突ポ娘外伝






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最終章 理を侵す者編
#5 集結する5人

#5



ムゲンダイナちゃんは無事保護できた。
幸いにもシェイミちゃんもナットレイさんも、ティナさんも無事だ。
ただ、私達の前で茂お兄さんが消えた。
そしてそれから1週間が過ぎようとしていた……。

陽光
 「はい、お大事に」

私はそう言うと、眼の前に座ってべそを掻くシェイミちゃんの治療を終えた。

シェイミ
 「うぅ〜、擦りむいた所がヒリヒリするの〜」

シェイミちゃんはあれからも元気いっぱいで、走り回った際に転んでしまったのだ。
まぁ簡単な治療だし、すぐに良くなるだろう。

あの戦いの後、私はムゲンダイナちゃんから血清を手に入れ、それを元にシェイミの一団の治療を行った。
幸いにもムゲンダイナちゃんが使った毒は微毒だった。
それでも草タイプにとっては重症になる恐れもある。
ムゲンダイナちゃんは一杯一杯、シェイミ達に謝罪した。
ムゲンダイナちゃんは悪ではない。
ただ規格外過ぎたのだ。
それが結果として災害となった。

今もムゲンダイナちゃんを恨む声は多い。
だけども、きっとそれは時間が解決してくれるはずだ。

ティナ
 「陽光も立派な医者になったものね〜」

ムゲンダイナ
 「ヒカリ凄いの〜」

ムゲンダイナちゃんも変わった。
変わったというより、これが本来の彼女なのかもしれない。
ムゲンダイナちゃんは身体こそ規格外に大きい。
それでも彼女は子供なのだ。
本来なら、親の元にいるべきだけど、彼女には身寄りなんてなかった。
今はティナさんが面倒を見てくれている。

陽光
 「私は医者というにはおこがましく……」

ナットレイ
 「謙遜することはないよ、君は立派さ」

はぅぅ……私は、顔を紅くした。
正直まだまだ自分は未熟だと感じている。
お婆ちゃんから学んだ知識、そして実際に私が得た治験。
いずれもまだまだ未熟だと感じる要因だ。
だから私は、褒められるのが苦手で困ってしまうのだ。

ナットレイ
 「それにしてもあれから1週間か……」

ナットレイさんが呟いた。
今は再びシェイミ達の高原に戻っている。
ここは茂さんと初めて出逢った場所だ。

ティナ
 「……私達にどうにか、できる問題ならね」

ムゲンダイナ
 「うぅ〜シゲルゥ、ヒック!」

ムゲンダイナちゃんは、思わず茂お兄さんの事を思い出すと泣き出してしまう。
ムゲンダイナちゃんは、それ程茂お兄さんと長く触れ合った訳ではないのに、まるで付き合いの長さなど関係ないと言うように、強く慕っていた。
それは茂お兄さんが持っていた父性だろうか?
そして同時にそれは、私も想ってしまう。

陽光
 「私、そろそろお薬の材料集めて来ます!」

私は、そう言うと花畑から立ち上がった。
高原の直下には不釣り合いな鬱蒼とした森がある。
あそこは魔女の森に似ていて、今でもホームにしていた。

ムゲンダイナ
 「ワタシも、手伝う!」

ムゲンダイナちゃんは涙を拭くと、力強くそう言った。
ムゲンダイナちゃんはとっても頑張り屋だった。
私達はそれを微笑ましく、見守っている。

陽光
 「それじゃ、一緒に行こうか?」

ムゲンダイナ
 「ウー♪ ヒカリ、乗る!」

ムゲンダイナちゃんはそう言うと、笑顔で腹ばいになった。
ムゲンダイナちゃんの身体は、大きいから私が乗ってもまだ余裕がある。
流石に100人乗っても大丈夫とはいかないが。

陽光
 「それじゃ、お願いね?」

私は、ムゲンダイナちゃんに跨ると、彼女は浮かび上がった。
ホネホネの体で、肉も皮膚もないが、彼女が生み出す強力な力場が私達を浮かせるのだろう。
そのまま、私達は森へと向かった。



***



ムゲンダイナ
 「ウー?」

森の上までひとっ飛びした私とムゲンダイナちゃん。
しかしその上空でムゲンダイナちゃんが首を傾げた。

陽光
 「どうしたの?」

ムゲンダイナ
 「ウー、力感じる……」

力?
それはムゲンダイナちゃんもよく分かっていないのか、クルクルと森の上を旋回する。

陽光
 「引き返す?」

私は気遣ってそう言った。
だけど、ムゲンダイナちゃんは首を大きく振ると。

ムゲンダイナ
 「ウー! それ陽光困る! ワタシ役に立つ!」

ムゲンダイナちゃんはそう言うと、森に降下した。
地表が近づくと、私はムゲンダイナちゃんの背中から飛び降りて、いつもの森へと着地した。

陽光
 「……特に何か感じる風でもないわね」

私は、森を見渡すがいつも通り静かな世界だ。
ひっそりとして、少し肌寒く、争いとは無縁な小さな森の姿だった。

陽光
 「ムゲンダイナちゃん?」

私はムゲンダイナちゃんを見た。
ムゲンダイナちゃんは不安そうにキョロキョロする。

ムゲンダイナ
 「ウウ〜、誰? 見てるの?」

陽光
 「え?」

その瞬間だった。
森が光に包まれる……!?

陽光
 「ムゲンダイナちゃん!?」

私は、慌ててムゲンダイナちゃんに手を伸ばした。
だけどもその直前で、ムゲンダイナちゃんは光に消えた。
私は、改めて周囲を見渡す。

陽光
 「なに? ここは一体?」

そこは光の空間だった。
上も下もなく、ただ光で満たされた世界。

陽光
 「……い、一体……」

その時だ。

パチパチパチパチ!

突然の拍手音。
私は咄嗟に音の方を振り返った。
そこには奇妙な男が立っていた。
顔が能面のようにのっぺりと平らで、その顔は闇のように真っ黒だった。
青いコートのような服を着ており、茂お兄さんより少し身長は低い?


 「初めまして陽光君! 見事ムゲンダイナを鎮め、そして魔女の呪いを乗り越えた偉大なるパンプジン!」

カボ
 「ナ、ナンダテメー!? ヤブカラボウニ!?」


 「いや、これは失礼、私は混沌、よろしくカボ君」

陽光
 「っ!?」

カボを知っている!?
混沌と名乗ったその男は私を知っているようだ。
いや、待て……混沌? どこかで聞き覚えがあるような。

陽光
 (そうだ! 確か茂お兄さんとティナさんが、会話で使ってた!?)

あの二人の話を盗み聞きした時、確かあの二人は混沌という言葉を使っていた。
私は理解できていなかったが、まさかこの男の事!? 

混沌
 「さて、神にも匹敵する君の事はずっと見ていたよ」

陽光
 「見ていた?」

私はその意味を測る。
そして直前の出来事を思い出す。
ムゲンダイナちゃんは視線を感じていた!

陽光
 「ムゲンダイナちゃんは!? ムゲンダイナちゃんに何をした!?」

混沌
 「おいおい、何を言っているのかな? 私は彼女には何もしていないよ」

陽光
 「っ!」

私は混沌を睨みつけると、やがて混沌は肩を竦めた。

混沌
 「魔女の力には興味があったんだが、これでは取り付く島も無さそうだ」

混沌はそう言うと、頭を掻く。

混沌
 「いいか? 良く聞けよ? 常葉茂がお前を待っている」

陽光
 「なっ!?」

混沌
 「私と来るんだ、そうすればお前は常葉茂を得られるぞ、永遠に!」

それは甘言だった。
正直言えば、混沌の言うことは何一つ信用できない。
だけどここで茂お兄さんの名前を出したのは悪手だった。

陽光
 「信用できません、申し訳ございませんが、ムゲンダイナちゃんや茂お兄さんを利用するようなら、私は容赦しません!」

私は、そう言って睨みつけた。
魔女の力、母リーアが宿した理の外れた力。
私はその力を使う覚悟を決める。
だが、混沌は。

混沌
 「あーもう、どいつもこいつも! どうなってる!?」

混沌は癇癪を起こすように、地団駄を踏む。
どうやらあまり思い通りにいってないようですね。
ならば付け入る隙もある?

陽光
 「茂お兄さんを拐ったのは貴方ですね?」

混沌
 「人聞きが悪い! ただちょっと協力してもらっているだけさ!」

陽光
 「嘘っぱちを……!」

私は葉っぱカッターを放つ態勢を取る。

混沌
 「あー! 黙って言うこと聞けば常葉茂と簡単に再会出来たのになぁ!?」

混沌はそう言うと、その後ろに闇の扉が開かれた。
混沌はそこに飛び込むと、私は直様追った。
ここは逃してはいけない。
信用できない相手だが、茂お兄さんを握っているのはあの男の可能性が高いからだ!

陽光
 「逃しません!」

私は闇に飛び込んだ。
混沌の背中は見えない。
重力の感覚は無くなり、自分の位置が分からなくなるが、私は構わず走り続ける。
やがて、私の前に光が見えた。
私は光に飛び込む!

陽光
 「はっ!?」

光に飛び込むと、森の中だった。
高原の森に戻った?
いや、違う……この森の植生は私が全く知らないものだ。

陽光
 「混沌は……いない?」

私は周囲を振り返った。
見知らぬ森は酷く色褪せて寂しいものだった。
森だというのに、まるで生気を感じない。
こんな森はありえない、どんな森であれそこは遍く命を支える基盤なのだ。


 「気配!?」

陽光
 「え? きゃあ!?」

その時だ……炎の鞭が私を掠めたのは。



***



右翼曲折得て、私は茂お兄さんの知り合いと名乗るポケモン娘達と出会うことが出来た。
クイタラン娘の燐さんに、ジュゴン娘の瑠音さん。
二人共私とは何もかも違うけど、一つだけ分かったのは皆茂お兄さんが好きなんだ。
そういう意味ではライバルだけど、同時に頼もしい味方でもある。


 「それにしても、ここってなんなのかな?」

瑠音
 「なにか、とは?」


 「なんて言うのか……創ったと言うには雑な感じで、元から存在したものだとしたら、何か違和感があるっていうか……」

それは燐さんだからこそ、感じた違和感だろう。
私も森の異様な生気の無さは、それ自体があり得ないとは理解している。
ただ、それと混沌、そして茂お兄さんとどう繋がるんだろう?

陽光
 「私達は、混沌に会いました……混沌は私を勧誘もしました」

瑠音
 「それ、私はされてませんね」


 「まぁ、されたって信用できる相手じゃないけどね!」

私も頷く。
混沌は茂お兄さんと関係しているが、茂お兄さんが黒幕だとは思わない。
寧ろ私達が感じたものは真逆、あの茂お兄さんの強靭な精神力は混沌に対しての反逆であるはずだ。

陽光
 「二人はこの事態、混沌の想定通りと思いますか?」


 「え? うーんと……よく分からないけど、何か違う?」

瑠音
 「メリットがありません。もしも混沌に神にも等しい力があるなら、まず私達を一箇所には集めない」


 「あー、確かに。瑠音さん頭良いね」

瑠音さんは「どうも」と軽く燐さんに会釈する。
そうなんだ、私達自身が今混沌に対してリスクになっている。
では、何故私達は出会うことが出来た?

陽光
 「やっぱり茂お兄さん……?」

二人が「え?」と呟いた。
だが、その時、ガサガサ、と森がざわめく。
私は直様音の方を振り返った。
すると、そこにいたのは見知らぬ二人の女性だった。

キリキザン
 「わ! なんか一杯いる……!」

マーシャドー
 「あ、貴方達は?」

陽光
 「ポケモン……貴方達も茂お兄さん、常葉茂に?」

そう、それは茂お兄さんが導いた二人だった。
キリキザン娘のルージュ、マーシャドー娘の恋。



***



ルージュ
 「それじゃ、貴方達もなんだ」


 「うん、言ってみれば同志だね」


 「ルージュさんの言った通りになりましたね」

新たに合流した二人もまた、仲間を探すポケモン達だった。
容姿も個性もまるで違う私達、それでも私達は特定の個人を慕い、ここに集ったのだ。

瑠音
 「しかし、5人ですか……」

陽光
 「一度皆の情報を集めませんか?」

私はそう提案すると、一番最初に手を上げたのはルージュさんだった。

ルージュ
 「えと、多分アタシが発端だと思うから、アタシから話すね?」

ルージュさんは、混沌から常葉茂を殺せば願いを叶えると誑かされ、実際に暗殺に加わった。
ルージュさんの居た世界は茂お兄さんの家族がいた世界だ。
ルージュさんは茂さんと、異世界に漂流してしまい、生き残るために手を繋いだ。
その中でルージュさんは数多の強敵と戦い、そして自らの願いも叶え、最後には人の神ユミルによって、茂お兄さんの願いは叶えられた。


 「もしかしたらその次って私かも」

燐さんはそう言うと、顎に手を当て自身の体験談を語りだす。
燐さんの世界は茂お兄さんの世界がベースになって造られた架空の世界だ。
丁度燐さんは茂お兄さんの家を拠点に使っていて、偶然遭遇した。
その後、ポケモン合衆国連合と人類軍残党の抗争の激化の中で、燐さんは茂お兄さんと再会する。
燐さんは茂お兄さんに選ばれた事で、あるポケモンが魔王に成り果てたという。
その後魔王が死に、架空の世界は崩壊したという。


 「私は何処に位置するのか分からないのですが、次いいですか?」

恋さんは丁寧に手を上げると、次に語りだす。
恋さんは記憶喪失である閉鎖空間に閉じ込められたという。
茂お兄さんはそんな恋さんの前に突然現れたようだ。
茂お兄さんは轟と呼ばれるバシャーモの事を知っていた。
そしてそれに反応したのはルージュさんだ、ルージュさんはそのバシャーモと戦ったという。
恋さんは記憶を取り戻しながら、バトルタワー逆走を走り抜き、戦ったという。
かつては吐いて棄てる程に、どうしようもなかった恋さんを最後まで支え、導いたのは茂お兄さんであった。

瑠音
 「……次は私ですね」

瑠音さんの世界は世界の殆どが海に沈んだ世界だという。
瑠音さんは陸の民のスパイでマナフィというポケモンを監視していたという。
そんな彼女の目の前に空から降ってきたのは茂お兄さんだったという。
茂お兄さんは海の民同士の争い、そして陸の民と海の民の戦争に置いても、その芯は決してブレなかったという。
彼女の残した貴重な情報には、私が驚愕する情報もあった。
ドラゴンを一度助けたのは茂お兄さんだというのだ。

陽光
 「私は……」

最後は私だ。
ここまでの皆の世界の情報、そして私はそこから自分世界が何番目か推理した。

陽光
 「茂お兄さんは私の目の前に落ちてきた時言ってました……出現する度にいきなり殴られたり、海に突き落とされたり、と」


 「あ」

瑠音
 「……」

該当者2人。
茂お兄さんには同情するしかないけど、これは貴重な材料だ。
その後、ドラゴン……ムゲンダイナを追いかけて私達は旅をした。
だけど、茂お兄さんの本当の目的は初めからムゲンダイナを助けることだった。

瑠音
 「察するに、ルージュさんの世界と燐さんの世界は繋がっていそうですね」


 「私の世界、瑠音さんの世界、陽光さんの世界もですね」

そうなると、考えられるのはルージュ、燐、恋、瑠音、私という順番か。
これら全てに混沌は関わった。
私達は更に混沌を追求した。

ルージュ
 「アタシの知っている混沌は茂に理不尽を振りまく事で、どのように反応するか実験していた」


 「私の場合、直接私とは関係ないんですけど、マギアナに力を与え、そこに茂さんを放って与える影響を実験していたようです」


 「私の場合、極端に小さな世界、極端に少ない人数での師匠の与える影響の観測でしょうか?」

瑠音
 「逆に私の世界は茂さんにはかなり過酷だったと思います、あれは生存性の実験でしょうか?」

陽光
 「混沌はムゲンダイナを狙っていた。もし瑠音さんの世界から茂さんだけでなく、ムゲンダイナまで攫ったのなら、理不尽な現実改変の実験?」

混沌は何れにしても実験を繰り返している。
まるで実証実験のように、茂さんは振り回された。
それでも、私は確信する。
茂さんは諦めていない。
あの人には確固たる意思がある。

陽光
 「特異点……ていうんでしたっけ?」

ルージュ
 「茂の事?」


 「……歴史に干渉する能力?」


 「あるいは、現実を改変する」

瑠音
 「異能生存の力とも言えますね」

私達が見てきた奇跡、それが常葉茂という特異点だ。
茂お兄さんがいなければ、私はきっと災厄の魔女に成り果てていただろう。
ルージュさんは、なにも成せず進化もできず死に、恋さんは茂さんが存在しなければ一生閉鎖空間から抜け出す事は叶わなかった。
瑠音さんは茂さんの言葉に救われ、生きる意思を得た。
燐さんに至っては、そもそも世界の命運だとかに関わる人じゃなかった。

陽光
 「私達は導かれたんですね」

瑠音
 「ええ、茂さんは皆を導いたんです」

ルージュ
 「グフ、グフフ♪ 茂のお陰♪」


 「私馬鹿でも、これは分かる。今でもきっと茂は……!」



***



そこは光の空間だった。
上も下もなく、右も左もない。
時間も空間も機能せず、究極の虚無に近い。


 「……どうだ? 満足か?」

俺はこの超空間で死んだ魚のような目で、目の前の存在を睨みつけた。
それは混沌だ。
混沌は目の前の机の椅子に座ると、ため息を吐くように首を振った。

混沌
 「全く、どいつもこいつも……と言いたい所だが、自分でも呆れるほど実験は成功だな!」

こいつの実験、それは俺を利用して特異点としての力の発露だった。
数多の歴史改変と茜の俺に対する過度な干渉は、俺にある力を授けたという。
それは俺には全く知覚出来ないし、まるでコントロールも出来ない厄介な代物だった。

混沌
 「理を侵す力……素晴らしい! 神の描いたシナリオさえも覆す!」

俺は気に食わなかった。
コイツは喜々として結果に喜んでいるが、その結果俺は多くの人やポケモンを不幸にしたんだ。
マギアナ、マナフィ……皆死ぬために生まれた訳じゃないんだ。
だが混沌はそれらさえも利用して、俺は知らずにカウンターを発動させた。
それはルージュを救う力にもなったが、マギアナを魔王に貶す力にもなった。
理を侵す能力、それが俺の力の意味らしい。
乱暴に言ってしまえば、神様の描いたシナリオに俺の用意したシナリオが割り込む、そんなイメージだそうだ。
恐らくだが、茜が無理やり歴史改変を繰り返し、俺のデッドラインを1秒でも遅らそうとした事が原因で俺の中に茜の力が蓄積している可能性がある。
本来ならもうとっくに俺は自殺なり、他殺なりで死んでいる訳だが、歴史改変は成功し、こうやって生きている訳だ。


 「あの5人を甘く見るなよ? 俺が認めた5人だぞ?」

混沌
 「ブワッハッハ! それでこそ! さぁシナリオを次に進めよう! 果たして彼女たちは君なしに何処まで足掻けるかな!?」

混沌の実験はいよいよフィナーレのようだ。
コイツは俺と出逢った性で、運命を捻じ曲げられた彼女たちの可能性を試そうとしている。
それが俺を測る最後の試金石だという。

俺は静かに拳を握り込んだ。
正直言って俺は無力だ。
混沌をぶん殴っても事態は解決しないし、 それどころか、俺のほうが拘束されてしまうかもしれない。
理を侵す力とか、随分大仰な名前だが、目の前の悪党ぶん殴ってハッピーエンドになる便利なスーパーヒーローの力なんかじゃないのだ。

だが……同時に俺は知らずにあの5人をここまで導いてしまった。
それは俺の意思でもあるし、同時に事故のような物だった。
それもまた理を侵す力だというのなら。


 (お前ら、俺はお前らを信じ抜く! もしもそれが歴史改変に繋がる力になるならば、次元を越えて届け!)



突然始まるポケモン娘シリーズ外伝

突然始まるポケモン娘と理を侵す者の物語

#5 集結する5人 完

#6に続く。


KaZuKiNa ( 2020/12/11(金) 18:45 )