#9 リメンバー フォー ミー
#9
混沌
「ぐっ!? あ、あり得ない! なんでアイツら全員戦えるんだよ!?」
混沌は焦っていた。
闇をそのまま人型にしたかのような無貌の者も、感情そのものはあるようで、狼狽している。
だからこそ、俺は奴に言った。
茂
「怖いか?」
混沌
「怖いだと!? この私が!?」
混沌は怒りを顕にした、しかし相変わらずその顔は能面である。
混沌は、彼女たちに分霊とでも言うべき、端末を送り出し、それに俺の変装までさせて、入念に入念を入れて暗殺を図った。
混沌、奴は慎重すぎる。
よほど几帳面で、確実を求めるのだろう。
そんな普通に考えれば、勝てて当然の勝負に混沌は負けたのだ。
茂
「俺は言ったぞ、お前はあの娘達には勝てないと」
混沌
「君が彼女たちに力を与えたと!? ブワッハッハッハ! だとしたら実に素晴らしい! 正に理をも侵す混沌の力だ!」
茂
(混沌、か)
俺は考察する。
混沌とは世界であり、組織であり、個人である。
それは極めてあやふやでややこしく、それでいて印象的だ。
混沌、奴は個人であり、全体だ。
だが__矛盾がある。
茂
(コイツには強烈な個が存在する。ある意味で茜に似ていて、神々の王とは異なる)
それでは、全体の意は捉えられない。
茜では神は従わない、神々の王だから従う。
俺は混沌から強烈な疑念を感じていたのだ。
茂
「お前は混沌だが、混沌じゃない」
混沌
「どういう意味かな?」
茂
「言葉通りだ、混沌の意を借りても、お前は混沌にはなれない」
俺はそう言って首を振る。
混沌は、光の中を後ずさった。
混沌
「と、常葉茂……お前、何を?」
茂
「俺はただのサラリーマンだ、ちょっと特殊な家庭事情を抱えたな?」
それは俺の数少ない支えだ。
家族がいるからこそ、俺は諦めずにここまで来た。
そしてそれももうすぐ終わるだろう。
茂
「そう、俺は無力だ、ただのサラリーマンにはこんな壮大な物語はちと荷が重い」
混沌
「何を言う!? 君には素晴らしい力がっ!」
茂
「その意味を本当に理解してるのか!?」
俺は怒気を込めた。
混沌が怯むと、やがて光に綻びが生まれた。
俺は右手を強く握り込み、彼女たちを呼んだ。
茂
(俺は、ここにいるぞ……!)
***
ルージュ
「茂!?」
突然アタシの前に道が開いた。
光の綻びは、その先に茂の気配を感じさせた。
アタシはケヒヒと不気味に笑うと、歓喜して光の綻びに飛び込んだ!
ルージュ
「今行くよ! 茂♪」
***
燐
「茂さん!?」
突然、世界が色を変えた。
真っ暗闇の中、目の前に光の綻びが現れる。
そしてそこから私は茂さんの気配を感じた。
燐
「茂さん、今度こそ、茂さん、なんだよね!?」
私は大粒の涙を流して、この全てを預けたくなるような温かさに笑みを浮かべてしまう。
でも、直ぐにこんな情けない顔は見せられないと、見栄を張ることにする。
燐
「アッハッハ! 私は奇跡を起こすわよ! だから安心してね茂さん!!」
私はそう言って中二的に笑いながら、綻びに飛び込んだ!
***
恋
「この気配は!? 師匠!?」
それは言葉では説明出来ない念のような気配だった。
暗闇に突然現れる光の綻び、そこから師匠の気配がするのだ。
恋
「これだ……これこそ師匠の気配!」
私はあの偽物には足りなかった物を感じ取ると、自然と笑みが零れ落ちる。
私を生娘に変えてしまう罪深い優しさだ。
パチィン!
私は自分の頬を思いっきり叩いて喝を入れると、凛々しく微笑む。
恋
「師匠! 今参ります!」
私は迷わず光の綻びへと飛び込む。
***
瑠音
「茂さん!?」
それは目の前に現れた光の綻びだった。
その光の色は茂さんを奪った光に似ていたが、それは明確に私に茂さんを感じさせた。
瑠音
「……っ、茂さん、そこにいるのですね?」
私は頬を垂れる涙を吹くと、車椅子に飛び乗り、発進させた。
瑠音
「話したいこと一杯あるんですよ!? 全速前進です!」
私は迷わず光の綻びへと飛び込む。
これまでの苦労、それが今度こそ報われるのだと信じて。
***
陽光
「し、茂お兄さん?」
私は息を整え、傷の手当をしていると突然茂お兄さんの気配を感じた。
それには魂も見えず、まして肉があるわけでもない。
だが森の中に現れた光のほころびから、茂お兄さんの気配を感じたのだ。
私はそれだけで立ち上がり、スカートの埃を払った。
陽光
「今行きますから! 茂お兄さん!」
私は直ぐに走り出す。
光の綻びの先に、あの人がいる事を信じて。
***
奇跡ってのはなんなんだろうな。
大きな喜び、小さな喜び、人それぞれの喜びがあり、それぞれの奇跡がある。
俺の名は常葉茂、イーブイ娘の茜を妻に娶るただのしがないサラリーマンだ。
ちょっとトラブル体質で、世界の存亡をかけて神様口説き落とすなんて事やった経歴もあるが、俺自身はなんてこともない。
吹けば飛ぶし、ちょっと力のあるポケモンに腕握られたら簡単にポッキリいくだろう。
そんな俺に本当に力はあるのか?
正直まだ確信できていない。
これは小さな偶然であり、大きな奇跡なのかもしれない。
少なくとも、俺はそう思っている。
彼女たちに叫びながら!
茂
「ルージュ! 燐! 恋! 瑠音! 陽光!」
俺は最大限に笑った。
上下左右もない、光の空間は綻びが大きくなり、もはや歪な光と闇を称える不可思議空間となった。
その綻びから現れたのは俺がよく知る5人のポケモン娘達。
ルージュ
「茂ー! 会いたかったーっ!」
ルージュは俺を発見すると真っ先に抱きついてきた。
茂
「ぐは!? ルージュ痛い! 痛いから!?」
ルージュは我を忘れているのか、不気味な泣き笑いをしながら一心不乱に抱きつくが、こいつは全身凶器なわけで、全身の刃が俺に食い込む!
瑠音
「まぁ大変!? さぁ茂様はこの私が♪」
そう言ってルージュから強引に俺を奪ったのは瑠音だった。
俺は瑠音の巨乳に溺れ、もがく。
茂
「もごご!?」
燐
「アンタ達何やってんの!?」
恋
「師匠! 今助けます!」
先を越された燐は珍しく怒り顔で、琉音を引き剥がす。
瑠音は最後まで抵抗したが、流石に恋まで加わると力負けしてしまう。
瑠音
「あーうー! 先っちょだけ! 先っちょだけで良いですからー!?」
茂
「それ、女性が言う台詞じゃねーから!」
恋
「そうです! そんなうらやま……けしからん!」
恋はそう言うと、控えめに、俺に抱きついてくる。
こころなしか、すごくウズウズしているようにも思える。
陽光
「あ、アハハ〜、お、お久しぶりです♪」
茂
「お、おう?」
陽光は流石に暴走していないが、それでも顔を紅くしてモジモジした姿は欲望が丸見えだった。
燐
「あーもう! 恋さん!? 次私なんだから!?」
ルージュ
「アタシまだナデナデしてもらってなーい!!」
恋
「出来れば私も!?」
混沌
「……嘘だろ?」
茂
「それは後! ほら! 敵さん困ってるでしょう!? 空気読んで黙ってるでしょう!?」
俺は無理矢理恋を剥がすと、そう突っ込んだ。
改めて、欲望ダダ漏れのこいつらがかち合うとカオスそのものだった。
瑠音
「後? 後なら最後までしても良いのでしょうか!?」
燐
「ええい黙りなさい! てか最後ってどういう意味!?」
ルージュ
「キスは普通ですよね!?」
恋
「ナデナデもたっぷりお願いしたいです!」
陽光
「あ、アハハ……一応私もお願いします」
茂
「お前らとことん自由だな……」
個性は様々だが、そもそもコイツらは極度の甘えん坊なのだ。
俺と離れていた間に、それだけ溜め込んでいたのも事実なのだろう。
混沌を自由だと言うのならば、コイツラは本当の意味でカオスだろう。
茂
「混沌、お前の負けだ! 俺たちを解放しろ! そして金輪際関わるな!」
混沌
「負けただと? いつ? 私はまだ負けていない!」
混沌は食い下がる。
その様子を見て、5人は構えた。
ルージュ
「混沌、どうしてそんなに茂に拘るの?」
混沌
「フッ! それだけの価値が彼にはあるのだよ!」
陽光
「だ、だとしてもそれを貴方には渡せません!」
燐
「同感ね、茂さんは私が守るんだから」
恋
「違います、私達が、でしょう?」
瑠音
「クス、そうです……私達が守りたい」
茂
「お前たち……これで最後だ! 力を貸してくれ!」
ルージュ
「分かった!」
5人の少女たちは快諾してくれた。
混沌は激しく憎悪を少女たちにぶつけた。
混沌
「何なんだよお前ら!? 一人一人はゴミにも等しい癖に!?」
燐
「そうよ! 私は正真正銘ゴミだった! いや、それ以下だったかもしれない! でもそんな私をヒロインにしてくれた! ヒロインになった私は無敵だ!!」
燐は炎の鞭を生み出すと、それを混沌に振るう。
混沌は闇を盾に、燐の攻撃を防ぐが、既に混沌の目の前に、恋がいた。
恋
「私はスラムの吹き溜まりでした、養父も外道ならば、私も外の道へと道を踏み外しました……!」
恋がその掌を混沌の腹部に密着させる。
そこから繰り出されるのは!
恋
「それでも私は光を得た! 今は私は正しい道にいる!!」
ズドォン!!
恋は震脚を踏み、強烈な掌打が混沌を撃ち抜いた!
混沌
「ち!? 邪魔だ!」
しかし混沌は動じない!
まるでダメージがないのか、腕を振るうと、それに連動して闇が地面から間欠泉のように吹き上がる。
闇が恋を襲った!
恋
「ああっ!?」
瑠音
「恋さん!」
瑠音は巧みに車椅子を操作して落下する恋を受け止める。
ルージュ
「辻斬り弐の式! 船切り!」
ルージュはその隙をカバーするように飛ぶ斬撃を放つ。
混沌は闇を盾に、それを防ぐ。
燐
「くそう、無敵ってか」
陽光
「い、いえ、違います! 無敵ならば防ぐ必要はない! ゴリ押しすれば十分です!」
そうだ、神と嘯くならそれだけ規格外の筈だ。
だが奴は防いでいる。
攻撃と防御を同時に行えていない。
巨大化したムゲンダイナは正に規格外のゴリ押しだった。
あれに比べれば、混沌はまだ常識的だ。
混沌
「舐めるな! 混沌を知れ!」
闇は大津波となる。
それは回避不能の一撃だった。
茂
「皆! 力を合わせろ!」
俺はそう叫ぶと、5人は頷いた。
空気読んで一人くらい「嫌よ!」って言っちゃう娘もいるかと思ったが、皆良い子だったぜ!
組める組み合わせ意外と少なそうなのがネックだけどな!?
瑠音
「吹雪!」
燐
「大文字!」
瑠音と燐が大技を闇の大津波に放つ。
闇とポケモンの技が拮抗している。
だがまだ一手が足りない!
陽光
「マジカルフレイム!」
陽光がダメ押しのように炎を押し込む!
闇の大津波の正面に穴が空いた!
恋
「今度こそは!」
ルージュ
「一人ではダメ! アタシも行く!」
今度は恋とルージュが突っ込んだ。
恋も戦の勘は良い方だ、必ず有効打を打ってくれる筈!
混沌
「ふん!」
混沌が手を払うと闇が二人に襲いかかる。
恋
「ルージュさん、跳んで下さい!」
ルージュ
「分かった!」
ルージュは疑う事なくジャンプすると、恋はルージュを両腕で受け止め、バルクールのようにルージュを高く跳ね上げた!
ルージュ
「これなら! やああ!」
ルージュは高所の利を得ると両手のブレードを煌めかせながら、襲いかかる。
混沌
「ちい!」
混沌は闇を天に払う。
闇がルージュに襲いかかるが、ルージュはそれを白銀の煌めきと共に切り裂いた。
恋
(一度目は通じなかった、だが、無意味ではなかった筈!)
一方で恋は影となって、混沌の目の前に迫る。
この状況そのものは、一度目と似ている……だが!?
恋
「イヤー!」
恋が繰り出したのは何気ないパンチだった。
だが、恋が理由なく、普通のパンチはないだろう。
そう、それは!
混沌
「っ!? この技は!?」
混沌が狼狽した。
恋が打ち込んだのは峰打ちという技だ。
だが、その技は伏線に過ぎない。
恋
「やはりそういう事ですか!」
混沌の防御は二種に別れている。
まず第一の防御があの目に見えやすい闇の防壁。
これだけでも厄介だが、その内側に薄い防壁があるようだ。
恋はそれを軽い一撃で干渉した。
その後は当然!
恋
「イィィ……!」
混沌
「させるか!」
ルージュ
「まだよ!」
恋
「ヤーッ!!」
大きく踏み込む震脚、恋の崩拳が混沌を襲う!
と、同時にルージュは後ろから足を振り下ろす!
混沌はこの2つの攻撃に対応できない。
二人の連携攻撃がヒットした!
混沌
「くうう!? あああああ!」
混沌が叫んだ。
その瞬間、闇が暴れだす。
恋
「きゃあ!?」
ルージュ
「ああっ!?」
恋とルージュが飲み込まれる。
茂
「ルージュ! 恋! 頑張れ!」
俺は二人を鼓舞した。
俺には的確な指示が熟せる訳でもない。
ただ、自分のためでもないのに頑張る彼女たちに俺は激励しか送れない。
ルージュ
「こんのぉ!!」
ルージュが腕を振り上げた!
悪のオーラがルージュの腕を伝い刃に集中する。
ルージュ
「茂がいれば、私は無敵だーっ!!」
それは輝きだった。
オーラを巨大化させ、虹色にも見える輝き。
優しき光だが同時に命を燃やす辻斬りが放たれる!
その一撃は闇を真っ二つに切り裂いた!
茂
(っ!? バディーズ技か!?)
生気を吸い取られるような感覚、この感覚には覚えがあった。
だがこの際、俺の事はどうでもいい。
全てを終わらせられるなら、俺の命持っていけ!
混沌
「くそ!?」
燐
「まだ倒れないの!?」
陽光
「追撃を!」
燐と陽光が追撃する、炎とはっぱカッターが混沌に襲いかかる。
もはや反撃どころではないか、混沌はついに後ろに倒れるのだった。
茂
「やった……か?」
混沌
「……やってくれる」
混沌はまだ意識はあるらしい。
だが立ち上がろうとはしない。
普通ならこれで終わりそうなんだが、俺は何故かまだ安堵出来ずにいる。
ルージュ
「はぁ、はぁ、このままアタシたちを帰して、そしてもう茂に手を出さないで! そうすれば命までは取らない」
混沌
「クキキ、お優しい事で」
瑠音
「応じるんですか、応じないんですか?」
瑠音はこの状態の混沌を見ても、まだ警戒は解かなかった。
理解不能の存在、人ともポケモンとも異質の存在。
神と嘯くが、確かにその力は神にも等しいのかもしれない。
茂
(俺もその同類かもしれない……か。ゾッとしないな)
俺は頭を横に振って、その考えを捨て去る。
少なくとも、俺は普通の扶養家族を持つサラリーマンだ。
混沌だなんだ、そんな物を振りまく存在ではない筈。
混沌
「クキキ、そうだなぁ、確かに少し苦戦している」
燐
(こいつ……!?)
混沌
「だけど、別に負けた訳じゃないんだっ!」
混沌が全身から闇を放出する。
それは俺たち全員を飲み込む霧のような物だった。
燐
「くそ!? 間に合え!!」
瑠音
「くっ!」
燐と瑠音が闇雲に混沌を攻撃する。
しかしそれは既に届かない。
その空間はもはや混沌としていて、様々な気配が渦巻いた。
恋
「な、なんですか!? これは!?」
混沌
「ブワッハッハッハ! 俺は混沌! それは全ての因果地平を満たし、未来も過去も、あらゆる場所、あらゆる時間、あらゆる可能性の中に存在する!」
混沌の声が木霊する。
その間にも俺たちは不可思議な光景の中に晒される。
それはアルパシティの町並み、廃墟となった地下鉄のホーム、虚無の中に聳える孤島、遥か地平まで広がる海、深く広がる森!
何れにも見覚えはあった。
そしてそれらが全て混沌で満たされていく!?
茂
「何をする気だ!?」
混沌
「何を!? 初めから決まっている! 世界を混沌で満たす!」
茂
「っ!?」
狂気だった。
混沌の声はもはや理知的な物ではない。
そしてそこに含まれる憎悪に俺はたじろいだ。
茂
(思考しろ! ヤバレカバレにはなるなっ!)
俺はこの状況で混沌の意図を汲み取ろうと必死に頭を回転させる。
少なくとも俺は混沌がヤバレカバレになったようには思えない。
多分、賭けだが、混沌はピースが足りないはずだ。
茂
(俺というピース、不可思議だが、何かの意味がある!)
茂
「すぅ、はぁ……いいぜ。お前と俺の我慢比べ、こうなりゃトコトンだ!」
俺は深呼吸をすると、改めて覚悟を決める。
これが運命なら、これが運命でも!
俺は俺の悔いのない選択をしてやる!
茂
「皆聞こえるか!? 聞こえているならこれだけ言わせてくれ! 皆俺を信じてくれ!」
そう、皆の信じる俺を!
今度は俺が皆の力になる番だ!
***
ルージュ
「信じる……そう! 信じるんだ! そうすればなんだって越えられる!」
私は大きく頷いた。
気がつくと、そこには私以外誰もいない。
いや、一人いた。
それは……!
ジラーチ
「……!」
ルージュ
「ジラーチ!?」
***
燐
「分かったわ! 私は貴方を信じます! 私を地獄から掬い上げてくれたのは貴方だもの!」
私は叫んだ、私一人ではどうすることも出来なかった。
それを茂さんは、私をここまで連れてきてくれた。
私の人生は終わっている。
言ってみれば、これはロスタイムだ。
だけど無駄になんかしない!
私の命、無駄になんかするもんか!
バチ、バチバチ!
燐
「っ!? アンタは!?」
気がつけば私は火の海と化した都市にいた。
地面は無茶苦茶でアスファルトが裂け、そこからむき出しの電線ケーブルが火花をあげる。
そして私の眼の前には彼女がいた。
マギアナ
「……」
燐
「マギアナ、アンタ……!」
そこにいたのはマギアナだった。
マギアナは虚ろな表情でそこに佇むのだ。
***
恋
「はいっ! 師匠!」
師匠の言葉、それだけでも私は全身に力を漲らせた。
師匠の言葉は不思議で、あの人の言葉は何故か信じられた。
きっと師匠は、そういう人なんだ。
頼りなさそうで、本当は凄く頼れる。
恋
「……ここは?」
そこは古びた道場だ。
気がつけば私は一人でこの場所に立っていた。
床はいつ穴が空くか分からない程ボロボロで、人がいなくなってどれだけの時が過ぎたのか分からない。
中
「……」
道場の奥には老齢のコジョンドが立っていた。
その姿、見覚えがないはずがない。
中發白(チュンファーパイ)老師の姿だ。
だけど中老師の顔には生気がない。
それはどこか虚ろであった。
***
瑠音
「分かりました、茂さん……あなたの事、私の理想の貴方を信じます!」
私は自信を持って頷いた。
絶望の海の世界で、死ぬために生きるような人生。
それでも生きたいと思えたのはあの人がいたからだ。
ザザァ……。
瑠音
「っ!? これは?」
気がつけば潮の香りが立ち込めていた。
ここはウォーターアイランド、別名マナフィランドだった。
戦場の余波か、殆どボロボロのウォーターアイランドに生暖かい風が吹く。
私は眼の前に彼女を見た。
マナフィ
「……」
瑠音
「マナフィ、様?」
そう、それは紛れもなくマナフィ様だ。
だけどどこか様子がおかしい。
そして、それがどういう事か理解した。
***
陽光
「は、はい! お兄さんの事、信じます!」
気がつけば空が赤紫に染まっていた。
私は頭上を見上げると、そこにはあの子がいた。
ムゲンダイナ
「……」
ムゲンダイナちゃんだ。
大きく肉の花を咲かせるように、ムゲンダイナちゃんは雄々しく空に浮かんでいる。
陽光
「ムゲンダイナちゃん……!」
***
茂
(全てを終わらせよう、皆が俺を信じてくれれば、奇跡だって起こせる筈だ!)
俺は両手を合わせる。
まるで神に祈るように、アイツらの無事を願う。
***
ルージュ
「不思議な感じ……これが混沌?」
ジラーチ
「……」
ここは見覚えがある。
空気も熱気も何もかも違うが、あの時……アルパスタジアムの決勝戦。
だけどアタシの後ろには茂はいないし、この世界にいるのはジラーチだけだ。
ジラーチは何も喋らない、まるで虚無的な人形のようで、その冷たい瞳がアタシを睨んでいた。
ジラーチ
「……!」
ジラーチが念動力をその右手に宿す。
すると、ジラーチは真っ直ぐ物理法則を無視する速度で突撃してくる!
ルージュ
「っ!?」
ジラーチは正確にアタシの顔面にパンチを放ってくる。
アタシは咄嗟に身を捻り、それを回避した。
だが、ジラーチは止まらない!
ジラーチ
「……!」
ジラーチの右手に鈍色の金属光沢が宿る!
ジラーチはそのまま飛び上がると、真上からコメットパンチを放った!
ルージュ
「くっ!?」
アタシは後ろにステップするも、ジラーチは地面を叩き、振動と共に砂煙が巻き上がった。
巻き上がった砂は渦を巻くと不自然に蛇のようにジラーチの腕を伝い、やがて砂の剣を形成する。
ルージュ
(こいつ、まるで本物のジラーチみたい)
アタシは緊張しながら、刃を研ぎ澄ます。
ジラーチは問答無用で襲ってくる。
そしてその技も力も同等だ。
ジラーチは大きく砂の剣を振り上げると、それを無造作に振り下ろす!
ルージュ
「フッ!」
アタシは横にステップすると、チェーンソーのように高速回転する砂の粒がアタシの真横を切り裂いた。
ルージュ
「フヒ♪」
ジラーチ
「……」
アタシは思わず笑ってしまった。
そうだ、間違いなくこいつはジラーチだ。
だけどそれは過去のジラーチだ。
もし本物のジラーチなら一度破られた技なんて絶対使わないだろう。
今でもアレになんで勝てたのか、正直分からない。
だけど過去のジラーチになら、負ける気がしない!
ジラーチ
「……!」
ジラーチが再び砂の剣を振り上げる。
アタシは直ぐに駆けた。
ルージュ
「辻斬り、弐の式、船切り!」
飛ぶ斬撃、それは正確にジラーチを捉えた。
ジラーチは砂を操作して、それを防ぐが、それがアタシの目的でもある。
ルージュ
「行くわよ! ジラーチ!」
ジラーチ
「……!」
ジラーチが再びコメットパンチの態勢に入る。
当たれば失神必死の強烈な一撃だけど!
ルージュ
「燕返し!」
ジラーチの腕が交錯する。
アタシはそれよりも先に刃をジラーチに突き立てる!
ザシュウ!
ジラーチ
「……!?」
ジラーチの腹部を切り裂いた。
鮮血が舞う。
アタシは、止めの構えに入る。
ルージュ
「混沌……! アタシを、ジラーチを愚弄するな!!」
アタシは両手の刃を振るう。
アタシの最も得意とする技、辻斬りだ。
***
燐
「アンタともう一度戦えって?」
私の眼の前にはマギアナがいる。
クローズの格好をしたマギアナ、諸悪の根源であり、私を生み出した母とも言える人物。
まぁ、だからって別にマギアナに恩があるとかそんな訳じゃないが、それでも一応こいつがやらかさなかったら私は茂さんとは出会わなかった訳だし、その分は感謝しよう。
燐
「でも……アンタがなんであれ、私は戦うわよ」
マギアナ
「……!」
マギアナが指先を私に向けた。
フルールキャノン、だけどそれは凡策だ。
燐
「はぁ!」
私は瞬間的に踏み込むと、マギアナの内側に入り、そのまま蹴り上げる!
不意打ちだ、そこまでマギアナに有効ではないが、私は慌てなかった。
自分で驚きだが、自分は強くなっている。
かつてはマギアナは確かに油断の出来ない強敵だった。
でもこれはマギアナだけどマギアナじゃない。
クローズでもなければ、マギアナでもない。
敢えて言えば私に似ている。
多分だけど、こいつも身勝手な理由で創られたんだな。
燐
「哀れね、マギアナ……!」
私は大きく、尻尾の吸気口から酸素を吸い込む。
全身を巡る内燃機関に燃料を注ぎ込み、私は熱を口へと溜め込んだ。
燐
「大文字!」
私はマギアナの目の前で炎の塊を撃ち放った。
マギアナは全身を火傷させながら、大きく放物線を描いて倒れた。
燐
「アンタ本当に哀れよ、どこまでも誰かに利用されて、こんな姿にまで!」
マギアナ
「……、……!」
マギアナはボロボロになりながらそれでも、無表情に手を私に向ける。
私は瞬時に炎の鞭を生成すると、無造作にそれをマギアナへと振るう。
炎の鞭がマギアナを焼き締めると、彼女の放ったフルールキャノンは私の頬の側を貫いた。
燐
「もし、アンタにクローズとしての意思があるなら、私がアンタを完全に破壊してやる!!」
私は炎の鞭を引き絞る。
これはマギアナから全てを奪った私の責務だ。
マギアナの介錯を行う。
それがすり替えられたヒロインのストーリーだから!
***
恋
「はっ!」
中
「……!」
私と中老師は拳を交錯させた。
中老師は見た目こそ中老師だが、やはり何かが違う。
これは中老師か? 否、おそらく違う。
恋
「混沌、貴方は理解していない!」
私は老師のコンパクトな掌打を捌き言った。
この拳一つに、拳法家は全てを賭ける。
故に全身全霊を込め、その肉体を鍛える。
だが、この中老師には、そういった拳法家の魂のような物を感じられない。
恋
「ハイ! イヤーッ!」
私は素早い掌打の連撃から鋭い蹴りを放つ!
老師はそれを見たことのある動きで捌きにかかる……が!
ズガッ!
蹴りが老師の腹部に突き刺さり、老師はくの字に曲がった。
私が放ったのは何の変哲もない、ただ突き刺す前蹴りだ。
だが、全身全霊を込めた、ただの蹴りでもある。
恋
「やはり……その程度ですか! 中老師は! おじいちゃんはこんな物ではっ!!」
私は素早く手刀を連続で叩き込む。
一撃に怯んだこの老師ではそこから叩き込まれる連撃を防ぎきれない。
恋
「イィィヤー!!」
私はトドメに最大の掌底を震脚と共に放つ!
老師は大の字になって吹き飛んだ。
***
瑠音
「マナフィ様……」
マナフィ
「……!」
私の目の前にいるマナフィ様に生来の明るさはない。
まるで人形のように物静かで深海のようにその表情は冷たかった。
私はやはりその存在に畏怖を覚える。
敬愛すべき相手であり、同時に相容れる事の出来なかった相手。
あの全てを賭けた戦いの果てに……まだ、マナフィ様は?
マナフィ
「……!」
マナフィ様は水を纏うと、突撃してくる。
私は咄嗟に防御を取り、マナフィ様のアクアブレイクに耐える。
瑠音
「くっ!? この威力!?」
それは、間違いなくマナフィ様のアクアブレイクだった。
例え水タイプといえど、何度も受け止めるのは危険だ。
マナフィ
「……!」
マナフィ様は再び、跳び上がるともう一度アクアブレイクの態勢に入った。
瑠音
「……ッ!」
私は吹雪を放つと、マナフィ様を徐々に凍らせる。
そしてマナフィ様の顔を伺った。
でもマナフィ様は顔を歪める事も、呻き声も上げない。
まるで戦闘マシーンだ。
瑠音
「ッ、そうなのですね……!」
私は確信した。
これはマナフィ様だが、マナフィ様ではない。
混沌が生み出したカオスのマナフィなのだろう。
ならば、私は迷う訳にはいかない。
あの時と同じだ、世界と愛した男を天秤に掛けさせられた時と同じ。
私は、あの方を選ぶだけだ!
瑠音
「ハァァ!」
マナフィ様は構わずアクアブレイクで突撃してくる。
一方で私はそれに耐えながら、冷気を垂れ流す。
同じ水タイプであって、私とマナフィ様には決定的に違う部分がある。
そう、私は氷タイプだ。
マナフィ
「……!」
何度目だろうか?
マナフィ様の猛攻が、突然止んだ。
マナフィ様の下半身は既に凍りついており、全身を凍らせるのは時間の問題だった。
私なら絶対零度の寒さにもある程度耐えられる。
でもマナフィ様には無理だ。
そして、このマナフィはそれを理解していない。
瑠音
「愚かですね……自らの痛みにも気づかないで」
マナフィ
「……!」
マナフィ様が水を纏おうとする!
だが、マナフィ様は動けない。
凍ったポケモンは無力だ。
***
ムゲンダイナ
「……!」
陽光
「くぅっ!?」
ムゲンダイナちゃんが声もなく吠え、空気を震わせる。
私は、呆然とムゲンダイナちゃんを見上げるが、彼女の表情はまるで死人だ。
私の知っているムゲンダイナちゃんは子供っぽくて、喜怒哀楽の激しい子だった。
これはあの激しい怒りに狂った姿でも、暴走した姿でもない。
その意味がわかると……私は、涙を流した。
陽光
「混沌、貴方はどこまで……!」
ムゲンダイナ
「!」
ムゲンダイナちゃんはエネルギーを口に集中させると、それを解き放った。
地面を抉り薙ぎ払う、無限大のエネルギー、ムゲンダイビームだ。
星さえ穿ちかねない一撃を容赦なく放ったのだ。
だが、ムゲンダイナちゃんは気づかない。
既に私はゴーストダイブで、彼女の真上にいた。
陽光
「はぁっ!」
私は一撃を叩き込むと、彼女の背中に着地した。
巨大な肉の花と化したムゲンダイナちゃんは全長が100メートルはある。
私の一撃がどれだけ効いているのか分からないが、私は負けるつもりはない。
むしろ負ける気がしなかった。
陽光
「勝てと言うだけなら……あの時より楽ですね!」
私は茂さんを信じて、はっぱカッターを無数に生み出していく。
ムゲンダイナちゃんは暴れて振り落とそうとしてくるが、私は耐えた。
そしてはっぱカッター20回分を溜め込むと、やがて私の頭上には超巨大な一枚のはっぱが形成される。
陽光
「ごめん、なさいっ!」
私は謝ると、その巨体に見合うサイズにまで成長させたはっぱカッターを振り下ろした!
ザッシュウ!!
はっぱカッターはムゲンダイナちゃんには効きにくい。
ムゲンダイナちゃんの毒の力とドラゴンの力に阻まれるからだ。
だが、いかにムゲンダイナちゃんでも純粋な物量、重量には抵抗出来ない。
それだけの大きさであり、重さへと成長させたはっぱカッターはムゲンダイナちゃんを切り落とす!
***
世界が混沌で満たされていく。
それでも彼女たちは、混沌の中で輝き、世界を明るく照らしていく。
俺はそれを見て、満足気味に微笑んだ。
さぁ、最後は俺の番だ。
茂
「……さぁ、お遊びは、ここまでだ!」
俺は目を開くと、眼の前の暗闇が晴れていく。
眼の前には、信じられない顔でふらつく混沌がいた。
混沌
「な、何故だ!? 何故だ何故だ何故だ!? なんで勝てない!? 一体何が足りないんだ!? 何が違うって言うんだ!?」
茂
「……それが俺の力、なのかもな」
俺は憐れむようにそう言うと、混沌の顔を隠す闇が徐々に晴れていく。
その顔は少年のような幼さがあり、その顔は絶望で凍りついていた。
混沌
「くそ! その力! それさえあれば……がっ!?」
パン!
閃光が一瞬煌めいた。
混沌の真後ろに、不可視の女性が立っていた。
混沌は胸に開いた小さな穴に驚愕して、後ろを振り返る。
シルエットの女性
「いい加減にしろ」
混沌
「く、そが……!? カオスのマシーン風情が……」
混沌のダメージは致命傷だった。
混沌はふらつくと、ぐったりと前のめりに倒れた。
シルエットの女性
「すまない、助けるのに遅れてしまった」
茂
「アンタは一体……?」
その女性は全身が光学迷彩に包まれているように見えなくて、ただ輪郭がぼやけてなんとなくその像を映している。
その女性はなんとなく優しく微笑んだ気がした。
シルエットの女性
「すまないが、それに答える事は出来ない」
茂
「待ってくれ! なんであの時助けてれた!?」
そう、それはルージュ達に襲われた時だ。
あの時もこの人は同じ技を使った。
そして俺を助けてくれたのだ。
茂
「アンタと俺に何の関係がある!?」
シルエットの女性
「……いずれ分かるさ」
その女性は背中を向けると、空間に穴を開いた。
それは不可思議な渦を巻く空間だった。
ウルトラホール、彼女は振り返ると。
シルエットの女性
「直ぐに迎えがくる、お疲れ様」
そう言うと、女性はウルトラホールに潜っていった。
俺は呆然として、その最後の謎が残るのだった。
?
「なーに、黄昏れてるんだい?」
茂
「俺の背後に立つな!?」
俺はいきなり音もなく後ろに気配を感じると咄嗟に振り返る。
なお拳はお見舞いしない、俺はそれでトラブルを起こしたくないのだ!
?
「キャキャ♪ ひっさしぶりー! 茂君!」
そこに立っていたのはフーパだった。
相変わらず褐色の幼女は金のリングを転がしながら爆笑する。
フーパ
「フフ、迎えに来たよ」
茂
「お前が迎えに?」
フーパ
「永遠お姉ちゃんの方が良かったかい?」
俺はその言葉にハッとすると、自らの掌を見た。
時の結晶が光を屈折させて蒼く光り輝いている。
茂
「結晶が復活した?」
フーパ
「さぁさ! 速く帰るよ茂君!」
そう言うとフーパは金のリングを広げ、俺の手を引っ張った。
俺たちは不可思議な空間に飛び込むと、重力がなくなり、俺は浮遊感を覚えた。
その時間は長いのか、短いのか俺には分からない。
だけど、無限のような一瞬の間にフーパは振り替えって言った。
フーパ
「茂君、一応言っておかなければならない事がある」
茂
「なんだ?」
フーパ
「君が関わった5人のことだ」
茂
「……!」
フーパは真剣な表情をすると、呟くように言う。
それは、ある意味で覚悟のいる言葉だった。
フーパ
「もし、平穏無事な生活を望むなら、あの5人の事も、君の力も忘れるんだ、永遠に」
茂
「忘れる……」
フーパ
「理を侵す力、家族を守るのには過ぎた力じゃないかい?」
その通りだ。
俺はこの力を知らず知らずに何度も使ってしまった。
その結果、幾らともしれず運命を捻じ曲げていた事だろう。
だが、同時にこの力こそが混沌を呼び寄せてしまった。
俺は知らずに過剰防衛してしまったのだろう。
そんな物は、茜や家族を守るのには要らない。
フーパ
「さぁ、そろそろお別れだ」
茂
「フーパ?」
フーパ
「振り向くな!」
フーパが手を離すと、フーパが一瞬で遠くの彼方に消し飛んだ。
俺はフーパに言われた通り振り返らない。
おそらく、これはラストチャンスなんだろう。
そう、全てを元通りにするために__。
***
茂
「……?」
空は暗かった。
気が付くと俺は街灯が照らす暗がりに立っていた。
しばらく呆然としていると、俺は見慣れた灯りに気が付く。
茂
「そ、そうだ! 茜!?」
俺は見慣れた我が家を見つけると真っ直ぐ駆けた。
セローラ
「おや? そんなに急いでどうし……」
茂
「邪魔だ!」
俺の眼の前に突然メイド姿のPKMが立ち塞がるが、俺は無視した。
後ろからゴーストタイプらしい悲鳴が聞こえたがそれも無視だ。
俺は階段を駆け上がると、息を切らしながら自分の家の前に立った。
茂
「はぁ、はぁ! ……よし」
俺は意を決して、扉を開く。
すると、彼女は筆のような大きな尻尾を振りながら駆け寄ってくる。
茜
「おかえりなさい、ご主人様♪」
そこには柔らかな笑みがあった。
その瞬間俺は涙腺が崩壊してしまう。
茂
「茜! 茜なんだよな……?」
茜
「きゃっ、ご主人様?」
俺は茜を強く抱きしめると、茜は驚いてしまう。
しかし茜はこんな俺も受け入れてくれた。
茜
「大丈夫、ご主人様、大丈夫」
茜はそう言うと、優しく俺の頭を撫でた。
少女ではなく、一人の母親として。
茂
「茜、ありがとう……」
保美香
「あらあら? 玄関でセックスですか? けしからん! わたくしも混ぜてくださいませ!」
茂
「何の話だー!?」
気が付くと、いつまで経っても入ってこない俺たちを訝しんで保美香が顔だけだしてニヤニヤしていた。
それと同時に俺は安堵する。
良かった、ちゃんと保美香だ。
美柑
「そ、そういうプレイもされるんですね……」
伊吹
「あはは〜♪ 噂に〜、ならないようにね〜?」
やがて、蜜柑も伊吹もと、ぞろぞろ出てきた。
里奈
「あの、入らないのですか?」
やがて、アグノムの里奈がエプロン姿で困った顔をしていた。
俺は茜を離すと、改めて表情を作り直す。
茂
「皆! ただいま!」
突然始まるポケモン娘シリーズ外伝
突然始まるポケモン娘と理を侵す者の物語
#9 リメンバー フォー ミー 完
突然始まるポケモン娘と理を侵す者の物語 完