第二章 歪められた世界編
#8 マギアナ

#8



惨劇があった。
マギアナの甘い言葉は、ただの騙し討ちに過ぎなかったのか。
今や、会場は炎が吹き、雷、吹雪が乱れる戦場になっていた。

マギアナ
 「アッハッハ! 人間を殺すことは善行です♪ 皆さん頑張ってください♪」

マギアナの狂笑は響く。
やがて彼女は壇上を降りて、自ら戦場を求めていった。



***




 「くそ!? どうなってんだよ!?」

今や会場は逃げ惑う人々で溢れかえっていた。
何人かは銃を手にして応戦しているが、とてもじゃないが数が足りない。
俺はクローズを捜したが、その姿は乱戦の中には見えなかった。


 「くそ……! マギアナ! これがお前の本性なのか!?」

俺は敢えて逃げ惑う人々とは真逆の方向に進んだ。
その先には必ずマギアナがいるはずだから。

PKM
 「うおおお!」


 「ちっ!?」

PKMが一人紛れてきた。
翼があり、それは鋼の光沢がある。
恐らくエアームドだろう、両手に刀を握って斬りかかってきた。

ブォン!


 (くっ!)

PKMの刃は俺の目の前を通過した。
なんとか、攻撃を凌いだがやはり丸腰は辛い。
だが頼れる者のいない俺は覚悟を決めるしかなかった。


 「うおおお!」

俺はなるべく頭を守るようにして、エアームドに体当たりをする。
エアームドは態勢を崩し、転がってしまう。
俺はその隙に更に奥へと進んだ。


 「マギアナー! いるなら返事をしろー!」



***



クイタラン
 「あ……あ?」

これは悪夢だろうか?
私はウツロイド様に連れられて特別にパレードへの参列が許された。
やっと平和が訪れるんだ、私の馬鹿な頭でもそれが理解できていた筈。
ウツロイド様も同様に喜んでいた……なのに。

ウツロイド
 「マギアナー! 直ちに攻撃を中止しなさい!」

ウツロイド様はこの事態を知らなかった。
ただ漠然と行われる虐殺行為に激怒し、直ぐに飛び出していった。

クイタラン
 「私……なんで?」

今や武装した人間とPKMが殺し合いを始めている。
足下には逃げ遅れたただの市民が大量に倒れている。

人間
 「くそぅ! 騙しやがったな!?」

PKM
 「ゴミが! 空気を汚すな!」

クイタラン
 「うわぁ!?」

私は恐慌状態になって、その場にうつ伏せになる。
そのまま死んだふりをして、嵐をやり過ごす。
私は生きる上で学んだことは、自分に出来ない事をするなだ。
どんな暴威も抵抗せずやり過ごすしかない。
私なんかが前線に出たら死ぬに決まっている。
どうしようもなく臆病で、駄目な私には他に選択肢なんてなかった。

クイタラン
 (もう嫌! なんでこんな事ばっかり起きるの!? 誰か助けて……誰か)



***



マギアナ
 「アハハ! その調子ですよ皆さん! 一刻も早く地球をクリーンにしましょう!」

ウツロイド
 「マギアナ!」

マギアナは戦場を進む。
その足下には無数の屍が積まれている。
しかしその身は綺麗なものだ、まるで異質、それがマギアナだった。

マギアナ
 「まぁ、ウツロイドさん、どうしたのです? 早く地球のゴミをお掃除されませんと」

ウツロイド
 「貴方……本気でそれを言っていますの?」

ウツロイドはマギアナの素っ頓狂ないつもの対応に怒りを積もらせていた。
マギアナは初めからウツロイドの進言を聞く気はなかったのだ。
ただ、どうすれば効率よく虐殺できるか、それだけを考えていただけなのだ。
それが全てウツロイドには理解できた。


ウツロイド
 「もういい加減にしやがれであります!!」

マギアナ
 「まぁ! まぁまぁ! ウツロイドさんがそんな汚い言葉を!」

ウツロイド
 「貴方は統治者として不適格! 私が引導を渡して差し上げますわ!」

マギアナ
 「それは裏切り行為ではありませんの?」

ウツロイド
 「先に私を裏切ったのは貴方かしら!?」

ウツロイドはすかさずパワージェムを溜める。
ウツロイドの掌で精製される琥珀色の宝石はある程度の大きさになるとマギアナに向ける!

ウツロイド
 「この距離で直撃を浴びれば貴方でも!」

パワージェムは放たれる!
だがマギアナは笑みを崩さない。
パワージェムがマギアナに当たる直前!

キィン!

ウツロイド
 「!?」

パワージェムはマギアナの周囲を円形状に展開された透明なバリアに弾かれた!
それはポケモンの技や特性による物ではない!

マギアナ
 「旧USAで開発されたフォースフィールド発生装置ですわ、本物は充分な電力を発生させるのに大型過ぎて使い物にならなかったのですが、ソウルハートを介せば、携行可能になりましたの♪」

ウツロイド
 「くっ!?」

マギアナ
 「そして、フォースフィールドってこういう使い方も出来ますのよ?」

マギアナの中心核であるソウルハートには、機械を自身の肉体にする特性がある。
その最大の能力こそが、発達しすぎたホモサピエンスの科学をほぼ100%その身に活かせる事だ。
マギアナは右手を振るうと、空間が歪んだ。
直後、ウツロイドは何かに激しく弾き飛ばされた!

ウツロイド
 「かは!? な、なにが……?」

マギアナ
 「クスクス♪ 無様ですわねウツロイドさん♪」

ウツロイドは血を吐いて、地面に倒れた。
まるでダンプカーにでも轢かれたかような衝撃を受け、ウツロイドは直ぐには動けない。

マギアナ
 「フォースフィールドの出力を攻撃に使えば凄いでしょう? なんならミンチにして差し上げましょうか?」

マギアナがウツロイドに近づく。
ゆっくりとした歩みだったが、それは死神の足音だった。

ウツロイド
 (わ、わたくし……このまま、死にますの?)

それは恐怖だった。
マギアナに殺意はない、だがそれが恐怖なのだ。
マギアナは純然なる悪意そのものだ。
だから彼女の振る舞いに誰も疑わなかった。
彼女はこれを息を吸う位当たり前にしているのだ。

マギアナ
 「クスクス、保美香さん……貴方元々目障りでしたの♪」

ウツロイド
 (ほ、みか……?)

それは前にも聞いた名前だった。
薄れゆく意識の中で、走馬燈のように思い出されるのはあの目付きの悪いスーツ姿の男だ。
なぜ、あの男が気になる?
ウツロイドには分からない、ただ……意識は――。

キィン!

マギアナ
 「あら?」

それはマギアナの意識外からの攻撃だった。
一般的な拳銃の弾丸はマギアナの後頭部に向けて放たれた。
つまり敵は後ろにいるのだ。

クローズ
 『救いがないな……私達は』

マギアナ
 「あら、クローズさん? 貴方『まだ』ですの?」

クローズ
 『問題ない』

クローズはマギアナに銃を向けた。
黒光りする、まるで芸術品のような銃。
しかしマギアナは笑っている。
当然だろう、フォースフィールドは完璧だ。
例え核爆発でも彼女を傷付けることは不可能だろう。

マギアナ
 「まだ『確定』していない……ならばまだ私が本物にも……」

クローズ
 『いや無い、お前には永遠に訪れはしない……』

ダァン!

マズルフラッシュが輝く。
クローズが放った弾丸はフォースフィールドに当たると弾かれた!
しかし……!

マギアナ
 「!? フィールドが!?」

クローズ
 『ソウルハートを介しているならば、フォースフィールドもお前の肉体の一部だ、お前はただ普通の人間より拡張性の高いサイボーグに過ぎん』

マギアナから初めて笑みは消えた。
フォースフィールドは紫色に変色して消滅していく。
クローズが放ったのはマギア・バレットという魔術の弾丸だ。
しかしそれは単なる魔装ではない。
ただマギアナを殺すためだけに産み出された、PKM殺しの弾丸。

マギアナ
 「か、身体が……?」

マギア・バレットから放たれた魔素はマギアナをみるみる内に浸食していた。
除去方法のない魔素はマギアナを衰弱させていく。

クローズ
 『科学でお前を倒すことは出来ない、あらゆる科学の上位存在であるお前はそれを浸食して強くなる……だが、魔術の素養はこの程度だ』

マギアナ
 「ま、術……? あ、なたが……?」

マギアナの腰が折れた。
気が付けば、マギアナは膝を地面に付けて、クローズは見下ろしていた。
漆黒の死神は表情を見せない。
ただ、銃をマギアナの額に当てる。

マギアナ
 「う、ふふ……貴方、は……この地獄、耐えられます、か?」

クローズ
 『さようなら』



***




 「マギアナー! クローズ!」

俺は二人を捜して戦場を走り回った。
最初は激しい戦いが展開されたが、民間人が逃げまどい、それをPKMが追って、戦場が広がるにつれて密度は下がっていく。
その中で俺は二人を捜すが、どちらも発見できないまま、ただ彷徨っていた。


 「くそ!? 殺し殺されて何が楽しいんだよ!?」

俺は夥しい死体の群れに向かって、ただ本音を叫んだ。
しかし直後、足下に何かが当たる。


 「え?」

俺は足下を見下ろした。
そこには俺を絶望的な目で見るPKMの女がいた。


 「お前……クイタラン?」

クイタラン
 「地獄からの使者?」


 「テテテーテ、テテン! テテッテー! スパイダーバースに出演が確定した男、スパイダーマッ!」

て、巫山戯ている場合じゃない!
俺はクイタランの腕を掴んで持ち上げると、クイタランはいきなり泣き出す。

クイタラン
 「う、うぇぇぇん! 死にたくない……殺したくない……!」


 「クイタラン……」

俺はコイツのことはよく知らない。
なにせいきなり炎の鞭で攻撃された位しか記憶がないのだ。
だが、こいつも被害者なんだなって事は分かった。


 「泣くな……今は泣くな」

俺はクイタランを抱きしめた。
ただ、何分不器用で茜やルージュにやってやった程度しかないため、相手安心させられるかは分からない。

クイタラン
 「ぐす……貴方、死神?」


 「目付きが悪い程度で死神なら、死神さんも迷惑だと思うぞ」

思わず世界一忙しいと言われる死神の残念! 私の冒険はここで終わってしまった! を思い出すが……俺選択肢間違えてないよな?


 「俺の名前は常葉茂、断じて死神ではないし、地獄からの使者でもない」

クイタラン
 「トキワシゲル?」


 「そう、お前の名前は?」

クイタラン
 「無い……誰もつけてくれなかったから」


 「そ、そうか……」

名付けがされていないというのは、彼女にとっては深刻そうだった。
この世界のポケモンは名付けで親を確定させる。
つまり彼女が安心を得られる親は存在しなかったのだろう。


 「立てるか? こんな場所にいても何にもならんぞ?」

クイタラン
 「う、うん……あの?」


 「なんだ?」

クイタラン
 「私のこと恨んでないの?」


 「人を呪えば穴二つって知ってるか? 今時の若もんはヘイトスピーチに全く気掛かりももたん!」

クイタラン
 「……私馬鹿だから良く分からないけど、穴二つって言うのは2回落ちるってこと?」


 「呪った奴も呪われた奴も地獄に落ちるってこと、転じて恨み呪いは不毛ってこと、罪を憎んで人を憎まずとも言うな」

クイタラン
 「茂さん……頭良いんだね」


 「……まぁ馬鹿ではないと思うがな」

俺は完全にクイタランを起き上がらせると、周囲を伺った。
今の所戦場の音は遠い。
マギアナかクローズを見つけたい所だが、生憎分かりそうもなかった。
なによりクイタランを安全な場所に送るのが先決だろう。

クイタラン
 「ねぇ……教えて、どうして人間とPKMが争わないいけないの?」


 「それは当事者に聞くしかないが……少なくとも俺は単純に正義のぶつかり合いだと思う」

クイタラン
 「正義のぶつかり合い?」


 「多分、最初に連合を立ち上げた奴は憤慨があったんだと思う、きっとそれに賛同したPKMたちも同じ怒りがあったんだと思う」

俺はグリナと名乗ったグラエナの女性アセリナを思い出した。
彼女にあったのは逆恨みで、決して正義感があった訳じゃない。
でも彼女について行ったPKMはきっと自分たちが正しいと思ったはずだ。


 「意見が食い違い過ぎて、言葉で問題を片付けられなかった……そしていつの間にか偏見が当たり前になっちまう」

クイタラン
 「それが戦争……」


 「俺は少なくとも、こんな戦争クソ食らえって思うがな」

クイタラン
 「ウツロイド様と同じだ……」

俺は予想外の名前に驚いた。
こいつ保美香の知り合いか!?


 「クイタラン! お前保美香……いや、ウツロイドがどこに居るか分かるか!?」

クイタラン
 「う、ううん……飛んで行っちゃったから……」

保美香の奴、多分性格から考えてマギアナを止めるためにかっ飛んだな。
保美香は多少エキセントリックだが、一番人道を重んじる奴だ。
少なくともこんな非道を許せる奴じゃない。
分かって貰えない辛さを知っているが故に、保美香はわかり合うことを大切にする。


 「兎に角マギアナだ、マギアナを止めないと!」

……その時だ。

タァン!

乾いた銃声が響いた。
俺は音の方を向く。


 「まさか……そこにいるのか!?」

俺は何かを感じ取り、走り出した。

クイタラン
 「待って! 危険!」


 「お前は何処かに隠れていろ!」

俺はクイタランにそう言うと、音の方に向かう。
やがてそれは見えてきた。


 「あ……」

俺は見てしまった。
頭から血と脳漿を出して倒れるマギアナを。
その手前で銃口から煙を吹き出した銃を手にしたクローズを。

クローズ
 『……茂さん、終わったよ』


 「お、お前……! それしかなかったのかよ!?」

俺は涙が溢れていた。
マギアナの無残な死体見て、どうしようもなく感情が溢れてくる。


 「答えろ! 殺す事でしか解決出来なかったのか!?」

クローズ
 『そうだ、そもそもマギアナは殺しを楽しんでいた、初めから分かり合える余地など存在しなかった』


 「そんな、こと……! マギアナは……うぅ!」

悔しい、結局俺は何を得られたんだ?
マギアナを助ける事も出来ず、俺はこの世界で何も出来ていない。

クローズ
 『……ここは危険だ、安全な場所まで』


 「……お前は何者だ?」

クローズは俺に手を差し出すが、俺はそれを弾いた。
クローズはある程度予期していたのだろうか、弾かれた手を寂しそうに見ながら手を引いた。

クローズ
 『今更重要な要素、ですか?』

クローズの口調が変わる。
演技染みた物から、本音の声へ。


 「なぜ正体を隠す必要がある?」

クローズ
 『この世界を終わらせないため』


 「なに? 終わらせないため、だと?」

クローズは首元に手を触れさせた。

クローズ
 「……しかし、もう良いでしょう」

直後、クローズの生の声が聞こえる。
それは可愛らしい少女のような声だった。
だが、その驚きはこれまでで一番の物だろう。


 「お、まえ……まさか?」

クローズはヘルメットに手を掛けた。
ゆっくりと持ち上がると、その顔は……!


 「マギ、アナ?」

クローズ
 「そう、クローズの正体は憎むべき怨敵マギアナ……これが隠すべき正体なのです、ご主人様」

その瞬間全てが繋がった。
一時とはいえ家族同然に過ごしたマギアナ。
家族のSNSを知っている理由。
なぜ俺を必要以上に構うのか、その理由。

クローズ
 「軽蔑しましたでしょう? 私はこの手を汚しすぎましたから」


 「何故だ? 何故マギアナが二人いる? このマギアナは偽物なのか?」

クローズ
 「……そうです、この時点で偽物です、私が本物のマギアナになりました」


 「訳が分からねぇ……じゃあなんでマギアナ同士が殺し合うんだ?」

クローズ
 「存在する理由……ですが、それは……」

もう一人のマギアナ、クローズは言葉を澱ませる。
正体を明かしてなお俺に答えられない何かがあるのか?

クローズ
 「ご主人様……もう少し時間をください、必ず二人のマギアナがいる理由は説明します」

クローズはそう言うとヘルメット再び被った。
首元にもう一度触れると、声は合成音声に変換される。

クローズ
 『申し訳ありませんが、死したマギアナにはまだ役割があります』


 「何!? まさか……!?」

クローズはマギアナを抱きかかえる。
よく見れば確かにクローズマギアナの身長は殆ど同じだ。
人間離れした身体能力にも説明できる。
クローズ恐らくマギアナをさらし者にする気だ!


 「お前はそれでいいのか!? お前の好きな物はこんな残酷な物だったか!?」

クローズ
 『っ!?』

マギアナは冒険物語や英雄譚が大好きな少女だった。
曰く王道のハッピーエンドを迎える物語に憧れを抱いていた。
だが、これは本当にマギアナが望んだストーリーなのか?
俺はどうしてもそれが信じられない。

クローズ
 『……これは責任です、このマギアナも物語を終わらせる役割があるのです』


 「責任だと?」

クローズはマギアナを抱きかかえると、素早くステージに向かった。
ステージは戦場とは正反対の方向にあったお陰で、殆ど荒れていない。
つまり、そのまま利用できるということだ。

クローズ
 『この放送を受けている全ての民に告ぐ! 私は黒の一族団長のクローズだ! マギアナは我々を甘い甘言に惑わせ、この場に集めさせた! その結果、PKMの虐殺を招いた! だが、それももう終わりだ! このマギアナを見よ! マギアナは死んだ!』

それは宣言だ。
クローズは予めPKM合衆国連合が用意していた放送設備を使って、宣言を行っている。
それは人類の勝利なのか?
それとも破滅なのか?

クイタラン
 「はぁはぁ! 茂さん……これって」

クイタランは息を切らして俺の元にやってきた。
なんだかんだでこいつも俺のこと怖れてないよな。

クイタラン
 「この放送って……」

会場周辺には、会談場に来れない者や、放送に気付かなかった者のために、あらゆる場所にスピーカーが設置されていた。
つまり今のクローズの宣言は内側は勿論外側にも届いているという事だ。


 「クローズの宣言通りだ……アイツの勝ちだ」

ウツロイド
 「う……く? 無様、ですわね」


 「保美香!?」

クイタラン
 「ウツロイド様!?」

突然、後ろで何かが動いたかと思うとそれはボロボロに傷付いた保美香だった。
俺達は慌てて駆け寄ると、直ぐに介抱を行う。

ウツロイド
 「クイタラン……無事だったのですね?」

クイタラン
 「はい……悪運だけは強いですから」

ウツロイド
 「それでいい……それと人間、貴方はわたくしのなんなのですか? 何故わたくしを保美香と?」


 「……知り合いにそっくりすぎてな」

俺はそう言葉を濁した。
本当のことを言っても恐らく彼女を混乱させるだけだろう。

クローズ
 『人類は敗北者ではない! もうここにPKMが人類を支配する時代は終わったのだ!』


 「マギアナ……お前は幸せなのか?」

俺はクローズがクローズを演じるという事に違和感を覚えている。
何故彼女は英雄の真似事をする?
こんな戦争の中心に紛れ込んで、彼女は何をしたかったんだ?

ウツロイド
 「人間……たしか常葉茂でしたわね?」


 「ああ、しかしそう言われるとちょっとくすぐったいな」

ウツロイド
 「クイタランを護ってください……わたくしの一生のお願い……」

クイタラン
 「ウツロイド様?」

献身か、実に保美香らしいが……俺はそれが気に食わなかった。
思えば、俺はこの世界でなにをやっても空回りだった。
家に向かえば確信が分かるんじゃないかと思ったが分からず、旧家に向かえば既に無い。
マギアナに会いに行っても会えず、遂には死んでいた。
まるで全てが無駄みたいで、辟易していた。
だから……これだけは絶対に譲らん!


 「馬鹿者! クイタランだけじゃない、お前も護る!」

俺はそう言うとウツロイドを背負った。

ウツロイド
 「きゃ!? は、ハレンチな……!?」


 「ほう? 神経接続して電気信号相互循環を好みとする変態が言うことかぁ?」

ウツロイド
 「どうしてそれを……は!?」

クイタラン
 「ウツロイド様……?」

クイタランが軽蔑した目で保美香を見た。
保美香の性癖はどうやらこの世界でも変わらないらしい。
俺はしっかり保美香を背負うと、歩き出す。

ウツロイド
 「……何所に向かってますの?」


 「人間もPKMも安心して暮らせる所」

クイタラン
 「そんな場所あるの?」


 「無ければ造る、やらない事には始まらん!」



突然始まるポケモン娘シリーズ外伝

突然始まるポケモン娘と理を侵す者の物語

#8 マギアナ 完

#9に続く。


KaZuKiNa ( 2020/01/13(月) 18:07 )