突ポ娘外伝






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最終章 理を侵す者編
エピローグ


 「行ってきまーす」

あれから一週間が過ぎた。
家に帰った俺は家族と再び賑やかな毎日を取り戻していた。
そしてあんな過酷すぎる旅を終えた俺に待っていたのは、やっぱり仕事だった。


 「行ってらっしゃい、ご主人様」


「ん♪ 行ってきます♪」

俺は茜の頭を撫でると、茜は耳を垂れさせ、尻尾を全力で振り、目をトロンとさせた。
毎日見慣れた朝の風景、でもこれがどれだけかけがえがないのか、時々脳を過る。

俺は玄関の扉を閉めると、顔を叩いて意識を切り替える。
そのまま、まだ静かなマンションを出ると駅を目指す。




***



ガタンゴトン、ガタンゴトン。

電車に揺られながら満員少し前の電車だ。
俺は吊り革に捕まりながら、会社へと向かう。
ディアルガの永遠はいつも送っていこうかと言ってくるが遠慮している。
アイツに頼ると、なんか駄目な気がするんだよなぁ。
なんて思っていると。


 「常葉さん」


 「あれ? 七島さん?」

電車に揺られながら、呆けていると声をかけられた。
ラプラスのPKM、七島栞那(ななしまかんな)さん。
身長は180あり、背中に大きな殻を背負い、電車の中では不便そうだ。

栞那
 「奇遇ですね、普段からこの時間なんですか?」

七島さんは俺の直接の部下だった。
PKMの就労支援でうちの会社に来て、PKMに詳しい奴に任せればいいだろうって話になって部長に押し付けられたのだ。
性格は真面目で、仕事もよく吸収している。


 「たまたまだよ、七島さんは?」

栞那
 「私はいつも……満員電車には乗れませんので……」

七島さんはそう言うと背中の大きすぎる甲羅を見る。
甲羅のせいで基本背もたれのある椅子に座れないし、現状の日本には不便が多そうだな。


 「それだと、帰りはどうするんだ?」

栞那
 「……歩いて帰ってます」

そう言うと七島さんは悲しそうにため息を吐いた。
まぁそうなるわなぁと共感する。
七島さんは少し街から離れた場所でアパートを借りて暮らしているらしいが、やはり家賃などを考えると、なかなか引っ越しともいかないようだ。

栞那
 「あっ、でも! 私、バイクの免許を取ろうと思ってるんですよ♪」


 「バイクかぁ」

車は背もたれがあって、ドライバー席に座れない。
そこでバイクか、それなら七島さんでも大丈夫そうだな。


 「いいんじゃないか? てことは休みは教習所か」

栞那
 「はい、覚えておかない事が多くて大変ですが」


 「なぁに、七島さんは利口だ、望めばなんだってやれるさ」

栞那
 「そんな……常葉さんの教えが良いからですよ♪」

七島さんはそう言うと口元に手を当て、クスクスと笑った。



***



カタカタカタ。

仕事はプログラムの作成。
キーボードを叩いて、プログラムを走らせ、それを実行してチェックする。
今は新しいプログラムを組む仕事を任されている。

栞那
 「常葉さん、このコードなのですが」


 「あーどれどれ?」

道理
 「ちょっと七島さーん? たまには俺ら頼ってくれても良いんだぜ〜?」

慎吾
 「え? らって、もしかして俺も入ってる?」

そう言って自分の仕事サボって、七島さんにちょっかいかけるのはお馴染みの野郎二人だ。
最も本編での出番殆ど無い上、夏川に至っては外伝でここまで出番なし、こんなモブ野郎共が今更出番を貰おうとはな。


 「なんなら俺でもええで? 七島さんには贔屓して貰ってるさかい♪」

紅莉栖
 「贔屓って……私は手伝いませんよ、第一契約ですし」

少し離れた席に座る紅蓮葛と上戸紅莉栖の二人は好対照だ。
どちらも契約社員だが、紅蓮さんは人懐っこく、上戸さんは少し身持ちが堅い。

栞那
 「あのー、えーと」

七島さんはあちこちからくるラブコールに困ってしまう。

慎吾
 「ていうか、奥さんとラブラブしてる癖に他の女性口説いていいの?」

道理
 「ええい! そういうお前こそ新婚旅行など! 俺だって奏と行きたいわー!」

そうだったな、夏川慎吾は奥さんとなったソルガレオのPKM夏川天海の夫なのだ。
最初は少しギクシャクした二人だったが、結局夏川から結婚を申し込み、天海さんはそれを承諾。
そして記念すべき第一話で新婚旅行に行っていたのだ。
この設定、作者も忘れていたほどだ。

慎吾
 「ち、違うって! そういうのじゃなくて、純粋に海外旅行に行ってただけだから!」


 「ハワイやったっけ? 1週間のバカンスやったなぁ」

栞那
 「バカンスですか?」

バカンスかぁ。
俺は改めて最後に旅行に行ったのがもう2年前なのだなと痛感する。
茜と結婚しているが、新婚旅行も結婚式も行っていない。
単純に暇がないのもそうだが、あいつらがあんまりワガママを言わない性でもある。
大城は悔しそうに拳を握り震えており、メロエッタの大城奏さんを連れて行けていないのを悔やんでいる。

慎吾
 「で、でも大城だって行こうと思えば」

道理
 「まぁ娘を無事産んでくれただけで、俺は感謝してもしたりないんだけどな」

大城の奥さんは病弱な人で、出産も危ぶまれたが去年の年末、女の子を出産した。
確か琴音ちゃんだったな。
DNA判定から、PKMとして産まれ、母親と同じくメロエッタのハーフPKMとなる。
何度か、大城家と一緒になった事があるが、茜は特に奏さんを尊敬というか、憧れていたよなぁ。

部長
 「こらーそこ! いつもサボってんじゃねーぞ!?」

道理
 「やべ!? バレた!」


 「えー、仕事ー、仕事ー楽しいなー」


 「……やれやれ」

部長に一括されると、皆一斉にパソコンと向き合う。
ていうか上戸さん以外、意外とモラルに問題がある奴が多いんだよなぁ。


 「えーと、そのコードはな?」

俺は七島さんのパソコンのモニタを見て、彼女の疑問に答えた。
彼女はまだまだ新人、俺が教える事は多かった。



***



仕事が終わり、残業を少し熟して暗くなった会社を出ると、いつものように電車に揺られて帰る。
本当に代わり映えのない毎日。
9月下旬、例年より少し暑い今年の夜を俺は寂しく帰る。
ふと、電車を降りて家路に向かう中、俺は足を止めた。

そこは、俺がルージュに襲われた場所だった。


 (全てがここで始まった)

ここでコマタナのルージュに襲われ、シルエットの女性に助けられ、異世界を巡ってきた。
全ては今を取り戻すため。
でも、何故か少しだけ俺は不満があった。
クソみたいな冒険だったのに懐かしんでいる。
まるでアレを望んでいるように。
馬鹿げている……頭では理解しているんだ。


 「……やっぱり、そうなんだね」


 「え?」

突然空から声が聞こえた。
が……、既に空に姿はなく、代わりに一枚の手紙が降ってきた。


 「これは?」

俺は宛名のない手紙を見て封を切る。
すると、そこから現れたのは金のリングだった。


 「フーパ?」


 『半分正解じゃ、じゃが今回は敢えて元ネタとは別に妾が代行してやろう』


 「ユミル!?」

それは人の神ユミルの声だった。
フーパのリングを通して聞こえるユミルの声。
直後、俺の視界に広がったのは。



***



ノワール
 「侵入者だぁ?」

ルージュ
 「……」

戦いが全て終わった後、アタシは元いた世界に帰ってきた。
突然いなくなって、突然帰ってきた娘に一族は騒然となり、お母さんと大喧嘩する事になったけど、最終的に私の強さを認めて、群れに帰る事を認めてくれた。

コマタナ
 「ええ、片方は人間、もう片方はポケモンで」

ルージュ
 (人間とポケモン? 懐かしいなぁ)

私はその組み合わせにクスリとする。
だけど、これはちょっとこの世界では異端かもしれない。
この世界ではポケモンは下げずまれ悪魔と呼ばれて迫害されている。
お母さんはそんな社会に反抗して、一大山賊団を生み出した。
今じゃ私達の住む山はデビルマウンテンなんて呼ばれ、恐れられているくらいだ。
まぁ人間の輸送隊を襲撃して、物資を強奪するような集団なんだから当然といえば当然なんだけど。

ノワール
 「で、侵入者は?」

コマタナ
 「牢屋にぶち込んでます」

ルージュ
 「それ、私が尋問してもいいですか?」

ノワール
 「待て、私も行く、そのコンビどうもキナ臭い」

お母さんはそう言うと立ち上がった。
お母さんはちょっと短気な所あるから、尋問が処刑に変わらないといいけど。

ルージュ
 (うん! その分私がなんとかしないとね!)



***



ロコン
 「それじゃ行ってくるのだー♪」


 「はいはい、お使いお願いねー」

私は普通のクイタランのPKMだ。
普通に管理責任者の老夫婦に拾われ、外に出て燐の名前が与えられた。
不思議なのは、これまで特に愛してくれなかった老夫婦が少しだけ私を見てくれたことだ。
そんな老夫婦に私は、シェアハウスの管理人の仕事を任された。
それがシェアハウス、旅立ち荘だ。
このシェアハウスには訳ありPKMが集まって、今ではそこそこ大所帯。

マギアナ
 「あの、燐さん? ロコンさん財布を忘れて……」

シェアハウスに住むマギアナはそう言うと財布を見せて困り顔だった。
私はそれを見て、アチャーと頭を抱える。
するとマギアナは。

マギアナ
 「分かりました! でしたら私が急いで!」


 「私が行く、任せたのは私、財布頂戴!」

私は財布を受け取ると直ぐにロコンを追いかける。
私は取り立てて強いポケモンでも、珍しいポケモンでもない。
何かあれば、直ぐにヘタれてしまうかも、だけど任された仕事には責任を持ちたい!

ロコン
 「なのだー、なのだー、なのなのだー♪」

妙な歌を歌ってスキップするロコンを見つけたのは商店街の眼の前だった。
うぅ、私足遅いから……。


 「ロコン! 財布ー! て、前!?」

ロコン
 「ほえ? きゃっ!?」

ドン!

ロコンが厳つい入れ墨入りの黒人PKMとぶつかって、ロコンは尻もちをついた。

黒人PKM
 「テメェ……!」

ロコン
 「ひっ!?」

黒人PKMがロコンを睨み付けると、ロコンは悲鳴を上げた。
私は、震えるロコンを見て、我を忘れて突進した。
そして、その黒人PKMに飛び蹴りを敢行した!


 「ロコンから離れろー!!」

保美香
 「幼女に手を出すとは恥を知りなさい! この痴れ者がぁ!!」

黒人PKM
 「怪我はないか? 手を……ひでぶ!?」

突然高速で延髄蹴りを放つ女性と偶然にもタイミングがあってしまい、前後から私達の蹴りが黒人PKMを挟み込む。
黒人PKMは白目を向いて、血を吐きながら倒れた。

保美香
 「あら? あらあら? これは大変かしら!? ここまでするつもりはなかったかしら!?」


 (お、思いっきり殺す気の一撃だったような?)

突然現れたのはブロンドの長髪を腰まで伸ばした、ビックリするくらい綺麗なPKMだった。
見たことのないポケモンでその種族は分からない。
だけど人間ではあり得ない動き、そして高い実力を感じる女性だった。

保美香
 「あら? 貴方……どこかで?」


 「え?」

突然女性は私を見るものだから、ドキッとした。
その瞳も美しく、私は吸い込まれてしまいそうになる。
しかし女性は首を振ると。

保美香
 「気のせいですわよね……」

ロコン
 「うぇぇん! 燐ねぇちゃーん! 怖かったのだー!」

ロコンはそう言うと大泣きしながら抱きついてくる。
私はロコンちゃんを優しく抱いて、安心させる。

やがて商店街からぞろぞろと、人がやってきた。

男性A
 「雷鴎のやつ、なんで伸びてんだ?」

保美香
 「わ、わたくしの性かしらー?」

男性B
 「保美香ちゃん? なら100%コイツが悪い!」

保美香
 「そんな乱暴な……」


 (保美香って言うんだ)

私はその女性が保美香という名前だと知ると、何故か親近感のような物が湧いてくる。


 「ウツ、ロイド?」

保美香
 「え? わたくしがなにか?」

突然女性が振り返った。
あれ? なんで?
ウツロイドなんて聞いたことのないポケモン名だ。
でも、保美香という女性はウツロイドだという。
なんだろう、この偶然?



***




 「はい! 油淋鶏お待たせ!」

全てが終わった後、私は元いた世界に帰っていた。
元いた世界の私はスワンナの師範代麗師範に叩きのめされ、道場を後にした後だった。
私は中老師の事や、それを巡った大きな話は何もせず、ただ下山した。
その後、港に向かい、船で極東の島国を経由して、私は未開のフロンティアとも呼ばれる開拓地を訪れた。
ゴールドラッシュによって支えられ、高度経済成長を遂げたこの国は自由を掲げ、全てポケモンがチャンスを得られるとして、世界各国からポケモン達が集まってきている。
そんな都市部で、私は飲食店のアルバイトをして、生計を立てていた。
滞在目的は勿論私より強い相手を探す事だ。


 (きっと伝承者瞳は今の私よりもずっと強い……ならば更に精進せねば)

そういう思いがあるからこそ、この自由の国を選んだ。
なにせこの街は……。

ガタン!

両開きのウエスタン風ドアを乱暴に開いて入ってきたのは大柄な炎タイプのポケモンだった。
誰もが、そのポケモンに注目すると、そのポケモンは。


 「ヘイ! リチャード! 腹が減ってしょうがないぜ! じゃんじゃん持ってきてくれ!」

店長
 「誰がリチャードアルかー! またタダ飯する気アルね!? 恋ちゃんやっておしまい!」

店長(名は呂という)はそう言うと、店に入ってきた高身長でズボラな格好のストリートファイターを指差した。
そう、この国は自由だ、だからならず者も多い。
銃社会のこの国であるが、だからこそ拳一つで戦う者たちがいた。


 「ふぅ……」

私は脱力すると、全身の気を一点に集める。
その様子を見て、客たちは騒然とした。

客A
 「おい! 名物始まるぞー!」

客B
 「さぁさぁ! 賭けだ! 美少女チャイニー戦士レンが勝つか! 我が国が誇る屈指のならず者ファイターゴーの世紀の一戦だぁ!!」


 「うっせぇアル! さっさと片付けるヨロシ!」

私は軽く構えると、眼の前の男にニヤリと笑う。
男は帽子を深くかぶり、やや前かがみに構えた。
ボサボサの挑発だが、長い金髪がポニーテールで整えられ、彼の動きに合わせて揺れる。


 「久しぶりですね」


 「あん? 何処かで会ったか?」


 「いえ、初対面でしょう、ですが貴方の悪名は轟いていますよ?」


 「へ! 世界に轟かせるにはまだまだだがな!」

この男は轟だ。
バシャーモの轟、私とともに戦い、そして最大のライバルだった男。
薄々同じ時代のポケモンじゃないかと思っていたが、その姿は海を越えて、地球の裏側だった。


 「私の性は黄! 名は影! 真名は恋! 我が妙技捉えられますか!?」


 「へ! 轟だ! 俺の炎は熱いぜぇ!?」



***



瑠音
 「プハ!」

私は水面から顔を出すと、海水を吐き出す。
全てが終わり、私はすべてが滅びたこの海の世界へ帰る事を選択した。
私と契約したあの金のリングの少女は、私を別の世界へ連れて行っても良いと言ってくれたが、私はそれを選べなかった。
何故かと問われたが、私はここにはマナフィ様がいると答えた。

そう、今だ目覚める様子はないが、マナフィ様の卵は復活の時を待っている。

瑠音
 「そのためにも、速く見つけなければ!」

私は世界中を探し、生き残りを探した。
しかしそれは長い絶望との戦いだった。
知れば知るほど、マナフィ様の覚悟の重さを知り、だからこそ今度こそは私がマナフィ様を守るのだと覚悟できる。
マナフィ様がすべてを一人で抱え込み、一人で突っ走った結果、この世界が産まれたならば、私はマナフィ様の不満を聞き、マナフィ様と喜びを分かち合い、そして彼女の暴挙を止めるのだ。

瑠音
 (空……星の海、かぁ)

私は海に浮かびながら、満点の星の空を見上げた。
星の空、星の民が生きた世界であり、その先にはきっと星の世界があるのだろう。
陸の民はいつか、星の民が地上を支配するのではないかと恐れた。
しかし結局は、星の民が降ってくる事はなかったのだ。
そう、あの方意外は。

瑠音
 (この星の遠い先、そこに茂さん、貴方はいるのですか?)



***



陽光
 「……あ」

ムゲンダイナ
 「ウー! ヒカリ! 気がついた!」

すべてが終わった。
気がつけば私は薄暗い高原の森の中にいた。
いや、帰ってきたんだ。
気が付くと、ムゲンダイナちゃんは嬉しそうに抱きついてくる。
ていうか、体格差がありすぎて、私まるで人形ね。

陽光
 「む、ムゲンダイナちゃん、痛いから」

ムゲンダイナ
 「ウー、ごめんなさい」

ムゲンダイナちゃんはイマイチ力加減がまだ分からないようだ。
でもそれはこれから教えていけばいい。

陽光
 「よし、ムゲンダイナちゃん! 早速薬の材料を集めましょう!」

ムゲンダイナ
 「ウー、でも、ヒカリ、大丈夫?」

陽光
 「私なら、大丈夫♪」

私はそう言うとガッツポーズを取る。
私は直ぐに材料を拾い集め始める。
私ってものひろいの特性あるからこういうのは得意なのよね。

ムゲンダイナ
 「ウー?」

陽光
 「? どうしたのムゲンダイナちゃん?」

ムゲンダイナ
 「なにか、気配、感じる」

ムゲンダイナちゃんが鼻をクンクンさせると森の中がざわめいた。

陽光
 「え? なに!?」

ムゲンダイナ
 「うー!」

ムゲンダイナちゃんは突然ダイマックス砲を放つと、木々が薙ぎ払われ、視界が開ける。
するとそこにいたのは。

盗賊
 「バスラオがやられたー!?」

陽光
 「あー!? 貴方達は!?」

それは見覚えのある集団だった。
確か隣の山の洞窟を根城にしている盗賊団!

盗賊
 「フ! あー!? 貴方達は!? と聞かれれば!」

盗賊B
  「ホワイトホール! 白いあし、あば!?」

ティナ
 「タイヘーン! 大変よ!?」

突然、何らかの名乗り口上を述べる盗賊に真上から降ってきたティナさんにぺちゃんこにされる盗賊。
どうやらティナさんは盗賊が目に入っていないらしい。

陽光
 「ど、どうしたんですかティナさん?」

ティナ
 「どーしたもこーしたもないわよ!? 突然世界に穴が開いたのよ!?」

ムゲンダイナ
 「!」

ムゲンダイナちゃんが、浮上する。
なにかに気がついたようだ。

ムゲンダイナ
 「ヒカリ! 乗って!」

盗賊
 「お、お前ら俺たちを無視する気か!?」

陽光
 「ご、ごめんなさい!」

私はムゲンダイナちゃんの背に乗ると、空を舞い上がった。
すると見えたのは、赤紫の空の先に開く謎の穴だった。

ギラティナ
 「このエネルギー……覚えがない?」

ムゲンダイナ
 「ウー、ワタシ?」

陽光
 「確かにそれらしいですね」

なんにせよ異変の匂いだ。
私はゴクリと唾を飲み込むと。

陽光
 「い、行きましょう! もしまたムゲンダイナちゃんみたいなポケモンが出てくるなら、私達で保護しないと!」



***



ユミル
 『以上、5人のその後の顛末じゃ』


 「そう、か」

俺は皆のその後を知り、結局俺は彼女たちに何をしてやれたのか分からなくなる。
本当なら助けてやりたい、でもそれは出来ない。
住む世界が違うからこそ、俺の手は届かない。
そして無理にでも伸ばせば、今度こそ俺は茜と永遠の別れを告げなければならないかもしれない。
それだけは絶対に駄目だ。

ユミル
 『さて、妾の仕事もこれで終わりじゃ』


 「……ありがとう、ユミル」

ユミル
 『ほほ♪ まぁアフターサービスじゃ♪』

俺が素直に礼をすると、ユミルは上機嫌に笑う。
そして、彼女の気配は急速に消え去った。
最後に残ったのは手紙だけだ。
それも白紙の手紙。


 「さて、急いで帰らないとな」

俺は手紙をくしゃくしゃにして懐にしまうと、家を目指す。
だが、突如として俺は足を止めるのだった。

永遠
 「大変よ茂君!?」


 「一体どうしたんだ永遠!?」

永遠
 「わ、私は20年後の永遠よ! 過去の貴方に助けて欲しくて過去へと渡ってきたの!」


 「なに!? どういう事だ!?」

永遠
 「このままじゃ茜が心臓病で死んじゃうの! 20年後の世界は茜が亡き後人造人間が暴れて、世界が崩壊してしまったの!」


 「なんじゃそりゃー!?」

永遠
 「さぁ今すぐ未来を変えるために一緒に行きましょう!」


 「うおー!? 嫌じゃー!? 俺は家に帰るんだー!?」

永遠
 「ワガママ言わないで! 未来を救えるのは茂君だけなのよ!?」


 「だー! 畜生! 未来の俺は何やってんだー!?」



突然始まるポケモン娘と理を侵す物語

エピローグ 完


KaZuKiNa ( 2020/12/30(水) 15:47 )