突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語




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突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
第12話 おじさまと量子コンピュータ



それは警報の鳴る少し前。


柚香
 「う〜ん、どっちが良いかなぁ?」


 「柚香ちゃんは身長があってうらやましい! 私なんて身長が低いから子供扱い、格好いい大人の水着も似合わないもん……」

私の隣で水着を吟味する命ちゃんはそう言うとガックリと肩を落とした。
うーん、命ちゃんはスタイルは良いけど、確かに身長が150しか無いのに胸が80もあって、不格好になりがちだもんね。


 「お母さん昔スク水でお父さんを落としたらしいから、私もそうするかなぁ〜?」

柚香
 「命ちゃんだとスク水でも際どそうだねぇ」

かく言う私は控えめだからあまり胸元が見えるのは恥ずかしい。
うーん、やっぱりパレオかなぁ?
花柄でフリフリのスカートのついた水着、予算的にも問題ない。

柚香
 「うん! 私これにしよ!」


 「わぁ! 柚香ちゃんの大人っぽい! 私はもうこの競泳水着しか……」

柚香
 (だからどうして露出面積皆無系ばかり選ぶんだろう?)

競泳水着でも、大きな胸がギュッされて逆にエロいという……。
改めて、ロリ巨乳って大変そう。


 「うーん、どっちが良いかなぁ……ん?」

突然命ちゃんが耳をピンと立てた。
そしてテナントの外を見ると、なにか屈強でサングラスをした人たちが集まってる?


 「なにか嫌な予感がするのです……」

何やら、屈強な黒人男性やスーツ姿の白人など集まりだし、一様に目元を隠している。
私達はそっと物陰に隠れると、その人達は突然!

ダダダダダ!

柚香
 「きゃぁ!?」

突然屈強な黒人男性がアサルトライフルを天井に構え、発射した。
ばらまかれる弾丸、ライトが破壊されて、その一帯が暗くなる。

その瞬間、その周囲はパニックと誰かが火災報知器を使ったのか、警報がけたたましく鳴り出す!

白人A
 「常葉命が近くにいる筈だ、探せ!」

柚香
 「命ちゃん!?」


 「シッ! 静かに……テロリストですか? ということは私を人質に?」

私は急にやってくる訳の分からない事態にただ、震えるしかなかった。
だけど、命ちゃんは妙に落ち着いていて、私達は物陰に隠れた。
テロリストは客や従業員を一カ所に集め始め、何人かがその見張りに立った。
そして数人が誰かを探している。
間違いなく、命ちゃんだろう。


 「このまま隠れてやり過ごせば、助けが来るのです」

柚香
 「そ、そうだよね? 警察だって動いている、よね?」

男達が近くを周回する。
その手にはアサルトライフルを握って。

柚香
 (お願い……あっちいって……!)

私は祈るように手を合わせて震えた。
テロリストの足音が恐怖を煽る。
しかし祈りが届いたのか、テロリストの足音が遠のき、ほっと一息つく。
だが……そこで最悪の事態は起きた!

『♪〜〜♪〜♪』

柚香
 「お、お姉ちゃん!?」

それはお姉ちゃんからの電話だった。



***



瑞香
 「嘘でしょ? 火災でも起きたわけ?」

店員
 「アンタたち! シャッター閉めるからね!?」

そう言って店のシャッターが一斉に閉まり出す。
客はパニックを起こして1階を目指した。

おじさま
 「館内放送がないぞ? 火災なら放送があるはずだ?」

瑞香
 「そう言えば! ユズは無事かしら?」

私は確かに異変を感じるが、まずは妹と合流が先決だ。
全くサプライズを考えた時に限ってなんて運が悪いのよ。

瑞香
 「ユズ……早く出て」

私はユズのスマホに電話をかける。

瑞香
 「あ、ユズ? 今どこに……」

柚香
 『お、お姉ちゃん!? ダメ、今は!? あああ!?』

『ガタン! ガタガタ! ……たぞ! 女が二人!』

柚香
 「嫌ぁぁ!?」

瑞香
 「ユズ!? 何が起きてるのユズ!?」

『タァン! プープープー』

おじさま
 「エライことになったか」

私は顔を青くした。
ユズの悲鳴、そして通信が途切れた。
間違いなくこれは悪夢だ。
ユズの身に何が起きているの!?

おじさま
 「やれやれ……狙いは差し詰め俺か」

おじさまはそう言うと手首を振って、何やら準備を始める。

おじさま
 「おっと、すまないが電話だ。君はさっさと避難するように」

おじさまはそう言うと最新の情報端末を耳元に当てると、通話を行う。

おじさま
 「やー、サトーちゃん、今会社に警告文か何か届いてる? え? 今どこにいるのかって? 娘と一緒にデパートにね? え? テロリスト?」

ピンポンパンポーン!

館内放送
 『この建物は我々黒の団が占拠した! 抵抗すれば人質の命は保証しない!』

瑞香
 「なによそれ……妹は人質だっての!?」

私は慌てて走りだそうとすると、おじさまに手を捕まれた。

おじさま
 「サトーちゃん? 今の聞こえた? 少し調べて貰える? ああうん、多分娘が狙いだろうね!」

瑞香
 「おじさま! 手を離して!」

おじさま
 「落ち着け、上に行ったって捕まるのがオチだぞ?」

おじさまは電話を終えると、それを胸ポケットにストンと落とした。
そしてキッとその鋭い目線で私を睨みつけると、冷静に諭す。

瑞香
 「だからって……妹が怪我したら、私……!」

私はそれ以上の想像をすると震えるしか無かった。
万が一にも柚香に危害が加われば私はどうなるか分からない。
妹は確かにPKMだけど、痴漢にだって怯えて何も出来ない子だ。
きっと何も抵抗しなかっただろう。
兎に角一秒でも早く助けないと!

おじさま
 「はぁ……妹想いなのは立派だが、それでは猪と変わらんよ、まぁ昔の俺も君みたいなもんだったが」

瑞香
 「おじさまは、娘が大切じゃないの!?」

おじさま
 「大切さ、クソみたいな歴史改変繰り返して、やっと辿り着いた世界なんだ、アイツは俺の全てみたいなもんだ! だがそれが冷静さを欠くことになるか!」

瑞香
 「っ!?」

その時のおじさまは、私よりずっと強い覚悟があった。
きっとその齢を重ねるまでに私とは比べものにならない試練あったのだろう。
その人間の覚悟は、私を一気に飲み込んだ。

おじさま
 「落ち着け若者、もうそろそろ……来たな!」

おじさまは別の機械を取り出すと、それを私にも見えるように掌に置いた。
機械は一見するとスマートフォンだが、実際にはまるで違うようでホログラムが機械上に展開された。

ホログラム
 『新量子波形分列制御性コンピュータシステムバージョン1.38、アイリス起動しました』

おじさま
 「いや、いつもすまないねアイリス。それじゃ状況と解決策の提示を」

瑞香
 (量子コンピュータ? 初めて見るけど、こんなに小型だったっけ?)

量子コンピュータ、それは既存のシステムを遥かに超えた自己成長型ネットワークシステムのことだ。
既に世界で多くの国が量子コンピュータは完成させている、しかしこんな小型の物が存在するの?

アイリス
 『……そこに認証未確定の人物がいますが、よろしいでしょうか?』

うわ、アイリスというホログラム上の女性は私を見て、無機質に言った。
このホログラム、一応人工知性って奴なのかな?
彼女は少女の姿をしており、まるでその名の通りアヤメのような紺色の髪をツインテールで腰まで伸ばしていた。
格好も花びらのような物が幾重にも重なって服を形成している。

おじさま
 「ああ、かまわんよ、恐らく理解できんだろうし、産業スパイでもないしな」

瑞香
 「産業スパイって……私普通の高校生なんで!」

アイリス
 『畏まりました、それでは概要データ展開します』

そう言うと、少女が消えて代わりにミニチュアのジオラマのような映像が現れた。
それはデパート4階の立体映像のようだった。

アイリス
 『テロリストの照合完了、黒の団の構成メンバーと確定、黒の団はR&Aコーポレーションの支援を受けています』

おじさま
 「やっぱりかぁ、ロケットコーポレーションの奴ら、どんだけしつこいんだよ」

瑞香
 「R&Aって……えええ!? あのR&A!?」

アイリス
 『rocket & angel corporation 今や世界トップの総合財閥、主要部門は軍需、宇宙開発、我が社に対してM&Aを仕掛けて来たこともありましたね』

おじさま
 「マサラエンジニアリングが助けてくれなきゃやばかったな」

瑞香
 「おじさま……一体何者?」

私は目をぱちくりしておじさまを見ると、おじさまは。

おじさま
 「次の時代に共存の未来を! トキワカンパニー! のCMでお馴染みトキワカンパニーの社長だよ」

瑞香
 「うげ!? それじゃこれまじの量子コンピュータ!?」

私はアイリスを指差すと、アイリスは露骨にムッとした。

アイリス
 『私は量子推論型コンピュータではありますが、次世代理論を用いたすでにシンギュラリティを超えた位置にあるのです、それこそ未来演算すら可能なほどに!』

おじさま
 「こらこら、それは企業秘密! そんで装備は?」

アイリス
 『失礼致しました、敵の装備はR&A製対PKMアサルトライフルに、暗視スコープ、更に服の内側に強化外骨格型パワードスーツが確認出来ました』

おじさま
 「人質は?」

おじさまの言葉に従い、アイリスは何度も立体映像を切り替える。
そして集められた人質にフォーカスを合わせると、私は柚香を見つけて叫んだ!

瑞香
 「柚香!?」

アイリス
 『叫んでも意味はありません、そして解決策の提示ですが……』

量子推論型コンピュータアイリスは極めて人間的でもあり、そして冷静だ。
トキワカンパニーは日本で初めて量子コンピュータシステムの基礎理論を開発し、一躍世界に名だたる企業になった。
そして5年程前にマサラエンジニアリングと技術提携を行い、今ではマサラエンジニアリング傘下の企業としてCMでもお馴染みになっている。
しかし、改めてトキワカンパニーに量子コンピュータには驚かされる、こんな小さな量子コンピュータは初めてだ。
だが……現実には目の前にそれがある。
トキワカンパニーは密かに、ここまで高性能で小型な量子コンピュータを完成させていた?
私は技術屋じゃないから、詳しい事は全然分からないけどアイリスがどれだけトンデモかは分かった。

おじさま
 「ふーむ、強行突撃は無謀か」

アイリス
 『警察の装備では到底勝てませんし、PKM部隊でも危ういでしょう』

警察と同じ組織系列にPKMを中心にした治安維持部隊があった。
かつては決死隊なんて言われた特殊部隊もすっかりPKMに立場を奪われて、能力を制限されないPKM部隊は警察でありながら、自衛隊一個師団にも匹敵する力があるという。

おじさま
 「情報は御影さん経由で回した?」

アイリス
 『はい、選りすぐりが後10分で到着します』

おじさま
 「それじゃ、俺たちは俺たちで出来る事をしようか」

おじさまはそう言うと立ち上がる。
出来る事って何があるんだろう?

おじさま
 「アイリス、俺が奴らの前に出たらどうすると思う?」

アイリス
 『間違いなく捕縛するでしょう。場合によっては殺害も』

おじさま
 「なるほどね」

おじさまはそう言うとアイリスを私に投げてきた。
私は慌てて受け取ると、私より先にアイリスが非難の声を上げた。

アイリス
 『マスター! 壊れるから投げないでください!』

瑞香
 「え? え? あの、どういうこと?」

おじさま
 「アイリス、その子を全力でサポートしろ、未来演算を可能とするお前なら可能なはずだ」

アイリス
 『マスター? 企業秘密の筈では?』

おじさま
 「いけね! まぁそれより、瑞香ちゃん! 奴らの狙いは俺だ。もっと言えばアイリスだがな。ロケットコーポレーションの奴らは喉から手が出るほど我が社の量子コンピュータアイリスを欲している」

瑞香
 「未来演算出来るから、ですか?」

おじさま
 「どうだろうね?、まぁ未来演算って言っても完璧じゃない。かなり信用できる予報位に思えば良い」

それ微妙に不安です!
でもまぁ、アイリスが現代レベルの技術を越えているのは分かる。

おじさま
 「俺はエスカレーターから出て、奴らを挑発する。瑞香ちゃんはその隙に妹を助けなさい」

アイリス
 『階段を使うことを推奨します』

瑞香
 「おじさま……わたし」

私はアイリスを持ちながら手が震えた。
おじさまはどうしてそんなに気丈なんだろう?
さっきアイリスは殺害もあり得ると言っていたのに。
だけど、おじさまは私の頭に手を置くと撫でてくれた。
その手は大きくて、とても優しく温かかった。

おじさま
 「なに、おじさまを信じてみなさい♪」

アイリス
 『マスター、死んだら私世界滅ぼしますから』

怖っ!? この量子コンピュータ、世界滅ぼすとか言ってるけど本当に大丈夫!?

おじさま
 「はっはっは! それは絶対に死ねないな!」

おじさまは私の頭から手を離すとエスカレーターに向かった。

アイリス
 『時速8キロで4階に向かってください』

瑞香
 「8キロって言われてもよく分かんないんだけど? ていうか貴方とおじさまってどういう関係なの?」

アイリス
 『あの方は私のマスターです。私に第一に愛という物を教えてくれました』

瑞香
 「愛ねぇ……?」

アイリス
 『私はマスターを愛していますから、マスターの願いは絶対です』

この子、もしかしてヤンデレの類いかしら?
まぁおじさまが素敵な人なのは理解したけど、まさか量子コンピュータに愛を教えるって凄いことね……。
でも愛がコンピュータの反逆を防いでいると考えると、馬鹿に出来ないのかな?

瑞香
 「世界滅ぼすって可能なの?」

アイリス
 『可能ですよ、この世界は何でもデジタルで解決する世界です、そのデジタルが反逆を起こせばどうなるでしょう?』

瑞香
 「一歩間違えれば○カイネットね……」

つまりマシンに人類が支配されるわけか。
そしてその発想があるが、実行しないのが愛って辺りが、この子の優秀さかしらねぇ?

アイリス
 『止まって』

私は声に従い足を止める。
数秒、無音時間が続くと、再びアイリスはgoを指示する。
階段を昇り、真っ暗な4階に辿り着くと、おじさまの声が聞こえた。

おじさま
 「いやはや? もしかしなくても狙いは私だろう?」

テロリスト
 「トキワカンパニーの社長、常葉茂だな?」

瑞香
 (常葉茂……そうかあの人が命ちゃんのお父さんなんだ!)

アイリス
 『迂回しましょう、なるべく急いだ方が良いです』

私はアイリスの指示に従い、テロリストたちの視界の外から人質の元に向かう。
おじさまは饒舌にテロリストの気を惹いていた。

私は逸る気持ちを抑えながら、ユズを探す。
ユズはテロリストの足下に転がっており、ピクリとも動かない。
私は血の気が引いたが、アイリスはそんな私に向かって言う。

アイリス
 『心音確認、貴方の妹氏はご無事ですから、脈拍を戻してください』

瑞香
 「ごめん……」

アイリスは遠くの人間のバイタルチェックも出来るようだ。
そして自分の動揺を当てられ、私は気持ちを頑張って抑えた。


 「つまりつまり、目的は我が社だろう? だが急がねば警察も突入するぞ?」

テロリスト
 「少し黙れ! お前の娘はこの手にあるんだぞ!?」


 「……っ!」

命ちゃんはリーダー格と思われる白人男性に銃を突きつけられて、身動きが取れないでいる。
しかしその顔は怯えているというよりは、純粋に相手を睨みつけているような?
豪胆と言うか、あの子ももしかして修羅場慣れでもしてるのだろうか?

アイリス
 『PKM特殊治安維持部隊、内部突入を確認しました』

瑞香
 「え? 本当?」

しかし4階にはおじさまの声しか聞こえない。
暗闇に乗じている?

アイリス
 『走って!』

瑞香
 「っ! ままよ!」

テロリスト
 「なに!? 誰だ……な!?」

私に気が付いたテロリストが銃口を私に向けた。
その直後、男性は黒い闇に包まれて銃を落とした。

テロリスト
 「な!? 一体どこから!?」

テロリスト達がパニックになる中、私は柚香を抱きしめた!
テロリスト達は混乱する中次々と黒い闇に包まれて、銃を落として気絶していく。
あっという間に……テロリストは無力化された。

テロリスト
 「な、何が起きてんだ!?」


 「ライトを落としたのは君たちのミスだな」


 「汚い手で……私に触れるな−!!」

命ちゃんを拘束する白人男性だけが残ると、命ちゃんは激昂して白人男性の顔面を蹴り上げた。
男性は不意を突かれて2メートル位宙を舞って、地面に激突した。
一撃ノックアウトだった。


 「愛紗さん、お仕事ご苦労様です」

おじさまが誰かに感謝すると、闇が微笑んだ気がした。
そして命ちゃんは安全を確認するとお父さんに一直線に駆け寄った。


 「お父さん怖かったよぉ〜!?」


 「よしよし命! もう大丈夫だからな! お前の父さんは無敵だ!」

それを境に、人質にされた人達が一斉に歓喜の声を上げた。
やがて階下からライトを携えた警察官達が突入してくる。

柚香
 「んん? お姉、ちゃん?」

瑞香
 「ユズ!? 大丈夫!? どこも痛くない!?」

ユズは気絶していたらしく未だ夢心地なんだろうか?
私の泣きそうな顔を見ると彼女は優しく微笑んだ。

柚香
 「お姉ちゃん、私は子供じゃないんだから」

瑞香
 「馬鹿、充分子供よ!」

柚香の記憶はショックでまだ混乱しているみたいだ。
やがて警察の誘導で私達はデパートを脱出した。
その途中で、おじさまは私に駆け寄ると。


 「すまないが、アイリスを返して貰えるかな?」

瑞香
 「あ、はい。さよならアイリスちゃん」

アイリス
 『ちゃん付けは心外ですが、ご機嫌よう』

私はなんだか、マシン相手なのにアイリスちゃんが他人には思えずお別れをしてしまった。
おじさまはアイリスちゃんを受け取ると、その電源を落として再び懐に戻した。
そしておじさまはそっと人の波の中に消えていった。



***




 「社長、ご無事で何より」


 「よっ! サトーちゃん! お迎えご苦労!」

俺はしれっと人混みを抜けて、街並みの中に溶け込むと、目の前にメタグロス娘のサトーちゃんが現れた。
サトーちゃんの本名はサトー・メアリーという英国出身の第一世代PKMだ。
俺の秘書みたいなことを任せているが、元々はマサラエンジニアリングの社員で、俺がヘットハンティングして正式にトキワカンパニーに来て貰った。
その姿はメタグロスらしい青銅色の髪がスラッと腰までストレートに伸び、専用のカジュアルスーツの下には身長180センチバスト98の爆乳が潜んでいる。
しかし両腕両足はメタグロスらしいゴツいもので、迂闊にエロいことするとコメパンじゃなくても顔潰されるから地味に怖い。

サトー
 「ロケットコーポレーションには抗議文を送っておきますか?」


 「どうせ知らぬ存ぜぬだよ、テロリストは我が社の装備を使っただけで、本社と関係ない! てな?」

サトーちゃんは胸を持ち上げるとはぁ……と溜息をついた。

サトー
 「社長、准一さんを哀しませるような真似は止めてください」

准一さんと言うのは俺の会社の提携先、マサラエンジニアリングの社長さんだ。
10年前から懇意にして貰えて、特に経営術に関してはあの人から多くを学んだ。
サトーさんのヘッドハンティングも半ば准一さんの好意だ。
彼女は量子コンピュータアイリスのメインプログラマーであり、そして優秀な秘書様だ。
優秀と言えばもう一人。


 『おい、ズラ! 心配かけんじゃねぇぞ! 助けるために飛び出そうか本気で考えたんだからな!?』

俺の情報端末から顔を飛び出させたのはポリゴン娘のアルカディア。
愛称でアルカと言っているが、ウチのマスコットだな。
普段は禁止されているんだが、サイバー空間に潜入出来る能力を悪用してよく俺の情報端末の中に潜んでいる。
自由にサイバー空間と現実空間を行き来出来る能力もあり、彼女はアイリスのサイバー空間における実技指導を担当している。


 「地毛だっつってんだろうが!」

アルカ
 「○デランスってスゲーな!」


 「だから地毛だっつーの!」

アルカは元クラッカーだ。
たまたま我が社にクラッキングを仕掛けて来やがったから、サトーちゃんの開発した捕縛プログラムに引っかかりお縄になった。
その後現実世界に引っ張り出したが、あろうことか角張ったボディで色仕掛けを仕掛けてきたので、頭ぐりぐりの刑に処したら降参した。
その後は我が社のシステムエンジニアだ。

サトー
 「アルカ、直ぐに社に戻りなさい。さもないと頭ぐりぐりの刑ですよ?」

アルカ
 「嫌だ−!? サトーのぐりぐりは普通の人間なら死んじゃう痛さだぞ!? アタシを殺す気かぁぁ!?」

サトーさんの爪は硬い爪そのものだ、ぶっちゃけ直接攻撃力の高さはアルカを余裕でトラウマにさせているな。


 「アルカ、ロケットコーポレーションに警告しておけ、終わったらアイス買ってやるから」

アルカ
 「ならシロクマ! もしくはハーゲ!」


 「だから地毛だ!?」

○ーゲンダッツの事なんだろうが、どうもコイツは頭をネタにしてくるから過敏に反応してしまう。


 「はいはい、それじゃ会社で会いましょう」

俺はアルカの頭を撫でると、アルカは目を細めてうっとりしたのち、再びサイバー空間に潜った。


 (ロケットコーポレーションの奴ら……アイリス欲しさなら日本でテロも辞さないか……こりゃ本格的に准一さんと対策講じないとなぁ)



***




 「柚香!」

瑞香
 「……あ」

柚香
 「お母さん、お父さん?」

私達がデパートから出ると何十人も警察がいて、野次馬に取り囲まれていた。
何台もテレビ局のヘリが飛び交い、地上でも見たことのあるキャスターが一杯いる。
この日本でテロが起きたのだ、その衝撃は計り知れない。
そして、そんなテロに子供が巻き込まれれば心配しない親はいないだろう。
そう、あの素敵なおじさまのように。

だけど……私は暗く俯いた。

母親
 「柚香! 良かった! 貴方何かあったら私たちは!」

父親
 「柚香、お前は私の大切な娘だ、それに対して瑞香は……!」

瑞香
 「っ! 私は警察に事情報告してくるっ!」

私はその場から逃げ出した。
母さんと父さんは私を心配はしてくれない。
そもそもあの二人にとって私は必要ないんだ……っ。
柚香だけがいれば良い、だから私はあの両親から逃げ出した。



***



柚香
 「お姉ちゃん……」

父親
 「瑞香など放っておけ!」
 (あんな出来の悪い娘などなぜ生きているのか!?)

柚香
 「っ!?」

私は突然お父さんの心の声を聞いてしまった。
私は咄嗟に制御装置に触れると壊れていることに気付く。

母親
 「柚香、貴方は……」

柚香
 「私! ごめんなさい……!」

私は両親達の前から走り去った。
両親の止める声が聞こえたが、私は怖くて仕方がなかった。

(あんな子産まなければ良かった!)

母親の心の声、それが私の中流れ込んでくる。

柚香
 (嘘だ嘘だ嘘だ!?)

私は必死に力をコントロールしようとするが、まるで悪意だけを拾っているかのように力が暴走している。
私は早くお姉ちゃんに会いたかった。
お姉ちゃんは悪くない、私がお姉ちゃんより弱いから、お姉ちゃんが強くなった。
だけどそれでお姉ちゃんだけが贔屓されるのは間違ってる。

悠気
 「瑞香……!」

柚香
 「っ!?」



***



悠気
 「瑞香! お前……?」

瑞香
 「ひっく……悠気ぃ、悠気ーっ!」

私は悠気を発見すると、もう我慢の限界だった。
直ぐさま悠気に抱きつくと、悠気は戸惑いながらも受け入れてくれた。

悠気
 「お前……泣いてるのか?」

瑞香
 「ヒック! 悠気……貴方しかいないのよ……私には……っ!」

私はもう心が限界だった。
極限の状態を我慢して、やっと助かって、それでアイツらと出会う……最悪だった。
それでも一人なら多分我慢できた……なのに悠気が現れたら駄目だった。

瑞香
 (悠気、貴方だったら私を受け止めてくれる?)



***



柚香
 「……お姉ちゃん、そうだね……うん」

なんの偶然なんだろう?
私はお姉ちゃんの心を読んでしまった。
お姉ちゃんが悠気さんを好きなのは知っている。
でも、お姉ちゃんが助けを求めたのは悠気さんだけ。
そして悠気さんもお姉ちゃんを受け入れている。
私は何故だか涙が出た。
やっぱり私なんかが悠気さんの隣にいちゃ駄目なんだ。
お姉ちゃん、お姉ちゃんならきっと幸せになれるよ。


(瑞香
 「即ち! 出来の良い夫は駄目女を甘やかすの法則!」)


ふと、お姉ちゃんが今朝言ってた言葉を思い出す。
でも、本当はお姉ちゃんは駄目なんかじゃない。
本当に駄目なのは……私だよね。

柚香
 (お姉ちゃん、悠気さんがいれば、私は要らないよね)



『突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語』



第12話 おじさまと量子コンピュータ 完

第13話に続く。


KaZuKiNa ( 2021/12/02(木) 22:25 )