突ポ娘短編作品集


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短編集
突然始まるポケモン娘とプロレスでフィーバー! 熱戦編

#3




 「まだ2戦目なのに疲れるなぁ……」

大城
 「お願いだぁ……奏棄権してくれぇ……もう見てられない!?」

夏川
 「うーん、これ天海さん大丈夫かな?」

俺たちは2戦目を見終えて、その戦いの壮絶さに驚かされる。
勝った方も負けたほうも凄い、それは正にPKMの底力。
特に2戦目はどっちが勝っても不思議じゃなかった。
まぁ大城にとっては負けてくれた方が心配の種がなくなっただろうが。



***



実況
 『さぁ次は第3試合! 新たな4人の戦士達が入場だぁ!』

『メイドカーペンターズ VS ダークビューティズ』


実況
 「まずはメイドカーペンターズ! メイド服で入場するのはアグノムの里奈選手! その相方は建築業界の新生キテルグマの曜子選手!」

里奈
 「あの、よろしくお願いします!」

曜子
 「いや〜、ユクシーちゃんに助っ人頼まれたらプロレスだなんてねぇ〜?」

私は今日初めて会ったのは一見、ただふくよかな女性の曜子さん。
かつてPKM収容所にいたらしいけど、暴動事件の折りに建設業者の目に止まってそのまま就職した異色の経歴を持つ。
だけど、ユクシー姉さんは最凶と言っていたけど、どういう事だろう?

実況
 『対するダークビューティズは正に見目麗しい! アブソルの華凛選手とアリアドスの杏選手! 一体どのような戦いを見せるのでしょうか!?』

相手はいきなり華凛さんか。
私はプロレスなんてやったことがない。
当然投げ技なんてなにも知らないし、割と曜子さん頼みになるかも……。

曜子
 「じゃー、私から行くよー」


 「プロレスねぇ? まぁ息抜きになればいいか」

実況
 『先発は曜子選手と杏選手! 今レフェリーのコールが待たれます!』

審判
 「ファイト!」

カァァン!!

曜子
 「いっくぞ〜!」

どうも覇気のない曜子さん、しかし体格は相手を大きく上回っている。
丸太のように太い腕を挙げて、襲いかかる。


 「これって反則かしら?」

ややのそのそと襲ってくる曜子さんに杏さんは指から糸を放ち、曜子さんを拘束する。
そのままリング中に張り巡らせると、あっという間に蜘蛛の巣は完成した。

審判
 「杏選手! 反則1!」


 「あら、やっぱり駄目か」

とはいえ張られた蜘蛛の巣はそのままだ。
杏さんは反則の警告も意に介せず、蜘蛛の巣の上に立つ。

曜子
 「ん! この!」

実況
 「曜子選手藻掻く! しかし杏選手の蜘蛛の巣はその体を離さない! これは早くも決まったかぁ!?」


 「せぇの!」

バチィン!

杏さんはそのしなやかな足を鞭のように振るい、動けない曜子さんの顔面を殴打する。
力はともかく、杏さんは狡猾に曜子さんにダメージを与え、私はどうするべきか悩んだ。
反則を取られるが、サイコキネシスで妨害するか?
しかし悪タイプの華凛さんの前ではリスクが多い。
とはいえカットしようにも、蜘蛛の巣の前ではどうしようもない。

実況
 『曜子選手! 滅多打ちだぁ! このままでは杏選手のパーフェクトゲームになるぞ!?』

里奈
 「くっ!? 曜子さん!」

私はたまらずサイコキネシスを放とうとするが、その瞬間曜子さんの意思が私に雪崩れ込む。

里奈
 (え? 邪魔するな?)

曜子
 「そろそろいいか……ふん!」

ブチブチブチ!


 「はぁ!? 嘘でしょう!?」

実況
 『なんとぉ!? 曜子選手その馬鹿力で無理矢理蜘蛛の巣を引き裂いたぁ! しかもその顔は全く平然! タフさも筋金入りかぁ!?』

里奈
 「……曜子さんって」

私は確かに曜子さんの意思を感じ取った。
この人はその平穏な顔からは似合わないものだった。

曜子
 「やれやれ、もうちょっと重い一撃が欲しかった……ね!」

曜子さんは地面を踏み抜く、するとリングは上下にたわんで揺らした。
それはリングの外にまで響く一撃だった。
当然それを受けた杏さんは体勢を崩してしまう。


 「じ、地震!?」

曜子
 「違う、『地団太』だ、そして動きが止まったな」


 「やばい!?」

曜子さんの凄まじい地団太、その威力は凄まじい。
その力、もしかしたら華凛さんより上?
そのまま曜子さんはゆっくりとリング中央の杏さんに近寄ると、おおきな足を持ち上げた……そして。

実況
 『メガトンキック炸裂ぅ! 杏選手リング中央からロープ際へと吹き飛ばされたぁ!!』


 「がは!? 嘘、でしょ!?」

華凛
 「ち!? 杏!?」

すかさず華凛さんがリングに飛び込む。
凄まじい力を発揮する曜子さんを背中から跳びかかり拘束するが、しかしそのパワーは華凛さんでさえ止められない!?

曜子
 「フィニッシュはなにがいい?」

華凛
 「化け物か!?」

曜子
 「そうかい、ベアハッグかい?」

ロープの反動で吹き飛ばされる杏さん、曜子さんは華凛さんが首を絞めているにも関わらず、それを意にも介さず、杏さんに鯖折りを仕掛けた。


 「ああああああっ!?」

数秒の絶叫、その後曜子さんは杏さんを解放すると、杏さんは糸の切れた人形のようにリングに倒れた。

カンカンカーン!

実況
 『あーと!? レフェリー試合を止めたぁ! 華凛選手の全力カットも虚しく試合はメイドカーペンターズの勝利だー!』

勝利した……しかしこの雰囲気はなに?
観客は皆呆然として、歓声も何もない。
これ程不気味な勝利があるだろうか?
しかし曜子さんは意に介せず、リングを降りた。
ただ、後ろ髪を掻きながら。

曜子
 「やれやれ、もう少し苦戦した方が盛り上がったわね」

里奈
 「………」

そう言って、反省するようにリングを後にした。



***



ルチャブル
 「クイーンオブデストロイ?」

ガオガエン
 「あのキテルグマを知ってるのかい?」

ルチャブル
 「……いや、多分気のせいじゃないかしら?」

ガオガエン
 「にしたってアイツは間違いなくプロだ、しかも並のプロじゃないな?」

ルチャブル
 (もしもあのクイーンオブデストロイだとしたら……ガオガエンでも危ない……しかし彼女はあの日死んだはず……)

ガオガエン
 「さぁ、次はファイヤーストームズの出番だ! 気合入れて行こうぜ!」

ルチャブル
 「そうね……まずは目の前の相手に集中しないと!」



***



実況
 「1回戦最終試合! 戦うのはこの二組だ−っ!」

『ファイヤーストームズ VS サンシャインキャッツ』

実況
 「まずはファイヤーストームズから紹介! ベビーレスラーのルチャブル選手はその巧みな技を得意とし、フェイバリットフィニッシュはフリーフォール! そして相方のガオガエンはなんでもありのヒールレスラーだ! フェイバリットフィニッシュはハイパーダークネスクラッシャー!」

ガオガエン
 「血祭りにしてやるぜぇ! ケッ!」

ガオガエンとか言うレスラーはリングに上がると、舌を出して挑発する。
チョロネコの小娘紫音はそれを見て、あからさまな嫌悪感を見せた。

紫音
 「うわ、なにアレ? ワザとクサ〜」

天海
 「よ〜し、それじゃこっちもやるかぁ!」

実況
 『対するはサンシャインキャッツ! 最大の注目はやはりソルガレオの天海選手! 本大会でももっとも身長が高い! その巨体はやはりガオガエン選手と比べても大きい! しかし一方でチョロネコの紫音選手は本大会でも屈指の軽量! その体格差はファイヤーストームズより極端!』

天海
 「ウィィィィィ!!!」

ガオガエン
 「!?」

とりあえず俺はプロレスという物がよく分からんから、自分らしく人差し指を天に突き刺した。

天海
 「俺は太陽! この俺の日輪の輝きを怖れぬなら……掛かってこい!!」

カァァン!!!

実況
 『やっとプロレスらしくなったか!? お互いのアピール合戦は天海選手の一歩有利か!? 審判も慌てて試合を開始! さぁ本物のプロレスって奴を頼むぞ!!』

天海
 「ガオガエン……か」

まず最初にリングに出たのはガオガエン、俺は紫音をロープの外を出し、この強敵と対峙する。

ガオガエン
 「どうしたぁ? お? 掛かって来いよぉ!」

天海
 「良いだろう! 行くぞぉ!」

実況
 『ガオガエン選手の挑発を受けて、天海選手突撃ィ! その重機関車を思わせるタックルはただの体当たり! しかしここまで恐ろしい体当たりがあるものか!?』

ガオガエン
 (ぐぅ! 重機関車? いやコイツはそれ以上だ!)

私は肩からショルダータックルをすると、ガオガエンは無防備に受けた。
そして吹き飛ばされるとガオガエンはロープに身体を軋ませ、ピンボールのように跳ね返ってくる。

ガオガエン
 「らぁぁ!」

天海
 「っ!!」

実況
 『これはぁ!? ガオガエン選手ロープの反動を利用して強烈なダブルラリアット! これはDDラリアットか!?』

俺はガオガエンが闇のオーラを纏って独楽のように回転する攻撃を受け止める。
その一撃は予想外に重く、ダメージは芯まで来たな。

ガオガエン
 「良い度胸だ、防御しないとはな!」

天海
 「お前がしなかったのに、俺がしたら卑怯だろう?」

ガオガエン
 「かっ! ははは! アンタ良いプロレスラーになれるぜ!」

天海
 「そうかね!?」

俺は先ほどキテルグマがしたようなキックを放つと、ガオガエンは腕でブロック。

ガオガエン
 「正に16文キックだな! かかっ!」

天海
 「!?」

ガオガエンはガードを即座に解き、足を取る。
俺は地面に倒されると、奇妙な技を受けてしまう。


実況
 『足ひしぎ十字固め! ガオガエン選手、ここにきてテクニカルな技を披露し、天海選手絶対絶命!』

天海
 「くうう!?」

俺の足が悲鳴を上げる。
このままでは足が折れるか……!
折られてもいいが、それでは慎吾に泣かれるかな?

天海
 「本気、出すぞぉ!!」

ガオガエン
 「なに!?」

実況
 『あ、天海選手、突然発光! まるで太陽そのものの眩しさに目が開けられないぃ!?』

天海
 「らぁぁぁ!」

俺はガオガエンを蹴り飛ばすと、なんとか立ち上がる。
かなり足を痛めつけられた……まさかこの形態にさせられるとはね!

天海
 「これが俺の本気、ライジングフェーズだ!」

俺は別の名を太陽を喰らいし獣と呼ばれる事もある。
この形態こそがまさにその太陽さえも喰らう力を解放した姿!

ガオガエン
 「太陽ね……まさにその通りだわ」

天海
 「お前は評価できるよ……だから本気で行くぞーっ!」

俺はリングを駆けると、マットが抉れる。
今の俺は通常セーブしている力を、完全に解放している。
だが、この状態をそんなに長くは維持できない。
そこまで残念ながらライジングフェーズの維持は楽でない。

実況
 『サングラスを装備して実況していますが、天海選手猛攻! 鋼の輝きを持つクローがガオガエン選手のコスチュームを切り裂く!』

天海
 「でぇりゃあ!!」

ガオガエン
 「があ!?」

俺はガオガエンの顎を蹴り上げる。
だが、ヒットのインパクトが浅い! 自分で跳んだのか!?

ガオガエン
 「行くぜ……! ハイパー! ダークネス!」

ガオガエンはリングポストに着地して、人差し指を高く突き上げる。
そして渾身のワザを俺に見せつける。
ならば! 俺も見せてやろう!

天海
 「メテオドライブ!!!」

ガオガエン
 「クラッシャー!!!」

実況
 『天海選手はさながらライジングサン! 一方でガオガエン選手はまさに太陽を飲み込む夜のようだ! 光と闇のぶつかり合い! 勝つのはどっちだぁ!?』

天海
 (くぅ!? 足が……!?)

俺は咄嗟に足の悲鳴に気が付いた。
ガオガエンの関節技で痛めつけられた足だ。
捨ててもいい覚悟だったが、俺は慎吾を泣かせるわけにはいかない。
だからその一瞬が……!

ズドォォン!!!

リングが崩壊しかねない一撃!

実況
 『キマッたぁぁ! ガオガエン選手のフェイバリットホールド! そのまま天海選手をマウントした!』

審判
 「1! 2! 3!」

カンカンカーン!

天海
 「あ〜、負けたかぁ〜」

俺はライジングフェーズを解き、直ぐには動けなかった。
たった一瞬、それでも慎吾を泣かせるわけにはいかないという思いが、極限のぶつかり合いで敗北に繋がった。
それにしても凄い一撃だったなぁ。

ガオガエン
 「はぁ、はぁ! うおおおおおおお!」

ガオガエンはコスチュームもボロボロにしながら、しかし雄々しく人差し指を立てた。
それは正に勝者は一人と誇るような雄叫びだ。
そして観客もそれに応えて大歓声を贈る。

天海
 「プロレスラーか〜、悪くないけど俺は慎吾をビッグにするって役目があるからなぁ〜」

俺はとりあえず負けたのを実感すると、少しだけ紫音の方を見るが、本人はやれやれという風に首を振る。
そう言えば、本人なにもさせてあげられなかった……。



***



夏川
 「ああ〜、負けちゃったかぁ」

大城
 「随分落ち着いてるが、心配じゃないのか?」

夏川
 「心配しない訳じゃないけど、天海姉さん楽しそうだったから、俺はそれでいいよ」


 「夏川は天海さんを信頼しているんだな」

夏川
 「まぁね、普段から扱かれてるし」

夏川は少しずつだが、身体を鍛えていた。
最初は嫌がっていたが、気が付いたら天海さんと身体を鍛えるのも嫌いじゃなくなったらしい。


 「それにしてもようやく1回戦終了かぁ」

どっと疲れたな。
この後は昼休憩か。



突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語

第三章 熱戦編

第四章に続く。


KaZuKiNa ( 2020/12/31(木) 22:02 )