突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語




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突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
第15話 小旅行、人狼ゲーム



1日目夜、俺たちは寝泊まりする部屋でゆっくりする……が。

瑞香
 「ねぇねぇ宵って好きな子とかいるの!?」


 「好きな子? うーん、瑞香でしょ? みなもさん、柚香ちゃん、琴音ちゃん、幸太郎も、悠気も!」

琴音
 「あはは……瑞香さんが聞いたのはそう言うと事じゃないと思うんだけど」

みなも
 「あの、お茶のお替わり如何でしょうか?」

悠気
 「……貰うよ」

ここは男子の個室、そこいる男子は俺とコウタだけだ。
瑞香に月代、大城にみなもさんと揃いも揃ってなぜこの部屋に集まりやがる!?


 「あ、こっちもお替わり〜♪」

瑞香
 「私も〜♪」

みなも
 「畏まりました」

俺は急須で煎れられたお茶を飲んで部屋を見渡すが、やはりその様子は女子部屋にしか思えん。
みなもさんなんかは初めから俺の傍を離れる気がないし。
宵も当たり前のようにこっちに来て、瑞香や大城と談笑している。
こいつら本当に平常運転なんだよな……。

悠気
 「なぁ、コウタ?」

俺はロッキングチェアに座っているコウタに話しかけると、読んでいた雑誌から目線を離しこちらを向く。

幸太郎
 「どうした?」

悠気
 「いやよ……、どうしてこいつらはさも当然と言うようにこの部屋に居座ってんだ?」

俺は当然の疑問を親友にぶつけると、親友はロッキングチェアに揺さぶられながら天井を見た。
そして数秒考える仕草をするとこう言った。

幸太郎
 「どうしても分からないなら、彼女たちに聞けば良かろう?」

悠気
 「いや、その通りなんだが」

数秒考えて出てきた答えがそれかよ!
俺は脱力すると、外の様子を見た。
ベランダは海側の景色が一望でき、夜空には綺麗な星空が見える。
改めて、久々の旅行だったが、こういう風景を眺める分には悪くないな。


 「ねぇねぇ! そう言えば人狼ゲームってどう遊ぶの!?」

人狼ゲーム、月代がやりたいといって予定に入れた全員参加のレクリエーションゲーム。
この後、皆で集まって行われる手筈だが、月代はまだかまだかと期待しているようだ。

悠気
 「先輩達が戻ってきたら……な?」



***




 「夜空綺麗ね……」


 「……あぁ」

俺たちは皆に断りを入れて、旅館の外に出ていた。
理由は当然隣で夜風に髪を撫でさせる星のためだ。


 「どうして参加する気になった?」

俺は星の顔も見ずにそう聞いた。
確かに俺はこの旅行のことは星に言っていたが、その時はくるなんて言っていなかった。
それが突然やってくるのだから、皆も困惑したものだ。
星はというと、口元に手を当てると。


 「なんとなく、寂しくなっちゃったから……かしら?」


 「寂しくなると死んじゃう、か」

それは星の口癖だった。
星は寂しいのが嫌いだ、だから学園でも淑女で通しながら、その社交性から慕うものも多く、彼女の周りにはいつも誰かがいる。
しかしそれならば、伝えた時点で来れば良かった筈だ。


 「星……俺はお前のことは嫌いじゃない」


 「もう、そこは素直に好き、で良いでしょ?」

好き、俺はその言葉を軽々しくは使いたくない。
光と星、それは言葉に直すとヒカルとヒカリ。
とても似ているが、これを面白がった星の両親は、身分の大きく違う俺を許嫁にした。
俺を拾って養子にしてくれた両親は七竃家とは付き合いがあり、俺はある意味自分の生きる道を無視された結果になった。
だが俺自身、進路はすでに定めている。


 「俺はお前を愛してやれない……だから好きとは言えない」

星はそれを聞くと、胸に手を当て俯いた。
本人はただ純粋に俺を愛してくれている。
だが、肝心の俺がまだその踏ん切りがついていない。
俺は生来自由を好む性格だった。
その性で学園では問題児扱い、実際その通りだから俺も正す気は無い。
その俺にとって七竃の名は重すぎる。


 「やっぱり家柄? 私が七竃の女だから?」

星は将来的には確実に七竃の当主になる女だ。
きっと近い将来、彼女の一声で何百億という金が動き、何十万人もの人間の人生を左右するだろう。
そういう権力者、それこそが七竃だ。


 「……お前は俺よりいい男と必ず出会えるだろ? 俺みたいな『前科』持ちより」


 「っ! 貴方は犯罪者じゃない!」

珍しく星が声を荒げた。
それは俺の罪、彼女はそれを涙ながらに否定するが、結局のところ七竃にとってそれは許されざることだ。
だからこそ、俺は彼女を絶対に好きとは言えない。


 「光……私は貴方が好きよ? 世界の誰よりも一番」


 「光栄だよ、お前に言って貰えれば」

俺はその場で星から背を向けると、不意に冷たい風が吹いた。
まるでそれは、俺たちの見えない溝に吹き込んだかのようだった。


 「友人としてなら、俺はお前といられるが……それ以上は諦めろ」


 「光はずるいわ……だったら嫌いって言ってよ?」


 「すまない……」

俺は卑怯だとは思っている。
彼女のことを好きとも言えず、嫌いなんて尚更言えない。
ただ、俺は悔いのある人生を送りたくない。
5歳の時、この世界に突然召喚されて、運良く裕福ではないが良い両親にも恵まれた。
だが、俺はまだ18、自分の人生を諦められる年齢じゃない。


 「確か、この後レクリエーションか。身体が冷える前に戻るか」


 「……うん」

星は無理なスキンシップは絶対にしない。
それはかつて、俺が反射的に引き剥がした性だ。
あれ以来、彼女はそこまで俺に対して過剰なアピールはしなかった。


 (そう言えばいつから、星は俺を好きになった?)

ふと考えると、それは思い出せない過去だった。



***



瑞香
 「はーい、それじゃレクリエーションゲーム、人狼ゲームを始めまーす」


 「皆ー? 役職の書いてある紙は引いた? 引いたら書いてあるのが貴方の役職! そしてそれは他の人に言っちゃ駄目よ?」

悠気
 「……」

以前人狼ゲームについて紹介したので、今回は省くが新要素は説明していく。
それと俺が引いたのは市民だった。
つまり村人陣営、それも名も無きやられ役か。


 「ゲームマスターは私ね? それじゃ1日目夜フェイズから進めるわね?」

夜フェイズ、人狼ゲームは4つのフェイズで構成されており最初はこの夜フェイズから始めるのが定番である。
この後朝フェイズ、昼フェイズ、夕方フェイズと進むがそれは個別に説明していこう。

この夜フェイズはまず人狼が襲撃する村人を指定する。
因みに人狼側はこの初日にまず味方をゲームマスターから聞くことになる。
この際全員が顔を伏せ、ゲームマスター以外声を出さないのがマナーだ。
俺達は全員伏せたら、まず人狼だけが顔を上げる。
この際狂人も顔を上げるが、やることはない。
さてさて、誰が人狼かねぇ?


 「はーい、人狼側は殺害対象を決定したわよ」

ルール的には初日ではやらない事も多いが、今回は平常時と同じようにフェイズを進める。
次に占い師が一人のプレイヤーを指定して、その人が村人か人狼かを判定する。
ただし占い師の情報はあくまで占い師だけが持つことの出来る情報で、他の人物は知ることが出来ない。

占い師はこうやって夜フェイズに一人を指定してそれが人狼か人間か判別できる。
問題は役職までは分からないと言うことだが、運良く当てられると即死だけに、占い師は狙われやすい。
この後狩人が守る対象をゲームマスターに伝えて夜は終了だ。
なお狩人は正体をばらさないように、全員伏せて狩人役だけがゲームマスターに守る人物を指定できる。
2日目からは他の役職者も動き出すがさて……。


 「さて、それじゃ朝フェイズね」

とりあえず夜フェイズが終わると、次は朝フェイズ。
ここでは夜の結果が発表される。


 「はーい、とりあえずサクッと死んだのは命ちゃんだけよ」


 「ギャー!? 初日で殺されてるじゃないですかー!?」

幸太郎
 「一人か、人狼の数は何人だ?」


 「それじゃ命ちゃんはお口チャック! 昼フェイズよ! 好きに議論して!」

昼フェイズにするのは村人達による人狼探しだ。
ここでは主に議論で処刑する人物を見つける。
とはいえ、人狼ゲームは心理戦だからな。

悠気
 「ただの村人には命ちゃんの役職が分からないのが厄介だな」


 「ほお? ただの村人と? 狂人の可能性もあるのにな」

むっ、光先輩の言で皆俺を怪しそうに見ていた。
不味いな、心理戦である人狼ゲームでは余計な一言が疑心暗鬼を産んでしまう。
例え俺は占い師だ、とか言ってもそれは狂人か本当か俺以外には分からない。

瑞香
 「重要なのは人狼よ、そもそも何人いるか分からない訳だし」

みなも
 「一人か、二人です。常葉さんが脱落したので最低1人が確定していますが、狩人が守った場合二人になります」

柚香
 「な、なるほど……確かにそうなるんですね」


 「へぇ〜、流石みなもさん。頭良い〜♪」

琴音
 「とはいえ怪しい人物は見当たりませんね?」

この時点では怪しい人物は分からない。
だがなんとなーく怪しいのは月代なんだよなぁ。
理由はと言うと、ゲームにノリノリ過ぎること。
元々脳天気な奴だが、あの楽しみ方は人狼臭いんだよな。

幸太郎
 「悠気、お前は誰が怪しいと思う?」

悠気
 「月代」


 「な!? なななな、何の事だよぉ!?」

柚香
 「……宵さん」

みなも
 「……貴方を犯人です」

月代は俺に指定されると露骨な程慌てて見せた。
ハッキリ言ってコイツ露骨な程このゲームに向いてないなぁ。


 「皆、それじゃ夕方フェイズに移行するわよ?」

先輩がそう言うと、皆頷いた。
早速出番を失った命ちゃんが退屈そうだが、そういうゲームだからなぁ。


 「それじゃ皆、処刑する人を指差して」

この夕方フェイズにすることは簡単だ。
人狼と思う人を指定して、それを処刑する。
処刑された人物は以降ゲームには参加できない。
俺たちは指差したのは全員一致で月代だった。
一方月代は俺を指差すが、多数決により月代が脱落だ。


 「なぁぁぜだぁぁあ〜!?」

琴音
 「他に選択肢ないって位慌ててたしね?」


 「それじゃ宵ちゃん、ボッシュート! 夜フェイズよ!」

これで常葉と月代が脱落して、残り7人だ。
2回目の夜フェイズからは村人側の能力者も本領発揮だ。
まず人狼が襲撃対象を指定して、次に占い師が対象一人を判定するのだが、例によってその情報を俺が知る由はない。
次に霊媒師の能力で処刑された人物を判定する。
これも事実を知ることが出来るのはあくまで霊媒師のみ。
昼フェイズで重要な材料だけに、霊媒師は2日目フェイズから力を発揮だな。
最後に狩人が護衛対象を選んだら、ターンエンド。
2日目が始まる。


 「さーて、今回襲撃されたのは出海さんね!」

みなも
 「っ! 残念です……」

琴音
 「襲撃されたという事は、人間だったのね」


 「はいはい、議論は昼フェイズでね!」

2日目昼フェイズ、ここまでの結果から論議は進む。
既に3人脱落して残り6人。
ここから人狼を見つけるのは至難だな。


 「ハッキリ言って怪しい奴を見つけるのは不可能そうだな?」

幸太郎
 「ですね、そもそも誰が狩人で誰が霊媒師かも分かりませんし」

瑞香
 「う〜、こうなりゃ当てずっぽう決めるしか……」

この人狼ゲームの面白いところは次の夕方フェイズでの処刑選択にある。
だが、こういう情報に乏しい状況なら狂人の存在が厄介だ。


 「因みに出海さんは市民だったようだな」

柚香
 「えっ!? 先輩が霊媒師なんですか!?」

幸太郎
 「……そう言うことか、生憎だが霊媒師は俺だ」

悠気
 「つまり、どっちかが狂人か」

とりあえず今の所人狼は分からない。
だがこれで狂人はどちらかで確定したと思っても良さそうだ。
しかしその影で人狼は次の得物を見定めている。
人狼にとっては殺したいのは役職持ちだ。
つまり光先輩かコウタが死んだ時点でもう片方は死ぬと思っていい。
だが……チャンスはチャンスなんだよな。

悠気
 「皆、先に狂人から仕留めないか?」

瑞香
 「……幸太郎か先輩ってこと?」

幸太郎
 「霊媒師は俺だ、まぁ信じて貰えないだろうが」


 「当然だな、まぁ俺もなんだが」


 「……それじゃ、夕方フェイズに移行するわよ?」

俺達全員は頷くと、いよいよ処刑する人物を選ぶときがきた。
俺は覚悟を決めて、幸太郎を指す。
すると幸太郎を指したのはユズちゃん、瑞香、光先輩。
一方で光先輩を指したのはコウタと俺の二人だけだった。

幸太郎
 「……く! 敗者は語らず、か」


 「それじゃ、幸太郎君ボッシュート!」

これで残る5人、そろそろ皆も緊張感を持ってきたな。
そして迎える夜フェイズ、後に残ったのは誰なのか?


 「それじゃ3日目、朝フェイズよ。今日死んだのは……琴音ちゃん!」

琴音
 「そ、そうですか……残念です」

今回襲撃されたのは大城だった。
これで残ったのは4人。
だがここで光先輩が襲撃されなかったという事は……?

悠気
 「光先輩が狂人だったんですね……?」

人狼が狂人を襲う理由はない。
ゲームマスターがゲームを終了させなかった以上、村人は残り二人、そして人狼は一人だ。


 「ククク……まぁもう隠す必要はないか」

瑞香
 「……皆、私は狩人よ!」

ここで瑞香が自分の役職をカミングアウト。
狩人は人狼ゲームで最も重要な役職の一つ、それだけに狙われやすい。
だからこそ、瑞香はそれをバラす訳にはいかなかった。
だが、もうここでゲームはラストなのだ。


 「なるほど……俺が狂人でズッキーが狩人なら、ユッカーかユウのどちらかが人狼となる」

柚香
 「!」

悠気
 「……そう来たか!」

瑞香にしてはかなり頭が回ったようだ。
そして俺が村人である以上、人狼はユズちゃんかよ!?
流石にさりげなさ過ぎて全く気付かなかった。
だが、これを確定で分かるのは俺一人。

悠気
 「瑞香、俺を信じてくれ」

瑞香
 「!」

俺は下手な擁護意見をしても無駄だからこそ、この一言ですました。


 「それじゃ、夕方フェイズに行くわよ」

俺達が指差し合ったのは俺と瑞香がユズちゃん。
そして光先輩、ユズちゃんが指したのは俺。


 「人狼ゲームにおいて、処刑が同率になった場合両者処刑です。よって悠気君、柚香ちゃん脱落! よって人狼全滅により村人サイドの勝利!」

悠気
 「……瑞香、サンキュー」

瑞香
 「ふふ、生き残りが私一人ってまるでホラー映画のヒロインね」

俺たちはとりあえず勝利を喜ぶ。
このリプレイを作ったら、生存者一名とか映画の展開だよな。

みなも
 「む〜、良い雰囲気ですね……」

なんだか早々に脱落したみなもさんはジト目で俺を見ている。
アルェ? みなもさん嫉妬してます?


 「もうー! 直ぐ脱落してつまんなーい!」


 「再挑戦を希望します!」

文字通りデオチくらった常葉と月代は不満げに猛抗議。
そう言えば結局常葉の役職はなんだったんだろうな?


 「はいはい! その前にお風呂に入りましょ♪ 続きはその後よ?」

ゲーム自体はそこまで時間はかからないんだが、生き残りは中々疲れる。
俺的には早々に脱落して傍観者になった方が楽だったな。
とりあえず俺たちは、旅館の温泉に向かうのだった。



***


幸太郎
 「……ふぅ、良いお湯」

俺たちは露天風呂に浸かると、コウタは早速親父臭い仕草で温泉を楽しんだ。
一方で光先輩は足湯に留めて、夜空を眺めていた。
ジュカインの第一世代PKMである光先輩には両手や尻尾が葉っぱのようだ。
それ故に、やはり繊細なんだろうか。


 「なぁお前たち……この旅行は楽しいか?」

幸太郎
 「楽しいですよ、これだけ馬鹿騒ぎ出来るんですから」

悠気
 「そうですね、俺も楽しかったですよ、疲れるくらい」

正直初日から本当に疲れた。
何せ皆普段より羽目を外し、みなもさんでさえ新しい顔を見せてくれた。
24時間月代や瑞香に絡まれたら、正直体が持たん。

悠気
 「そういや、女子勢はどうしてんのかな?」



***




 「うふふ〜、とりゃ!」


 「きゃ!?」

私達女子は男子と別れて隣の女子風呂に入った。
露天風呂は生まれて初めてで、色んなことが兎に角楽しい。
特にお風呂に皆で入るのは初めてでとても楽しかった。
そんな中突然星先輩が私の後ろから私のおっぱいを鷲づかみしてくる。


 「ふむふむ、バスト86ね! 特筆すべきはトップとアンダーのバランスの良さ! 理想的な形ね!」

柚香
 「せ、先輩! 後ろから握っただけで分かるんですか!?」


 「ふふふ、なんなら柚香ちゃんも診てあげましょうか?」

そう言って星先輩は私のおっぱいから手を離して、柚香の元に忍び寄る。
ビックリしすぎて胸がドキドキするよぉ。

瑞香
 「先輩! 流石に妹にセクハラは止めてください!」

瑞香は柚香が狙われると、流石にそう言って庇った。
流石にそれを見て星先輩は「チッ」と舌打ちをして諦める。


 「そう言う星先輩もおっぱい大きいですよね」


 「ふふ身長175センチ、バストはトップ94! アンダー80! ブラジャーはF65のFカップよ!」

そう言って堂々胸を張る星先輩のそれは実に見事だ。
正に女性の理想のような体型の星先輩は股下も私達より長く、美人としての質が大きく違う。
一方で全く別ベクトルに極致なのがみなもさんだろう。
あの反則過ぎる悩殺おっぱいは私だって憧れる。


 「星先輩も身長も高くて大人っぽくて羨ましいですけど、出海さんのボンキュッボンも憧れちゃうです!」

瑞香
 「そうね、あの大きなお尻はちょっと恥ずかしいけど、まるで娼婦のようで、魅力的よねぇ」

みなも
 「っ!? わ、わたし、は……」

琴音
 「出海さん? 大丈夫ですか出海さん!?」

みなもさんは突然顔を青くすると、その場でガタガタと震え始めた。
星先輩と琴音ちゃんが駆け寄ると、みなもさんは少し冷静さを取り戻すも、未だ暗い顔を覗かせる。

瑞香
 「……私変なこと言った?」

瑞香は自分の性かと疑い、気まずい顔をする。
流石に旅行で気まずい雰囲気は最悪だ。
だけどみなもさんは、震える声で。

みなも
 「だ、大丈夫です……昔を思い出しただけで……」

大丈夫と言われても、それを信用して良いのか?
それよりもどう考えても過去のトラウマを掘り返したみたいで気まずさマックスだ。


 「何があったか聞きませんけど、辛いなら部屋で休んでください」

みなも
 「すいません、皆さん……そうします」

みなもさんはそう言うと一足先に温泉を出て行く。
その後暫くは静かな状態が続いた。

柚香
 「そ、その! 明日も楽しみだね! お姉ちゃん?」

瑞香
 「そう、そうね! 明日は山登りする予定だったわね」


 「確かバーベキューするんだよね!」

瑞香
 「そのために朝は市場で食材買って、男子共に運ばせるのよ!」

琴音
 「男子が可哀想だね……」

そう言って笑う瑞香を、琴音ちゃんは苦笑していた。
まぁ能力制限されていたら流石に私達じゃ食材持って山登りは大変だからね。
因みに制御装置だけど、温泉では皆外している。
防水性能はあるけど、腕輪だから外さないとその部分が洗えないからね。
PKMと判定された場合、国から支給された制御装置の装備が義務付けられているけど、実際には外出時以外は装備する必要はない。
勿論安全のため旅館では装備しないといけないけど、原則お風呂ではしないでいいのだ。
因みに大体の子は寝るときも装備するのが基本だ。
なにせしなかったら、私の場合知らない間に浮遊して天井にぶつかった事もある。
星先輩のような炎タイプだと、ベッドを燃やして火事になることもあるらしいので、なるべく装備したほうがいい。
一部の職種では制御装置の装備は免除されるけど、それにはそれなりの理由がある。
人間には私達の力は過ぎたるものだ。

瑞香
 「そう言えば気になったけど、宵って飛べるのよね?」


 「うん、この通り」

私は羽に指令を出すと、座った姿勢のまま垂直に浮かび上がる。
この際光の羽は温泉の水面を弾き、推力を発生させている事が分かる。
この羽は自由自在で、結構空中を好きに飛び回れる。
ただ、基本飛行は禁止されてるから、思いっきり飛んだことはないんだよね。

琴音
 「凄い……それに神秘的」


 「本当ね……なんて幻想的で美しいのかしら」


 「ええ? て、照れちゃうよ〜」

私は空中で一回転すると、そのまま着水する。
羽のことは悠気もよく褒めてくれるけど、皆に言われるとすごく照れくさい。


 「綺麗なだけなら琴音には敵わないよぉ〜」

琴音
 「え? 私?」


 「うんうん! 流石学園一のアイドルよね!」

琴音は取り立てて身長がある訳でもない。
胸も普通で、スラッとした細身だ。
だけどその大和撫子然としたお淑やかさは、純粋にその美しさを際立たせる。
エメラルドグリーンの髪も、今はお湯に浸かって艶やかで、幻想的だ。


 「む〜、私も大きいおっぱいより、身長とか、琴音姉さんのような大人っぽさが欲しいのです!」

そう愚痴る命は、所謂ロリ巨乳だ。
身長に対して露骨に胸が大きく、特に足が短いことと、その童顔は多くの人に中学生扱いされてしまう原因だ。
それも個性だとは思うけど、身長コンプレックスは根強いのね。

瑞香
 「ねぇユズ、私達ってこの子たちと比べたらなんの長所ももないのかしら?」

柚香
 「そ、そんなことないよお姉ちゃん! お姉ちゃんは運動神経良いじゃない!」

瑞香
 「でも、取り立てて身長がある訳でも、巨乳な訳でも、美人な訳でも無いって……悲しくない?」

柚香
 「うぅ……」

なんだか、こんな話題で話していたら瑞香がしょんぼりしていた。
うーん、二人とも私には楽しい友達だし、身体なんて気にすることないと思うけどなぁ。

瑞香
 「あーもう止め止め! 逆上せちゃうからもう上がるわ! ミックスジュースでも飲みたい気分ね……」

琴音
 「そう言えば私も逆上せてきたかも……」


 「それじゃ、皆部屋に戻りましょうか!」


 「はーい!」


 「了解であります!」

私達は皆一斉に温泉から上がり、更衣室に向かう。
ふと、その途中空を見上げると、そこには三日月があった。


 (もう4カ月か……)

この街に帰ってきて4カ月……。
育美さんは今どうしてるのかな……?
ふと、私は月を見て、そんな事を考えるのだった。



『突然始まるポケモン娘と学園ライフ満喫する物語』

第15話 小旅行、人狼ゲーム

第16話に続く。

KaZuKiNa ( 2021/04/16(金) 19:21 )