突ポ娘外伝






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異世界転位編
#7 本戦開幕!

#7



異世界漂流6日目。
予選を生き残ったバディーズたちは今、アルパシティの中心に聳えるスタジアムに集結していた。


 「……さて、本当に出場出来るのか」

ルージュ
 「……駄目なの?」


 「さぁな、今の所取り押さえられる様子もないが……」

俺は今スタジアムの会場内にいた。
日差しは晴天、ドーム状だが屋根が無く、光りが差し込んでいる。
観客席には何万人いるんだか分からない観客が大量に集まっていた。
もう間もなく開会式の時間の筈だが。

ルージュ
 「? 何か動きがあるみたい」


 「始まるのか?」

何人かのトレーナーがある一点を見ている。
そこは所謂貴賓席に当たる所だろう。
よく見ると、豪奢な格好をした男性の姿があった。

アナウンス
 『皆さん静粛に! ただいまより、我々の主神ユミル様が顕現されます!』

ルージュ
 「しゅ、主神? 神様?」


 (ユミルだと!?)

アナウンス
 『神前席をご覧下さい!』

俺がその名前に驚いているのも束の間、周囲の視線は一点に注がれていた。
スタジアムの最も高い場所から、ある少女が顔を出した。


 (ユミル! まさかお前が!?)

それは間違いなくポケモンセンターで出会った少女だった。

ユミル
 『人の子らよ、妾は喜ばしいぞ、今その野望を胸に秘めた戦士達がここに集うておる!』

ルージュ
 「ぴゃあ!? 心に響いてる!?」

それはテレパシーだ。
明らかに人ならざる力でユミルは喋る。

ユミル
 『予選を生き抜いたバディーズたち、其方達が優勝した、暁には妾がその願いを叶えよう! 此度の大会楽しませてもらおう!』

ユミルはそう言うと手を広げた。
まるで全てを受け入れるように。
トレーナーの何人かは敬礼ように胸に手を当て、感極まっている。
どうやら、主神ユミルとは実在する神様だという事なのか?

ユミル
 『今より主神ユミルが許可をする! 祭りの開催じゃ!』

アナウンス
 『ユミル様の許可が下りました! バディーズは速やかに控え室に移動してください!』

主神ユミル、俺の前に現れた不思議な少女が神様、か。
しかし不思議と天地がひっくり返るほど驚かないのって、やっぱり茜がいたからだよな。
神々の王が実はずっと傍にいた……そりゃ心底驚いたからな。

係員
 「皆さん誘導に従って速やかに移動をお願いします!」

係員が誘導を開始する。
バディーズたちはそれこそ千変万化だ。
ゴツい顔に傷のある大男いれば、幼い子供もいる。
それら参加者は100名を越えているんじゃないだろうか?
複数の班に分けられて、俺達は移動を開始した。



***



スタジアム地下には幾つかの施設がある。
どうやら、訓練場やレジャー施設もあるらしく、平時にも利用されているようだ。
俺とルージュはやや手狭な空間に押し込まれ、大会の諸説明を受けていた。

係員
 「本戦ではトーナメント形式で戦って貰います! その間私闘の禁止、また著しく公平性に欠けると判断される行為は処罰の対象となるので注意してください!」

ルージュ
 「つまり勝手に戦っちゃ駄目ってこと?」


 「だな、まぁ好きでやる奴もおらんと思うが」

本戦は一発勝負だ。
負ければそこで敗退。
あくまでも戦って、戦って、戦って勝ち抜いた者が優勝者に選ばれる……か。

係員
 「では、トーナメント表の発表までしばしお待ちくださいませ!」

係員の説明が終わった。
まだバトルが始まるには少し時間が掛かるらしい。

係員
 「常葉様ですね?」


 「え?」

突然後ろから共通のコスチュームを着た別の係員が俺に声を掛けてきた。
と言うか俺の名前どうして……?

係員
 「ある方が貴方をお呼びです……私に付いてきてください」

ルージュ
 「茂?」


 「キリキザンは……」

係員
 「私は常葉様だけと」


 「……待っててくれ」

ルージュ
 「わかった……」

ルージュは少し不満そうだ。
俺は部屋を出る係官について行く。


 「で、俺を呼んでるのって」

係員
 「私ははっきりとお答えは出来ません」

部屋を出るとやや早歩きで、向かいながら会話を試みるがはっきりとした答えは返ってこない。
やがてエレベーターの前に辿り着くと、係官は読めない文字のボタンを押す。


 (補正で言葉が分かるのは有り難いが、文字が読めればもっと良かったんだがなぁ)

そうなりゃ英語だろうがラテン語だろうがキリク文字だろうと読めて仕事も楽になるんだが、現実はそんなに甘くない。
語学学習する時間もなかったし、帰ったら帰ったで無用の長物だもんな。

やがてエレベーターは到着すると俺達は乗り込んだ。
日本で見る物に比べると大きなエレベーターはゆっくりと俺達を上へと運んでいった。


 (……多分予想通りだろうが)

俺は特に会話もせず、エレベーターが止まるのを待つと、やがてある階に止まった。
エレベーターを出ると、係員はエレベーターから出ず、ただ俺に忠告する。

係員
 「貴方が会われるお方は、同じ次元の方ではございません、それをお忘れなく」


 (つまり、超次の存在)

そこは狭く暗い通路だ。
目の前に僅かに光りが漏れる豪奢な装飾のされた扉が見える。
俺は扉に近づくと、扉の方が自然に開いた。

扉の向こうには玉座のような椅子が置かれ、その奥は吹き抜けだ。

ユミル
 「どうした? 中に入るが良い」

玉座に座るその存在は声を放つ。
俺は意を決すると中へと入る。
すると扉は勝手に閉まった。

ユミル
 「人払いしている、近うよるが良い」

俺は玉座に近寄る。
そこにはやはりユミルがいた。

ユミル
 「ふふふ、ポケモンセンターで会ったのは覚えておるか?」


 「ええ、まさか神様だとは思いませんでしたけど」

主神ユミルはその言葉に微笑む。
何か得体のしれない少女だったが、神とはな。

ユミル
 「異界の人の子よ、お主面白いな」


 「俺のこと、随分ご存じで……」

俺のことを異界の人の子と言った。
間違いなく、俺の素性がバレているって事か。

ユミル
 「ふふ……妾は異界であろうと人の子であれば、人の神として愛する」


 「人の神?」

ユミル
 「お主の界には存在せぬか? ポケモンの神は顕現しているようだが」


 「……!」

茜たちの事を言っているのか?
この世界には人間の神様はいるが、俺のいた世界には確かにいない。
何処までもお見通しっぽいな。

ユミル
 「妾にとってこの大会は娯楽じゃ、異界の子よ、妾を楽しませてくれ」


 「……なんて言えば良いか、参加しても良いんですかね?」

ユミル
 「神が赦す、妾が楽しめるならそれ位赦そう」


 「……感謝します」

ユミル
 「お主が優勝した時にはもう一度会うことになる……その時お主に聞きたい事を聞こう」


 「聞きたい事?」

ユミル
 「もうすぐ試合じゃ、早く向かうがいい」


 「え?」

でも、まだトーナメント表も発表されてないぞ?
だがその普通の考えは止めた。
冷静に考えて相手は同じ次元の存在ではない。
超次の存在の言葉を疑うのは馬鹿らしいな。


 「では、御試合、ご照覧あれ」

俺はそう言うと部屋の外へ向かう。
扉は例によって勝手に開き、勝手に閉じる。
つくづく常識が通用しないようだ。
ポケモンの神様とは別軸でとんでもないお方みたいだな。

俺はエレベーターに近づくと、エレベーターは勝手に向こうから開いた。
中に係員がいた。

係員
 「間もなくトーナメント表が発表されます、お急ぎください!」


 「祭りが始まる……か!」



***



男トレーナー
 「オドシシ! 突進!」

女トレーナー
 「ムシャーナ、サイコキネシス!」

観客
 「「「ワァァァァァァ!」」」

大会は始まった。
予選を生き抜いたトレーナーたちはこの日のために戦いを始めている。
ルールは単純明快、相手のポケモンを倒したら勝ち、次の試合に駒を進められる。

係員
 「間もなくです! 入場お願いします!」

直前の試合も終わったらしい。
俺はルージュを見ると、ルージュは俺を見て頷いた。


 「よし、行くか!」

ルージュ
 「うん!」

俺達は陽の当たるスタジアム会場に入ると、割れんばかりの大歓声が響いていた。
流石にこういう雰囲気は少し慣れない。
あまり大きなコンサートとか見るタイプでもないし、改めて凄い大会だな。


 「対戦相手は……」

対戦相手は中年の男性だった。
連れているポケモンは……カイロスか?


 「格闘技には気を付けろ」

ルージュ
 「……ん」

ルージュは両腕のブレードを展開する。
踏み込みは早いが、それは動き全体が速いわけではない。
これまではルージュから突っ込む戦い方だったが、進化してリーチも上がり、大きくなった事は戦闘スタイルの変化も余儀なくしている。

男性トレーナー
 「カイロス! シザークロス!」

虫技か、単純に有効な技がないか、それともキリキザンのタイプを知らないか。
とはいえ別に抵抗があるタイプでもないしな。


 「キリキザン、辻斬り!」

ルージュ
 「!」

まずカイロスが正面を切って突っ込む。
ルージュは俺の命令を受けて、それを迎撃するようにフィールド中央に向かった。

カイロス
 「うおお!」

カイロスの頭部には巨大な鋏を持っている。
頭頂部をルージュに向けると一気に挟みかかる!

ルージュ
 「はっ!」

しかしそのあまりに隙だらけな動きはルージュには容易に対応できる。
素早い踏み込みで、ブレードを振り切ると……。

カイロス
 「……ぐは!」

一撃だ。
カイロスを一刀の元伏せたルージュはブレードを畳む。

審判
 「カイロス戦闘不能! よって勝者キリキザン!」


 「楽しめたのは精々5秒位だったな……最短記録だな!」

ルージュ
 「勝った♪」

ルージュは無事勝てた事に喜びつつ、胸に手を当てる。
俺はそんなルージュを見て、改めてその成長を感じる。


 「そろそろ戻るぞ!」

ルージュ
 「うん♪」

俺は会場を後にすると、その後ろをルージュが追いかける。
1回戦の相手はそれ程強くもなかった。
とはいえトーナメントだからこそ、ダメージを抑えられる所で抑えたい。


 「ルージュ、強くなったな」

ルージュ
 「うん……♪ でも、もっと強くなる♪ 茂を護るため……♪」

ルージュはそう言うと俺に肩を寄せる。
甘えるような仕草で、だけどそれは少し大人っぽい。
進化にはある程度内面変化もあるのだろう。

メアリ
 「茂さん? 茂さん!」

スタジアム地下へと目指していると、突然聞き覚えのある声が聞こえた。
声の方を見ると、そこにはメアリとナッシーがいた。


 「メアリちゃん!」

メアリ
 「やっぱり茂さんだったんですね! さっき戦っていたキリキザンは……!」

ルージュ
 「進化したの♪」

ナッシー
 「ほう、それはおめでとうございます」

二人は相変わらずのようだ。
実力はあるし、途中で脱落は考えていなかったが、元気な姿を見せてくれる。
今ここにいると言うことは、これから試合なのだろう。

メアリ
 「試合見ました、更に強くなったんですね」


 「ああ、優勝するためにな」

メアリ
 「それは私もです! ナッシーと誓いました! 私は願いを叶えると!」

俺はその反応に感心した。
前のメアリはもっとヒステリックさがあったが、今のメアリは自信に溢れている。
ナッシーは満足そうに頷くと、メアリを促す。

ナッシー
 「そろそろ行きましょう」
 「まずは勝たねばなりません」
 「試合に遅れますので」

メアリ
 「そうね……茂さん! お互い2回戦に進みましょう!」

メアリはそう言うとナッシーを引き連れ、会場へと歩む。
俺はその背中を見つめ、やがて振り向く。


 「あの二人好敵手になるな……」

ルージュ
 「好敵手……」

あの二人を倒すのは容易な事ではないだろう。
だが、俺達は勿論あの二人にも勝たないといけない。


 「2回戦も勝つぞ」

ルージュ
 「うん! アタシに任せて!」


***



戦いは進む。
数多くの夢が集い、神に願いを叶えて貰うために死力を尽くす。
その中でも強者達は、その力を他者に見せつけていく。



メアリ
 「ナッシー、サイコキネシス!」

ナッシー
 「!」

ナッシーの強力な念動力は全身を外骨格で覆った鈍重なポケモンコモルーを宙に浮かせる。
コモルーは身動き一つ取れなかった。
そこからメアリが命じるのはナッシーの決め技だ!

メアリ
 「ナッシー! ドラゴンハンマー!」

ナッシー
 「終わりです!」

ナッシーは大きく振りかぶると、空中で身動きの取れないコモルーに渾身の頭突き、ドラゴンハンマーを炸裂させる!

ズドォン!

それは地面を陥没させる程の衝撃で、コモルーは地面に叩きつけられた。

審判
 「コモルー戦闘不能! よって勝者ナッシー!」

メアリ
 「ふぅ……!」

メアリは汗を拭うと、ナッシーはメアリの肩に手を置いた。

ナッシー
 「それで宜しい、お嬢よく頑張りましたね」

メアリ
 「まだまだよ、もっとポケモンの事教えて頂戴!」

ナッシー
 「御意、偵察をしながら私の知識をご教授致しましょう」



***



アレン
 「キリキザン、任せる」

ノワール
 「ふ、任された!」

コマタナ達
 「「「かっ飛ばせー! オーサ!!!」」」

コマタナ達は観客席でノワールを大歓声で応援する。
それは他の声援をも押しのける大合唱だ。

ノワール
 「相手は……ゴミか」

ダストダス
 「ご、ゴミ〜!? オイラはゴミじゃない!!」

そう言って激昂したのは凄まじい悪臭の放つ太ったポケモン男だった。
その腐敗臭は遠くにも鼻につく。
ゴミ袋をモデルにしたポケモンでも、自分をゴミと言われるのは嫌なのだろう。
憤怒の表情で、地団太を踏んだ。

ノワール
 「とりあえず……」

ノワールは両手のブレードを展開する。
そして僅かに前屈みになると、一気に踏み込む!
その凄まじい踏み込みは、ポケモンは愚か、相手トレーナーすらも見えない!

ノワール
 「臭い息を吐くのも、そこまでにしておけ……!」

ノワールは両手をあわせると、湾曲したブレードは鋏になる。
その鋏をダストダス男の首に!

ダストダス
 「が……! っ!?」

ダストダスは首を絞められると、顔を青くして悶絶した。

ダストダス
 「ばばば……」

ダストダスはやがて泡を吹くと、ノワールは鋏を放す。

ノワール
 「ハサミギロチン、本来ならお前の命は無いぞ」

ノワールは後ろを振り向くと、ダストダスは後ろに倒れた。

審判
 「ダストダス戦闘不能! よって勝者キリキザン!」

コマタナ達
 「「「フェイタリティ〜! オーサ! オーサ! オーサ!」」」

ノワール
 「ふん、雑魚が……本気を出すまでもない」

アレン
 「だが優勝は容易じゃない」

ノワール
 「ふふ、当然だな、だけど茂を伴侶にするのは私だもん♪」

思わずずっこけるアレン。
改めて問題のあるバディだが、その実力は本物だ。



***



ルイン
 「ジラーチ、見せつけろ」

ジラーチ
 「ふん! 偉そうに」

ジラーチは宙に浮かぶと、相手を見た。

ガブリアス
 「ガァァァ……! こんなガキが本当に強いのか?」

それは2メートルを越える筋肉の塊のようなガブリアスだった。
見るからに脳筋で、全て力技でここまで勝ち上がってきたのだろう。
それを見て、ジラーチは溜息を吐いた。

ジラーチ
 「はぁ、これだから頭残念なポケモンは」

それは明らかにガブリアスに聞こえる声で、ガブリアスは大きく咆哮する。

ガブリアス
 「上等だー! ミンチにしてやる!」

ガブリアスはまるでジェット機のように飛び出す!
ドラゴンダイブ、その猛威を見てもジラーチはただ、面倒そうに頭を掻いた。

ジラーチ
 「はぁ」

溜息を吐くと、彼女はサイコキネシスをその右手に集める。
念動拳は彼女の得意技だ、だが今回は少し違う。

ジラーチ
 「汚い涎を撒き散らすな!」

ガブリアス
 「がっ!?」

ジラーチはガブリアスの頭部を掴む。
すると、念動力を強めた。

ガブリアス
 「アババババ!?」

ガブリアスが痙攣する。
ジラーチは念動力が固体化する程にそれを右手に凝縮させると。

ジラーチ
 「はぁ……破!」

バァァン!!

ジラーチの右手でエメラルド色の爆発が起こる!
超圧縮された念動力は一気に解放されると、ガブリアスの頭部を吹き飛ばしたのだ。
プスプスと煙を上げるガブリアスはそのまま、言葉もなく倒れた。

審判
 「ガブリアス戦闘不能! よって勝者ジラーチ!」

ジラーチ
 「必殺○ャイニングフィンガー、なんちゃって」

ジラーチは正に余裕の勝利をし、敗北者を見下すと呟く。

ジラーチ
 「ポケモンの強さが見た目で決定する訳ないでしょうに」

ルイン
 「ふん、5秒で倒せ、あの程度」

ジラーチ
 「……一言多いのよ!」



***




 「……1回戦も大分進んできたな」

流石に本戦は膨大なトレーナーが戦うから、その日程は1日では終わらない。
俺は控え室から中継映像をテレビで見ながら、警戒すべき相手を見定める。


 (まずはナッシー、あの博学さはそれ自体驚異、加えて本人もそれだけの強さがある)

メアリ&ナッシー、この二人の組み合わせも良好だろう。
メアリの成長次第では、優勝候補の一角だと言える。


 (ノワール、その強さはルージュと同等、戦術の択や年季はルージュを越えている)

マスターのアレンも少年ながら肝が据わっており、ノワールの底はまだまだ見えない。
なにより執念は本物だ、間違いなく手強い。


 (そしてジラーチ、間違いなくトップクラスだな)

俺自身なにせ、ジラーチの本当の力は知らない。
少なくとも家族と同レベルの強さを有している事は分かっているが、やはりそれ以上の潜在能力があるのだろう。


 (それ以外にも何人か、気になるのはいたがピックアップしきれないな)

どの道トーナメントである以上数が減っていけば、強い奴が残る。


 「この先生き残れるか……」

ルージュ
 「この先生、き残れるか?」


 「区切るな! てかお前身体休めておけよ?」

ルージュ
 「うん」

俺はルージュを横にさせると、ルージュは目をトロンとさせていた。
休むことも仕事って言うからな。
ルージュを安心させるのも俺の仕事だろう。


 「明日の相手は……」

俺はトーナメント表を見た。
そこにはユキノオーとある。


 (ユキノオー、弱点7つと非常に耐性面には問題を抱えるポケモンか……しかし1回戦を突破したと言うことはそれなりの力があるのか)

生憎試合は見れなかったため、どんなポケモンかは分からない。
こればっかりはぶっつけ本番でなんとかするしかないか。
幸い相性面は最高に良い。


 (ルージュ、頑張れ……)

俺はルージュの頭を優しく撫でた。
ルージュは嬉しそうに目を細める。

ルージュ
 「〜♪」



***



ユミル
 「ふむ、1回戦ではまだ地味じゃのう」

妾は席からフィールドを見下ろす。
ポケモン達の技は派手で、フィールドを派手に破壊しては妾が、神力を持ってそれを修復する。
人の子らが、死力を尽くす様は実に尊く妾を楽しませてくれる。
生憎人間の神たる妾ではポケモンの事までは分からん。
だから妾は知りたい、人とポケモンの絆は神を越えられるのか?

ユミル
 (常葉茂、特異点となった子……我が子ではないが、これは福音よ)

妾はその存在を喜んだ。
祝福に値する。
誰かは知らんが、あの子をこの世界の送ってくれた存在には感謝せねばなるまい。
だが同時にあの子には大きなうねりを感じる。

ユミル
 (出来れば妾が助けてやりたい……それは人が越えられる力ではない……だがポケモンがいれば……)

やがて、日は沈む。
大会は次の日に持ち越しだ。

ユミル
 「ふふふ、文明の火はいつ見ても美しい……子らの成長ほど嬉しい事はないな」

アルパシティは日が沈むと、街灯を照らし、人の住む家はその灯火を付ける。
この街の夜景はまるで宝石箱のようだ。



突然始まるポケモン娘シリーズ外伝

突然始まるポケモン娘と理を侵す者の物語

#7 本戦開幕! 完

#8に続く。


KaZuKiNa ( 2019/10/20(日) 19:56 )