突ポ娘短編作品集


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霊視家政婦セローラちゃん!
第8話 メリーさんの電話 後編

ブー! ブー!

クチートさんのスマホが鳴る。
彼女は真っ青な顔でスマホを手に取った。
そして電話に応じる。

クチート
 「も、もしもし? 室ですが?」

スマホはスピーカーモードで周囲にも音が響く。
私は初めてそのオカルトの声を聞く。

スマホ
 『私メリーさん、今ね? 駅前にいるの』

ブツン! ツーツー!

たったそれだけ、それだけ伝えて通話は終わった。
クチートさんはガタガタと震えると、その場で泣き崩れる。

クチート
 「うわーん!? そもそもメリーさんってどなたですの!? 人違いじゃありませんこと!?」

私は取り敢えずメリーさんとかいう怪談を調べた。
私は異世界人という事もあり初耳だったが、この日本では凄く有名な怪談らしい。
なんでも経緯はこうだ。

引っ越しの際捨てられた人形のメリーさんは、どうやってか電話を掛けて持ち主に迫ってくる。
段々迫ってきて、遂には家の前で連絡を入れてくるが、持ち主は玄関を開けても誰もいない。
なんだ、イタズラ電話かとホッとすると、更に電話がかかる。
今、アナタの後ろにいるの。
そこで怪談は終わる。

セローラ
 「なんなんですかこれは? 全く意味が分かりません!」

そう、このメリーさんは調べてもオチが定まらないのだ。
というか、凄まじくオチや派生が多い!
ざっと調べただけでもオチは20種類以上はある、しかもガチで怖いものから、ただのジョークまで!
イマイチ怖いかというと、そうでもなく寧ろこの国では親しまれている気さえするのだが?

セローラ
 「そもそも、死亡オチがない時点でこいつに怯える必要ってあるんですか?」

しかし、電話を食らった当人と美柑さんは別らしく、ガタガタ震えながら怖がっていた。

美柑
 「だ、だって、逆に言えばどんなオチが待っているかも分からないんですよ!? 梅田地下街から永久に出られないとか怖すぎですよ!?」

セローラ
 「そもそもなんで大阪!? ていうか調べたら妙にメリーさんって大阪を舞台にしたオチが多いのはどういうことなんですか!?」

しかも被害に合うのはメリーさんだし!
酷いオチだと、地上132階の超高層ビルを律儀に階段で昇って途中で体力が尽きて力尽きるオチとか、某殺し屋に誤って背後に立った結果ズキューンされるとかオチが酷い!
一応ガチなやつだと、後ろからブスリと刺されるってのもあるけど、これ生死不明なのよね。

クチート
 「ああ、私どうなってしまいますの!? メリーさんは私に何の用がございますの!?」

クチートさんは所謂最悪のパターンを想像しているらしいが、私には流石に馬鹿馬鹿しいとしか言いようがない。
というか、そもそもの原因だけど。

セローラ
 「クチートさん、貴方何かに取り憑かれてますよ?」

クチート
 「ヒイイ!? 何かってなんですの!?」

そんな物私だって分からない。
私だって別にオカルト好きじゃないんだ。
いちいちオカルトの性質なんて分かるわけがない。
ただ、霊視で見るとクチートさんには怪しい影が背中に張り付いているのが分かる。
それ自体、私がこれまで見た霊に比べると特に危険性は感じない。
しかし恐らくだけどメリーさんが誘引される原因はクチートさんに取り付いた霊が原因だ。

セローラ
 「まだ確証が取れないんで、先にメリーさんをとっ捕まえてからにしますが、霊自体は簡単に取り除けますよ」

クチート
 「ほ、本当に?」

セローラ
 「ただ、クチートさんに取り付いた原因が分からないと、意味ないですからね」

霊はそれほど自由な存在じゃない。
常に何かに依存しなければならず、それは土地だったり物だったり。
つまり遠隔の相手を狙って霊が取り付くのは普通じゃないのだ。
確証が取れない事には再発予防も出来やしない。

セローラ
 「美柑さん、一応連れて来てなんですけど、対して必要性もなさそうですね」

美柑
 「うぅ、無理矢理連れてきた癖に……」

保美香
 「それにしてもメリーさんですか」

マギアナ
 「なにか気になりますか?」

保美香
 「気になるといえば気になるわね……こんなメジャーな怪談、いやメジャー過ぎるのが気になりますわね」

保美香さんはメジャー過ぎる故にメリーさんを疑っているらしい。
まぁ確かに誰でも知っているって逆に怪異としては怖くないものね。
保美香さんの場合ガチでやばい怪異に襲われたから余計なのかも。

セローラ
 「まぁ、セローラちゃんとしてもメリーさんは気になりますね」

美柑
 「え? セローラさんが?」

ブー! ブー!

クチート
 「ヒッ!?」

再び電話が鳴った。

セローラ
 「もし宜しければその通話私に任せてくれません?」

クチート
 「え? いいけど……」

私は許可を貰うと、クチートさんのスマホを手に取り、通話ボタンを押す。

セローラ
 「ハァハァ♪ ねぇメリーさん、今どんな下着をつけているの? 色は?」

保美香
 「変態かこの雑菌がー!!」

すかさず保美香さんのドロップキックが飛んできた。
私は顔面で受けると、地面に横たわる。

ロコン
 「わー! クリーンヒットなのだ!?」

保美香
 「申し訳ございませんメリーさん! あの雑菌は私が消毒しますかしら!?」

保美香さんはスマホを拾うと平謝りした。

スマホ
 『……私メリーさん、今コンビニの前にいるの』

メリーさんは気にしてない(?)のか取り敢えず今の場所を伝えて通話を切った。

セローラ
 「ご、ごふ!? じょ、冗談のつもりでしたんですが?」

保美香
 「この雑菌! 人形相手でも欲情しますの!?」

保美香さんはスマホをクチートさんに返すと、怒りを現わにしていた。
このままではやばいのでセローラちゃんも反論する!

セローラ
 「だって! もしメリーさんがパッツンボディのロリ巨乳ならどうします!? そりゃひん剥いてレイプしたくなるでしょうが!」

保美香
 「貴様だけかしら! この痴れ者がぁー!!」

ドッゴォォ!

保美香さんの手加減もないキックが私の顎を跳ね上げた。
私はそれで意識を失った。



***



セローラ
 「……いや、オカルトとか妖怪とかって怖いなぁって私も思っていた時期がありました……でも、保美香さんの方がよっぽど怖いですねぇ」

あれから室内で手当を受けた私はすでにボロボロの状態で意識を取り戻した。
セローラちゃんギャグキャラだったから良かったものの、これがシリアスなら私死んでましたよ?

あれからどれ位時間が経過した?
今メリーさんの位置は?

セローラ
 「痛た……取り敢えず移動しましょう」

私は顔面を抑えながら、外を目指す。
私は旅立ち荘の玄関を目指すと、入口には人数が少し減っていた。
相変わらず玄関の段差に腰を下ろしながら、ノイローゼみたいに顔を青くして俯いているクチートさん。
そして周囲にはどこからメリーさんが来てもいいように、美柑さんとマギアナさんがクチートの脇を固めていた。

セローラ
 「半分居なくなってますね?」

クチート
 「ぴょえ!? あ、せ、セローラさんですの?」

クチートさんはビクッと震えると恐る恐る振り返る。
私じゃ何か不都合何でしょうか?

マギアナ
 「セローラさん、もう大丈夫なんですか?」

セローラ
 「いやまぁ、大丈夫と言えば大丈夫ですが、重症と言えば重症なような」

私思いっきり顔面蹴られた訳で、そりゃ普通じゃ済ませんよ?
ギャグキャラじゃなかったら、複雑骨折や眼球陥没、最悪脳溢血で死んでますよ?

美柑
 「はぁ、でもそれはセローラが巫山戯るからでしょ?」

セローラ
 「巫山戯てなどいません! 欲望に忠実なのです!」

私はドーンと胸を張ると、美柑はため息を吐き、マギアナは笑っていた。

クチート
 「もう……この人本当に信用出来ますの?」

クチートさんはそう言うと不安一杯に首を振った。
むぅ、私はしがないベビーシッターであり、ただの家政婦なのですが?
因みにナースメイドって乳母の事だそうですね。
兎に角断じて私はゴーストバスターの類ではない。
たまたまオカルトに巻き込まれて、たまたまそれの解決をしているだけ。
セローラちゃんは非力なランプラーなんです、オカルトと戦うなんてそもそも不本意で、そんなの美柑さんに押し付けるべき!

美柑
 「なんか背筋に寒気が……」

美柑さんはそう言うと顔を青くした。
どうやら私の考えを相変わらず微妙に察知したらしいですね。
だから美柑さんはツルペタヘタレなのだ。

セローラ
 「それで他の皆は?」


 「はーい、差し入れだよー」

後ろからだった、燐さんがなにかトレイを持ってやってきた。

マギアナ
 「まぁ、クレープですか?」


 「保美香さんが焼いてくれたんだ」

セローラ
 「保美香さんが?」

私はリビングの奥を見る。
共用のキッチンがあるようで、保美香さんとロコンちゃんがいた。

ロコン
 「ふわああ♪ すごいのだー♪」

ロコンちゃんは目をキラキラさせると、鮮やかな手並みでクレープ生地を焼き、盛り付けしていく保美香さんがいた。
相変わらず保美香さんは料理上手ですねー。
ていうか勝手知ったる台所でもないのに手際の良いことで。

保美香
 「はい♪ これはロコンちゃんの分よ?」

イチゴのクレープだろうか?
ロコンちゃんはそれを受け取ると、パクンと齧り付き、口元に生クリームを付着させた。

保美香
 「あらあら、口元が汚れてますわよ?」

セローラ
 「もう、ほらちょっと止まって!」

私はロコンちゃんの前で屈むと、懐からハンカチを手に取り、ロコンちゃんの口元を拭いた。

ロコン
 「むー、くすぐったいのだー」

セローラ
 「我慢なさいな」

保美香
 「セローラ……目を覚ましたのですね」

私は保美香さんを見るとニーと口元を歪めて笑った。
やった張本人の言葉とは思えませんねー。

セローラ
 「おかげさまで、顔面歪みましたよ!」

保美香
 「す、少しやり過ぎたかしら……」

一応過剰攻撃の自覚はあるんですね。
まぁ私は別にそれ位で保美香さんを嫌いにはなりませんが。

セローラ
 「まぁせめてもの慰謝料請求するなら、私もクレープ下さいな」

保美香
 「慰謝料って貴方……まぁ、それ位なら愚問ですわね」

ロコン
 「んふふ〜♪ 絶品なのだ〜♪」

て、静かにしてると思ったら、ロコンちゃん無心でクレープ食べてますね。
まぁた口を汚して!

セローラ
 「もう、レディがはしたないですよ?」

保美香
 「セローラがレディを語る(笑)」

む……そりゃセローラちゃん、レディとしてはちょっとアレかもしれないけど、一応ちゃんとした作法も躾けられているんですよ?
ただ面倒くさいから守らないだけで、知識はあるんですから!

ブーブー!

クチート
 「ひぃ!?」

セローラ
 「っ!」

クチートさんのスマホがバイブ機能で震えた。
クチートさんはスマホを慌てて、落としそうになるが震える両手でしっかり掴み、画面を見る。
着信画面だろう、今メリーさんはどこに?

クチート
 「も、もしもし……む、室ですが?」

メリーさん
 『私メリーさん、今旅立ち荘にいるの……』

マギアナ
 「えっ?」

セローラ
 「す、既に中に!?」

ブツン! ツーツーツー。

着信が切られた。
私達は既に侵入したというメリーさんを探した。


 「う、嘘でしょ!? いつの間に侵入したの!?」

クチート
 「ひいい!? どこ!? どこに居るの!?」

セローラ
 「燐さん、この旅立ち荘の広さは!?」


 「えと、地下に貯蔵庫があって、あと部屋は2階まで、その上に屋根裏があるにはあるけれど……」

私は瞬時に霊視の目線に切り替えると、上を探した。
可能性があるとしたら2階から侵入した可能性がある。
だけど、見つかるのは鳥や鼠のような小さな魂ばかり、怪異の持つ闇の魂が見当たらない!

ブーブー!

クチート
 「えひゃ!? ま、またですー!?」

なんとなくやばいかもしれない。
私はクチートさんに電話に応じないように静止しようとした、しかしクチートさんは。

クチート
 「もう人違いじゃありませんのー!?」

メリーさん
 『今私、貴方の後ろにいるの』

クチートさんが電話に応じてしまった。

セローラ
 「っ! 気をつけろ! これは◯タンド攻撃だぁ!!」

クチート
 「イヤァァァァ!?」

クチートさんは涙目になりながら両手で頭を抑えて首を振った。
そしてクチートさんの意思に反応したのは鋼の強度を誇るポニーテールの角だった。

ガブリ!

マギアナ
 「あらあらまぁ」

美柑
 「は?」


 「ええ……?」

その瞬間に、皆口をポカーンと開けて呆れた顔をした。

セローラ
 「とりあえず説明ぃ! クチートさんが! 後ろをガブリ!」

某パーティゲーム風に説明してみたが、メリーさんと呼ばれる呪いの人形は60センチ程の洋式人形だった。
クチートさんの角は鋭利な牙がビッシリ生えており、それはもうギシギシとメリーさんの木製と思われる身体は悲鳴を上げるほど強く噛みついていた。

クチート
 「はぁ、はぁ……え?」

クチートさんは状況がよく飲み込めないのか、大粒の涙を零しながら両手で頭を抑えていた。
だんだん何が起きたか理解するとクチートさんは後ろを振り返る。

メリーさん
 「あの……私メリーさん、痛いからもうやめて……!」

クチート
 「ぴゃあ!? な、なんで私の角にメリーさんがいますの!?」

セローラ
 「このエセお嬢様、角はワンワンかなにか?」

クチートさんは自分の角なのに、理解不能らしい。
人化してなお、クチートの象徴たる角だが、木製と思われるメリーさんが勝てるはずがないのだ。

保美香
 「あらまぁ、これがメリーさんの正体?」

セローラ
 「あ、こいつ皆に見えるタイプなんだ」

怪異は大抵適正の無い人間には見えない所がある。
あの妖怪雲外鏡のように見えない方が普通なんだけど。

雲外鏡
 『イエーイ、ワシ出番あったー♪』

とりあえず、掛けられた鏡に映る雲外鏡は無視する。
ていうか、今回は雲外鏡の出番は無かった筈じゃないの!?

ロコン
 「ちっこいのだなー」

まぁそりゃダッチワイフじゃあるまいし、子供の人形ですからね。
クチートさんはポトリとメリーさんを落とすと、メリーさんはピクピクと震えていた。

私達はとりあえずメリーさんを取り囲む。



***



メリーさん
 「私メリーさん、お願い縄を解いて」

セローラ
 「むふー♪ どうです見事な亀甲縛りでしょ!? いつか茜ちゃんにしたくって勉強した甲斐あったわー♪」

保美香
 「もうやだこのHENTAI」

私は素早くメリーさんを亀甲縛りで縛ると、燐ちゃんや美柑さんは顔を赤らめ、一方クチートさんとロコンちゃんは意味が分からず首を傾げた。

セローラ
 「さぁーて、それじゃ尋問しますかねー?」

クチート
 「あ、貴方! なんで私を狙いましたの!? 私貴方なんて知らないですわー!?」

セローラ
 「と、原告側は主張していますが、被告?」

メリーさん
 「私メリーさん、貴方は印があるの」

被告メリーさんはそう言うと、おもちゃの瞳でクチートさんを見た。
いや、メリーさんが見ているのはクチートさんの背中だ。
結構不気味に動くメリーさんにクチートさんは気持ち悪そうに身を捩った。
まぁ無理もないですが。

クチート
 「印って何の事ですのー?」

セローラ
 「メリーさん、正直に答えてくださいねー? クチートさんの背中の霊障のような物はなんですの?」

メリーさん
 「私メリーさん、それ、は……」

保美香
 「メリーさんの様子がおかしいですわ!?」

突然メリーさんが震え始めた。
ガタガタと震えて、その後を話さない。

セローラ
 「教えなさい! それはなんですか!? 答えないと油風呂ですよ!?」

メリーさん
 「ち、が……私はとも、だち」

その瞬間、ガシャァァン、とメリーさんは音を立てて砕け散った。

セローラ
 「え? 友達?」

私は意味が分からなかった。
メリーさんは誰を友達と?
皆不気味な物を見た顔でただ口を抑えていた。
私はメリーさんを霊視する。
すでにそこに怪異の気配は無くなった。

セローラ
 「ただのカカシですね」

もはや、それに脅威なんて何もない。
ただのばらばらになった女の子の人形だった。

セローラ
 「クチートさん、背中を」

クチート
 「え? え?」

クチートさんは言われるまま、背中を向けると私は口を開いて背中に吸い付く。

クチート
 「ひゃ!?」

美柑
 「ちょ!? セローラ、セクハラは!?」

私はクチートさんに取り付いていた何らかの霊障を食べると、クチートさんから離れる。

セローラ
 「服の上からセクハラもないでしょ? それにクチートさんの背中を見てみなさい?」

美柑
 「あ……」

美柑さんは視えている筈だ。
もうクチートさんには何も憑いてない。
これでメリーさんに狙われる事も無いはずだ。
最も……そのメリーさんはもうどこにもいないのだが。

セローラ
 (気になる言葉を言っていた……友達? どういうこと? 誰に対して?)

しかし、そんなの私に分かる訳がない。
私は探偵ではなく、あくまで家政婦なのだ。
ただ、『霊』が『視』えるだけの『家政婦』、セローラちゃんなのだ。



***




 「どうしてかなー?」

繁華街を歩くカラスのように真っ黒な姿の中年の男がいた。
鍔付きの真っ黒な帽子を左手で抑え、その右手には商談でもあるのか大きなアタッシュケースが握られている。
ご丁寧にそのアタッシュケースまで真っ黒なのだ。
このPKMが他地方に比べて、不思議なほど集中する街で、その男性の前を当たり前のようにPKMが歩いていく。
男性はそんなPKMを目で追った。

男性
 「どうしてだろう?」

再び独り言を呟いた。
誰にも聞かれない、そして誰も特段注目もしない。

男性
 「同じじゃないか」

PKMは女の子だろうか、フライゴンという種族のPKMだ。
社会に順応しており、カジュアルな服装で尻尾を揺らして楽しそうだ。

どん!

フライゴンの女性は翼を誤ってスーツ姿の男性にぶつけてしまった。
真っ黒な男性は足を止め、その様子を眺める。

フライゴン娘
 「ご、ごめんなさい!」

スーツ姿の男性
 「ああ、気をつけてくれよ?」

事なきを得た。
スーツ姿の男性は手を振って、フライゴンを咎めず歩き去り、フライゴンはシュンとしながら翼を畳んで歩き出す。

男性
 「……異能『ポケモン』が許され、怪異『オカルト』は許されない……なんでだろうなー?」



***



クチート
 「ふぅー! これで良し! ですわ!」

クチートは一連の事件が解決すると、自室でメリーさんを修復した。
最初は怖かったメリーさんだったが、こうやって動かない内はやっぱり可愛らしいお人形さんである。
クチートはメリーさんが捨てられた怨念から産まれたオカルトだと知ると、なんだか可哀想に思い、拙い手でメリーさんを一から組み立てたのだ。

クチート
 「はぁ、脅かしっ子はなしですわよ? 私だって異世界で心細いのですから」

クチートは修復したメリーさんをベッドに置いた。
これがクチートにとってメリーさんの供養法だった。

クチート
 「さ〜てと! ロコンさーん! 今夜こそ貴方に勝ちますわー! オーホッホッホ!」

クチートはそう言うと部屋を出て行った。
ロコンは受けて立つと、やる気満々で、アルバイトから帰ってきたアバゴーラも参加する。
後ろから見守るウォーグルとスリープはそれを眺めていた。

旅立ち荘は皆の家である。
それは異能者(ポケモン)の数少ない拠り所なのかもしれない。



突ポ娘外伝

霊視家政婦セローラちゃん!

第8話 メリーさんの電話 完



次回予告!



雲外鏡
 「そろそろワシの主役回ってないのー?」

セローラ
 「あのね雲外鏡? これ一応ポケモン作品なの? ポケモンじゃない奴はお呼びじゃないんですよ」

雲外鏡
 「酷い!? ワシただでさえこの作品しか出られないのに!?」

セローラ
 「大体ポケモンだけで異能はお腹一杯、それにオカルト混ぜ始めたら収集つかんのです!」

雲外鏡
 「それは作者の責任では!?」

セローラ
 「というわけでセローラちゃんは、茜ちゃんに突撃するのです!」

雲外鏡
 「何がという訳でなんじゃ!? というか次回予告は!?」

セローラ
 「次回! セローラちゃん、ウサギちゃんと遭う!」



KaZuKiNa ( 2021/07/03(土) 18:28 )