突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


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突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
第17話 仲間集め



私が彼と……、若葉悠気と初めて会ったのは私が6歳の時だった。
あの頃はお互い小さくて、悠気って女の子みたいで可愛かった。
でも気が弱くて、いつもイジメられていたんだよね。



萌衣
 「こらー! 悠気を苛めるなー!」

その頃の私ってば、無駄にお姉さんぶって悠気を守ろうとしてたっけ。
6歳でまだ思春期も来てないのに、もう弟でも出来た気分だったんじゃないかな。

萌衣
 「悠気? お姉ちゃんが絶対守ってあげるからね?」

悠気
 「……萌衣お姉ちゃんは誰が守ってくれるの?」

萌衣
 「え……それは……」

でも……当時の悠気はなんだか暗かったな。
多分私はお父さんがいないからだと思ってた。
だからこそ多分私の保護欲が生まれたんだろう……。



***



瑞香
 「はぁ〜!? ゲーム作れって!?」

悠気
 「……すまん! 筋違いとは思うが、お前を頼るしかなかった!」

文化祭までにゲームを完成させるべく仲間を集めることにした俺と萌衣先輩。
とりあえず一番最初に頼ったのは陸上部の瑞香だった。
俺は休憩時間を狙って瑞香に話しかけると、向こうの反応は当然良いものではなかった。

瑞香
 「萌衣先輩に名義を勝手に借りられた上で助けたいって、アンタ菩薩かなんか?」

萌衣
 「ご、ごめん瑞香ちゃん。私たちも無理は言わないから……」

萌衣先輩は元陸上部ゆえに、瑞香とは抜群に仲が良いが、それだけに巻き込むことを後ろめたく思っているのだろう。
だが、既に諦め気味の萌衣先輩と違い、俺は生憎諦めの悪い男だ。

悠気
 「瑞香、頼む!」

瑞香
 「あのね? 私部活で忙しいの? 分かる?」

悠気
 「陸上部は文化祭期間は休みの筈! 頼む!」

再三、俺は上半身を90度曲げて頼み込むと、瑞香は「はぁ」と溜息を吐いた。
俺は顔を上げると、瑞香は。

瑞香
 「歯ぁ食いしばれ!」

ドカァ!

なんと瑞香は俺の顔面を全力フックで殴ってきた。
その光景に萌衣先輩が悲鳴を上げる。
俺は口の中を切って血を吐くと、瑞香は随分スッキリした顔で。

瑞香
 「はぁ〜ストレス解消! いいわよ、これでアンタらに協力してやるわ」

悠気
 「あ、有り難いが……殴る前に言え……!」

瑞香
 「言ったわよ? 歯を食いしばれって」

悠気
 「……」

何故だろう、凄く殴られ損をした気分だ。
だが、痛みの代償に仲間は得られた。

萌衣
 「悠気! 急いで保健室に!」

悠気
 「大丈夫です、自分頑丈ですから……!」

俺はそう言って笑顔を見せると、また萌衣先輩は泣き出しそうになった。

瑞香
 「あ〜、ご心配なく♪ 手加減はしましたから♪」

萌衣
 「あれで!? 瑞香ちゃん……」

悠気
 「俺の相棒は凶暴です……」

実のところ、瑞香は蹴りの方が多いが怖いのは拳だ。
よく蹴ってくる女だが、殴ってくる事は殆どない。
つまり、瑞香は本当にイライラしていたということ。
アイツだから俺に対して殴ってきたのは、文字通りストレス解消なんだろう。

瑞香
 「でもさ? 言っておくけど私ゲームのことなんてさっぱりよ?」

悠気
 「そこはあんまり気にしてない、何故なら俺もだからな」

瑞香
 「烏合の衆かい! そうね……少なくとも私より適性ある人を紹介するから、そっちをスカウトしてみなさい」



***



萌衣
 「お、お姉ちゃんは強いんだよ! だから助けて貰わなくたって平気なんだ!」

弟のように可愛い悠気に対して、私は虚勢を張る。
良いお姉ちゃんであろうと思った私は、本当はそんなに強くない。
運動神経は良かったから、この頃なら確かに喧嘩をしても男の子に負けることはなかったけれど、それでも年上は怖かった。
まるでそれを見透かしたかのように悠気は哀しい目で私を見て、私は戸惑うしかなかった。

悠気
 「お姉ちゃん、僕が強くなったら、今度は僕がお姉ちゃんを守る……! 今度こそ……守るんだ」

萌衣
 「悠気……」

その頃の悠気は背も私よりちっちゃくて、女の子みたいに可愛かった。
でも、その暗い顔の奥には決意めいた目があったのだ。



***



悠気
 「えと、山吹柚香さん、居ますか?」

柚香
 「え? 悠気さん。料理部に何か用ですか?」

瑞香に言われてやってきたのは家庭調理室で活動する料理部だった。
実の妹まで巻き込もうとは汚いな、瑞香の奴汚い。
だが、少しでも適性がありそうな人を総洗いするしかなく、これも藁にも縋る思いだった。

悠気
 「実は折り入ってユズちゃんに頼みが……」

料理部員1
 「あの、先輩よろしければ試食してくださいませんか!?」

料理部員2
 「若葉先輩! お願いします!」

俺を見つけて駆け寄ってきたのは、料理大好き(上手とは言っていない)女子たちだった。
料理部は全員で4人、全員が女子だ。
部活と言うよりサークルのノリだな。

悠気
 「……天ぷらか」

俺は並べてある調理具と臭いから類推すると、女子達が息を呑んだ。

料理部員3
 「すごい、まだ見てもいないのに!?」

悠気
 「はぁ、良いだろう。ただし手短に進めるぞ?」

俺は状況から柚香に話をすることは困難と判断し、先にこの部員達を捌くことにした。

悠気
 「萌衣先輩、少し待っててください」

後ろでぽかーんとしていた、萌衣先輩は「うん」と小さく頷くと俺は料理の元に向かう。

悠気
 「海老、春菊、椎茸、かき揚げか。テンプレートだな」

柚香
 「その、どうでしょう?」

制服の上からエプロン姿をした柚香は俺の横に立つと、まず見栄えから聞いてくる。
俺はそれらを見て、まずそのクオリティの差を見極めた。

悠気
 「かき揚げはユズちゃんだな?」

柚香
 「はい、一番難易度が高いですから」

料理部員1
 「凄い! 見ただけで分かるなんて!?」

かき揚げは素人にはもっとも見た目で影響が出やすい。
その点で、見た目で文句なしのかき揚げは間違いなくユズちゃんだと思った。
他の部員達はユズちゃん程料理が上手ではない。

悠気
 「……それじゃ、試食させて貰うぞ」

俺は箸を手にして、一つずつ頂く。
部員たちが緊張の面持ちのまま見守り、ユズちゃんでさえ息を呑む。
俺は五感で感じて、あくまでも俺の評価を下す。

悠気
 「海老、揚げ時間が長い。衣も一気につけずふんわりさせると料亭のそれに近づくぞ」

料理部員1
 「くは!? やっぱりかぁ〜!?」

悠気
 「次に春菊、こっちは逆に生だな、色物は火加減が難しい。改善あるのみ」

料理部員2
 「ぐふ!? 精進しますっ!」

悠気
 「椎茸、まず見栄えが悪い、衣をつけすぎだ。だが火加減は良をつけてやろう」

料理部員3
 「うう〜、私美的センス皆無〜……」

悠気
 「最後にかき揚げだが……合格点……だがテンプレートだな。ユズちゃんのレベルで考えればここで満足せず更に腕を上げて欲しい」

柚香
 「は、はいっ! 改善あるのみです!」

俺はサクッと評定を終えると、お茶を飲んだ。
たまたま目の前にあったので、つい飲んでしまったがアプリコットティーだった。
この味、ユズちゃんにしか作りえない紅茶だよな。

悠気
 「て、ユズちゃん! 話あるからこっち!」

忘れそうになって、慌てて思い出すと俺はユズちゃんの手を引っ張る。

柚香
 「え? あの、話って!?」

俺はユズちゃんを引っ張り萌衣先輩と合流すると、ユズちゃんに事情を説明する。

悠気
 「ユズちゃんには今日からゲーム研究会でゲーム制作に当たって貰います!」

柚香
 「は? え? ええええ!? どういう事ですかっ!?」

悠気
 「瑞香はお前を売ったんだよ……ゲーム研究会にな」

柚香
 「お、お姉ちゃーん!!?」

無論冗談だが、殴られた復讐も兼ねてあえてそう説明すると、怒り心頭のユズちゃんの絶叫が校舎に木霊した。



***



悠気が私を守るって言ったあの日から数ヶ月。
突如悠気はお母さんと一緒に引っ越した。
それから彼と再会するには長い時間が掛かった。

悠気
 「……もしかして、萌衣姉ちゃん?」

中学生になった悠気と再会したのは入学式の事だった。
私は最初彼のことが若葉悠気だとは分からなかった。
だけど彼は私のことを覚えていてくれていた。
それに私は涙腺が崩壊しかけた。

萌衣
 「悠気? 悠気なの!?」

悠気は和やかな顔でコクリと頷いた。
身長は既に私を越えていて、顔つきも格好良くなったけど、確かにあの頃の名残があった。

悠気
 「良かった、覚えてくれてたんだ」

萌衣
 「忘れないよ、あんな泣き虫坊や!」

悠気
 「それは昔の話だよ、今はもう泣かない」

そうだろう、1つ年下なのに彼はとても落ち着いていた。
同学年と比べても浮いている存在で、まるで思春期を飛ばして大人になったみたいな印象だった。

萌衣
 「身長……越されちゃったか」

悠気
 「でも萌衣姉ちゃんは綺麗になった」

萌衣
 「お世辞が上手ね」

悠気は確かにあの頃よりも強くなったんだろう。
今は泣き虫じゃない、立派に成長した。
でも、達観しすぎている気がした。
悠気は温和な笑みを浮かべているがあの頃のような目はしていなかった。
そう……、あの決意に煌めく瞳を……私は忘れていなかった。



***



柚香
 「お姉ちゃんっ!!」

瑞香
 「アイエエエ!? 何事ユズ!?」

凄まじい剣幕で現れた妹に狼狽える瑞香を俺は少し離れた位置で見ていた。
ユズちゃんは普段怒らないだけに、怒ると恐ろしい。
その恐ろしさを身をもって知っているのは瑞香だった。

柚香
 「私を無断でゲーム研究会に売ったってどういう事!?」

瑞香
 「え? 売る? 私はアンタにも協力を……」

柚香
 「口答えしないっ!」

瑞香
 「サー! イエッサー!」

萌衣
 「あはは、あの姉妹、普段は仲良過ぎな位なのにね」

萌衣先輩もこの光景が初めてじゃない。
たまにではあるが、妹の烈火の如き怒りに瑞香も為す術がないの光景はしばしば名物だった。
萌衣先輩が陸上部を辞めると、それ以来見てないだろうから本当に懐かしいんだろう。

柚香
 「!!!」

瑞香
 「!?!?!?」

それから15分位過ぎて、ようやく怒りが収まった柚香ちゃんはいつもの調子で俺の前にくる。
その隣にゲロ吐いてもなお怒られたかのような表情をした瑞香を携えて。

柚香
 「悠気さん、高雄先輩。微力ですが姉妹共々協力させていただきます」

瑞香
 「ハイ……ゼンメンテキニキョウリョクシマス……」

萌衣
 「う、うん。よろしく……」

流石に魂が抜けてしまったかのような姿を見せる瑞香に萌衣先輩は心配そうにしていた。
俺も少し煽り過ぎたことを後悔した。
その、すまん瑞香!

柚香
 「あの、でも私もお姉ちゃんと同様作るって言ってもよく分からんが分からないんですけど、ここはその専門の人に聞くべきじゃ?」

悠気
 「専門、か」



***




 「え? ゲーム制作ですか?」

ゲームの専門と言えば、Eスポーツ部だろう。
部員8名、テレビゲームのスペシャリストたち。
俺達はその中でもトップレベルの腕を持つ常葉命ちゃんを尋ねていた。
Eスポーツ部は狭い部室に人数分のパソコンを設置して、全国大会に励む。
命ちゃんはすでに予選を越えて12月の全国大会に向けて調整中のようだった。


 「私作る方じゃなくて遊ぶ方の専門なんですけど?」

悠気
 「それでも俺達より詳しいんじゃないか?」


 「あの……とりあえずゲームの企画見せて貰えませんですか?」

萌衣
 「これなんだけど……」

萌衣先輩は自分の端末に保存していた企画書を命ちゃんに見せる。
割合真剣な眼差しで命ちゃんはゲームの内容を確認していくと、バッサリと言った。


 「不可能ですね、後1ヶ月でこれ制作するなんて大手のゲームメーカーでも厳しいですよ」

悠気
 「やはりか」

概ね俺と同じ意見だったな。
命ちゃんはテレビゲームには大真面目なんだろう。
その言葉は重いが、キッチリと受け止めた上でのものだ。


 「提案すると、ノベルゲームが妥当じゃないでしょうか? これならこの人数でもなんとか出来るかも」

萌衣
 「ノベルゲーム?」


 「一言に言っても数種類ありますけど、私が提案するのはサウンドノベルです。ビジュアルノベルの方が受けはいいですけど、こっちは美術適性がないと無理ですし、原画家とグラフィッカーが血反吐吐きますから」

柚香
 「??? 専門用語?」

瑞香もユズちゃんも会話について行けずちんぷんかんぷんになっていた。
一方で一言一言を理解している萌衣先輩は誰よりも真剣に聞いている。


 「私はテスターなら出来ますが、流石にゲーム制作までは無理ですしね……」

悠気
 「いや、方向性が決まっただけでも助かる」

萌衣
 「うん……でも、これならなんとか出来るかも」

瑞香
 「とはいえ1ヶ月でしょ?」

作るべきゲームはノベルゲーム。
簡単に言えば小説のテレビゲームだ。
それ一言で言っても種類は様々だが、俺達がやるのはサウンドノベル。
背景と音楽さえあれば最低限作ることが可能で、これならばなんとかなるかも知れない。



***



若葉悠気、彼は強くなった。
中学時代私は陸上部で、彼は帰宅部だった。
昔はひとりぼっちだった彼も、瑞香ちゃんや百代君のような友達も増えて、私は遠回しに見ていることが増えていた。
だけど遠くだから、やっぱり分かる事がある。

萌衣
 (悠気、笑わないね……)

正確に言えば喜怒哀楽が薄い。
私はいつも彼より少し速く学校に辿り着くと、その姿を遠目に見ていたのだ。
いつも瑞香ちゃんと百代君と一緒に登校する姿は、瑞香ちゃんや百代君は楽しそうなのに、悠気はまるでつまらなさそうなのだ。

萌衣
 (声、掛けるべきかな?)

私はいつも葛藤していた。
彼を見ると私の方が子供っぽくて、お姉ちゃん振るのが恥ずかしい。
だから結局見ているだけで、いつも先に校舎に向かうのだ。



***



悠気
 「冷静に考えて……情報室使えます?」

切実な問題だ。
着実に仲間が増えているのは喜ばしいが、俺はある問題に気が付いた。
それは制作環境がないことだ!

萌衣
 「サークル活動だと、流石に許可は取れないよね……」

柚香
 「ノートパソコン一つじゃどうしようもないですしね……」

困った問題だ、全員がそうやって頭を悩ませていると、どこからか笑い声が聞こえた。


 「フハハ! お困りのようだなボーイ&ガール!」

萌衣
 「げぇ!? 葛樹!?」

笑い声の正体は光先輩だった。
先輩は鍵束をクルクル回すとそれを萌衣先輩に投げ渡す。
そしていつものように中二病を擽るポーズで萌衣先輩を指さし。


 「俺も協力してやるぜ! そいつは情報室の鍵だ!」

悠気
 「……一つ聞きたいんですが、どうやって入手したんですか?」

俺は猛烈に嫌な予感がした。
その直後、後ろからけたたましい声が聞こえた。

女子生徒
 「見つけたぞ葛樹光! 職員室に侵入して何を企んでいるか、吐いて貰うぞ!?」


 「おっと、生徒会か! サラバだ、スノーホワイトよ!」

そう言って鍵だけ渡して即座に走り出す光先輩。

スノーホワイト?
 「だから私は白雪鈴音だと言ってるだろうがー!?」

スノーホワイト、本名白雪鈴音(しらゆきすずね)はキュウコンのPKMだ。
ただしキュウコンと言っても氷タイプの方だが。
青みがかった白い毛はウェーブが掛かったセミロングで、身長は中くらい、鋭い目が特長で高校2年、同じ組だとやたら喧しいことで有名な奴だった。
白雪は大きすぎる尻尾を紐で纏めて、走りやすいようにしているが、それでも身体能力の差から光先輩には逃げられてしまう。
白雪の負け犬の遠吠えは校舎に木霊した。

萌衣
 「白雪……姫、か」



『突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語』

第17話 仲間集め 完

第18話に続く。

KaZuKiNa ( 2021/04/30(金) 18:26 )