突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


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突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
第1話 転校生

西暦20XX年……。
PKMが世界的に認知されて16年が過ぎていた。
今では世界中に散らばったPKMは同じように人間と認められ、共に過ごす時代を迎えた。
そんな人類とPKMの共存の時代……話は4月から始まる。




 「悠気−! 遅れるわよ−!」

悠気
 「んん……!」

朝、春休みが終わって始業式の日を迎えた。
下の階から聞こえるのは母の声だ。
俺は欠伸をしながらベッドから起き上がると、制服を手に取った。


 「悠気? 時間大丈夫?」

がチャリ、突然部屋の扉を開いて一人息子の部屋に入ってくるのは母親の若葉育美。
とても16歳の子供を産んだとは思えない程の美人で、一緒に歩けばいつも姉と勘違いされるほどと言えば、理解できるか?
真っ白い長髪を腰までスラッと伸ばし、モデルのようにスタイル抜群で、見慣れたとはいえ女性を意識する。

悠気
 「直ぐ下に行くから!」

育美
 「このままじゃ遅れちゃうわよ?」

母さんはそそくさ部屋を出ると、ウインクして階段を下っていった。
俺は今だお茶目な一面を持つ母に溜息を吐いてさっさと着替え終わると、居間に向かうのだった。



***



育美
 「トースト、バター? ジャム?」

悠気
 「バター」

ウチは一般的な二階建ての一戸住宅。
家に俺と母さんだけで住んでいる。
一応親父もいるんだが……あのクソ親父はもう10年は帰ってきてない。
母さんは今でも愛しているらしいが、俺は親父が嫌いだ。

育美
 「最近バターも値上がりして大変のよねぇ」

母さんはそう言うと困ったように頬に手を当てる。
軽減税率対象内って言っても、物価は上がり続けるからな。

悠気
 「ご馳走様」

俺はトーストを食べ終えると鞄を持った。

育美
 「お昼頃には帰るのよね?」

悠気
 「始業式だからね」

育美
 「ならお昼は冷蔵庫の余りものでお願いね?」

母さんは平時はパートに出て家にはいない。
だから時には俺が買い物したり洗濯したり、協力してやってきた。
こういった事ももう慣れたもので、俺は家の鍵だけは確認すると家を出た。



***



通学路、そこは静かな民家街で、会社員や学生の姿もチラホラ見えた。
俺はその中に混じり、空を眺めなら進むと、ふと足を止めた。
それは石段、通学路の脇道に今は住職もいない廃寺があった。
本来なら気にも止めず通過するのだが、何故か俺はその古びた石段をゆっくりと見上げてしまう。
そして俺は、石段の一番上を見上げた。

少女
 「……え?」

悠気
 「?」

階段の側に女生徒がいた、俺と同じ学校の制服の着ている。
同級生か? 学年を識別するブレザーに縫い込まれた腕章は緑だった。
俺は少女と目を合わせると少女もまた俺と目を合わせた。

悠気
 (誰だ? 初めて見るな……)

俺は学校では見たことのない少女に疑問を覚える。
ピンク色の土星の輪を連想させる羽が特徴的だった。
だが、不意に意識は切り替えさせられる。

トン!

突然後ろから肩を叩かれた。

女子生徒
 「ヤッホー! 悠気! 相変わらずシケた顔ねぇ!」

女子生徒2
 「お、お姉ちゃん失礼だよ!?」

悠気
 「山吹姉妹か」

まず俺の肩を叩いたのは姉の山吹瑞香(やまぶきみずか)、血の性か緑の髪を腰までで伸ばし、白い髪留めをした俺の同級生だ。
一言で言えば性格は快活、良くも悪くもはっきり物事を言うから好みが分かれる。
所謂黙っていれば美人の典型、それが瑞香だ。

そして後ろからそんな姉を咎めているのかそうでないのか、困ったように止めているのが妹の山吹柚香(やまぶきゆずか)。
柚香、俺は愛称でユズちゃんと呼んでいるが、その容姿は姉とそっくりだ、双子ではないのか?
そう、疑われる事もしばしばだが、ユズちゃんに少し秘密がある。

悠気
 「ユズちゃんも高校生か、ブレザー似合ってるよ」

柚香
 「あ、ありがとうございます! 悠気さん!」

妹は姉とは対照的だ。
大人しく社交的で、深窓の令嬢という雰囲気。
そして最大の特徴は右腕に付けられた白い腕輪。
妹の柚香はPKM(人化したポケモン達の総称)だった、腕輪はPKMの力を抑制する装置。
10年くらい前にPKMと認定されたら力を抑制する腕輪を装着することが義務づけられた。
今の世の中、人とPKMの恋愛もそれ程おかしい物ではなく、そこから産まれたハーフは50%で人間、50%でPKMになると言われている。
お陰で山吹姉妹は姉が人間で妹がPKMという一風変わった家族構成になっていた。
とはいえこの姉妹は非常に仲が良く、種族の垣根なんてまるで感じさせない。

瑞香
 「ちょっと〜、なんで妹に挨拶して私には無しな訳!?」

瑞香はその気性の荒さは学校でも周知だ、早速俺の首を極めてくる。
この暴力性は彼女の人気を落とす一因だ。

悠気
 「ぐおおお!?」

柚香
 「お、お姉ちゃん悠気さんが死んじゃう!?」

瑞香
 「良いのよ! この馬鹿は一度死ぬべき! だから!」


 「相変わらず仲が良いのは結構だが、そのくらいにしておけ」

瑞香
 「あら、百代?」

後ろから大きな男が現れると瑞香の腕を引いた。
俺は久し振りの新鮮な空気に咳き込むと、男は背中を軽く叩く。

百代
 「大丈夫か、悠気?」

悠気
 「た、助かったぜ……コウタ」

俺を助けてくれたのは百代幸太郎(はくたいこうたろう)、愛称でコウタって呼んでいる。
去年までは同じ教室で、コウタとは仲がいい。
コウタは俺と違い顔も良くてイケメンで、更に柔道部のエースだ。
身長は187センチ、体重100キロを越えてかなり圧迫感のある巨漢だ。
これで性格まで良いんだから、まじで文武両道を地で行く人気者だ。

幸太郎
 「みんな、おはよう」

柚香
 「お、おはようございます先輩!」

悠気
 「おはよう」

瑞香
 「チェ、後もうちょっとだったのに、おはよう!」

幸太郎
 「お前ら、急がんと始業式に遅れるぞ?」

瑞香
 「あらいけない! よーし悠気、校門まで勝負よ! 負けたらランチ奢りね!」

悠気
 「はぁ!? まずお前に勝つとか無理だろ……あ!」

瑞香は陸上部だ、その足の速さは県内でも知られる。
当然そんな奴と勝負しても勝負にならない訳だが、奴はロケットスタートであっという間に走り去った。

柚香
 「お、お姉ちゃん待って〜!」

一方でイマイチ鈍くさいユズちゃんはとろとろと追いかけ始めた。
ユズちゃんはサーナイトのPKMで姉妹の見た目はそっくりだが、運動神経は異なる。
一般的にはPKMとして産まれた方が運動神経が良いと言われるが、ユズちゃんは正に例外だよな。
その後ろ姿は本当に姉妹でそっくり、まぁ性格が違いすぎて間違える事はねえだろうがな。

幸太郎
 「追わなくて良いのか?」

悠気
 「賭けは無効だ、成立するには同意が必要だろう」

俺はそう言うとコウタと一緒に学校へと向かう。
今ならこのスピードでもとりあえず間に合うだろう。



***



俺たちの通うのは私立の中高一貫校だ。
校門には生徒が集まっており、その中には見知った顔もある。


 「間に合った−!」

相変わらずせわしない様子で校門を潜ったのは上級生だった。
白い腕輪も拘束ではなく、アイテムとなるPKMの高雄萌衣(たかおめい)先輩、パチリスのPKMで小柄だが運動神経抜群の人だ。
だがどういう訳かいつも登校は遅刻寸前だ。
あの先輩とはある訳あって関係がある。
とはいえ、今はそんなに仲が良いわけでもないが。
もう一人先輩に知り合いがいるが……まぁ、ここでは会うこともないか。

俺たちは色めき立つ新入生を余所に、校舎に向かう。

悠気
 「お、同じクラス」

幸太郎
 「の、ようだな」

俺たちは自分たちの教室を見つけると中へと入る、そこで俺は頭を抱えた。

瑞香
 「おっそーい! なんで走らないのよ−!?」

幸太郎
 「山吹も一緒だったか」

瑞香はとっくにご到着していたらしく、随分ご立腹の様子だ。
このままではまた首を絞められかねないので、とりあえず首は守っておく。

瑞香
 「? 何してんのよ?」

悠気
 「首を守っている」

瑞香
 「私は首狩り族か何かかー!?」

そう言って容赦なくローキックをしてくる。
上を警戒させて、容赦なく下を攻撃するとは……容赦がない!

先生
 「はいはーい! ガキどもは座りな!」

俺が教室で悶絶していると、カッターシャツのラフな格好の女性が入ってくる。
先生だ、その目は白目がなく真っ黒で、腰のあたりから虫のような脚が生えている。
だが、その姿は見慣れたもので、今や誰も驚くことはない。

先生
 「オーオー、相変わらず平凡な顔ね!」

瑞香
 「御影先生、今年も宜しくね−!」

御影先生の本名は御影杏(みかげあんず)と言う。
アリアドスのPKMで、国家資格を取ったこの世界では古参の第一世代PKMだ。
ややぶっきらぼうな言動が目に余るが、生徒想いの良い先生だ。
何より美人で、生徒の信頼は厚い。


 「よーし、全員いるわね? 実は転校生がいるんだけど……先に体育館に集合よ!」

瑞香
 「あ〜、校長の長話やだ〜」

幸太郎
 「転入生と言っていたな」

悠気
 「転入生……?」

俺はふと廃寺に何故かいた女の子のことを思い出した。
この辺りでは見たことのない女の子だったな、詳しく見ていなかったが。


 「ほらほら! 移動!」

先生が急かすと俺たちは渋々と立ち上がる。
教室を出る時、ふと前方の男子生徒の会話が聞こえた。

男子生徒A
 「なぁなぁ大城さん見たか!?」

男子生徒B
 「やっぱ可愛いよなぁ! 人間とは次元が違うって言うか!」

悠気
 (大城……お)

俺は後方にその女子生徒を発見した。
メロエッタのPKM、大城琴音(おおきことね)。
吹奏楽部に所属いている女生徒で、隠れファンの多さは学園一とも言われている美少女だ。

瑞香
 「あーら? それって人間は可愛くないってことかしら〜?」

男子生徒A
 「げ!? 暴力女!?」

瑞香も男子生徒の会話を耳にしたようで、早速噛みつくが俺はその場で合掌した。
あの暴威を防ぐ手立てはないし、あの男子生徒を助ける義理はないからな。
まぁ口は災いの元……と言うことで。

悠気
 (それにしても……)

移動を進めると徐々に他のクラスと合流し始める。
改めてみると、その中には白い腕輪を付けた生徒も多数見られた。
学園全体で生徒数は600人、そのうち200名がPKMだという。
この学園は積極的にPKMを受け入れている事で有名でここほどPKMが密集している場所も少ないだろう。
新入生にもやはりPKMの数は多い。
まだまだ人間の方が多いとはいえ、やはり個性的には色とりどりだな。



***



校長のありがたーい話を聞き終えると、俺たちは教室に戻った。
全員が教室で先生を待つと、少し遅れて先生は戻ってきた。
その隣に転校生を連れて。

悠気
 「あ……」

女生徒
 「あ!」

俺は転校生を見て驚いた。
まるで光輪のようにも見えるピンクの羽。
それは一瞬だが、記憶にある。


 「お? 若葉と知り合い?」

女生徒
 「いえ、その……」


 「まぁいいや! 黒板に名前を書いて!」

俺は確かに女生徒の顔に見覚えがある。
と言ってもお互い顔なんて知るわけがないが、あの子は間違いなく廃寺にいたよな?
少女は一言で言えばPKMだろう。
腕輪をしていたし、人間でないことは分かる。
ただ、流石に分類は不可能だ。

やがて女生徒は看板に名前を書き終えた。
月代宵、クレセリアとある。


 「月代宵(つきしろよい)と言います、皆さん宜しくお願いします!」

少女は土星の輪のようなピンク色の羽を持っている。
羽は下を向いて燐光を輝かせた。
月の光のような髪の毛は後ろで団子状に纏められており、控えめに言っても美少女の方だろう。
早速生徒たちも話題にしており、皆可愛いと口にしていた。
御影先生は空いた席を示して着席を促すが……彼女は何故か俺の方に来た。

悠気
 「なに?」


 「あなた……今朝私のスカート覗いたでしょう!?」

悠気
 「……は?」


 「え?」

琴音
 「スカート……?」

幸太郎
 「覗いた?」

全員
 「「「えええええええ!?」」」


全員の素っ頓狂な声は教室の外まで響いた事だろう。
俺はポカーンとするが、どうやらそれ所じゃないらしい。

悠気
 「いや! 見てないから!」


 「嘘! 下から覗いていたじゃない!」

悠気
 「石段の下から見える訳ねぇだろ!?」


 「見た!」

悠気
 「見てない!」


 「見たったら!」

悠気
 「冤罪だ!」


 「アンタら……喧嘩なら終業後にしろー!!」

いい加減痴話げんかに切れる御影先生、喧嘩は止めてください!
月代は渋々席に戻ると、御影先生は連絡事項を説明していく。
その間も月代は俺をじーっと見ているのだった。

キーンコーンカーンコーン!

ロンドン塔由来のベルが鳴ると、始業式の日程は終わった。


 「それじゃアンタら寄り道するんじゃないわよ−! 号令!」

幸太郎
 「起立! 礼!」

始業式が終わると皆帰り支度を始める。
当然俺もそうするが、月代は迷わず俺の元に来た。
俺はウンザリしながら、仏頂面の月代を見た。


 「貴方名前は?」

悠気
 「若葉悠気だけど?」


 「その名……覚えたわよ! 首を洗って待ってなさいーっ!」

そう言うと月代はダッシュで教室を去って行った。
教室はそれを見た全員が呆然とする。

悠気
 「何を待てと?」

とりあえず第一印象は最悪だった。

男子生徒
 「若葉、お前の評価はこんな所だな!」

瑞香◎
琴音―
柚香◎
宵 ×

悠気
 「突っ込まんぞ……」



***




俺はやや不機嫌気味に荷物を纏めると学園を出る。
しかし、校門で俺を追ってきた瑞香に捕まった。

瑞香
 「ちょい待ち!」

悠気
 「なんだ?」

俺はやや不機嫌さを顕わにして瑞香を見ると、瑞香は俺の腕を取る。
まさかアームロック!? と警戒するが技をかけてくる様子はない。

瑞香
 「昼飯! 奢ってよね!?」

悠気
 「おま……あれは賭けが成立してないだろ」

瑞香
 「男が細かいこと気にすんな! ほら私が腕組んであげてるんだから♪」

悠気
 「……仕方ない」

俺はまだ月代の理不尽なイメージを拭えなかったが、瑞香の気遣い(?)で少し気を紛らわせると街へと向かった。



***



瑞香
 「あ! ゲーセン行かないゲーセン!」

街の中心に行くと色んな物がある。
瑞香は俺の腕を外すことなく、引っ張り回して俺は無理矢理ゲームセンターに連行された。

悠気
 「飯奢るという約束の筈では?」

瑞香
 「良いじゃん! まだお昼には早いしさ!」

瑞香はそう言うと、真っ先に音楽ゲームの方に向かった。
瑞香の事は大体知っているが、奴は音ゲーが特に好みだ。
瑞香はゲーム機の前に立つと、俺を手招きした。

瑞香
 「一緒にやろう!」

悠気
 「……わかった」

俺はゲームにそんなに興味はないが、瑞香の笑顔を見て従うことにした。
瑞香は確かに手が早い、それが暴力女のイメージを定着させているが、普段からなんでも暴力を振るっている訳ではない。
社交性はちゃんとあるし、年下の面倒見は良い。
ただ歯に衣着せぬ物言いは、ややトゲトゲしく、それが悪い印象を与えるのだろう。

瑞香
 「よ! は!」

瑞香は難しい難易度で、俺は簡単な難易度で遊ぶ。
曲の終わり際、1回ミスをした瑞香は悔しがる。

瑞香
 「あー! あとちょいでフルコンだったのにー!」

悠気
 「やれやれ、そう言うことに拘ってたらストレスにならないか?」

瑞香
 「気になるのよ! 1ミスって!」

瑞香は頭は平凡だ。
悪くはないが良くもない、ただ点数に頭を悩ませる奴じゃない。
所がキリが悪いのは嫌いらしい。

悠気
 (やれやれ……)

瑞香は悔しそうに再挑戦、俺はそれを後ろから見ている。
大好きと言っても瑞香は特別上手な訳じゃない。
単純に運動神経が良いから、普通の人より上手いだけだろう。
しかし今度は盛大にミスりまくって爆死、テンション次第でムラのある奴だ。
瑞香は結果に項垂れると、戻ってきた。

瑞香
 「もうやだ、今日は気分が乗らない!」

悠気
 「なら、飯にするか?」

瑞香
 「うん……あら?」

ふと、瑞香はレトロゲームコーナーを見た。
そこにはかなり昔の格闘ゲームをプレイしている女の子を見つけた。
女の子はピンと立った茶色い耳に、大きな筆のような尻尾をしたPKMだった。
ただ、そのプレイは出鱈目に上手い。
それこそ瑞香が見惚れるほどだった。

瑞香
 「あの子時々見るんだよね……」

悠気
 「中学生かな? レトロゲームに興味あるなんて変わってる」

俺はあまり眺めているのもプレイしている女の子に悪いので瑞香の腕を引っ張ると、店を出る。

瑞香
 「あ」

悠気
 「なに?」

瑞香は俺に手を取られると、何か言おうとしたが、何も言わなかった。

瑞香
 「ううん♪ なんでもない、ファーストフードで安く済ませましょうか!」

悠気
 「安いところでお願いします」

頼むから高い所は辞めて欲しい。
俺は学生の身分、持ち金は少ない。
その点は瑞香も変わらんだろうが、瑞香は某大手チェーン店を選んだ。
店内は違う学校の生徒などもおり、そこそこ混雑している。

瑞香
 「悠気は何を頼む?」

悠気
 「金ない……」

俺はそう言って遠慮した。
一応家で母さんが用意してくれているし、買い食いは遠慮したい。

瑞香
 「アンタんちってシングルマザーなのよね、やっぱり生活大変なんだ」

悠気
 「まぁな、お陰で殆ど自炊」

本当は両親健在だが、親父はいないのと変わらないからそれでいい。
俺は露骨に不機嫌な顔をすると、流石に瑞香もバツが悪そうにしていた。

瑞香
 「ごめん、あんまり家庭事情に踏み込むの良くないね……」

悠気
 「……」

俺は何も言わなかった。
家庭事情に俺自身不満に思ったことなんてない。
あっても母親を蔑ろにする父親に対しての憎悪だけだ。


 「へい! そこのボーイ&ガール! 買い食いとは良い度胸だな!?」

瑞香
 「この声は!?」

その声は大変聞き覚えがある声だった。
それは今だ説明はしていないが、通称学園一の問題児!

悠気
 「葛樹光先輩!」


 「よ! ユウ! それにミッカーも!」

先に店内でバーガーを食べていたのは同じ学園の3年生葛樹光(くずきひかる)。
ジャローダというPKMの先輩で、容姿は端麗、スラッとした細身でつり目が格好良いイケメンだが、学園での評価は賛否両論だ。
兎に角面白いと思ったら何でもやり、生徒会の天敵と呼ばれる男。
瑞香も流石に苦手か、いつもより弱腰だ。

瑞香
 「葛樹先輩……変なニックネームは止めて……」


 「なんだミッカーは嫌か? ならばミズーだな!」

瑞香
 「もうやだ……なんで悠気に目を付けてるの……」

問題児だと言われてるが、実は葛樹先輩滅茶苦茶頭が良くて、テスト前では何かとお世話になっている。
そのため邪険には出来ないんだよな。


 「ふはは! ユウよ! パンチラしたというのは本当か!?」

悠気
 「冤罪です!」

もう知れ渡ってんのか!?
俺は迷わず否定すると光先輩はうんうんと推敲して答えを導く。


 「であろうな、本当ならお前は自首しているだろう」

俺はこれでも地味だが、品行方正を心掛けている。
こういう点でやましい気持ちがないからこそ、信頼を勝ち得ているな!

瑞香
 「月代さんだっけ? あの子なんか気になるのよねぇ……」

変な捨て台詞といい、俺的にも好印象はない。
だが、これから同級生として過ごす以上なんとか和解しないと。

その後、先輩に絡まれつつ昼ご飯を奢ると、俺たちは解散した。
そして少し遅く、家へと辿り着いた時だった。



***



悠気
 (引っ越し?)

家の隣、今トラックから色んな家財が運び込まれていた。


 「それはリビングに頼みまーす!」

悠気
 「ん? この声は?」

割と聞き覚えがある声。
その声の主は玄関から出てくると、隣の家の俺と目が合った。


 「え……?」

悠気
 「は?」

悠気&宵
 「「えええええええ!?」」

それは隣の家に引っ越してきた、あの月代宵だった。



『突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語』


第1話 転校生 完

第2話に続く。

KaZuKiNa ( 2021/01/09(土) 18:12 )