第二章 歪められた世界編
#7 人間とPKM

#7



マギアナに会うことは出来なかった。
だが保美香がこの世界に存在する事を知った。
保美香だけじゃない、美柑も伊吹もだ。
この世界で保美香は人となりこそ変わらなかったが、俺の元に現れなかった保美香であった。
過去にはPKM連合とも反目した彼女だったが、彼女もまた時代の波に飲まれ、合衆国連合の幹部にもなってしまったのだろう。

この世界の俺はPKMとは関わらなかったのだろう。
だから誰とも家族にはならなかった。
無論この世界には恐らく茜はいない……。
それでも俺が保美香とマギアナを捨ててまで選んだのは、クローズがいるからだ。

クローズは俺を知っている。
これは言葉以上に重要な意味を持っている。
俺は『この世界』の俺ではない。
この世界に俺が共に過ごす家族は居ない。
にも関わらず、クローズは保美香を知っているらしい。
限りなく黒に近いグレーだ。
正直どこまで信じていいのか分からない。
それでも俺は、虎穴入らば虎児を得ずの諺の通り魔に手を伸ばしたのだ。



百目鬼
 「クローズ! 帰ったか! た、大変だ!?」

結局黒の一族のアジトに帰った俺達を待っていたのは副団長だった。
副団長は随分慌てた様子でクローズを中へと招く。

クローズ
 『一体どうした?』

百目鬼
 「合衆国連合が全回線をジャックして放送をやっている!」


 「なんだと?」

討希
 「……」

討希は興味がないのか、帰ってくると真っ先に地下研究施設に帰っていった。
俺はその後ろ姿が気になったが、クローズについて行き、今時珍しいブラウン管テレビの置かれた談話室に入った。
談話室には全団員が集まったのか、俺達が入り込むスペースはない。
ただ全員の目がテレビに映った一人の少女に注がれていた。

マギアナ
 『日本人全ての方に発表があります』

クローズ
 『マギアナ!?』

それは紛れもなくマギアナだった。
周囲から無数のライトが焚かれて、記者会見をしている様子だった。

マギアナ
 『合衆国連合建国祭典に併せて、日本人の方々に一部領土の返却をお約束します』


 「なに?」

マギアナの発言に団員たちは騒然とした。
「領土の返却!?」「本当なのか!?」
騒然となった談話室に様々な議論が巻き起こった。
それは恐らくここだけじゃないだろう。

マギアナ
 『それにともない、日本人における自治権を認め、特別自治区を設けたいと思います、詳細は式典の後、発表を予定しておりますので、日本人の方々是非ご参加くださいませ』

クローズ
 (やられました……先手を打ってきましたか)


 (クローズの奴、一体どう考えている?)

俺はクローズの横顔を覗いたが、相変わらずフルフェイスメットに覆われたクローズの感情は読み取れない。
だが、なんとなくクローズはこの発表を信じてないんじゃないか、そう思えた。

百目鬼
 「クローズ、どうする? この発表の後では連合もままならないぞ?」

クローズ
 『十中八九、総崩れ、だな』

連合とはレジスタンス組織を結集して行う筈だった、関東地区奪還作戦の事だろう。
日本奪還を掲げる黒の一族はそれだけを願い、戦ってきた。
もう間もなくクローズを旗印としてマギアナとの決戦を迎える筈だった……が。


 「どうするんだクローズ?」

クローズ
 『応じるしかないだろう』

想定外、それも時代の勝者から差し出された手ではあるが、これは重要な選択だ。
だが内心で俺はもう争いが終わるのかと、ホッとしている。
クローズも、交渉の場でマギアナを暗殺するような無茶はしないだろう。

クローズ
 『……地下へ行ってくる』

クローズはそれだけを言い残すと、談話室を出て行った。
黒の一族はかつてない程騒然としている。



***



クイタラン
 「戦争が、終わる?」

私は結局ウツロイド様の家にホームスティさせて貰っていた。
今は客分扱いだけど、ウツロイド様のような人を目指すべく勉強中だ。
宮殿で行われていた重要な会議から帰ってきたウツロイド様は満足そうな顔だった。

ウツロイド
 「ええ、宣言の通り。会談が無事終われば両種族がこれ以上争う理由はなくなりますわ♪」

ウツロイド様は反戦派の人だった。
連合の中でもトップクラスの戦果を上げた人だけがなれる幹部にもなったというのに、本人は極めて平和主義だ。
多分ずっと家事しているのが本人にとって一番幸せなんだろう。

クイタラン
 「私頭良い方じゃないから、良く分からないんですけど、それってPKM連合からは良いんですか? その……上の人とか」

私はなんと言えば良いか言葉を探すが、イマイチ見つからない。
しかしウツロイド様は察して、答えてくれた。

ウツロイド
 「勿論反発はありましたわ、しかし特権階級の馬鹿どももいい加減目先の利益よりも、長期的な視野を得るべきかしら!」

そう言って熱く語るウツロイド様は拳を硬く握った。
私の知っている昔の日本は今よりずっと平和だった。
あの頃に比べたら今は仕方ないけど、貧富の格差は広がり続け、内側に住むPKMと外側に住むPKMは同じ仲間かと疑問に思える程だった。
外側のPKMからすれば、もう鉄砲玉にされる必要もないのかと、安心するが。
私を鉄砲玉扱いする奴らはよく、拳を降ろしたものだ。

クイタラン
 「クローズは応じますかね?」

ウツロイド
 「応じるしかあり得ないでしょう。仮に応じなければ、クローズは孤立しますので」

クイタラン
 「孤立、ですか」

ウツロイド
 「それ程徹底抗戦を訴える人間はいないという事です、少しでも安全が手に入るなら、あっという間に掌返しですわ」

多分私だってそうだろうな、と思った。
危険な場所には一秒もいたくない、私だって性根はきっと同じなんだ。

クイタラン
 (同じなのに争う……なんでなんだろう?)

人間とPKMの違い、それってそんなに多くはない。
なのに差別して争ってきた。
偏見と差別はきっとこれからも続く。
それでもわかり合えるなら、私はそれを無くす努力をしたい。

ウツロイド
 「さて♪ 今日は張り切るかしら♪」

そう言って大鍋を取り出すウツロイド様。
一体なにを作る気だろう?



***



地下研究室。
黒の一族アジトの最深部、そこには二人の魔術師がいる。
俺はその内セーラに意見を貰いにやってきていた。

セーラ
 「会談ねぇ」


 「お前はどう思うんだ?」

セーラ
 「どうもこうもないわよ、レコンギスタするまで、私は戦うだけだっつーの」

レコンギスタ、聖地奪還。
彼女たち十字教徒にとってはエルサレムの奪還を指す。
今のセーラからすれば、混迷極めるヨーロッパ戦線をどうにかする方だろうか。

セーラ
 「それにアンタら日本人も浮かれてる場合じゃないでしょう? 所詮首輪付きの自由なんだから」


 「首輪付きか、確かにな」

セーラ
 「日本人はどうにも日和ってるのよねぇ、現状理解しているのかしら?」


 「明日の安全が欲しいだけさ」

そう、誰だって明日の保障がほしい。
くそ真面目に働くのだって、結局は明日の保証を得るためだ。
安心して暮らせるというのは、殊の外貴重な物だ。
だからこそ飛びついてしまうのだろう。

セーラ
 「特異点……か」


 「ん?」

セーラ
 「この変化も特異点の発生させたパラドックスなのかしら?」

セーラはそう言って首を傾げるが、そんな物俺に分かる訳がない。
だがセーラからすれば、俺が現れてから時代が動き出したように感じているらしい。
曰く特異点は歴史に干渉する能力を持つと言うが、逆説的には安寧がない。
それでも俺は家族を護りたい。
茜と茜が産んでくれる子供を絶対に護る。


 (そうだ、俺のレコンギスタは家族を取り戻す事!)

セーラ
 「……それにしても、クローズ、出てこないわね」

セーラはそう言うと研究施設の奥に振り返った。
そこは討希が担当する区画、暗幕で隠され、俺は入る権限もなくセーラにも絶対近づくなと釘を刺されている。


 「一体あそこには何があるんだ?」

セーラ
 「外道の法に触れずに済むのなら、触れない方が幸せよ」

ばっさりそう言い切るセーラの剣幕はそれ以上触れるなだった。
討希に比べると、あまりセーラからそういう暗い物は感じないが、彼女とて魔術師ならば、その外道の法にどっぷり浸かっているのだろう。


 「魔導書とかでも置いてあるのか? アル・アジフみたいな」

セーラ
 「貴方の考えているような魔導書は多分存在しないわよ、というか魔術はね、口頭で伝承するの、文字で残すのは危険だからね」


 「そうなのか」

セーラ
 「見るだけで危険とか、ラブクラフトの影響だっつーの! そもそもPKMの方がよっぽど邪悪な神々じゃない!」

言動を見るに、魔術師でもクトゥルフは知っているらしい。
ちょっと意外だったが、魔術書は存在しないのか。

セーラ
 「魔術って言っても、やり方は色々あるけれど、そんなに便利な物じゃないわ、基本的に魔術師が使える魔術は1種類のみ」


 「現実改変とか、か」

俺は討希が使った魔術を思い出す。
セーラはそれを聞くと非常に嫌な顔をした。

セーラ
 「あのクソ野郎か……まぁ、そういう事よ……魔術はその本人の適性と遺伝によって繋がるの」


 「遺伝? 魔術師は遺伝するのか?」

セーラ
 「そう、故に魔術師は魔術師と結婚するのが常、大きな家とかだと近親相姦も普通ね」


 「近親相姦……」

セーラ
 「魔力は代を重ねる毎に薄れるの、だから少しでも魔力を維持するために……ね」

俺はなんとなく魔法の時代が何故終わったかを理解した気がした。
科学が魔法の時代を追い詰めたのは事実かも知れないが、実際には魔術師そのものがどん詰まりしていたのだろう。

セーラ
 「ま、だから私はアンタに男としての興味はないから安心しなさい」


 「そりゃ結構」

俺はそう言って顔を天井に向けた。
俺の理解していない所で、こういう世界も存在する。
セーラは魔術を外道の法だと言う。
俺はそれが具体的になんなのか分からない。
だが、クローズはその外道の法に触れている?
ならば、アイツは魔術師なのか?


 (いや、多分違うな……なんとなくだがアイツのセーラや討希のような異質感を感じない)

討希は勿論、セーラも何処かで常人ではない気配がある。
クローズのそれは、逆にミステリアスな違和感だといえる。
クローズ何者か、俺には分からない。
アイツは白か黒か、それすらも微妙で俺はそれを計ろうとしている。
だが、クローズは不思議なほど像がぼやけており、俺に実体を掴ませない。


 (アイツの正体……それがこの世界の答えに繋がるのか?)

そこまでは分からない。
この世界は何かがおかしい。
何処か本来あるべき姿から歪んだような世界……この違和感はなんだ?

クローズ
 『……来ていたのか』

俺は天井を見て考え事をしていると、暗幕が開いた。
そこからはクローズだけが出てきた。


 「何をしていたんだ?」

クローズ
 『彼と相談を』

セーラ
 「……」

セーラはクローズを睨みつけている気がした。
セーラ自身クローズを嫌っている節はないが、討希は別なんだろう。
セーラが討希に持つ負の感情の正体は分からないが、根は深そうだ。

クローズ
 『茂、さん……、上に行こう』


 「ああ」

時折、クローズの不器用すぎる演技に綻びが生まれる。
今だにその正体は分からないが、やはり無理をしているな。
俺は立ち上がると、クローズと共に研究施設を出る。
その間言葉を交わす事はなかった。

だが……クローズは。

クローズ
 『……終わる』


 「え?」

クローズはボソッと呟いた。
一体何が終わるのか?
だが、クローズはそのまま通路の奥へと消えて行った。



***



……マギアナの衝撃発表の後、特に誰も動くことはなかった。
きっとそれは誰も会談の懸念材料を増やしたくないからこそ、だろう。
そんな微妙な空気の中……遂にその日は訪れた。



ザワザワ、ザワザワ!

内側で建国パレードが行われた後、マギアナはそのまま外側に設けられた式典場に移動した。
式典場は2週間かけて、PKM合衆国連合が整備した。

今ここには恐らく、放送を聞いた殆どの日本人が集まっているのではないだろうか?
マギアナがスピーチを行うステージの前には、それ程の人間が集まっているのだ。
勿論黒の一族も含めて、だ。


 (ステージの奥にマギアナがいるのか)

俺はこの会場に姿を見せていた。
ステージの壇上には内側の宮殿を警護していたPKMの姿がある。
差し詰め親衛隊と言った所だろうか。
予定通りなら、マギアナはここで日本人の自治権を認める発表を行う。
その発表を期待してこれ程の数が集まったのだ。


 (クローズの姿は見当たらない、か)

黒の一族メンバーでここにいないのはセーラと討希だけだ。
セーラは「興味なし」と言って留守番、討希は不明だ。
クローズは発表後、具体的な統治の仕方や自治権範囲の確定などでマギアナたちと協議する手筈だ。
会議には人間側の有力者も参加するという。


 「もうすぐ……もうすぐ世界は変わるんだな」

争いは終わる……対立から共存へ。
ゆっくりとだが、だけど両者はいつか分かり合える筈だから。

市民
 「おい、出てきたぞ!?」

ステージで動きがあった。
それはステージの奥に立てられた小屋から、ある少女が現れたからだ。
会場に集まった目は一斉にステージを向いた。
マギアナは屈強なPKMを数名連れて、壇上へと上がる。
誰もがその姿に息を呑んでいた。
マギアナの姿は今、ねずみ色のドレスに身を包みながらも神々しさすら持っているような気がした。

マギアナ
 『皆さん、いよいよこの時が来ました……』

マギアナの発言がスタンドマイクを通して、会場に設置されたスピーカーから放たれた。


 (間違いなくマギアナだ! やっぱりお前なんだな!?)

俺は改めて自分の知る存在に安心感を得ていた。
だが、恐らくマギアナも保美香みたいに俺を知らないんだろう。
だが、保美香はそれでも俺の知る女だった。
ならばマギアナも……!

マギアナ
 『皆さんこれまで苦労してきたでしょう……ですが、それももうお終いなのです』

市民
 「うぅ……!」

マギアナの演説に泣く者も現れている。
きっとそれだけ辛い思いをしたのだろう。
だが報われる、マギアナは優しい子だ、きっとより良い世界を作ってくれるだろう。

マギアナ
 『ですから――』

マギアナが一拍置く。
その次に出てきた言葉は。

マギアナ
 『死んでください♪ 私達のために♪』


 「……は?」

それは、惨劇の合図だった――。



***



セーラ
 「相変わらず気味の悪い部屋ね……」

会談で黒の一族全員が総出したアジトは静寂に包まれていた。
兼ねてから他の者よりもPKMの懐疑心が強いセーラは、マギアナの放送を信じられず留守番を決め込んだのだ。

今セーラがいるのは、普段討希のいる暗幕の内側。
そこは見るに堪えない悍ましさがあった。

セーラ
 「そりゃ特異点に見せられる訳ないわよね」

セーラが呆れかえるその顔の前にあったのは高さ250センチメートルはある透明なカプセルだ。
カプセルは全部で3つ、その全てに蛍光グリーンに発光する液体がぎっしり詰め込まれて、部屋を薄らと照らしている。
カプセルの中にはその得体の知れない液体だけではない、人間のような何かが入っているのだ。

それはPKMだ、戦争に巻き込まれ鹵獲された者や、下半身と右肩を失ったPKMまでいる。
だがまるでホルマリン漬けされた死体のようにも見えるが、その謎の液体に使ったPKM達は生きている。
その証拠に、セーラが中に入ると目だけを動かして、一斉にセーラを見たのだ。

セーラ
 「うえぇ……私も外道だけど、ここまでの狂気は思い付かないわね」

セーラはそう言うと、カプセルの前に置かれたテーブルの資料を見る。

セーラ
 「魔力とPKM……か」

それはある調査資料だった。
人間が魔術を扱えるのは魔力と魔素に許容があるからだ。
魔素とは、魔法を扱う上で原油のような物、それを精錬して魔力に変えて魔術を発生させる。

では、PKMの場合はどうなのか?
PKMは魔術に対して弱いという結果は既に魔術師には熟知されていた。
だが討希の資料はそれを更に科学的に纏めていた。

・PKMと魔素の関係

PKMは生まれ持って魔素を持ち得ない。
よってPKMは人間のような魔素抵抗を持っていないという事になる。
魔素に汚染されたPKMは著しい衰弱を見せ、現代医学では治療が不可能。
一方でPKMは人間ならば除染されるはずの魔素を溜め込むという性質を持つ。
この性質も魔素汚染され、衰弱した身体を自然治癒できない一因になっている。
だが……その溜め込むという性質はある物と似ている。

・聖人とPKM

神と同一の印を生まれ持つ事で、莫大な魔力を有する人間が歴史上複数人確認されている。
彼らは何れも歴史に深く干渉し、魔術の系譜を築いてきた。
だが一方で聖人は短命な者が多い。
それを科学的に解釈するならば、人体にさえ有害な魔素を除染しきれないからだ。
この構造はPKMと似ている、違いがあるとすればPKMは魔力を精錬出来ない。
そして、この事がマギアプロジェクトにおいて重要なのである。

・聖骸について

聖人の身体は死後聖遺物となることで知られる。
肉が滅んでも、骨には大量の魔素が混入しており、それ故に歴史上では聖遺物を巡った争いが何度も起こった。
聖遺物はこの世で唯一、魔力を持つ『物』だ。
それ故に魔術師にとっては最強のマジックアイテムだと言える。
では、同じく魔素を除染出来ないPKMはどうなるのだろう?

・聖遺物の量産化

本記事を見て、了解いただけたかと思うが、PKMは魔術に弱く、また魔素を溜め込む性質を持つ。
これは聖人の機能とほぼ同一であり、PKMに充分な魔素を与えれば、聖遺骸は誕生する。
偶然に頼って文字通り神頼みで聖人が生まれる事を祈る時代は終わった。
PKMを使えば、聖遺物は幾らでも創れる。
魔術界を底辺から変えうる事項である。

・マギアプロジェクト

創設者クローズの権限によってPKMの鹵獲を開始。
個体A(種族カメール)は戦場で傷付き、身体を著しく欠損、蘇生液に浸けて蘇生を試みるも、30日で死亡、最初の聖遺物テストタイプとなる。
個体B(種族ポニータ)は健康状態良好、90日に及ぶ魔素汚染で、充分良質な聖遺物を創ることに成功。
個体C(種族メロエッタ)は本来PKM合衆国連合には合流していなかったPKMだが、人類が初めて発見した魔素汚染された個体だった。
本人は魔素汚染されていることに気付いていなかったが、蘇生液に浸かる必要性はあり、現在様子見。

セーラ
 「はぁ」

そこまで読んでセーラは溜息を吐いた。
これを知れば黒の一族の団員でさえも真っ二つになりかねない。
まさかPKMを原材料に武器作ってるなんて言えない。
最後に記事は、聖遺物『マギア・バレット』の説明で締めくくられていた。

討希
 「魔術は科学によって衰退した……この事実に歪みはない」

セーラ
 「だから、アンタは科学的メスを入れて、聖人と聖遺骸を研究した……」

気が付くと、討希が闇の中から現れた。
セーラは顔も向けずただ、怠惰に答える。

セーラ
 「神様を呼んだ大罪人が救世主なんて、笑えない……」

討希
 「神などいない、それが分かった事がそれ程重大か?」

セーラ
 「少なくとも、お偉いさんにはね……」

討希自身は魔力を然程持たない。
セーラ程の才能は有しない、それ故に過激派だった。
本当の名前も知らず、ただ戦火の中で生まれた故に歪んだ世界に対する憎悪は凄まじく、この凶行にも至った。

セーラ
 「今頃特異点はどうしているかしら?」

討希
 「気になるのか?」

セーラ
 「そりゃ、アカシックレコードに記載されない人間なんて、気になるに決まってるじゃない」

討希
 「俺はアイツがセフィロトの樹を登る者とは思えんがな……」

セフィロトは十字教において重要な要素を持つ。
カバラ思想を元にしたセーラの魔術体系において、特異点は大吉にも大凶にもなりえる。

セーラ
 (存在が未確定……これほど厄介な存在はないわよね)



突然始まるポケモン娘シリーズ外伝

突然始まるポケモン娘と理を侵す者の物語

#7 人間とPKM 完

#8に続く。


KaZuKiNa ( 2020/01/13(月) 17:53 )