突ポ娘短編作品集 - 短編集
突然始まるポケモン娘とプロレスでフィーバー! 死闘編

#4



第1回戦までが終了し、1時間の昼休憩が始まった。
この間にある者は身体を癒やし、ある者は英気を養った。
そしてわたくしたちは、食堂に集まりお昼ご飯を食べながら休憩する。

保美香
 「はぁ……負けてしましましたわ」

華凛
 「思わぬ伏兵もいたものだ……」


 「いきなり残ったのが茜と里奈だけとはな……想像以上に苛酷だな」

美柑
 「そうですね……グレートレディ、曜子さん、ガオガエンさん何れも強敵だらけでした」

保美香
 「? そう言えば美柑……あなたなんで参戦していませんの??」

私達は病院送りされた永遠と食堂に現れなかった茜里奈たちを除いて、集まっているがそこにいた美柑に疑問を覚える。
普通に考えて、一番血気盛んな美柑こそ、このようなイベントを逃すとは思えませんわ。
美柑も気にしていたのか「うっ」と話すのを躊躇うと、代わりに伊吹が説明する。

伊吹
 「あはは〜、それがね〜? 後でルールを確認すると剣と盾が持ち込めないって分かったの〜」

美柑
 「剣と盾も駄目って……それじゃギルガルドに死ねって言ってるのと同じですよ……」

確かにそれを無くしたらギルガルドに存在価値はない。
それが原因で美柑もなくなく棄権したようで、私も憐憫の思いで美柑を見る。

華凛
 「さて、昼飯も食べながら準決勝だが皆はどう思う?」


 「まず最初のカードはレディマシンガンズとメロディーファンタジアの対決か」

美柑
 「レディーマシンガンズは特にグレートレディの力が計り知れませんね、そして茜さん、リトルレディもやはり強いです」

伊吹
 「一方でメロディーファンタジアの方は〜、今の所豊花さんのワンマンかな〜?」

保美香
 「でしたらかなり不利ですわね、豊花さんの負傷は1時間で治るとは……」

早くもトーナメントの厳しさが出てきた、今日のトーナメント。
やはり家族内でもメロディーファンタジアの不利評は覆しようがない。
しかし問題は準決勝後半戦の方だ。

美柑
 「メイドカーペンターズとファイヤーストームズ、ですか」

華凛
 「理奈は反則をしなければ大した力はない。問題はあのキテルグマだ……羽交い締めしようが、首を絞めようが止まらなかった……!」

保美香
 「華凛を持ってして……となると相当の規格外ですわね」

華凛は家族の中でも相当の力自慢だ。
だが文字通りその華凛が子供だましにされてしまった。
誰も注目さえしていなかった伏兵、それがキテルグマの曜子さんだった。

保美香
 「一方でファイヤーストームズのガオガエンさんも負傷、ルチャブルさんの負担が増えますでしょうね」

華凛
 「実力だけなら流石本職だな、だがトーナメント故に、どうしてもあのキテルグマを止められる未来が浮かばない」

兎に角本大会でも最も不吉なのが曜子さんだろう。
少なく見積もっても、プロレスでアレに勝てる家族は我が家にはいない気がした。



***



実況
 『さぁ! 休憩を挟んでの第2回戦! 先に決勝の切符を勝ち取るのはどっちだぁ!? 選手達の入場だ!』

リトルレディ
 「……!」

歓声が聞こえる。
私達と、相手を応援する声援。
それは私に不思議な勇気を与えてくれている。
私はリングインすると、相手を見た。
全身を茶色と白のストライプ模様で固めた豊花さん、そしてその隣で不安そうにしている奏さん。
私は豊花さんを見ると、豊花さんの絶対的な決意を感じ取る。
今回も彼女は一人で戦う気だ、当然だけど奏さんに戦える力はない。

審判
 「双方、反則がないよう……ファイト!」

カァァン!

リトルレディ
 「私が」

グレートレディ
 「相手はかなりのパワーファイター、気を付けて」

私はグレートレディの叱責に、その場でどっしり構える。
豊花さんもまた、両腕を打ち合わせて闘志を燃やした。

豊花
 「小さな子に手荒な真似をするのは躊躇われるけど、これはプロレスだからね!」

豊花さんがリングを揺らしながら突き進んでくる。
私はいつものようの手を少し前に突き出して、受けの構えをする。

豊花
 「これでもくらいなぁ!!」

実況
 『こ、これは!? さながら人間ミサイル! スーパードロップキーーーック!!』

リトルレディ
 「くっ!?」

豊花さんは両足を揃えて跳び蹴りをしてくる。
純粋な質量攻撃は私では弾ききれない。
やむなく回避するが、それ見越してか豊花さんは避けた所でその大きな手で私の身体を掴む!
私と豊花さんでは子供と大人の体格差、このままでは不味い!

豊花
 「奏に負担をかけさせないよ!? 速攻で決める!」

リトルレディ
 「受け身を!?」

実況
 『豊花選手猛攻! ドロップキックからすかさずリトルレディの背後を掴み、そのまま人間アーーチ!! 明日に希望の橋架けるスープレックスホールド!』

グレートレディ
 「いけません!」

私はスープレックスを防ぐ手立てがなかった。
完全に腰をロックされ、更にその体格差が大きく響く。
それを即座に判断したグレートレディはロープを片手に掴んで変形のドロップキックを豊花さんの顔面に叩き込む。

豊花
 「くは!?」

リトルレディ
 (ロックが緩んだ!?)

私はすかさずホールドを逃れると、グレートレディの華麗な技は更に続く。

実況
 『グレートレディ、相方のピンチをすかさず助け、更にワザを繋ぐ! こ、これは!?』

グレートレディは空中から足で豊花さんの首をロック。
そしてそのまま回転するように豊花さんをリング中央に叩きつけた

実況
 「キマッたぁぁ! ドロップキックからフランケンシュタイナー! 豊花選手これは辛い! 戦えるかぁ!?」

審判
 「1!」

豊花
 (くそ!? ただでさえ1回戦のダメージがあるってのに、コイツ強い!?)


 (豊花さんのアイコンタクト!? 本当にいいの?)

審判
 「2!」


 「! 豊花さん! 今こそ野性を解き放って!」

豊花
 「!」

リトルレディ
 「古びた鏡……!?」

それは直ぐに豊花さんに変化を与えた。

豊花
 「がぁぁぁぁ!」

実況
 『なぁ!? か、噛みついた! どうした豊花選手! 突然反則だぁぁ!』

グレートレディ
 「ぐううう!?」

グレートレディは腕に噛みつかれ、マウントを逃してしまう。
そして豊花さんを獣のように四足で立つと唸り声を上げた。

グレートレディ
 「ぐ……、霊獣形態ですか……!」

グレートレディの右腕からは出血が夥しい。
しかし一方で豊花さんはそれまでの知性を感じさせない姿でグレートレディを睨み付ける!

豊花
 「カクゴしなよぉ!? こうなったらワタシジシンセイギョデキないからなぁっ!?」

実況
 『ば、化け物です! まるで神話の獣のように、リングを縦横無尽に駆ける! その顔を見るだけで我々の肝は冷やされます! しかしこれはもうプロレスなのかぁ!?』

グレートレディ
 「威嚇……だけで済むわけはないですよね」

グレートレディは構える。
常軌を逸した豊花さんを相手にあくまでも人の技で対抗する気だ!

豊花
 「がぁぁぁぁ!!」

リトルレディ
 「頭上!」

グレートレディ
 「っ!」

グレートレディはすかさずそのしなやかな身体で全体重を乗せた対空キックを放つ!
しかし豊花さんその上を行く。

実況
 『完璧なタイミング! 誰もがグレートレディの蹴りが刺さったと思ったでしょう! しかし忘れてはいけない! 相手は飛行タイプなのだと!』

豊花さんはあくまでも飛ぶと言っても、空中さえも四つ足で駆ける。
当たる直前、空中でジャンプしてグレートレディの背後を取ると、そのまま押し倒す!

実況
 『グレートレディ絶体絶命! 豊花選手まるで豹を思わせるその目でグレートレディを睨み付け……行くのかぁ!?』

豊花さんが口を開ける!
喉元へと噛みつくつもりだ!
私はカットしようにもリング中央には届かない!
グレートレディはどうするのか!?


豊花
 「? ?」

グレートレディ
 「無理ですよ、貴方では崩せません」

実況
 「こ、これは!? グレートレディ、豊花選手の腰を両足で挟み込んで、豊花選手届かない! これはガードポジション!」

グレートレディ
 「そこから貴方が攻撃を届かせるのは不可能、そして!」

グレートレディはガードポジションから素早く豊花さんの右腕を掴み引き込む!

実況
 『ぎゃ、逆転! 絶体絶命と思われた中グレートレディガードポジションから流れるように腕ひしぎ十字固めに移行! 豊花選手の腕が締め上げられる!』

豊花
 「がぁぁぁ!? がぁぁ!?」

グレートレディ
 「いくら貴方でも完全にホールドされれば脱するのは不可能です!」

勝ちだ、今度こそグレートレディは豊花さんを降した。
そう思った……しかし!

実況
 『え? ほ、豊花選手なんとグレートレディ選手を片手で持ち上げた!』

リトルレディ
 「そんな!?」


 「駄目! 豊花さん!」

豊花さんは片腕でグレートレディを持ち上げ、立ち上がるとマットに叩きつけた!
衝撃でグレートレディの身体がリングを2回もバウンドする。
だが、その代償は……!

実況
 『豊花選手腕の様子がおかしい! これは折れたのではないか!?』

当然だ、あんな無茶な方法をとれば腕が壊れるに決まっている。
丸太のように太い腕を持った豊花さんだから出来た技だ。
グレートレディも直ぐには立ち上がれないダメージだが、豊花さんはそれ以前に戦闘不能だろう。


 (どうしてそこまで……? 私はどうすればいいの? 豊花さんがあんなに傷付いて、それでも足掻いて!)

リトルレディ
 「?」

私は奏さんを見た。
奏さんが震えている、それは悔しさか?
違う、それは武者震いだ。
なんと彼女はリングに入った。

グレートレディ
 「う……く」

グレートレディなんとか立ち上がろうとするが、思うように身体が動かない。
そこに奏さんは豊花さんを無理矢理リングの外に押し出して、選手交代した。

実況
 『なんと!? やるのか!? やれるのか!? 奏選手豊花選手とタッチして、外に押し出しリングイン! 今大会最弱と思われる奏選手がグレートレディに襲いかかる!』

リトルレディ
 「グレートレディ!」

私はなんとかグレートレディに手を伸ばす。
手はなんとか届くと、私もリングイン。

グレートレディ
 「気を、つけて……!」

私はグレートレディの言葉に頷くと、震える奏さんを見る。
奏さんは決して戦う人ではない。
優しさと労りを持つ、私も理想とする女性だ。
それだけにこの戦いには躊躇いもあった。
だけど、グレートレディは気を付けてと言った。
それは決して、奏さんを侮るなと言うこと。


 「うわぁぁ!」

ブン! ブン!

奏さんは、力の籠もらないパンチを出鱈目に振るうが、私は当たらない。
それどころか軽い足払いで奏さんはその場に転んだ。


 (うう……やっぱり適わないの? あんなに豊花さんが頑張ったのに、私は何もしてあげられないの!?)


 『そこはリングだよ、勝ちを欲しろ! 最も勝ちを望む者にリングは微笑むよ!』


 「誰っ!?」

リトルレディ
 「?」

奏さんが周囲をキョロキョロする。
しか直ぐに私を睨みつけた。
そう、奏さんが睨みつけたのだ。


 「勝ちたい……! 勝つの!」

突然奏さんの傍に黒いインカムが出現する。
それに無造作に触って人差し指で口元に引っ張ると、マイクが延びた。


 「raaaaaaaaaaaa!」

実況
『こ、これは! 奏選手の歌? それに伴い変化が生じている! フォルムチェンジだ!』

リトルレディ
 「!?」


 「行きます!」

エメラルドグリーンの髪の毛は一転オレンジ色となりショートヘアに変化する。
ステップフォルムという姿を得た奏さんは考えられないスピードで空中回し蹴りを放った!

実況
 『凄い! 風圧でリトルレディの顔が歪む! 奏選手まさかの勝利かぁ!」


 「勝ちたい!」

リトルレディ
 「っ!?」

奏さんのストレートな思い。
普段はきっとそんな事考えたこともないだろう。
良く知る奏さんは争いごとを好まない人だった。
その人がこれ程まで望む勝利、それが彼女をここまで強くした?

リトルレディ
 「勝ちたい……当然よね……私達は戦うポケモンだもの!」

そうだ、私達だって勝ちたい!
だからこそ私と奏さんはクロスレンジで打ち合う!
互いの拳と拳が交錯し、蹴りを蹴りで返す互角の攻防。
奏さん中に何かが流れ込んでいる?
きっとそれは私の中に流れ込む力と一緒だ。
だったら!

パシ!

私は奏さんのインファイトを手の甲でパーリング。
奏さんが驚いた。
リズムを崩され、私はインファイトの更に内側に踏み込む。


 「なっ!?」

リトルレディ
 「凄いです、戦うお母さんは……でも!」

私は奏さんに関節技を仕掛ける。
そして相手をマウントに押し付けて四肢封じる。

審判
 「1! 2! 3!」

カンカンカーン!

実況
 『あーと! 駄目かぁ! 奏選手奮戦しましたがやはり届かず! しかしお聞き下さい! この観客の拍手を!』


 「うぅ……」

リトルレディ
 「付け焼き刃では打極投全てには対応出来ない、それが限界です」

奏さんには普段の10倍位多分力がブーストされてた。
どこかにご都合主義の神様がいるみたいだね。
でも同じ勝ちたいなら、最後は強い方が勝つ。

私は手を挙げると、観客の声援に応える。



***



曜子
 「中々のナイスファイトだけど、あれじゃ観客は燃えないね、関節技はやっぱり地味だ」

理奈
 「曜子さん……」

私は曜子さんの意思力は感じ取れるが、完璧な思考認識は出来ない。
こういうのはエスパータイプでも得意不得意がある。
だからこそ、曜子さんを完全には分からない。
ただ確固たる意思力は感じ取れる。

曜子
 「さーて、それじゃ観客を楽しませにいきますか」

理奈
 「……」

私は曜子さんの少し後ろを歩いて控え室を出る。
相手はプロレスラーのガオガエンさんとルチャブルさん。
果たしてこの戦いの先にはなにがあるんだろう。



***



実況
 『さぁ準決勝後半戦! メイドカーペンターズとファイヤーストームズの登場です!』

ルチャブル
 「ガオガエン、私が行くわ」

ガオガエン
 「わかった」

曜子
 「ふ〜んルチャブルね……」

リング中央、対峙する曜子さんとルチャブルさん。
曜子さんは相変わらず表情は惚けているが、その内面は相手同様真剣のようだ。
ただ……やはり何か分からないのが不安である。

審判
 「ファイッ!」

カァァン!

ルチャブル
 「!」

まず先制したのはルチャブルさん。
曜子さんの大きな胴体に水平チョップが炸裂すると、曜子さんの身体が揺れる。
更にルチャブルさんは身軽に自らをロープに沈み込ませると、その反動で曜子さんにフライングクロスチョップ!

実況
 『トペ・スイシーダ! 人間魚雷が曜子選手に炸裂ゥ!』

理奈
 「曜子さん?」

観客はルチャブルの猛攻に歓声をあげて、ボルテージを上げていく。
私は曜子さんが笑っているのを確認した。
プロレスを楽しんでいる?

ルチャブル
 「行くぞー! 皆ー!」

ルチャブルさんはコーナーポストの上に立つと人差し指を高く上げる。
観客の雰囲気を良く理解した展開だ。
少し怖い位にこの会場全体に強い意思力が働いているかのようだ。

ルチャブル
 「フライングプレーーーッス!」

ルチャブルさんはその身体特徴を活かし高く飛び、落下速度を活かしたボディプレスを曜子さんに敢行!
曜子さんは身動きもとれず、ルチャブルさんの攻撃が直撃!

遂に曜子さんの巨体がぐらついた。
そして直撃の反動で空中で回転するルチャブルさんは再びコーナーポストに退避する……事が出来ない!

曜子
 「痛た……良いねぇ、嫌いじゃない!」

ルチャブル
 「なっ!?」

曜子さんはぐらつきながらも、四股を踏むようにリングを踏みしめルチャブルの足を掴んだ!
そのまま曜子さんはルチャブルさんを地面に叩きつけた!

観客
 「「「ワァァァァ!!!」」」

曜子
 「グッド、観客も良い感じに暖まっている」

ルチャブル
 「くっ!?」

曜子
 「遅い!」

ルチャブルさんは起き上がると直ぐに距離を取ろうとするが、その身体が再びリングに沈み込む!
曜子さんの地団太! ルチャブルさんの顔が苦悶に歪む!

実況
 「強烈なストンピング! ルチャブル選手、脱出出来ない!?」

ガオガエン
 「ザケンナァァ!!」

ガオガエンさんはリングの外から火炎放射を腰から放つ。
曜子さんは身体を焼かれると、その全身を炎上させて怯んだ!

理奈
 「曜子さん今助けに……え!?」

私はサイコキネシスで炎を払おうとした。
恐らく曜子さんの特性はもふもふ、炎技は天敵だと言える。
しかし彼女は私の援護をNOと突き返している!

ガオガエン
 「ルチャブル! タッチだ! 後は俺が仕留める!」

ルチャブル
 「手を出すなぁ!」

実況
 『なんだぁ!? ルチャブル選手交代を拒否! ここに来て仲違いか!?』

曜子
 「くくく……ハーハッハッハ!」

ガオガエン
 「なに!?」

炎は自然に鎮火すると、その全身は火傷しているはずだ。
しかし曜子さんはまるで意に介せず高笑いした。

ルチャブル
 「やはりお前が、あのクイーンオブデストロイか!?」

曜子
 「懐かしいねぇその名前……同郷か?」

曜子さんの顔は炎で煤けていた。
そしてそれはまるでヒールマスクのように模様を作り、ピンクのコスチュームも黒い炎のような模様を生み出していた。

ルチャブル
 「かつて伝説的強さのレスラーがいた、しかし強すぎるあまり相手を壊し続け、やがて失意のままプロレス界を引退……そして焼身自殺をしたはず!」

曜子
 「くくく……そしたらさ? この世界にやってきたんだよ? 私は強い奴を求めた……お前は合格だ! 」

曜子さんは歓喜している。
相手を対等の相手と認めたのだ。

曜子
 「調子こいてんじゃねぇぞテメェら!!!?」

凄まじい怒号! それと同時に曜子さんが跳んだ!
曜子さんは見掛けに寄らないスピードで、ルチャブルさんの真上から襲いかかる!
しかしルチャブルさんは素早く後ろに回り、曜子さんの頭を取りにいく!

実況
 『これはキャメルクラッチ! ルチャブル選手、曜子選手を逆海老で締め上げる!!』

曜子
 「ぐお!?」

ルチャブル
 「うおおおお!」

曜子
 「ふん!」

ルチャブルさんの闘志は凄い。
だけど曜子さんが規格外だ!
ルチャブルさんのキャメルクラッチを力技で外すと、ルチャブルさんの腕を掴むと、まるで人形のように振り回し、コーナーポストに投げつける!

ルチャブル
 「くは!?」

ルチャブルさんはその暴威に吹き飛ばされるとコーナーポストに激突!
更に曜子さんはそれに追撃をする!

ガオガエン
 「避けろルチャブル!」

ルチャブル
 「!」

ルチャブルさんは素早く飛び上がると、曜子さんは頭からコーナーポストに突っ込んだ。

ルチャブル
 (正攻法がまるで通じない!? 伝説は本物か!?)

理奈
 「曜子さん……」

私は今大変に充実している曜子さんの意思力を感じ取る。
過去になにがあったのか、私には分からない。
だけどあの知識の神であるユクシー姉さんが私に託してくれたんだ。
私はユクシー姉さんを信じる、だから曜子さんを信じよう!

理奈
 「曜子さん! 勝って!」

曜子
 「おうよ!」

曜子さんはコーナーポストから頭を引っこ抜くと、リング中央で対峙した。
観客はこの熱戦にボルテージも最高潮に達している。
両者を応援する声援の中、二人はリング中央で激突!
しかし、技巧派のルチャブルさんは組み合うと見せかけ体勢を屈めた!
しかしそれを曜子さんが上回る!

曜子
 「行くぞ?」

ルチャブル
 「な!?」

曜子さんはルチャブルさんの腰を両手で掴み、そのまま飛び上がりルチャブルさんをリング中央に投げつけた!
そして曜子さんはそのまま、フライングボディプレスを敢行!

曜子さんの巨体がリングを揺らし、ルチャブルさんが押し潰された!?

実況
 『決まったかぁぁ!? 曜子選手の強烈すぎる連撃! これはもはやルチャブル選手の命が心配されます!』

曜子
 「なに……!?」

ルチャブル
 「この、瞬間を……待っていたぞ……!」

なんとルチャブルさんは体重差のある曜子さんを受け止めていた!

ルチャブル
 「本気で行くぞ! フリーーーー!」

実況
 『ルチャブル選手曜子選手の巨体を持ち上げ飛んだーーー!!! それはこの後楽園ホールの天井照明に激突!』

曜子
 「ぐは!?」

ルチャブル
 「フォーーーール!!!」

そして今度は逆に天井を蹴って曜子さんをリングに叩きつけた!
その衝撃でリングが崩壊! 穴が空き、ポストがひしゃげる強烈な一撃に全て観客が意味を飲んだ。

審判
 「1! 2! 3!」

カンカンカーン!

実況
 『す・さ・ま・じ・い! ルチャブル選手のフィニッシュホールド! フリーフォールの凄まじさ! リングが崩壊!』

ルチャブル
 「ダーーーー!」

我こそナンバーワン! そう宣言するように雄々しくルチャブルさんは咆哮した。
曜子さんは立ち上がらない。
不沈艦を思わせたその巨体がついにマットに沈んだのだ。



***



リトルレディ
 「凄い試合……」

グレートレディ
 「決勝の相手が決まりましたね」

私とグレートレディは控え室で試合を見た。
その戦いは最後まで結果が分からず、結果勝ったのはファイヤーストームズ。
しかしルチャブルさんのボロボロ振りは、本当に紙一重だと分かる。

グレートレディ
 「しかしこれはリングは修理が必要なのようです、何時間後に再開出来ますかね?」

リトルレディ
 「相手にはそれだけ回復時間が与えられる訳……ね」



突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語


第四章 死闘編 完

最終章に続く。

KaZuKiNa ( 2020/12/31(木) 22:28 )