を組んで俯いた。
イケメンはどんなポーズをしても様になるが、まさかコウタがからかってくるとはな。
俺は月代から目を離し、窓の下を見る。
運動場ではチラホラボール遊びしている生徒なども見られた。

悠気
 (確かに月代に気をかけ過ぎたか……)

俺は心の中で月代宵のことを整理する。
月代はどういう訳か俺を敵視している。
だが一方で、特殊な環境下と普通の少女として苦しんでいる節もある。
今のように俺以外とは普通に接しているし、そもそも出会い方が不味かったのは確かだ。
とはいえ、改善は誓った。
ほぼ目の前の家の相手とギクシャクするのは俺が敵わん。

悠気
 (……母さんの関係者、だったな)

ふと、最後に一番重要なキーワードが引っかかる。
俺は母さんの事を知っているようで知らない。
一体月代とどういう関係なんだろう。

悠気
 (……家庭事情は踏み込むべきではないが)

幸太郎
 「そう言えば悠気、今年は部活は?」

悠気
 「面倒だ」

コウタはその言葉に溜息をついて頭を落とした。
コウタは柔道部のエースだ、去年は全国大会にまで昇りベスト4の実績を残している。
間違いなく県内トップクラスの実力者だ。
そんなコウタは俺を毎回柔道部に誘ってくるのだが、俺はのらりくらりと断り続けている。

幸太郎
 「悠気はセンスがある……鍛えれば中量級で活躍できると思うんだが」

悠気
 「むしろ瑞香を誘え、アイツなら格闘技世界チャンピオンを目指せるぞ」

幸太郎
 「おお、たしかに!」

そう言うとコウタもポンと手を叩いた。
アイツはどこかのジムに通っている訳でもないのに、格闘センスが出鱈目に高い。
もしかしたら父親がエルレイドなのも関係しているのかも知れないが、陸上部止めて柔道部に入れば大活躍だろう。

幸太郎
 「しかし……肝心の山吹は以前『嫌だ、男臭い』と言って断られたんだよな……」

悠気
 「ウチは柔道部は野郎多いからな……」

幸太郎
 「部長もメンタル弱いから、聞いたら嘆きモードに入ったよ……」

柔道部部長はナゲキというPKMである。
部長らしく実力はあるらしいが、兎に角メンタルが弱いことで有名だった。
それを皮肉られ、通称嘆きモードと言われる。

キーンコーンカーンコーン。

幸太郎
 「おっと、昼休憩終わり。今日から新入部員募集するから、良かったら見に来い!」

悠気
 「親友の頼みでもダメ」

昼休憩が終わると、続々と生徒たちが席に座る。
すると、おなじみ杏先生は笑顔で教室に入ってくる。


 「ガキ共ー、お前らの大好きな歴史の時間だぞー♪」

御影先生は歴史担当、はっきり言って第一世代が歴史を習熟するのは第二世代より遥かに厳しいと言われているが、それでもあの人はこの担当を選んだ。


 「えーと、2年生だと……教科書6ページ開いてー!」



***



本日も授業終了。
6限目が終わり、放課後を迎えるとそれぞれが動き出す。

瑞香
 「さーて、新入生募集か〜」

幸太郎
 「気合を入れねば」

各部活は本日から部員募集を開始する。
特に2年生は初めての後輩が出来るわけで、気合も入るだろう。
まぁ帰宅部の俺は関係ない訳で、荷物を纏めて教室を出る。

女子高生A
 「月代さん! 部活まだでしょ!? 科学部にこない!?」

女子高生B
 「お、オカルト部、部員募集してるから!」


 「あの、私は……!」

悠気
 「……」

俺はたまたま目に入った月代から目線を離すと、下駄箱を目指す。



***



校門前、体育系の部活が、部員募集を盛んにしている姿を横目に校門を潜ると体育系が何か響めいた。

男子高生A
 「来たぞ! 常葉だ!」

悠気
 「……熱が籠もってるな」

アレだと新入生も気圧されるだろうに。
俺はカード型情報端末を取り出すと、メールを確認する。
IC分野の発展は著しい、2000年代は精々数メガの情報量しか扱えなかったガラケーは、スマートフォンに切り替わり、今日では更に進化していた。
伸縮する高圧縮型情報端末、スマートフォンを上回る性能を持ちながら更なる軽量化を実現し、第三の情報端末として普及していた。
普段は胸ポケットに入れていれば、生体電流から微弱であるが充電可能で、一部に有機系パーツが用いられているのが特徴だ。

悠気
 「晩ご飯の材料お願い、か」

母さんと共同で家事をする都合上、晩飯の買い出しなどは専ら俺の担当だ。
俺は情報端末を胸ポケットに収めると、家とは逆に街のスーパーを目指す。

悠気
 「あ、備蓄無くなっていないか、聞いとかないと」

ウチは纏めて買っておくことが多く、備蓄は多めに置いてある。
それでも醤油やマヨネーズなんかは消費が速いのがネックだ。

悠気
 「必要なものは、と」

俺は端末に母さんへの返信を入力して返す。
数分後来た返事を見ると、俺はそのまま良く行くスーパーに向かうのだった。



『突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語』


第2話 月代宵との付き合い方

第3話に続く。


KaZuKiNa ( 2021/01/15(金) 19:53 )