#6 襲い来るモンスター、立ち向かうモンスター
#6
ルージュ
「今、何か?」
アタシ達は森の中で合流した。
皆多かれ少なかれ、茂に助けられられ、そして茂を助けたいって思っている子たち。
マーシャドーの恋、クイタランの燐、ジュゴンの瑠音、パンプジンの陽光。
彼女たちもまた、数奇な運命に踊らされたのだ。
燐
「……なんか、嫌な予感がするわ」
燐は汗を垂らすとそう言った。
燐
「私、悪い予感は当たるのよね……」
そう言った刹那だ、突然世界が振動しだす。
瑠音
「こ、これは地震!?」
陽光
(ち、違う……! この感じ、時空振動!?)
突然空間そのものが揺れ始めた。
アタシ達は動くこともままならず、ただ事態を見守った。
?
「おおおおお……!」
恋
「きょ、巨人!?」
燐
「あーもう! 本当に嫌な予感は当たる!」
振動が徐々に収まると、アタシ達の周りには4メートルはある怪物が突然物理法則を無視したように3体出現した。
アタシはその大きさに驚くが、殺気を覚え、全身の刃を研ぎ澄ました。
ルージュ
「皆、気をつけて!」
アタシの正面にいた怪物は右手を振り上げると、私に向かって振り下ろしてきた!
ルージュ
「くっ!?」
アタシは咄嗟に飛び退き、カウンターの要領で相手の腹部を右手のブレードで切り裂いた。
?
「おおお!?」
怪物が怯む、だが致命傷にはならない。
アタシは周囲を見た、だがそこにあったのはアタシ同様苦戦する仲間たちの姿だった。
怪物
「おおおおお!」
ルージュ
(落ち着け! 動きは全然遅い! アタシがやらなきゃ! アタシが皆を助けるんだ! 茂を助けるんだから!)
怪物がアタシを掴みに行く。
アタシはその怪物の腕を切り裂きながら、腕に乗って駆け上がる。
ルージュ
「はぁぁ!」
アタシは怪物の腕を一直線に切り裂くと、頭部付近で飛び上がった。
アタシは刃に力を込める。
怪物の顔に狙いを定め。
ルージュ
「アイアンヘッド!」
アタシはその渾身の一撃を怪物に放った。
メキャ、と音を立て怪物の顔が凹む。
怪物はそのまま後ろに倒れた。
ズッシィィィン!
ルージュ
「はぁ、はぁ! やった!」
アタシはなんとか致命打を与える事に成功した。
だけどあれは分の悪い賭けだったように思う。
改めて自分で考え行動する事の難しさを感じた。
ルージュ
「皆! すぐ助けにーー!」
?
「ほお? 気に入った」
アタシは声より先に後ろを振り返った。
殺気が見えたのだ。
キィン!
アタシが咄嗟に振るった左のブレードが何か金属的な物と打つかった。
?
「思ったより、反応も良いな」
ルージュ
「な……!?」
アタシは振り返って驚愕した。
そいつは紅いボロを着た死神だ。
ボロボロだが、アタシの全身よりも大きな大剣を迷うことなくこいつはアタシに振ってきたんだ。
ルージュ
(人間でも、ポケモンでもない!?)
死神
「我が名はとうに忘れた……されど、その定め果たす」
チャリ、チャリ、と鈴が鳴り響く。
アタシは極度に集中し、この難敵を見定める。
ルージュ
「っ……!」
死神は幻惑するようにユラユラとその場を漂う。
足は無く、浮遊しているのだ。
死神
「その首、貰い受ける!」
死神が大剣を振り上げた!
それは正確に私の首を狙う!
ルージュ
「辻切り!」
アタシは刃に悪の力をエンハンスさせ、死神の重い大剣に対抗した。
両者の刃が交差する!
ガキィィィン!!
ルージュ
「くううっ!?」
得物の重量で大幅に負けているため、打ち合いはアタシの負けの形だ。
死神は骨と鎧だけで構成されたような姿だが、見た目よりパワーはあるらしい。
だけど、その分小回りは悪いはず!
ルージュ
「はぁ!」
アタシは下から死神の内側に踏み込んだ!
刃を思いっきり、振りかぶる!
捉えた! そう思った刹那!
ブォン!
突然、アタシの得物が空を切った。
ルージュ
「え?」
それは、一手遅れた致命傷かもしれなかった。
死神
「その首、貰い受ける……!」
死神がアタシの後ろでチャリチャリと鈴を鳴らしている。
***
燐
「ちょっと!? ルージュさんは!?」
時空振動が終わり、巨大な怪物の襲撃を凌いだ私達はそれぞれの無事を確認しあった。
しかし、いつの間にかルージュさんの姿が無かったのだ。
恋
「おかしいです、途中まで怪物を一人で相手していたのは覚えているのですが」
瑠音
「ご、ごめんなさい……私も注意不足で」
陽光
「……いえ、多分ですが、不注意が原因ではないんじゃないでしょうか?」
燐
「それってどういう事?」
陽光
「……なんていうか、引っ張られたんです」
恋
「引っ張られたとは?」
私達は首を捻った。
陽光は何を感じ取ったのか、顎に手を当てる。
そして、ゆっくりと彼女は自分の論を述べた。
陽光
「さっきの地震、恐らくは時空振動だった。多分ですが目的はルージュさんの隔離でしょう」
燐
「隔離ですって!? 罠ってこと!?」
瑠音
「っ!? 気をつけて!」
陽光
「え!?」
瑠音さんが何かに気がついた。
ガサガサ!
森の中からある巨体を揺らした獣が姿を表した。
それは黒豹だった。
ライオンよりも大きく、虎のように巨大な黒豹は唸り声を上げて、近寄ってきた。
そして恐るべき事に。
黒豹
「逃がさん……臆病者は……!」
陽光
「しゃ、喋った!?」
恋
「っ!? 上!」
燐
「はぁ!? 今度はなに!?」
ズドォン!
何かが落ちてきた。
それは地響きを上げて、大地を揺らし、木々を薙ぎ払う。
私はゾッとした。
そいつの『カメラアイ』が私を捉えたからだ。
ロボット
「……システム、キドウ、二ンム、カイシ」
燐
「あーもう! 次から次へと!?」
バシャァン!
瑠音
「きゃあ!?」
突然大きな水が跳ねるような音がした。
その音の方を見ると、流音が大きな水の塊に吸い込まれた!
燐
「ちょっ!? 嘘でしょ!?」
瑠音を飲み込んだ水の塊は、そのままポチャンと音を立てて地面に吸い込まれた。
ゴーン!
恋
「っ!?」
突然鐘の音が響いた。
もうこうなったら、何が起きても不思議じゃないってか!
ゴーン!
恋
「なにかが……くる!?」
鐘の音に恋が反応する。
私はそれを心配したいが、生憎それどころゃない。
それは陽光も同様で、陽光は黒豹に背を向けられない状態だった。
ゴーン!
恋
「なに!? 急に暗く……!?」
燐
「違っ!? 恋の方が!?」
恋は気づいていない!
鐘の音がなる度に、恋の姿が暗くなっていく。
そして……!
ゴーン!
次の鐘がなった時、恋はその場から消え去った。
燐
「冗談でしょう? 残ったの私達だけ?」
私は後ろにいるはずの陽光を見ようとした。
しかし、それは全くの無駄であり、私は頭を抱えた。
燐
「私もか……人の心配してる場合じゃないって訳か」
ロボット
「コウゲキ、カイシ」
ロボットが私を見定めた。
私は突然見たことのもない紅いブロックの敷き詰められた周囲が鏡張りの不思議な空間に閉じ込められた。
燐
「上等よ……こんなクソゲーみたいな世界、さっさと脱出してやるんだから!」
私は体内の炎を燃焼させ、掌から炎の鞭を生成した。
まずは、このポンコツを叩き潰せばいいんでしょう!?
***
陽光
「き、消えた……燐さんまで」
私は今、低い声で唸り声を上げる黒豹と向かい合っていた。
黒豹も私を警戒しているのか、直ぐに仕掛けてはこない。
陽光
「貴方も混沌、ですか?」
黒豹
「否、今更我を問う事無意味、ただ我は臆病者を許さぬ」
陽光
(無関係? 本当にそう? 本人たちももしかしたら混沌に踊らされているだけって事は?)
***
バシャァン!
瑠音
(水中!?)
突然奇襲され、車椅子から引きずり降ろされた私は水中にいた。
水中は重く、浮力が弱い。
私は直ぐに淡水だと気付いた。
瑠音
(一体何が!?)
私は咄嗟に水面を目指そうとした。
しかし、底に巨大な影がある。
影は私に向かって一直線で向かってきた!
瑠音
(巨大な魚!?)
それは私を一口で丸呑みにできる程巨大な鯉だった。
私は咄嗟に機動を変え、鯉に食べられるのを防ぐ。
瑠音
(こんな巨大な鯉が……!?)
鯉
『ただの鯉やないで!』
瑠音
(っ!?)
鯉の声か?
まるでテレパシーのようにその特徴的な声は私に響いた。
鯉
『恨みはあらへん! せやがこれも運命や!』
鯉は明確に私に敵意を向ける。
よくよく見れば、金の鱗を持つ美しい身体。
光を浴びれば、よりきらやかに輝く事だろう。
そんな美しい鯉だが、恐らくは混沌の手先。
今までのモンスターとは毛並みが大きく異なるが、障害なのだろう。
瑠音
(くっ! このような巨体を相手にするのは、嫌なものですね……!)
否が応でも想起せざるを得ない。
あのウォーターアイランドを蹂躙せんと歩みきた巨人ども。
あれに比べればこの鯉の方がまだマシに思えるが、そもそも比べるだけ無駄だろう。
鯉は鯉で、結局は私に問答無用で襲って来るのだから!
***
ゴーン!
恋
「……!」
私は構えた、異様な殺意が満ちる暗闇の空間。
鐘の音の度に世界は色と音を失っていく。
恋
(閉鎖空間……閉じ込められた?)
私の周りには気がつけば誰もいなかった。
ただ、この世界は異常だ!
恋
「敵がいる……だけど、どこ?」
?
「クキキィ……」
恋
「っ!?」
頭上か!?
突然異形の声が空間に木霊した。
私は上を見上げると、そこには巨大な目玉があった。
それは卵のような形の彗星のように思えた。
口もなく、ただ直径1メートルはある単眼を光らせ、私に殺意を向ける。
?
「美味そうな獲物だシャギィ!」
それは高速で襲いかかってきた!
私は直様垂直の蹴りを放つ!
だが、異形の怪物は更に離れ業を見せた!
ブォン!
私の蹴りが空を斬る!
異形の怪物は当たる直前、4体に別れた!
何を言っているのか、自分でも把握しきれていないが、目玉の怪物は今4体いる。
恋
(取り囲まれた!?)
怪物
「シャギギィ!」
怪物たちは幻惑するように距離を取る。
私は自然体で四方の敵に目を配らせた。
恋
(面妖な……!)
***
茂
「っ……!」
俺は混沌と共に、あの子達を見守った。
混沌は嬉しそうに手を叩きながら、既に観客の態勢だ。
俺は手が血で滲むかと思えるほど、手を握りこんでただ、耐えた。
茂
(俺には信じる事しかできねぇ……アイツらに何もしてやれない!)
混沌
「ブワッハッハ! さて、何人生き残れるのかな!?」
茂
「全員だ……!」
混沌
「ほお? 彼女たちに差し向けたのはいずれも一筋縄ではいかん奴らだぞ?」
茂
「それでも勝つ……! アイツらは生き残る!」
混沌
「ククク……まぁどっちに転んでも別に構わないんだけどねぇ?」
混沌からすればこれはゲームだろう。
勝っても負けてもお遊びだ。
俺はそんなふざけた凶行を止める術を持たない。
ただ虎視眈々と隙を見つけるまで、待つだけだ。
そう、ただ彼女たちを信じて……!
***
チャリィーン!
鈴が一つ吹き飛んだ。
死神がその結果に怪訝とした。
ルージュ
「はぁ、はぁ!」
私は咄嗟に辻切り一の式瞬剣を放った。
殆ど野生の勘同然に放ったそれが、死神の不意を突き、首をただ丁寧に狙う大剣の軌道を反らした。
ルージュ
(かなり危険な相手だ、いきなり裏に回るなんて!)
運が良かった、もし少しでも瞬剣を放つ角度が違っていたら、私は輪切りにされていただろう。
あんまり信じたくはないが、この悪運も私の強さかもしれない。
死神
「その首、次こそは」
ルージュ
(……こいつ)
私はだんだん死神が分かってきた。
死神はただひたすら、私の首ばかり狙っている。
振り子のようにユラユラ揺れた幻惑的な動きも、よくよく見ればワンパターンな動きに思える。
ただ厄介なのも事実だ。
接近戦を仕掛ければ、瞬間的に裏を取られ、カウンターをくらう。
見た目よりパワーのある死神は、正面から打ち合って勝てる相手じゃない。
ルージュ
「辻斬り! 弐の式船斬り!」
私は飛ぶ斬撃、船斬りを放つ。
しかし死神は当たる直前に振れて、全く攻撃が当たらない。
厄介過ぎる回避力、とすれば……。
ルージュ
「怖い……だけど!」
私はあえて、刃を下ろした。
そして無防備に死神に近づく。
死神は怪訝としていた。
表情は骨故になにも変わらないが、それでも死神の裏を掻いて見せる!
死神
「その首……貰い受ける!」
死神は無造作に大剣を振り払った。
だけど、それはなんの捻りもない直線的な水平斬り。
私はそれを屈んで回避すると、両手のブレードを展開した。
ルージュ
「喰らえ!」
死神は咄嗟に動こうとする。
一陣の風は死神を捉えなかった。
しかし同時に放たれたもう一陣の風が私の後ろに回った死神の頭蓋を割った。
ルージュ
「燕、返し……!」
私は確かな手応えを感じた。
絶対に回避する難敵ならば、絶対に必中の技で対抗する。
死神は理解不能の怪物だが、それは私達ポケモンも同様だろう。
死神
「み、ごと……」
死神は大剣を落とすと、塵となって消え去った。
私は呆然とその姿を見た。
ルージュ
「名前も知らない死神……本当はあれがなんだったのか……?」
考えても仕方がないかもしれないが、私は母のようにはなれない。
死神は生物的というよりは、本当にそういう風にプログラムされたロボットのようだった。
ルージュ
「ううん……鎮魂は後、それより皆は!?」
***
陽光
(どうすれば? 動けばやられる?)
黒豹
「グルル……!」
黒豹は動かない。
だが凄まじい剣幕で私を睨みつけてくる。
その殺意は凄まじく、私は完全に気圧されていた。
陽光
(組み付かれたら……一貫の終わり?)
私は思わずその光景を想像すると、ゾッとした。
倒さなければ姿を消した皆を助ける事も出来ない。
どうにかするしかないのだが、私は持ち前の臆病さの性で攻めあぐねた。
黒豹
「どうした? 臆病者は死ぞ?」
黒豹が挑発してくる。
このライオンよりも虎よりも大きな黒豹は理知性と凶暴性をその目に秘めていた。
その猫目は直視してはいけないという、本能的恐怖が刻まれる。
陽光
(け、牽制して距離を離す!)
私はそう思うと、はっぱカッターを生成した。
黒豹はそれをじっと見る。
私は意を決してそれを黒豹に放った!
陽光
「い、今の内に!」
私は放つと同時に黒豹に背を向けた。
兎に角近距離は私には危険だと思ったからだ。
だが、黒豹は。
黒豹
「逃げたな!」
陽光
「っ!?」
突然黒豹は憤怒の表情で、はっぱカッターを無視して私に突撃してきた。
陽光
(逃げる!? さっきからそればっかり!?)
黒豹は大きな前足を持ち上げると、それを振り下ろす!
私は強靭なその爪の一撃をなんとか回避するも、黒豹は目の前から離れない!
陽光
「うう!?」
黒豹
「臆病者め! 石となるが良い!」
陽光
「え!?」
私は黒豹と目を合わせてしまった。
その時には、私は既に手遅れだった。
陽光
「目、から……な、にかーー」
私は、そのまま全身を石化させてしまった。
陽光
(動けない!? だけど意識がある!?)
黒豹
「愚か者め、臆病者はそのまま石像となるが良い……」
黒豹は追撃する気がないのか、ゆっくりと巨体を振り返らせた。
私は相手が背中を見せたにも関わらず、何もできない自分に心の中で泣いた。
私はこんな所で足手まといになるのか、それは嫌だ。
だけども、意識はあるのに身体は動かない。
石化した肉体は私にはどうしようもないのだ。
陽光
(うぅ……ごめんなさい、茂お兄さん!)
?
『タク、ショウガネェナァ』
陽光
(えっ!?)
その瞬間、私は意識が落ちたーー。
ーー虎よりも大きな黒豹は背中を向け、無防備だ。
だから『オレ』はニヤリと笑った。
陽光?
「シャァ! 背中がガラ空きじゃねぇか!?」
オレは石化した身体から霊体だけを取り出し、虎野郎に襲いかかる!
オレは地面に手を付けると、這い寄る一撃が虎野郎の尻を襲った。
黒豹
「尻尾はいやーん!」
虎野郎は不意に余程驚いたのか、尻尾を激しく振り回す。
しかし、それはオレには届かない。
陽光?
「ケケケ! なんだ後ろは弱点かおい! キャキャキャ♪」
黒豹は振り返る。
そして怪訝な顔してオレを見た。
黒豹
「馬鹿な!? 貴様石化した筈!?」
陽光?
「テメェ知力25かぁ!? ちゃんとヒカもいるだろう!?」
オレは相手を挑発し、俺の背中の陽光の石像を指差した。
黒豹
「貴様……一体何者!?」
陽光?
「ケケケ! オレか? オレぁ、ヒカの影、ヒカのもう一つの人格、ダァレにも秘密のもう一匹の魔女! そう、オレだよ! カボだよ!?」
陽光は今も石像の中に魂がある。
オレは陽光でさえも、全部を知らないもう一つの魂。
誰にも知られちゃいけない、陽光の最終防衛システム。
陽光の危機とあっちゃあ、黙ってる訳にもいかねぇからな!
カボ
「ケケケ、石化視線? いや、視線の中に球体が見えた。さしずめ石化球体ってところか?」
黒豹
「貴様も石化させてやろう!」
黒豹は再び、同じ技を使った。
しかし、肉は石にできても、魂の存在であるオレには通じない。
カボ
「馬鹿が! ゴーストタイプが石化するか! 魂は穢せない半端な虎野郎がよぉ!?」
パンプジンは草タイプのポケモンであるが、同時にゴーストタイプのポケモンだ。
草の部分が強く出る陽光に対して、オレはゴーストタイプの部分が強く出た陽光だと言える。
カボ
「キャキャキャ♪ テメェ何か持ってんなぁ!?」
オレはポルターガイストを起こすと、黒豹が所持していた謎の兜が黒豹に襲いかかる!
黒豹
「ぐおおお!? 一体何が!?」
カボ
「ヒカは物拾い、オレはお見通し、ポケモンってのは不思議だよなぁ? 同じ身体なのに、技も特性も性格も違うんだぜぇ!? 元は同じ魂なのによぉ!?」
黒豹
「な、舐めるなぁ!?」
黒豹が爪を光らせた。
それをオレに向かって振ると、次元が切り裂かれた!
オレは眼の前の空間を切り裂かれ、少しだけと肝を冷やす。
魂だけの存在っつても、こういう技は効くかもしれねぇからな。
カボ
「ケケ! 面白い技持ってんじゃねぇか!?」
黒豹は凄まじい剣幕でオレを睨みつける。
まぁつっても防御力が下がる訳じゃねぇんだけどな。
カボ
「ケケケ! 良いねぇ!? オレ達はモンスターだ! ポケットに収まっちまうモンスターだけどな!?」
オレは宙に浮くと、ハロウィンを発動させた。
すると森はいきなり夜に変わり、ジャックオーランタンが飛び交い、霊魂が照らす、不可思議な領域に定義される。
黒豹
「な、なんだ!? 何が起きているのだ一体!?」
カボ
「キャキャキャ♪ ファンタジーなモンスターの癖にイチイチ驚くなよな!? さぁこれ、耐えられるのか!?」
オレはもう一度ポルターガイストを発動させる。
黒豹の周りは既に尋常の世界ではない。
ジャックオーランタンは踊り、霊魂が辺りを照らす。
そして、黒豹の周りを謎の兜はクルクルと飛び交い、やがて致命傷を黒豹に与えた。
黒豹
「おおおお!? ば、化け物は、貴様の方……か!?」
黒豹は断末魔を上げると、光の粒子になって消え去った。
あの古臭い兜だけを残して。
カボ
「ケケケ! あったぼうよぉ! オレァポケットモンスター! ポケットに収まる怪物なんだぜぇ!?」
オレはそう言うと、兜を蹴っ飛ばした。
どうせ、陽光には装備できないとか、そういうアレだろう?
ていうか、あんな虎野郎の遺品なんて、陽光に持たせる訳ねぇからなぁ!?
カボ
(さて、オレぁあくまで陽光の副人格、そーゆー設定だっかぁな)
オレは陽光の中に入ると、そっと陽光に呼びかけた。
カボ
(オキロヨ、ヒカ)
突然始まるポケモン娘シリーズ外伝
突然始まるポケモン娘と理を侵す者の物語
#6 襲い来るモンスター、立ち向かうモンスター 完
#7に続く。