突ポ娘外伝 - 第四章 無限の水平線の世界編
#11 希望

#11



戦場は膠着していた。
今や海も空も、陸の敵となり、さしもの巨人たちも苦戦していた。
だが……状況は刻一刻と変わっている。
船は傾き始めた、至る所から巨人が現れているのだ。
俺はレンチのような工具を手に持つと。


 「死なば諸共ーっ!!!」

ガッシャァァァン!!!

俺はその時迷わなかった。
ケーブルから何かがシリンダーに注入され、少女が苦しんでいるのを目撃して黙っていられる訳がなかった。
俺は倉庫に放置された工具でシリンダーを何度も叩いて、叩き割った!

バッシャァァァ!

液体が外に流れる衝撃でシリンダーは粉々に砕け散る。
俺は水浸しにされたまま、少女を見た。

謎のポケモン娘
 「っ!!?」

少女は目を見開くと、バッ! と骨の翼を広げ、飛び立った!
ドオオオン! という爆発的エネルギーと共に。


 「うおおおあああああ!?」

俺は吹き飛ばされ、倉庫の外に投げ出された。
倉庫はポケモン娘が飛び出した衝撃で崩壊し、少女は空の彼方へと消えてしまった。


 「これで、良かったんだよな?」

俺は半信半疑になりながらも、なんとか立ち上がると眼下に広がる光景を見た。



***



瑠音
 「巨人が!?」

突然エデンからとても大きなドラゴンのようなポケモンが飛び立った。
初めて見るポケモンで、巨人が放つオーラと同じ色をしていた。
そしてその直後、巨人たちはいきなり同士討ちを始めたのだ!

マナフィ
 「なんか良うわからんけど、今やー!」

マナフィ様はチャンスと見ると、一斉攻撃を命じる。
だが……!

巨人
 「だ、だだだ、ダイバーン!!!」

リザードンの巨人が口を開くと、巨大な火炎が空に放たれた。
それはそれまで手足で暴れることしか出来なかった巨人たちが能力を振るい始めたのだ。
あまりの高温は海を蒸発させ、カトンボのように空の民を撃ち落とした。
そして海の民には、巨大な草のエネルギーが放たれた!

マナフィ
 「アカン!? 退避やー!?」

マナフィは急いでフィオネ達を下がらせようとする。
だが、動きは相手のほうが速かった。

マナフィ
 (クソッタレ!?)

ズドォォォン!!



***



海賊
 「うぎゃあああ!?」

海賊たちは巨大な竜巻によって大空へ打ち上げられた。
突然巨人が暴走し、見境なく暴れ始めたのだ。

バーグ
 「ルビィ様!? 助けてくださいルビィ様!? グバァ!?」

バーグは巨人に踏み潰され、醜い悲鳴を上げたが、肝心の本人はそれどころではなかった。
所詮長官といえど、替えの効く人材でしかないのかルビィはそれよりも巨人に何度も命令をした、が!

ルビィ
 「な!? い、言う事を聞きなさい!? 何故聞かない!?」

ルビィは狼狽した。
突然制御が効かなくなったのだ。
その原因はすぐに分かった。
星の民が、災厄を開放したのだ!

ルビィ
 「お、おのれ星の民ぃ...…!」

オウガ
 「ルビィ! いかん! 後ろ!?」

ルビィ
 「がっ!?」

突然、ブーバーの巨人がルビィを鷲掴みにした。
その顔にオウガは覚えがあった

ルビィ
 「は、離せ!? 汚物が!?」

巨人
 「おおおおおおっ!」

ブーバーの巨人は火を溜め、それをルビィに吹きかけた。

ルビィ
 「あば!?」

ルビィはいとも簡単に炭化した。
オウガは一応悲しむように顔を下げ、ルビィを見なかった。
女帝の最期としては、あまりにもあっけなかった。

やがて巨人たちは、海へと飛び込み、マナフィの元へと集まっていく。

オウガ
 「な、なんだ、お前たちまさか!?」

巨人
 「しょ……ぐん」

ブーバーの巨人はオウガに笑みを浮かべた?
だが真偽は分からぬ。
ただ皆マナフィの元に集まり始めたのだ。



***



マナフィ
 「はぁ、はぁ! ウチを、舐めんなやー!?」

フィオネ達は全滅した。
突如巨人は知性を得たかのように戦い、マナフィも無視できないダメージを受けていた。
しかし、フィオネ達は海を紅く染める事もなく、ガイアの素へと還元され、マナフィの傷を塞いでいく。

瑠音
 「これは世界が滅びる音……?」

ガイアの素は次々と生み出されていく。
それはウォーターアイランドも含んでいた。
ウォーターアイランドを構成する木材はガイアの素に還元され、それは巨人の死体や空の民の死体にも及ぶ。
その変化が音となって聞こえたのだ。

瑠音
 「くっ!? 茂さん!」

私はまだ諦めたくなかった。
海へと飛び込むと、私はマナフィ様に近づく。
そしてマナフィ様に迫るポケモンに吹雪を放った!

瑠音
 「ハァァァァ!」

マナフィ
 「ジュゴン!? お前なんで!?」

瑠音
 「私は瑠音です! 私は諦めたくなんてありません! あなたも殺さないし! 茂さんも殺させません!」

マナフィ
 「ッ!? 茂君!?」

その時だ、マナフィは茂の声を聞いた気がした。
特異点は何を動かすのか?



***




 「はぁ、はぁ! こ、この船でか過ぎる……!」

俺はエンデュオンを脱出すると、甲板を走った。
甲板はあちこちが隆起したり、逆に陥没したり既に潜水艦の体は捨て去っていた。
そんな崩壊した甲板には死体が山ほど積もり、それがやたら臭い匂いを放つ液体に変わり海へと流れていった。
俺はそれがガイアの素だと理解すると、兎に角マナフィの元に向かう。

オウガ
 「常葉茂……無事、だったか」


 「オウガ!? なっ!?」

オウガは倒れていた。
傷口からガイアの素が溢れ出している。

オウガ
 「くく……せめてマナフィを討ち取って死にたかったが、この様ではな」


 「オウガ! しっかりしろ! 傷は浅いぞ!?」

オウガ
 「がはは……自分のことは自分が一番分かる、無理だよ」

オウガは溶けながら笑っていた。
俺はその姿に泣いてしまう。
まだ、アンタは死んじゃだめだろ!?

オウガ
 「常葉茂! お主には俺の想像も出来ぬ何か、強い意志があるのだろう!? ならば泣くな! 目的を果たせ!」


 「くっ!? オウガ……」

俺はオウガの手を握った。
オウガは笑う、それは死にゆく者の顔とは思えない。

オウガ
 「俺はこの運命に後悔はしない……お前に託せたんだからな……」


 「ああ、俺はまだ目的の途中だ。マナフィは止める」

俺の目的、それは家族の元に帰ること。
もう一度茜と家族達との平穏を取り戻すこと。
だから泣くわけにはいかなかった。

オウガ
 「船の先頭にいつでも使えるウォーターバイクがある……それを使え」


 「……わかった」

オウガ
 「フッ、後は、たの……む」

オウガの命が海に流れて行った。
俺は立ち上がると、最後の仕上げに向かう。


 「マナフィ……俺は!」



***



瑠音
 「はぁ、はぁ!」

マナフィ
 「く……、終わりか」

私達は巨人相手に戦い抜いた。
巨人たちは数は多かったが次第に力を失い、巨人化を解いていった。
恐らくあのドラゴンのようなポケモンが消え去ったからだろう。
私はマナフィ様を見る。
マナフィ様もボロボロだ。

瑠音
 「マナフィ様……」

マナフィ
 「ふ、死にぞこなったか」

マナフィ様はそう言って皮肉のように笑う。
既に戦場で生きているのは私達だけだろうか?
いや、何かがこっちに高速で向かってきた!

瑠音
 「敵!?」

マナフィ
 「いや、茂君や」

それは水上を水飛沫を上げて走るウォーターバイクだった。
それに跨っていたのは、茂さんだ。


 「瑠音! マナフィ!」

瑠音
 「茂さん……!」

私は迷わず、茂さんに飛び込んだ。
茂さんはよろめきながらも、私を受け止めてくれた。


 「瑠音、無事で良かった……」

瑠音
 「茂さんも……! 私もう二度と会えないって……!」

私は肩を震わせ、茂様の胸に顔を埋めると、そう言って泣いた。
私はそんなに強くない、戦争に自分の命も諦めていた。
絶対に生き残れる訳がない、そう思った。
それでも生き足掻けたのは茂さんがいたからだ。

瑠音
 「わ、私、もう一度茂さんに会いたくて、会いたくて!」


 「もう大丈夫だ、俺はここにいる」

茂さんはそう言うと私の頭を優しく撫でてくれた。
それだけで私は少し安心する。
不思議な程、私はそれで落ち着きを払うことが出来た。

マナフィ
 「見せつけるなぁ」


 「マナフィ……お前は満足か?」

茂さんはマナフィを見ると、強い眼差しをぶつけた。
マナフィ様は自虐的に笑う。

マナフィ
 「まさか? ガイアを目覚めさせるまで満足なんてあるかいな!」

瑠音
 「茂さん……、後は私に任せてください!」

私は覚悟を決めた。
茂さんから離れると、私は海に飛び込み、マナフィ様に立ち向かう。

瑠音
 「マナフィ様、私は茂さんを護ります!」

マナフィ
 「その為にはウチもってか!? ハッ! ええよ!? どの道餌が足りん!」


 「二人とも!」

マナフィ
 「下がっとき! 戦いに巻き込まれても知らんで!?」



***




 「……く!?」

俺はスロットルを握ると、その場から離れた。
情けないが、海で俺にできることは少ない。
そしてマナフィはまだ魔王であることを諦めてはいない。
それを瑠音は止めようとしている。


 「瑠音! どうか無事で!」

瑠音
 「クス、茂さんさえいれば、私は無敵です!」

瑠音はそう言って、マナフィと対峙する。
マナフィは戦闘態勢を整えると、ルネに飛びかかる!

マナフィ
 「覚悟せぇやぁ!!」

瑠音
 「私は負けません!」

瑠音もまた、マナフィに飛びかかる。
空中でぶつかり、海中でぶつかる二人は傷つきながら、戦っている。
だが、地力ではマナフィが上のようで。

マナフィ
 「はぁ!」

マナフィのアクアブレイクがルネに突き刺さる。
瑠音は苦悶の表情を浮かべた。

瑠音
 (く!? やはり強い!? でも私が諦めたら茂さんが! それだけは絶対に許さない!!)

瑠音は負けじと、空中から吹雪をマナフィに放つ。
マナフィは水中に隠れ、吹雪を通さない。
だが瑠音は吹雪を止めなかった。


 「瑠音は何を……!?」

瑠音
 「凍れぇぇぇ!」

瑠音は更に出力を上げた!
海は凍りだし、瑠音はその氷山に着地する!

瑠音
 「はぁ、はぁ!」


 「足場を作ったのか!?」

瑠音は着地すると呼吸を整えた。
水中での戦いはマナフィに負けてはいない。
だが肺呼吸の瑠音では長期戦は圧倒的に不利だ。
だからこそ、瑠音は海の生き物でもあり、陸の生き物なのだ!


 「瑠音! お前は半端者なんかじゃない! その両方から祝福を受けたんだ! お前はお前を信じろ!」

瑠音
 「私が、祝福?」

バシャァァン!!

マナフィ
 「序に茂君の祝福もな! 憎いで全く!」

マナフィは水中から飛び上がると、瑠音に襲いかかる!
しかし瑠音は氷の床を滑り、高速でマナフィの裏を取る!

マナフィ
 「なに!?」

瑠音
 「私が、私を信じる……だったら私を信じて下さい茂さん!」

瑠音の動きが変わった。
マナフィは着地から振り返るが、そこに瑠音は尾ビレでマナフィを蹴り払った!

マナフィ
 「ぐあ!?」

瑠音
 「凍える風!」

瑠音は追撃した。
凍える風がマナフィの動きを封じる!

マナフィ
 (クソ!? いきなり動きが良くなった! 茂君を敵にまわすってこういう事か!?)

瑠音は更にマナフィに追撃する!
しかしマナフィは直ぐに海へと飛び込んだ!

瑠音
 「はぁ、はぁ! マナフィ様の次の手は!?」

瑠音は追撃は行わなかった。
それは幸となるか不幸となるか……いや、それは愚問だ!


 「お前を信じる!」

そうだ、お互いを信じ、自分の行動を信じろ。
俺たちに出来ることはこれだけなんだ!

ゴオオオオ!

その時、突然瑠音が乗る氷山が揺れ始めた!
それはマナフィが作り出した渦潮だ!


 「不味い! 飲み込まれるぞ!」

瑠音
 「くっ!?」

瑠音はどうする気だ?
氷山は水の流れに削られ、瑠音が渦潮に落ちるのは時間の問題だ。
だが、瑠音は何かを待っている?

瑠音
 (マナフィ様、貴方の力、私はよく知っています……何度もその間近で見てきました……ですから!)

瑠音は突然、水をかき集め、頭上で掲げた。
それはマナフィの渦潮とは逆に渦巻いた!


 「まさか!?」

瑠音
 「渦潮!」

そう、そのまさかだ。
瑠音は渦潮を生み出し、それをマナフィの生み出した渦潮に投げつけた!

マナフィ
 「なっ!?」

渦潮と渦潮がぶつかり合うと、その流れは相殺されてしまう!
瑠音は海の中にマナフィを見つけると、真っ直ぐ海へと飛び込んだ!

瑠音
 「これで……終わりです!」

瑠音は水を纏った。
それはまるで鋭い槍のように、マナフィに突き刺さった!

マナフィ
 「か、は!?」

マナフィが大きく空気を溢した。
決着だった。



***



夕日が差し込んだ。
今、俺達の前には海に横たわるマナフィがいた。

マナフィ
 「やっぱり、運命には、勝てんか〜……」


 「マナフィ、お前の負けだ」

マナフィ
 「フフフ、茂君を敵に回すと敵わんなぁ〜」

瑠音
 「マナフィ様……」

瑠音は申し訳なさそうにマナフィを見た。
だが、こうするしかなかった。
だから俺は優しく瑠音の肩を抱いた。

マナフィ
 「瑠音……アンタ、強うなったな……」

瑠音
 「たまたまです、もし万全の状態なら」

マナフィ
 「それが運命や……」

運命か。
本当に運命なんだろうか?
俺はなんだか納得が行かなかった。


 「マナフィ……どうしてもガイアを裏切れないのか?」

マナフィ
 「堪忍な、そんな風には出来てないんや……ウチはもう疲れたわ」

瑠音
 「うぅ……マナフィ様」

瑠音は泣いていた。
マナフィは海へとゆっくりと沈んでいく。
きっとガイアに還るのだろう。



***



マナフィ
 (海はやっぱり落ち着くなぁ)

ウチは暗く冷たい海へと沈んでいく。
体を徐々にガイアの素へと変えながら。
だけど後悔はせん。
瑠音は勝ったんや、ウチは生きていたらあかんのや。
でも……ウチはならなんでこんな生きてたんやろう?

マナフィ
 (なんや? 何か……忘れている?)

ウチは何か最初に重要な事を言われた気がした。
最初……そうや、最初に出会ったのは。

マナフィ
 (ウチがタマゴから孵った時、最初に目の前にいたのは)

フーパとジラーチや。
今とは変わらん、ウチより更に悠久の時を生きたアイツらは。
生まれたばかりのウチの前のいた。

フーパ
 『久しぶり、て、分かんないか』

ジラーチ
 『マナフィ、アンタはアンタの想いを優先しなさい』

フーパ
 『折角得た人生だ、それを誰かに強制されちゃ勿体ないからな!』

そうや、あの二人は何故かウチを知ってた。
産まれたばかりのウチにはよう分からんかった。
でも、今ならなんとなく分かる。
ウチはガイアの端末や、ガイアのためだけに生きる。
でも……なんで瑠音を祝福した?

そうや、これはガイアの意思やない!
ウチの身勝手な意思や!

マナフィ
 (はは……ええな、でも……次はもっとええ人生にしたい、なぁ)

そこでウチの意識は終わりやった。
ウチが消えるーー。



***



ポチャン。

瑠音
 「!? これは?」

マナフィが沈んでいった後、突然海から不思議な丸い物体が浮かび上がった。
それはタマゴだろうか?


 「まさか、マナフィのタマゴ?」

瑠音
 「マナフィ、様の?」

瑠音は恐る恐るそれを手に取ると、優しく胸に抱いた。
それは不思議な青い海のように輝く不思議なタマゴだった。


 「……これはどういう意味だ?」

瑠音
 「きっと、希望なんですよ」


 「希望?」

瑠音
 「この世界は残酷ですが、まだ終わっていません。だから希望を最後に残したんですよ」

世界は残酷か。
確かにこれが運命ならば、残酷だ。
だが確かにまだ世界は終わっていない。
ガイアは目覚めなかった。
優しい海は、ただ揺れている。

瑠音
 「私、このタマゴを護ります! 今度はマナフィ様をこんな運命から護ります!」

瑠音は今までにない強い決意の顔でそう言った。
だが、これからどうすればいい?


 「この世界は多くを失いすぎた……遅かれ俺たちも」

瑠音
 「探しましょう! 新しい大地を!」

瑠音はそう言った。
それはまるで絶望なんてしていない顔だった。

瑠音
 「推測ですが、まだガイアが目覚めていない以上、どこかに僅かでも陸は存在していると思います!」


 「ふ……そうだな、お前を信じよう!」

瑠音
 「茂さん……!」

俺は少し参っていたかも知れない。
だが瑠音が絶望してないのに、俺が絶望するのは早すぎる。


 「しっかり捕まってろ、飛ばすぜ!」

俺はウォーターバイクのスロットルを握った。
瑠音は後ろから俺の身体に手を回して抱きつく。

瑠音
 「貴方について行きます……いつまでも、どこまでも」

俺はスロットルを回した。
ウォーターバイクは加速し、海を疾走する。
だが、どこに向かう?
生暖かい風は吹いた。
夕暮れだが、水温は高い。
だが……。

瑠音
 「! 見てください! 海鳥です!」

それは生き残った生き物か?
何も見えない海上を羽ばたく鳥の姿だった。

瑠音
 「まるで迎えてくれているみたい……!」


 「案外本当にそうなのかもな、付いていこう!」

俺は海鳥を追う。
海鳥はどこまでも、真っ直ぐ飛んでいく。
それは夜を迎え、そして朝を迎えても。
しかし、海を朝日が差す時。


 「あれは?」

俺は体力の限界を感じながら、ウォーターバイクを操っていると、前方に何かが見えた。
それは鳥の群れだった。
鳥の群れ?
それは鳴きながら一本の木に停まっていた。

瑠音
 「陸です!」


 「本当に……」

それは小さな孤島だった。
だが砂浜に一本の木が生えているのは確かだった。
俺は力を振り絞って、バイクを上陸させる。

瑠音
 「奇跡ですかね?」


 「どうかな? 瑠音のお陰かもしれない」

瑠音
 「私?」

なんとなくだ。
これは瑠音が引っ張ってきた運命のように思えた。
残酷な運命も希望溢れる運命も、それは瑠音が引っ張ったんじゃないかな?


 「……瑠音、お前はやっぱり凄い女だよ、海にも陸にも愛されているんだから」

瑠音
 「でも、それに気づけたのは茂さんのお陰です」

俺たちは笑った。
絶望なんてしない、寧ろ希望を抱こう。

パァァ。

その時、突然光が降ってきた。
それは俺を包み込む。

瑠音
 「茂さん!?」


 「どうやら、お呼ばれしているらしい」

それは誰か?
それはわからない。
或いは神か?
俺に何かをさせようとしている存在はもうここに用はないと言っているようだ。


 「俺は次の世界に行く、だが必ず帰ってみせるぞ!」

瑠音
 「茂さん! 私!」

瑠音は俺に抱きついた。
そして、俺の唇を大胆に奪う。
それは大人のディープキスだった。

瑠音
 「愛しています、貴方のこと」


 「瑠音、ありがーー」



***



茂さんが消えた。
私はまだ茂さんの温もりを抱いている。

瑠音
 「忘れません、貴方のこと」



突然始まるポケモン娘シリーズ外伝

突然始まるポケモン娘と理を侵す者の物語

#11 希望

第五章に続く。



KaZuKiNa ( 2020/07/19(日) 20:09 )