突ポ娘短編作品集


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霊視家政婦セローラちゃん!
第4話 水着って言い張れば、どんな格好でも健全扱いって冷静に考えれば凄いよね 後編

後編だよ!



観光客A
 「あれ見ろよ?」

観光客B
 「うお、美人! PKMだよな?」

観光客C
 「うん? あの女性どこかで……?」

保美香
 「……はぁ」

海に来たわたくし達、わたくしはセローラを引き摺り水面に寄った。
しかし周囲から聞こえる雑音はわたくしをイライラさせる。
どいつもコイツも見る目がない、まるでその獣欲をわたくしにぶちまけんとする獣のような人たちにはうんざりします。
そう、それは3年前と同じだ。
茜とだんな様を襲った地元の不良共、奴らは今も同じことをしているのだろうか?
少なくとも見覚えのある者はいた。
しかし私はそれを無視する、もしまたも同じことを繰り返すなら今度こそ死よりも恐ろしい現実を教えてやりますが。

セローラ
 「うぅ〜」

保美香
 「お、恐れることは御座いませんわ! わたくし達はPKM、死を超越したのです!」

セローラ
 「いや、そんな事ありませんから!? 後保美香さん震えてますよ!?」

セローラじゃないが、やはり海は怖い。
お風呂とは訳が違うのだ、波に足首が浸かるだけで身の毛がよだつ。
セローラの根源的な恐怖と私の恐怖は同一なのかもしれない。

セローラ
 「ねぇ? 度胸試しなんてやめましょうよ? ご主人さま達とイチャイチャするほうが楽しいですよ!?」

保美香
 「シャラップ! 家政婦ならば! 弱点などあってはいけないのです!」

セローラ
 「それ保美香さんだけでしょう!? セローラちゃんは嫌なものは嫌ですー!?」

セローラが暴れるが、私はその手を放さない。
だが、わたくしが臆しているのは事実だ。
しかし今年こそは恐怖を克服するとわたくしは誓ったのだ!
おめおめと成果無しなど許せる訳なし!

伊吹
 「えーい♪ 隙きありー♪」

バシャン!

突然わたくしとセローラは頭から海水を被った。

セローラ
 「ぴいぃえやあああああ!?」

伊吹
 「もう〜! セローラ? 海水浴びても〜、大丈夫でしょう〜?」

セローラ
 「し、ししししし、心臓止まるかと思いましたよ!?」

伊吹
 「そんな大げさな〜、あれ? 保美香〜?」

伊吹さんの些細なイタズラ、わたくしは真っ白になると立ったまま気絶した。



***




 「無茶しやがって」


 「ヤムチャまた死亡?」

保美香
 「ガッデム……ですわ」

あの後気絶した保美香さんは日陰に移された。
気絶する程怖いなら、やめればいいのにどうして意固地になるのだろう。
付添の私は呆れてしまう。

セローラ
 「保美香さん、私達PKMは弱者なんですよ?」

保美香
 「く、教えて下さいセローラ、わたくしは何度負ければ良いのです? ゼロはなにも答えてくれない……」


 「お前ら……泣かせるねぇ」

セローラ
 「だいたい、PKMに限らず人間だって苦手ものありますよねぇ?」

私は茂さんを見た。
そう言えば茂さんの嫌いな物ってなんだろう?


 「そうだな……俺も苦手な物はあるしな」


 「私も……孤独は嫌」

茜ちゃん、すっごく深刻そうな顔でそう言った。
たしかに茜ちゃんって誰かと一緒にいる姿しか見た覚えないなぁ、孤独は茜ちゃんを殺すかぁ。


 「あと饅頭こわい」

保美香
 「茜、それは落語ですわ」


 「てへ♪」

茜ちゃんは突っ込まれるとウィンクして自分の頭を叩いた。
相変わらず何やってもあざとい程可愛いわね。

保美香
 「それにしてもPKMですのにこの根源的恐怖はなんなんでしょう?」


 「それが、ポケモンの性、かもね」

茜ちゃんはそう言うと立ち上がった。

セローラ
 「どうしたんですか?」


 「少し遊ぶ」

茜ちゃんはそう言うとゆっくりと浜辺に向かった。

セローラ
 「あ、危ないですよ!?」


 「おいおい! 気をつけてくれよお母さん!?」

私と茂さんは茜ちゃんの両脇を護り、さながらVIPの護衛のようだった。
茜ちゃんは上機嫌に海へと浸かる。


 「うん♪ 少しだけ身体が軽い」

セローラ
 「まぁプールに入るなど妊娠時には良いそうですからね」

身重の体の負担は並じゃない。
まして体の小さい茜ちゃんだと大きなお腹の負担は大きいだろう。

美柑
 「あれ? 茜さん日陰から出て大丈夫なんですか?」

既に海で満喫していたであろう美柑さんは私達に気がつくと近寄ってきた。
その後ろには凪さんもいた。
どうやら美柑さんと凪さんで水球をしていたようだ。


 「茂さんも海で遊ぶのか?」

最初は緊張気味だった凪さんもすっかり落ち着いて、いつもの大人な雰囲気に戻りましたね。
視線を気にする姿もギャップがあって良かったのですが。


 「そうしたいが、茜を見ていないといけないからな」


 「ご主人さま、行ってあげて?」

茜ちゃんは茂さんの腕を引っ張ると、優しく微笑んだ。
自分ばかり大切にせず、他の家族も大切にしてほしいという事だろう。
相変わらず茜ちゃんは優しいなぁ。

セローラ
 「私が見ていますんで、ご主人さまどうぞ♪」


 「……セローラに優しくされると裏がある気がして仕方ないが、まぁ万が一はない、よな?」

むう、信用の問題ですか。
流石に海に浸かった茜ちゃんには手は出せませんよ!
茂さんは結局茜ちゃんの後押しで美柑さん達のもとに行った。

セローラ
 「本当はご主人さまと遊びたかった?」

私はご主人様がいなくなると茜ちゃんにそう聞いた。
茜ちゃんに頬を赤く染めると、小さく首を振った。


 「ん、でも……私はもう充分ご主人さまに甘えたもの……」

セローラ
 「謙虚ですね、憧れちゃうなー」

伊吹
 「キャー、リューサン♪」

セローラ
 「古い! 絶対誰も分かってくれないし! ネタ元間違ってるし!」

なんてボケていると、いつの間にかビニールボートに載った伊吹さんが漂ってきた。

伊吹
 「セローラ〜、さっきはごめんね〜?」

セローラ
 「……正直激おこぷんぷん丸ですが、セローラちゃんは心が広いので、今回は不問にします」

私は先程の伊吹さんの蛮行を思い出すと、拳をプルプル震えさせ、怒りを抑えた。
炎タイプに容赦なく海水ぶっかけるとは思わなかった。
保美香さんなんて立ったまま気絶してましたからね。
おのれ氷とドラゴンとフェアリー位しか弱点がないからと調子に乗りおって。

伊吹
 「茜ちゃん、セローラちゃん。よかったらボートに乗らない? 気持ちいいよ〜♪」

セローラ
 「折角の誘いですが、やっぱりセローラちゃん怖いです、海に落ちたら生きた気がしません」

伊吹さんの乗る青いビニールボートは3人乗っても大丈夫な大きさだったが、世の中万が一というのもある。
リスクヘッジを考えると、乗るのはフラグな気がしてならないのだ。
多分保美香さんも乗らないだろう。


 「楽しそうね」

茜ちゃんは乗るみたい、たしかにボートの上の方が身重の茜ちゃんには安全かもね。

伊吹
 「それじゃ手を掴んでー♪」

伊吹さんはボートの上から茜ちゃんの手を掴むと茜ちゃんを引き上げた。


 「思ったより揺れるね」

伊吹
 「浮いてるだけだからねぇ〜、もう少し空いている方に行こうか?」

伊吹さんはそう言うと、足をバタバタさせて、ボートを沖へと進めた。
私は二人の姿が小さくなると、その場から離れる。

セローラ
 (ご主人様も海で遊んでいるし、退屈だな〜)

茂さんは今、美柑さんと凪さんと一緒に水球を楽しんでいる。
運動神経の良い二人相手に大苦戦しているが、ストレスは発散できているのか茂さんも楽しそうね。

セローラ
 「ま、やっぱり海はセローラちゃんに合わないって事でしょうね」

私はそう言うと、浜辺を歩く。
観光客で賑わう浜辺は、ちょっと気をつけないとすぐに人とぶつかってしまいそうだ。
まぁ面倒なら霊体化すれば良いだけなんだけど。
そんな風に気をつけながら、人混みを離れると、私は見知った顔を見つけた。

セローラ
 「あ、保美香さん、もう大丈夫……あれ?」

私は保美香さんを見つけると、近づいた。
しかし様子がおかしい。
保美香さんの周りには水着の男が3人ほどいた。

チャラ男A
 「ねぇ、お姉さん〜、俺たちと遊ぼうよ〜?」

チャラ男B
 「俺、いい場所知ってるぜ〜?」

セローラ
 (うわ〜、もうナンパされてる。ていうかあのチャラ男命知らずねぇ)

私はやや離れた場所から事の様子を伺った。
保美香さんにナンパするなんて、保美香さんの激情を知っている私からすれば命知らずも良いところだ。
保美香さんは見た目こそ超美人だから、お邪魔虫が寄ってくるのは分かる。
でも、保美香さん茂さん一筋ですからねー。
さて、何秒でチャラ男血祭りかなー♪

チャラ男C
 「ねぇ、10分でもいいからさ?」

保美香
 「ごめんなさい、この後用事があるかしら」

セローラ
 (……あれ?)

私は疑問に思った。
保美香さんはチャラ男の顔こそ見ないが、平常心で応対した。

セローラ
 (ちょ!? なんでしおらしいの!? いつもはチャラ男とか雑菌位にしか思ってないでしょうに!?)

保美香さんの応対は非常に優しいものだった。
普段なら「消えろ、この雑菌が」とか当たり前に言う人だよ?
私なんて何度暴言吐かれたか。
しかし、そんなありふれた対応だとチャラ男は調子に乗る。

チャラ男A
 「え〜? ちょっとだけ! ちょっとだけだからさ?」

チャラ男の濁った魂は、下心が丸見えだった。
セローラ的には美味しい魂だけど、保美香からしたら最高にストレスの溜まる相手のはずだ。

保美香
 「ごめんなさい、家族と来ていますの」

セローラ
 (ああもう!? 謝っちゃ駄目でしょ!? そんなのチャラ男を調子に乗らせるだけ!)

段々私のほうがイライラしてきた。
なんか今日の保美香さん様子変じゃない!?
普段なら、もうそろそろ触手をぶっ刺して黙らせてる頃合いの筈なのに!?
もしかして、海水浴びてまだ調子悪いんじゃ!?

その瞬間、私は駆け足でチャラ男に向かった。

チャラ男B
 「ほら、ちょっとだよ! 行こう!」

チャラ男の一人が保美香さんの腕を掴んだ。
保美香さんは少し顔を険しくした。
だが、保美香さんが動くより先に私は動いていた。

セローラ
 「そいやー!」

セローラちゃんは保美香さんの腕を掴んだチャラ男にドロップキックをかます。
すると無防備だったチャラ男は白目を向いて、砂浜に倒れた。

保美香
 「せ、セローラ!?」

チャラ男A
 「な、何すんだテメー!?」

セローラ
 「黙れぇい!」

私は仁王立ちすると、瞳の炎を燃え上がらせた。
チャラ男達は萎縮すると、後ろに退く。

セローラ
 「そして聞けぃ! 私の名はセローラ! チャラ男を駆逐するものなり!!」

チャラ男C
 「く、くそ!? こいつPKMだぜ!? 人間に暴力振るおうってのか!?」

セローラ
 「は? 聞こえませんでしたか? チャラ男を駆逐すると言ったのですよ?」

セローラは極めて威圧的にそう言った。
しかし、チャラ男はただでは怯まない。
構わない、セローラちゃん確かにポケモンとしては弱いかもしれないけど、チャラ男3人の魂を焼くくらい訳がない。
しかし私を制する者がいた。

保美香
 「そこまでよセローラ、それ以上は貴方が悪者になりますわよ?」

セローラ
 「保美香さん?」

保美香さんはチャラ男達の前に出る。

チャラ男A
 「お、お姉さん助けてくれて!?」

しかし、チャラ男の望みは敵わない。
何故ならその時保美香さんはいつもの顔に戻っていたからだ。

保美香
 「黙りなさい、この雑菌が! セローラに手を出すのなら、容赦はしないかしら?」

そう言うといつもの高圧的な態度に加え、触手を伸ばし、ゆらゆらと揺らした。
その姿と気配には流石にチャラ男達もドン引きする。

チャラ男A
 「ひいい!? アンタもPKMだったのかよ!?」

チャラ男C
 「やべぇよ! 暗がりなんか連れて行ったら俺らのほうが危ないよ!?」

保美香
 「はぁ……、分かったらもう行きなさい、そこに倒れている彼も連れて」

チャラ男A
 「は、ハイ、ヨロコンデー!?」

ナンパはそれで決着となる。
チャラ男達は蜘蛛の子を散らすように逃げ去ると、保美香さんは改めてため息をこぼした。

保美香
 「セローラ、貴方気をつけなさい」

セローラ
 「保美香さんこそ、もっと強く当たらないとナンパは止めれませんよ?」

保美香
 「だからと言って暴力はいけないわ」

保美香さんはそう言うと私の肩に手をおいた。

保美香
 「まだ私達PKMは立場の弱い存在です……それを忘れてはなりません」

人間と争った場合、罰せられるのはPKMの方だ。
人間には人権がある、しかしPKMにはまだ人権がない。

セローラ
 「保美香さん、それでチャラ男に優しくしてたんですか?」

保美香
 「わたくしは、だんな様にリスクを与える訳にはいきませんもの」

セローラ
 「でも結局いつもの保美香さんに戻りましたが」

保美香
 「それはセローラが……」

保美香さんは首を振った。
保美香さんは微笑を浮かべると、それ以上は口にしない。
私は首を傾げるが、彼女は髪を掻くだけ。

保美香
 (ふふ、らしくないですわね、セローラが危ないと思ったら、カチンときたなんて)



***



セローラ
 「はぁ……」

セローラは人混みを嫌い、岩礁地帯にやってきた。
岩礁地帯には釣り人位しかおらず、一息つくにはちょうど良さそうだ。

雲外鏡
 『ホッホッホ、セローラよ、疲れた様子じゃな?』

セローラ
 「は!? 雲外鏡!?」

私はファイティングポーズを取ると、鏡を探した!
雲外鏡の野郎!? こっちは今回オカルトねぇなと思ってたんだよ!?
必ず見つけて叩き割ってやる!!


雲外鏡
 『なんで殺気立ってるの!? 後はワシはここじゃ』

雲外鏡の声がした場所、そこは薄く水の張った岩のくぼみだった。
そこに雲外鏡の姿が映る。

雲外鏡
 『ホッホ、水鏡と言ってな、水で作る鏡じゃよ』

セローラ
 「く!? これでは割れないじゃないですか……!」

雲外鏡
 『やっぱり割る気じゃったー!? なんでお主ワシに世知辛いの!?』

水鏡は風に揺れ波打つ。
これでは物理的には割れない。

セローラ
 「セローラちゃん、あんまり妖怪と関わりたくないですのに!」

雲外鏡
 『そう言ってもいいのかのー?』

セローラ
 「どういう意味ですか?」

雲外鏡
 『一つ教えてやろう、海というのはな? 魂が集まりやすい……それも人が詰まる場所では尚更な』

魂、それは普通の人には見えないもの。
だが、それは存在し、時として海難事故を引き起こす……雲外鏡はそう語った。

セローラ
 「……で、それをセローラちゃんに教えてどうしようと?」

雲外鏡
 『お主が懇意にしてた女が危ないぞ』

セローラ
 「っ!?」



***



ザザァ。

人の寄らない波打ち際。

保美香
 「すぅ……はぁ」

保美香は3年前と同じ場所でゆっくり呼吸をしていた。
この穴場は岩だらけで人が寄らない。
更に波はそれ程大きくない、だから海に慣れるには最適だった。

保美香
 「今年こそは、今年こそは克服を……」

気絶する程恐ろしい海、しかし保美香はそれを克服したいといきこんでいた。
今、彼女は波に当たらないギリギリで心の平常心を保っている。

しかし、そこに近寄る異なる者に気が付きはしなかった。

怪異
 『ふへへ、良い女』

保美香
 「……え?」

声を聞いた気がした。
海の怪異、それはある意味で海そのもの。
陸地の者が海で命を落とし、それが怪異となる。
そして怪異は犠牲者を増やし、やがて妖怪になるのだ。

怪異
 『お前も溺れろー!?』

突然、波が保美香の足に絡みついた!

保美香
 「な!? これは一体!?」

保美香は咄嗟に身を退こうとした。
低高度なら飛べる保美香は本能的に危機には空へと逃げようとする。
しかし水は縄のように保美香を放さない!

保美香
 「ど、どうなって!?」

保美香は咄嗟にパワージェムを放つ!
しかし絡み付く水は破れない!

怪異
 『変な女〜! デヘヘ!』

セローラ
 「趣味の悪い化け物ですね!?」

その時、あらゆる物質の障害を無視、突撃してくる水着の少女があった。



***



雲外鏡
 『よいか、怪異は力は大したことはない、しかし放っておけば人に仇なす妖怪となる』

雲外鏡の言葉、セローラちゃんは思い出す。
霊視の世界を見ると、無数の夥しい魂が海一帯を覆う。
厄介だ、霊体を利用し浜辺を駆ける。

美柑
 「セローラ!? 霊体なんかなってどうしたんだ!?」

保美香さんを探す中、遊び終わったのか、ぼけっとしているツルペタヘタレ。
私は立ち止まると、一計案じる事にした。

セローラ
 「美柑、保美香さんを見ませんでしたか?」

美柑
 「見てないけど……まさか!?」

ツルペタヘタレのくせに、美柑さんはなにかを察した。
雲外鏡が危険と言ったのは保美香さんなのだ。
保美香さんは人に弱さを見せない人だから、きっと一人になっている。
そこに海の怪異はつけ込んだのだろう。

美柑
 「も、もしかして……オカルト?」

セローラ
 「そうですよ、貴方の大っ嫌いなね!」

美柑は対オカルト特化の性能をしている癖に、相変わらずオカルトが駄目だ。
既に見えてもいないオカルトを相手に顔を青ざめさせた。

セローラ
 「美柑、保美香さんが行きそうな場所を知りませんか!?」

美柑
 「待ってよ!? もしかして保美香さんが危ないんですか!?」

セローラ
 「……想像しなさい」

セローラちゃんは危険度においては何も言わなかった。
はっきり言えば、美柑にダメージを与えるか分からない。
だが怪異ははっきり言って、殺すために襲っているのだ。
ただ犠牲者を増やすことが、怪異の動機!
ウツロイドの保美香さんでは万が一にも海の怪異には勝てない!

美柑
 「ッ……! ぼ、僕、僕はっ! 家族を護るためなら!」

美柑は震えていた。
それでも一端の態度を見せてみた。

セローラ
 「美柑さん、オカルトは私が対処します……フォローをお願いします」

美柑
 「わ、分かった! 保美香さんならきっと」

美柑さんはかなり遠くを見た。
それは人の立ち寄らない岩場だった。
そこに、悪意に似た邪気が集まっていた。



***



セローラ
 「せぇの!」

岩場に急行すると、既に保美香さんと怪異は格闘中だった。
保美香さんは私を見ると驚く。

保美香
 「せ、セローラ!?」

セローラ
 「助けますよ! 保美香さんには一応恩もありますし!」

私は炎を練る。
それを保美香さんにから絡み付く怪異の腕に放った!

怪異
 『おおおお!?』

怪異の腕が千切れた。
怪異は海と同化したやせ細った餓鬼のような姿だった。
おそらく人の姿なのは、多くの人間を食ったからだろう。
雲外鏡が言うには、不幸な事故などで海で死んだ生き物の怨念とも言える魂が怪異になるという。

セローラ
 「お前達は! セローラちゃんにとっては! 餌なんですよ!」

私はそのまま怪異に手を伸ばす。
驚いて戸惑う怪異にとりあえず煉獄を打ち込む!

怪異
 『お、お前!? こっち側なのになんで!?』

セローラ
 「はぁ!? セローラちゃんはただの家政婦です! お前らオカルトなんて興味ないんですよ!?」

怪異
 『おおおお!』

怪異は海を無数の触手のようにして私に襲いかかる。
だが、私は構わない。
私はバックアップを信用したからだ。

美柑
 「はあああ!」

美柑さんは爪に霊の力を宿らせると、触手を斬り裂いた!
美柑さんのシャドークローはまさに効果抜群、単純な霊の集合体である怪異ごときが、ゴーストポケモンに勝てる訳がないのだ!

セローラ
 「燃えつきろー!!」

私は海に向かって煉獄を解き放った!

怪異
 『ぎええええ!?』

怪異は醜い悲鳴を上げた。
所詮大した力はない、ただ観光客をチマチマ襲うちっぽけな怪異。

怪異
 『う、うへへ……お、お前、変だ……お前の周り悪いもの寄り付く……!』

セローラ
 「世迷い言を!」

私は一気に煉獄を相手の中に押し込んだ!

ドパァン!

怪異の爆発四散と同時に水柱が立った。

セローラ
 「あ、やば!?」

怪異を倒すため、踏み込みすぎた私は眼の前に広がる海に落ちた!

セローラ
 「がぼ!?」

保美香
 「セローラ!!」

セローラ
 (え?)

保美香さんが飛び込んできた。
きっと無我夢中なんだろう。
自分の方がより嫌いな癖に、私を助けようと海へと飛び込んだのだ。

保美香
 「セローラ! あなたなんて無茶を!」

保美香さんは海に藻掻いた。
ろくに泳げないのに、私の腕を掴んで引っ張り上げようとする。

美柑
 「あのー、非常に言いにくいんですけど、そこ立てますよね?」

セローラ
 「え?」

美柑は呆れるように歩いてくると、私達は引っ張り上げた。
そこは水深50センチくらいの浅瀬だった。



***



1泊2日、夏の旅行は大変忙しい旅行となった。
温泉に入って、山に登って、忙しいけど茜ちゃん達は充実していた。


ガタンゴトン、ガタンゴトン。

美柑
 「ねぇ、保美香さん」

保美香
 「なにかしら?」

帰りの電車の中、何名か疲れて寝る中、美柑は隣に座る保美香に話しかけた。
なんだかんだ疲れたのか、うつらうつらと頭を揺らしたセローラを指差すと。

美柑
 「なんだかんだ保美香さんってセローラに優しいですよね」

保美香
 「……そうかしら? でもまぁ……放ってはおけない、妹みたいな子、ですからね」

夕日に照らされる車内。
口数も少ない中で、保美香もまた疲れているにも関わらず優しく周囲を見守っていた。
保美香のセローラに向ける目線、それは普段情けないセローラを最後まで見捨てない姐の姿だった。

美柑
 「妹、ですか?」

保美香
 「あの子、本当は悪い子ではないですよ、ふふ」

セローラ
 「むにゃむにゃ、茜ちゃんのおっぱい美味しい」

保美香
 「ま、性格が大変アレな雑菌でもありますが!」

美柑
 「結局雑菌扱い!?」



突ポ娘セローラ外伝

霊視家政婦セローラちゃん!

第4話 水着って言い張れば、どんな格好でも健全扱いって冷静に考えれば凄いよね 完



次回予告!



セローラ
 「いや〜疲れましたね」


 「お疲れ様、セローラ」

セローラ
 「ああっ!? 茜ちゃんが普通には労ってくれた!? いやーん! だったらおっぱい揉ませてー!」


 「調子に乗ったらダメ」

セローラ
 「むう〜、もう母乳出るんでしょう? 速く飲みたいよ〜」


 「あれは命とご主人様しかダメ」

セローラ
 「あ、そこご主人さまもオッケーなんだ……」


 「ふふ、それで次回は?」

セローラ
 「セローラちゃん、武士道とは死ぬ事と見つけたり! 修羅道とは倒すことと見つけたり! 我、悪鬼羅刹となりて、目の前の敵全てを……斬る!!」



KaZuKiNa ( 2021/02/18(木) 22:35 )