#5 生きる大地
#5
太陽が昇る頃、パンプジンの要望で薬の材料を買い集めた俺達はドラゴンを追って西へ向かった。
穏やかな勾配、しばらくは草原が無限に広がっているかのように思える。
シェイミ
「ん〜、見えない!」
シェイミは、スカイフォルムにフォルムチェンジすると、上空から偵察する。
ドラゴンの姿はなく、やはり既に移動したのだろうか。
茂
「海を渡られたら厄介そうだな」
パンプジン
「時間もありますし……」
ナットレイ
「ふむ、当該地域にまずは向かうべきだろうね」
シェイミ
「街も見えないよ?」
ナットレイ
「本来なら徒歩だと丸一日、だが街道を走る馬車はない」
俺は思わずため息を吐いた。
世界の広さは様々だが、今回は広すぎるな。
まぁルージュと訪れたアルパ島や恋たちと閉じ込められた閉鎖世界が異常に狭いのもあったが、これはこれで疲れるものだ。
茂
「改めて、電車や車の偉大さが分かる、か」
ナットレイ
「ふむ? 電車とは?」
茂
「……説明しても理解出来ないと思うからしない」
ナットレイは何に対しても興味を抱くから、少し面倒臭い。
文明も世界様々で、流音のいた世界は俺のいた世界並に文明も発達していたが、ここは恋達の世界と同レベルだろうか?
まず電気工学そのものが見当たらない時点で、電車の説明してたらそこから説明させられるだろう。
ナットレイ
「……君はずるいな、ボクの知らない事をいっぱい知っている、本当は賢者なのかな?」
茂
「行き過ぎた科学は魔法と区別がつかないって誰かが言ってたな」
シェイミ
「お兄はなんていうか、とにかく凄いよ!」
シェイミはそうフォローするが、ふんわりし過ぎてて、ナットレイもパンプジンも要領を得ない。
ていうか、シェイミも相変わらず何考えてるのかよく分からんな!
多分何も考えていないのが正解なんだろうが。
パンプジン
「……」
茂
「パンプジン、どうした?」
俺は一番後ろを歩くパンプジンに話しかけた。
パンプジンは目配せするばかりで、積極的に会話に加わろうとはしないのだ。
だが、何か言いたげにも思えて。
パンプジン
「あ、あの……そのお、お兄さんは今までどんな風に、生きていたんですか?」
パンプジンは相変わらず遠慮顔でそんな事を聞いてくる。
どんな風に……ねぇ?
茂
「そうだな、普通に働いて、普通に家族と過ごす……て、言っても普通の基準が違うか」
パンプジン
「あの、家族は今は?」
茂
「分からん……、無事かどうかさえ、だからこそ必ず帰らないといけない」
パンプジン
「……」
家族……茜達は今どうしているのか。
俺はいつ家族の元に帰れるんだ?
そんな分かりもしない現実に辟易するが、それでも俺は前を見て進まなければならない。
希望を捨てれば、俺には何も残らないのだから。
シェイミ
「あ、前に何かいるよ!」
シェイミが道の先を指差した。
俺達は先を見ると、何やら荷台が見えた。
どうやら馬車のようで、なにか泥濘にでも嵌ったのだろうか?
男
「くそ! 動かんぞ?」
茂
「一体どうしたんだ?」
俺達は馬車に近寄ると、二人の男が困っている様子を見た。
男達は、俺たちを見るとため息交じりに言う。
男
「俺達は運送業をやっているんだが、西の町に物資を運ぶ途中、泥濘に嵌っちまったんだ」
俺は車輪を見ると、確かに車輪が半分泥に埋まっているのが分かる。
二人の男はそれぞれオタチにメェークルのようだ。
ともに進化前のようで、パワー不足は否めない感じだな。
ナットレイ
「でもおかしいね、昨日は雨なんて降っていない」
メェークル
「そうなんだが、何故か今日に限ってあちこちに沼が湧いてるんだよな」
茂
「この辺りはそういう地層なのか?」
オタチ
「いや、見渡しても分かるように、この辺りの環境は安定している」
この辺りは豊かな草原地帯。
風も穏やかで、適度な雨がある温暖な地域だ。
パンプジン
「沼……?」
パンプジンは、しゃがみ込んだ。
車輪の嵌った泥沼をじっと見る。
オタチ
「兎に角今日中に荷物を運ばないと!」
茂
「手伝おう!」
ナットレイ
「力仕事なら任せてもらおう」
俺達は二人に加勢すると、6人がかりの力で馬車はゆっくりと動き出した。
やがて、馬車が完全に道路に復帰すると。
メェークル
「旅の人、本当にありがとう!」
オタチ
「今西の町は薬が足りなくて困っている! 急いで届けないと!」
茂
「それなんだが、俺たちも馬車に乗せてくれないか?」
オタチ
「君たちも? 西の町に?」
俺は頷く。
二人は馬車を見ると。
メェークル
「ちょっと狭いが、それで良ければ」
そう言って、男達は快諾してくれた。
***
ガタンガタン!
やや不整地な道路を馬車は走る。
俺達は荷台に載せてもらい、西の町を目指す。
シェイミ
「ドラゴン……いるのかな?」
ナットレイ
「正直、もういないかも知れないね、いればもう少し騒がれるんじゃないかな?」
茂
「……はぁ」
俺はため息を吐いた。
徒労に終わるのは御免だが、本当にドラゴンは何処に向かってるんだ?
意味もなく、放浪でもされたらその足跡を追うのは困難だ。
幸いあの大きさだから、あちこちで目撃はされているらしく、俺達は対処療法で立ち向かうしかない。
パンプジン
「……」
茂
「ん? パンプジン……何を書いてるんだ?」
パンプジン
「あ、その、メモです……」
茂
「メモ?」
パンプジン
「き、気になる事はわ、私メモ、するん、です」
パンプジンはそう言うと、暗い荷台の中でスラスラと筆を走らせた。
オタチ
「旅の皆さん、もうそろそろ着きますよ!」
気がついたらもうそんなに進んだのか、馬車を操るオタチはそう言った。
気がつけば気候が変わったか?
俺は頬に当たる風を感じていた。
ナットレイ
「さて、何がボク達を待っているのかな?」
ナットレイは荷台から顔を出すと、そう呟く。
やがて馬車は徐々に減速を始めた。
***
馬車が止まると、そこは街の外れだった。
オタチ
「よし、物資を運び込むぞ」
茂
「街の中で卸した方が効率的じゃないのか?」
メェークル
「普段ならそうするんだけど、馬車を汚染したくはないからね」
俺はなんとなく最もな事を聞くが、彼らは彼らなりに謎の病毒を恐れているのだ。
果たして、本当にドラゴンと関係あるのか?
茂
「荷物運び手伝おう!」
俺はそう言うと、医薬品が入っていると思われる小包を持って、荷台を出た。
メェークル
「え、いや……悪いですよ!」
茂
「気にしなさんな、ギブアンドテイクさ」
それを見て後ろで肩を竦めたのはナットレイだ。
ナットレイ
「やれやれ、君は本当にお人好しだな」
茂
「よく言われる、これでもその行動の良し悪しはキッチリ計っているつもりなんだがな」
ナットレイは少し呆れているようだが、俺が持つのを見ると、彼女は大きな袋を持った。
ナットレイ
「全員でやれば30分で終わるだろう」
オタチ
「皆さん……」
シェイミ
「よーし! アタシも運ぶよー!」
カボ
「シャーネーナー、ヤルゾパン」
パンプジン
「う、うん」
そうして俺達6人は荷物を市中へと運び込むのだった。
***
西海岸周辺は温暖湿潤な気候だ。
だがそこから数十キロ離れたこの町は、そんな海の恩恵は得られず、乾燥した砂漠のような光景が広がっている。
道は舗装されておらず、泥を固めて作った四角い家が幾つも連なる。
なぜ、中間の町にこのような過酷な世界が広がるのは現地のポケモンにも謎なようだ。
だが、莫大な地下水脈、オアシスを有するこの町はそんな気候とは裏腹に大きな都市へと成長したのだろう。
茂
「これで最後っと」
気がつけば、空は夕闇に染まり暗くなる。
俺達は大きな蔵に物資を全て運び終えると、何人か町の住民が俺たちの前に現れる。
老人
「皆さん、ありがとうございます」
オタチ
「いえ、この町が機能不全に陥るほうが問題ですから」
茂
「聞きたいんだが、この町に、ドラゴンは現れたのか?」
老人
「ドラゴン? ええ……あの巨大なポケモン娘なら、確かに現れました……しかし何をするわけでもなく、魔女の森の方へと消えていきましたよ?」
パンプジン
「っ!?」
ナットレイ
「魔女の森、か」
茂
「知っているのか?」
パンプジン
「……大陸最大の森林地帯……」
珍しくパンプジンが口を開いた。
そういえばパンプジンも旅人だから、色んな場所に行った事があるんだよな。
だが、彼女の言葉は少し含んでいるものが違っていた。
パンプジン
「私の……故郷、です」
茂
「パンプジンの故郷?」
ナットレイ
「やはりか、パンプジンの群生地は本来陽光豊かな農耕地帯、だが陽光を避け魔女と呼ばれる一派がいる、パンプジンは魔女の一派か」
パンプジン
「わ、私は……」
老人
「ま、魔女!? ほ、本当にこの少女が魔女だと言うのか!?」
俺のわからない所だが、何故か町の住民たちがどよめいた。
その雰囲気に耐えられなかったのか、パンプジンは。
パンプジン
「ッ……!」
カボ
「ザケンジャネェー! パンガナニヲシタッテンダー!?」
カボが悲鳴めいてパンプジンを言葉で護る。
だが肝心のパンプジンは耐え切れず、走り去った。
シェイミ
「パンプジンちゃん!」
シェイミは、慌てて追いかける。
俺はナットレイと住民に向かい合った。
茂
「魔女って一体なんなんだ?」
ナットレイ
「1000年は前かな……魔術とでも言うべき巨大な力を操って、世界を侵略したパンプジンがいた、それを始祖の魔女と呼ぶんだが」
オタチ
「しかし始祖の魔女は強大な力があるにも関わらず滅びたと伝えられます」
ナットレイ
「うん、それでも始祖の魔女には沢山の弟子がいた、始祖の余りにも強すぎる力を恐れた世界のポケモンたちは魔女狩りを始め、その系譜の根絶を図ったんだ」
茂
「……それで?」
俺はその言葉の意味をしっかり吟味する。
それは何故パンプジンが逃げたかの理由になるはずだから。
ナットレイ
「始祖の魔女の一派の大半は処刑されたと伝えられている、けれどその一部が今の魔女の森に逃げ込んだと言われているんだ」
メェークル
「と言っても、全て1000年前の話だけどね」
最後にメェークルがそう注釈した。
茂
(つまりパンプジンは魔女派の子孫?)
それが逃げた理由か?
町の住民の顔を見れば、1000年経とうが魔女への怖れは消えていない事が分かる。
それ程、魔王のような存在だったのだろう。
だが、パンプジンは少なくともそんな力は無い。
茂
「大体分かった……俺はパンプジンたちを探してくる!」
俺はそう言うと二人の後を追った。
***
パンプジン
「っ……」
私は誰もいない街の外れまで走ると、そこで踞った。
徐々に空は闇が支配していく。
私はそれを『心地良い』と感じてしまっていた。
パンプジン
(私は魔女!? 私も駆除されるべき魔女なの!?)
こういう時カボはいつも何も答えない。
私は一人ぼっちだ。
シェイミ
「パンプジンちゃん?」
パンプジン
「……あ 」
後ろから小さなシェイミちゃんが歩み寄ってくる。
夜は彼女をランドフォルムという姿に変えた。
シェイミ
「パンプジンちゃんは、一人じゃないでしゅよ」
シェイミちゃんはそう言うと私の隣に座った。
シェイミ
「パンプジンちゃんはパンプジンちゃんでしゅ、シェイミはランドでもスカイでもシェイミなように」
パンプジン
「シェイミちゃん……」
シェイミちゃんは私ととても似ていた。
彼女は非常に珍しい二重人格者だ。
陽気で活発なスカイと、優しく大人しいランドの二つの人格がある。
それは、シェイミの群れには余りにも異端であり、シェイミちゃんは群れから苛めを受けていた。
それは陰のパンプジンであるが故に、陽のパンプジンに嫌われるように。
私達は似ている、故に自然と近づいて行った。
あのシェイミ達のベースキャンプの下にある薄暗い森で私達は毎日のように会っていた。
シェイミ
「パンプジンちゃん、あたしはパンプジンちゃんの事好きでしゅよ?」
パンプジン
「うん、私も……シェイミちゃんの事好き」
シェイミちゃんはニコリと笑った。
私も同様に微笑む。
シェイミちゃんは私の数少ない友達だ。
シェイミちゃんの前でなら、素の自分が出せる。
パンプジン
「ドラゴン、一緒に見つけようね?」
シェイミ
「うん♪ ドラゴンの血清でしゅっけ? それさえあれば皆救えるんでしゅよね?」
パンプジン
「多分……シェイミ達の症状は未知過ぎて分からない事が多いけど」
私はあの場の光景をもう一度思い出す。
草原は侵されていたが、致命的な土壌汚染とは言えなかった。
シェイミ達の症状も同様で、草タイプは重症になりにくいのかも。
パンプジン
「あれ? これって……」
私はふと足元を見た。
足元はオアシスの恵みを受けて、原っぱが出来ている。
そんな踏みつけられた雑草が一部分を除いて枯れている。
パンプジン
「この症状……!」
私は急いでカボの中からメモを取り出した。
そしてそのあるがままをメモに書き写す!
シェイミ
「ど、どうしたんでしゅか?」
パンプジン
「……うん、やっぱり、これは……」
私はこの結果にある答えを見つけようとしていた。
まだ実験していないから確証は得られない。
茂
「いた、こんなところにいたのかお前達」
シェイミ
「あ、お兄たま♪」
そこへお兄さんが現れた。
シェイミはお兄さんに抱きつくと、お兄さんも優しく受け止める。
お兄さんは私を見て。
茂
「パンプジン、俺は少なくとも魔女なんぞ知らん。だがお前なら俺はよく知ってる。お前にとって他人でしかない俺やシェイミたちの治療をしているのは、他でもなくお前なんだから」
パンプジン
「お兄さん……」
シェイミ
「お兄たまはこう言ってるんでしゅ、その好意を受け止めても良いんでしゅよ?」
シェイミちゃんはにこやかに言う。
シェイミちゃんは彼を全幅の信頼で見ている。
私にはそれはまだ分からない。
きっとそれがナットレイの言う謎なんだろう。
パンプジン
「おに、お兄さん……、わ、私は」
茂
「よしよし♪」
お兄さんは、突然私の頭を優しく撫でた。
それは私の気分を不思議と安らかにしてくれる。
本当の魔術のような手だ。
茂
「少し落ち着いたか?」
パンプジン
「は、はい……ありがとうございます」
私は改めて、呼吸をして、立ち上がる。
パンプジン
「お兄さん、この町の病毒で確信を得たいので、協力してくれませんか?」
茂
「確信? 分かった! 何をすればいい?」
パンプジン
「町の住民を集めてください」
茂
「住民をか、分かった、声を掛けてくる!」
茂お兄さんはそう言うと町へと走り去った。
シェイミ
「パンプジンちゃん、どうするでしゅ?」
パンプジン
「水源を見てみるわ」
私達も動き出す。
この町の病毒、もしかしたら簡単に解決できるかもしれない!
***
住民A
「この町の問題が解決するのか?」
住民B
「謎の病毒だぞ? きっとあのドラゴンが振りまいたに決まっている!」
茂
(パンプジン……俺はお前を信じるぞ)
俺は町の一番のお偉いさんに話をして、屋敷に元気な住民を集めてもらった。
この町に今広がる謎の病毒、それはドラゴンが世界中に撒いている毒だと恐れられている。
だが……パンプジンは違うようだった。
これからパンプジンの発表がある。
パンプジン
「ちょ、ちょ、ちょ……」
住民
「?」
茂
(パンプジン! テンパるな! 気持ちはわかるけどな!?)
パンプジン
「調査報告をしまっす!」
パンプジンは元々人前で喋るのが苦手なやつだ。
その喋りは声が裏返っており、素っ頓狂な代物だった。
パンプジン
「わ、私はこの周囲一帯のっ、土壌を、調査、しま、しましたっ!」
住民C
「土壌? こんな乾燥した大地を?」
パンプジン
「そ、そんな事はありま、せん! この地下には莫大な、す、水脈がっ、ありっ、ありまして!? それ、は、遥か東まで伸びて、いるんでしゅ!? か、噛んだ〜」
住民は互いの顔を見た。
まずそういった地質学を知っている者も少ないのだろう。
そして同時に視線はパンプジンに集中する。
パンプジン
「〜〜〜!?」
カボ
「アー!!? ヨースルニ! コンカイノジケンハチカスイガカンケイシテルッテパンハイッテンダヨ!」
住民達
「「「ビクッ!?」」」
住民たちはどよめいた。
カボチャが喋ったのだ!
あれに驚かない物はいない。
だがパンプジンの様子に耐えかねたカボは怒涛に言葉を繋ぐ。
カボ
「イイカ! ボンクラドモ!? ソモソモチミャクニハ、スイミャクノホカニサマザマナドジョウヲフクムンダ! ソシテサンプルヲサイシュシタケッカ!」
パンプジン
「こ、こちらは街の生活用水になりますっ!」
パンプジンは透明なコップに入れた水を住民には見せた。
そして、それを住民に渡すと。
カボ
「ナンカヘンナニオイガシネーカ?」
住民A
「そういえば、最近臭いがキツくなって……」
パンプジン
「す、水源に硫黄が若干含まれている性です、そ、そして答えは簡単、でした……水分中に有害な毒素を含む金属成分が出てきたのです」
その答えは単純なものだった。
世界というのは見えている部分はほんの少しで大体見えていない。
風はどこから来るのか、大地の下はどうなっているのか、そんな事さえ誰も答えられないのだ。
今回の事件は、現代ならいざしらず、この中世的世界では無理もない事だった。
水脈の下にはマグマがあり、表出こそしていないがこの周辺は火山帯なのだ。
古くから使われた地下水脈は少しずつ、その毒素を水の中に溶かしていき、それが住民を蝕んだのだ。
パンプジンの考察では、恐らく昔から金属中毒者は発生していたのではないかと論じている。
それが突然表出した理由は何十キロも先、あの馬車が泥濘に嵌った所から、パンプジンは考察した。
***
茂
「マグマが地表に動いている?」
発表の後、俺達は宿屋に宿泊した。
町の住民は水が危ないと知ると、使うのを止めたようだ。
とはいえ、生活用水を地下水脈に頼っていた住民はこれからどうするんだろうか、そんな事を話している時だった。
パンプジン
「はい、もしかしたら数年……遅くとも百年以内には、噴火する恐れがあります」
そもそも何故内地だけ乾燥地帯なのか。
それは土壌分析すれば明白だった。
この辺りは地下に莫大な溶岩を抱えている、火山帯。
土地の栄養はとぼしく、また硫黄成分が生育を阻害する。
そのスケールは正直言って人の一生のレベルじゃない。
茂
「大地は生きてるんだなぁ」
ナットレイ
「びっくりだね、大地を調べたらそんな事が分かるなんて」
ナットレイも素直にそれには驚いていた。
大抵の事はナットレイは知っているようだが、科学的検知となると疎いのだろう。
いや、寧ろパンプジンが凄すぎる。
茂
「そういう知識、どうやって得たんだ?」
パンプジン
「お、お祖母ちゃんから教えて貰いました、硫黄や水銀の有害性も有益性もお祖母ちゃんが全て手ほどきしてくれたんです」
パンプジンのお祖母ちゃんか。
そう言えば、始祖の魔女って奴が暴れたのって、そのお祖母ちゃんがまだ生きてる頃なんだよな?
案外本物の魔女だったりするのか?
ナットレイ
「で、これからの目的は?」
ナットレイは次に向かうべき場所を聞く。
俺は、窓から見える光景を眺めると。
茂
「魔女の森……だな」
パンプジン
「……案内します、でないと危険だから」
パンプジン、魔女の末裔かも知れない少女。
確かにその科学的知識は、この中世世界に置いて魔術とそう変わらないかもしれない。
そんな彼女のルーツに、俺達は向かう。
そしてそれは……パンプジンにとってある重要な事になるのだった。
突然始まるポケモン娘シリーズ外伝
突然始まるポケモン娘と理を侵す者の物語
#5 生きる大地 完
#6に続く。