異世界転位編
#3 VSドクロッグ

#3



異世界放浪二日目、まだ日も高い内に俺達は未知を発見した。


 「うーむ、読めん!」

はっきりと道だと分かる場所に出ると、看板らしき物を発見した。
とりあえず場所が分かれば良いかと思ったが、例によって近づいてみたものの、さっぱり読めん!


 「コマタナは読めるか?」

コマタナ
 「読めない……そもそも字が読めない」

そうか……頭の悪い子だとは思ったが、それ程か。
まぁ兎に角人工物が見つかっただけで、良しとするべきだな。


 「どっちに行くかだが……」

道というのは脇から入ると、分かれ道となる。
もしかしたら直ぐ近くに町があるのかも知れないが、もし間違えたらもう1日は漂流するはめになるか?


 「コマタナ、お前は運は良い方か?」

コマタナ
 「そう思う?」

コマタナの顔色を見る限り、悪そうだな。
お互い不運か、やってられんな。


 「よし、そんじゃコイントスで確認してみるか」

俺は財布から硬貨を取り出すと親指に乗せる。
表が出れば右、裏が出れば左で良いか。


 「当たるも八卦、当たらぬも八卦!」

俺はコインを弾いた。
コインが宙をクルクルと舞う。

コマタナ
 「ねぇ落ちてこなかったらどうなるの?」


 「はっ! 馬鹿を言うな、辺りには何もないんだぜ!? これで落ちなかったら大凶よ?!」

やがてコインは、自由落下に従い……。


 「カー!」

突然鳥が飛び出すと、コインを飲み込み飛び去ってしまう。
コマタナが不安そうに俺を見る。


 「ふっ、お先真っ暗らしいな!」

フラグ立った瞬間コレだよ!?
つか、なんで今更こんな古いネタ誰が分かるんだよ!?


 「ええいもう! こうなりゃ己が歩く道が道となるのだー!」

俺はそう言うと、とりあえず道を進む。

コマタナ
 「それにしても平和だねぇ〜」


 「平和と言うより……静かすぎるんだよなぁ」

この世界、今の所動物って言うと鳥位しか見ない。
都会から殆ど出たことのない俺からしたら田舎過ぎるようにも思えるんだが。

コマタナ
 「何か見えてきたよ……?」


 「ん?」

道というのは必ずしも平坦ではない。
特に今いる場所は起伏に富んでおり、ちょっとした丘になっていた。
丘の上に登ると、その周辺一帯が見渡せる高さだ。
コマタナが指差す先には……。


 「なんだ? 煙? 火事か!?」

それは高く昇る煙だった。
まるで狼煙のようで、如何にも何かがある……そういう雰囲気だった。

コマタナ
 「どうするの特異点?」


 「……行くしかないだろう、俺達も結構限界なんだ」

危機感が働かない訳ではない。
だが、それ以上に俺自身、このままライフラインを確保せずに何時まで保つ?
まだこの世界の全容が分からない。
だが俺は踏み込まなければならなかった。

コマタナ
 「アタシ、特異点に従う……」


 「なら煙の方に行くぞ」

コマタナはコクリと頷いた。
心なしかコマタナも緊張しているようだ。
特にコイツの場合ビビり体質なのか、危機感知力はそこそこありそうだ。


 (単なる焚き火ならいいが……)

楽観的に考えるのは恐らく俺の癖だろう。
悪い風に考えるよりはまだ良い。
だが、往々してこういう時望んだ結果は訪れない。



***



想定は大体5段階位だった。
一番良いのが単なる焚き火だったんだが……コレは下から2番目位にバッドだな。


 「……どうなってんだ?」

アレから2時間、俺達はある小さな町に辿り着いた。
だが、そこははっきり言って異様だ。

コマタナ
 「……せ、戦争でも、あったのかな?」

コマタナの言が最もだろう。
屋根が無い家、壁の崩れた家、まともな家が一つも見当たらない。
道も石畳が剥がれ、まともな町じゃなかった。
そしてもう一つ……。


 (目線……? それにこの異様な気配は?)

俺達は何かの視線に晒されていた。
それは奇異の目とは明らかに異なる。
憎悪……だが何故?

子供
 「で、出て行け!」

コマタナ
 「な、なに?」

突然俺達の前に小さな少年が現れた。
その少年は震えを気丈さで抑え、俺達に出て行けと言う。

子供
 「ポケモントレーナーはこの町から出て行けー!」

ポケモントレーナー、俺がコマタナと一緒のいるからか?
しかし何故怯える? 少年はずっと震えていた。
しかし直ぐに母親と思われる女性が現れた。

母親
 「も、申し訳ございません! 私はどうなっても構いませんので息子だけは!」

母親はそう言うといきなり土下座した。
流石に俺も呆然としてしまうが、直ぐに頭を切り替えた。


 「普通にしてください、俺は子供にも貴方にも何もしません。それより一体この町になにがあったんですか……?」

男性
 「ポケモンバトルだよ……これは全部お前らポケモントレーナーがやってきた事だろうが……!」

突然、今度は後ろから大柄な男性が現れた。
その顔はやはり俺に憎しみを向けている。
しかしポケモンバトルだと? 例の大会に関係しているのか?
確かにこんな町で戦えば、こうもなるだろう……だがここまで酷くなるのか?

男性
 「悪いことは言わん、その子供の言う通り出て行ってくれないか? アンタもまだ死にたくないだろう?」

コマタナ
 「死ぬの!? は、ハワワワ!?」

言葉一つで怯えすぎだろ。
とはいえ、いきなり物騒な言葉出てきたな。


 「一つ気になったんだが……一番奥に見える屋敷、他よりマシみたいだよな?」

俺はそれを指摘するとおっさんは苦虫を噛み殺したような顔をした。

男性
 「あそこには絶対近づくな……! 奴はこの町がどうなろうが知ったこっちゃないんだ……!」


 (奴?)

男性
 「兎に角だ……! さっさとここから――!?」

その時だ、町の奥から十数人、パンクな格好をした集団が現れた。


 「待てよロッソ、そいつぁ俺の客だろぉ〜?」

ロッソと呼ばれた男
 「う……メリオ……!?」

パンク集団の中心にいたのはモヒカンヘアーのメリオと呼ばれる男だった。
その男は軽くモヒカンヘアーを撫で上げると、俺を見た。
その目は決して友好的ではない。
ただ欺瞞に満ちて、そしてこの町の事実上の支配者なのだと分かる。
この町の人間が怖れているのはコイツか……。

メリオ
 「アンタ見ない格好だね、名前はなんて言うんだい?」 


 「……言う必要があるのか?」

メリオの部下
 「テメェ!? メリオ様の前で!?」

メリオ
 「はっ! 良いねぇ……その地獄を見てきたかのような目、気に入ったぜ!」

人の目付きの悪さをそういう風に評価されたのは初めてだが、地獄なら本当に見てきたからな。
単に偶然だと思うが、変に勘違いされたか? 

メリオ
 「おい、ウチへ来いよ、旦那……へへ、怪しむことはねぇ」


 「……」

むっちゃ怪しいんだが……言葉にはしない。
俺はパンク集団を一人一人観察するが、PKMが見当たらない。
町の住民の怯えは間違いなく、このメリオと言う男に集約しているだろう。
間違いなくポケモントレーナーだろう。
でなければ住民はここまで怯えない。


 (こっちはコマタナがいる、それを見てこの余裕は一体?)

メリオ
 「さぁ旦那、こっちですぜ?」

行くしかないか……。
俺は後ろを見た。
そこにはずっと怯えてるコマタナと、どうしようもないと言う風に首を振るおっさんがいた。


 「コマタナ」

コマタナ
 「な、なに特異点?」

俺はコマタナの傍によると小さな声で喋る。
この状況で重要になるのは間違いなく、コマタナだ。


 「全力でフォローはする、相手の正体が分からん内は警戒を解くな」

コマタナ
 「う、うん……!」

コマタナにどれ程期待できるかは分からない。
はっきり言って出会ったばかりの頃の茜に似ていると言えば似ている。
茜の頼りなさは、コマタナ以下だったかもしれないが、アイツはアレで頼れる母親にまで成長した。
それはコマタナにも期待したい所だが……。

ロッソ
 (くそが……! ポケモントレーナーめ!)



***



パンク集団について行くと、屋敷に案内された。
そこまでは特に異変は無し、だがパンク集団はニヤニヤしていた。
屋敷に入ると、先ずは応接間だ。
内装は完璧とは言えないが、少なくともマシな方だな。

メリオ
 「座りな、茶を出そう」


 「いや、結構」

流石に安全を確保出来ない場所で飲食物を貰おうとは思わん。

メリオ
 「まぁそう言うなって! 良い紅茶なんだぜ?」

既に用意しているらしく、奥から紅茶のカップが2つ運ばれてきた。
一つはメリオ用、もう一つは俺用か。

メリオ
 「う〜ん♪ 良い香りだろ?」

メリオはわざとらしくカップから立ちこめる蒸気を嗅いだ。
少なくともメリオのカップには毒物はなしか。

コマタナ
 「……じー」

気が付くとコマタナはじーっと俺のカップを見ていた。
コイツ……食い意地が張ってやがる!?

メリオ
 「へへっ、美味ぇ〜」

メリオの品は微妙な所だが、あからさまな演技は目立つな。
俺はカップを持つと。


 「そんなに美味いならお前が飲んだらどうだ?」

そう言ってメリオにカップを差し出す。

メリオ
 「え? 俺は一杯で充分で……」


 「なら他の奴でも良いぞ?」

俺は応接間に待機するパンク集団にカップを向ける。
するとあからさまに集団も後ろに退いた。


 「はぁ〜……」

俺は思いっきり溜息を吐いた。
穏便に済ませられるならそうしたいが、今回はどう考えてもそうは行かないらしい。


 「どうせ毒物でも仕込んでんだ……ろ!」

俺はカップをメリオに投げつける!

メリオの部下
 「メリオ様っ!?」

カップは紅茶を撒き散らし、メリオに真っ直ぐ向かう。
メリオは反応できていない。
だが、カップを両断する腕が上から振り下ろされた!


 「グルルルゥ……やるのぉ、この人間出来るのぉ!」

天井に張り付いていたのか?
厳つい声で喋るそれは、喉元に赤い袋を持った、やや小柄な男だった。
両手の甲にトゲがあり、その姿は……!


 「ドクロッグか!?」

ドクロッグ
 「如何にも! マスターよ! ワシがやるぞ!? 良いな!?」

コマタナ
 「やらせない!」

ドクロッグの力量は直ぐには分からない。
だが危険な相手だとは思った。

ドクロッグ
 「グルルルルァ!」

ドクロッグは素早く踏み込むと、不気味な鳴き声で正拳を放った。
それはコマタナの腹部に突き刺さる!

コマタナ
 「くっ!? あああっ!?」

ドカァァン!

ドクロッグの拳の力は凄まじい。
コマタナは後ろに吹き飛ばされて、壁をぶち破った!

メリオ
 「ちっ! 暗殺失敗か! こうなりゃ徹底的にやれ!」

ドクロッグ
 「グルルルゥ!」

コマタナ
 「ケホケホ!」


 「コマタナ無事か!?」

コマタナ
 「だ、大丈夫……」

コマタナはそう言うと立ち上がった。
俺はコマタナの傍に駆け寄ると、ドクロッグとメリオを見た。

ドクロッグ
 「ふぅむ、此奴ワシの毒が効かんのか?」

メリオ
 「なに? 人間なら擦っただけで即死の毒だぞ?」


 (アイツらコマタナが鋼タイプなのを知らないのか?)

コマタナが通常毒状態なることはない。
鋼タイプは一般的に毒攻撃は無効だ。
腐食、あるいは水浸し状態ならば効くが、分からん殺しが効いているならチャンスだ。

ドクロッグ
 「グルルルゥ……、メリオ、少なくともトレーナーは一流、ポケモンは小物のようだが、侮れんぞ」

メリオ
 「ち! 野郎共! マスターを取り押さえろ!」

メリオの部下
 「りょ、了解!」


 「やば!」

メリオの部下は見る限り10名ほど、俺はケンカが強い訳じゃない。
流石にこの数は無謀だ。

コマタナ
 「特異点!?」

ドクロッグ
 「お主の相手はワシよ!」

ドクロッグはコマタナを釘付けにする。
いくらPKMでもコマタナじゃドクロッグの相手が精一杯だ。

メリオの部下
 「ヒャッハー!」


 「クソッ!?」

数人のパンク野郎が襲いかかってくる。
だが、それは予想外の方向から助けられた。

ロッソ
 「ふん!」

突然町のおっさん、ロッソがスコップでパンク野郎の頭を叩いた!

メリオの部下
 「ぶべら!?」


 「アンタなんで!?」

ロッソ
 「もうウンザリなんだよ! 俺達の町をポケモントレーナーに破壊されるのは! メリオの野郎はこの町を占拠してトレーナーを暗殺する! しかしその方法が問題だ! メリオは断じて町の守護者なんかじゃない! 奴は寧ろ町の破壊を楽しんでいる!」

今、おっさんの後ろには様々な農具を手に持った一団が怒りの顔で立っていた。
それは反逆だった。

メリオ
 「ロッソテメェ!? 後でどうなるか分かってんだろうなぁ!?」

メリオが激昂する。
だが同様にロッソも怒れる存在だった。
ただロッソは懇願する。

ロッソ
 「頼む……メリオを倒してくれ……!」


 「……了解、請け負おう!」

この町の闇はメリオに集約する。
恐らく町の住民はドクロッグを利用して脅し、町ぐるみで入ってくるトレーナーを暗殺していたのだろう。
しかしここは人間が生活するための場所だ。


 「コマタナ、ついてこい!」

コマタナ
 「分かった!」

俺は町から離れるように走る。
当然それを追うドクロッグとメリオ。
だが部下は町の住民に取り囲まれた。

ロッソ
 「勝ってくれ! 俺達はもうウンザリなんだー!」


 「……!」

俺は右手を挙げて応える。
やがて、民家も見えなくなると、遮蔽物のない平地に出た。
俺はここで立ち止まる。

メリオ
 「テメェ……覚悟は出来てんだろうなぁ!?」


 「テメェこそ覚悟は出来てるのか? ここでは奇襲も奇策も不可能……正面きってポケモンバトルなんだぜ?」

メリオ
 「けっ! それはテメェらが俺のドクロッグに勝てたらだろうがぁ!」

コマタナ
 「イヒヒ……ヒーハー! デストロイだぁー!」

コマタナがテンションを上げる。
この奇声には驚くが、相手のドクロッグは動じた様子がない。

ドクロッグ
 「グルルァ! 参る!」

ドクロッグとコマタナが同時に駆ける。
リーチは……ドクロッグか!

ドクロッグ
 「くらえ!」

ドクロッグの正拳突き、コマタナの身体がくの字の曲がる。
しかし、コマタナは直ぐに反撃した。

コマタナ
 「シャー!」

コマタナは乱雑に両手の刃を振るった!
その一刃はドクロッグの頬を掠めた!

ドクロッグ
 (ワシの毒突きがまるで効かん!?)

コマタナ
 (いける! なんだか分からないけど、勝てる!)

毒と鋼は相性が有利だ。
相手がカラクリに気付かないウチはコマタナは勝てる。
だが俺は不安を拭えなかった。
何故ならドクロッグはもう一つのタイプを持つ。
それは格闘……そしてコマタナの弱点は!

ドクロッグ
 「毒が効かぬならば! グルルァ!」


 「避けろコマタナ!!」

俺は大声で叫んだ。
だがそれは僅かにコマタナに届かない。
ドクロッグはコマタナに蹴られた。

コマタナ
 「がはっ!?」

一見何気ない蹴りだが、格闘タイプのポケモンが打つ『けたぐり』だ。
コマタナの強固な装甲や刃は簡単にへし折られ、コマタナはあっという間に地に伏した。

メリオ
 「おっ! 格闘が弱点か! 毒はいい! 蹴り殺せ!」

ドクロッグ
 「グウルルルゥ……脆いのぉ、たった一撃でこの様か」


 「コマタナー!」

コマタナ
 「はぁ、はぁ……く!」

コマタナはなんとか立ち上がった。
立ち上がったと言ってもその様子は余裕がない。
当然だ、コマタナは悪・鋼タイプ……格闘タイプの技にめっぽう弱い。


 (くそっ! どうする!? もう一撃耐えられるか!?)

コマタナは体重軽い、けたぐりは体重が重ければ重いほど威力が上がる技だ。
コマタナならそれ程の威力にならないでも、直撃貰えばこの様だ。

ドクロッグ
 「グルルァ、このまま眠らせてやろう!」

ドクロッグは足を振り上げると、斜めに素早く振り下ろす!
先ほどの水平蹴りより殺意のある技だ。

コマタナ
 「くっ!?」

コマタナはなんとかそれを避ける。
だが反撃出来ない。

コマタナ
 「……けない!」

メリオ
 「あん?」

それはコマタナの小さな呟きだった。



***



コマタナ
 「……負けない!」

アタシは両手をクロスさせて構えた。
相手は強い……相性の有利不利とか抜いても、アタシより強い。
でも、アタシは構えた。
怯えるのは嫌だ、弱い自分はもう嫌だ。
なにより後ろには特異点がいる!

コマタナ
 「特異点……!」


 「コマタナ……お前」

特異点は驚いたようにアタシを見た。
アタシは特異点程の価値なんてない女だ。
コマタナにあるまじき臆病さで、一族でも最底辺だった。
でも特異点はアタシを見下さなかった。
アタシを助けてくれた。

コマタナ
 (今度は……アタシが助けたいっ!)

ドクロッグ
 「グルルァァ!」

ドクロッグの連続蹴り。
アタシはなんとか、それを避ける。


 「コマタナ! 勝て!」

特異点が叫んだ。
アタシ信頼してくれているから、そのはっきりとした言葉が出てくる。
アタシはそれに応えたかった……だから!

コマタナ
 「はぁ!」

アタシはドクロッグの隙を突き、ドクロッグの腹部を切り裂いた。
ドクロッグの腹部からは血が流れる……だが致命傷じゃない!

ドクロッグ
 「ぐぬぅ……小娘ェ!?」

初めて入ったダメージになる一撃だ。
アタシはクールかな?
虚構に頼らず戦えているかな?

メリオ
 「お……おい?」

ドクロッグ
 「黙っておれ小僧ッ! 小娘よ……聞け! 我が真名! ゲオルク! もはや容赦はせんぞ!?」

コマタナ
 「っ!?」

なんだ? 突然ドクロッグから闘気が溢れた。
真名を名乗る事で、その力が増大した!?

ゲオルク
 「小僧! やるぞ!」

メリオ
 「ちっ!? 出来るのか!?」

突然相手のマスターとドクロッグが繋がったのが分かった。
ドクロッグが紫のオーラを纏う!

ゲオルク
 「くらえ! 『全て侵す毒突き』!!」

それはまるで暴威だ。
ゼンリョクワザにも類する迫力で、迫るそれはまるで巨大な怪獣。
ドクロッグのオーラがアタシを襲うと、その爪がアタシの腹部に突き刺さった。

コマタナ
 「かは!?」


 「コマタナー!?」

コマタナ
 「!?」

特異点の声が、折れかけたアタシの心に響いた。
ドクロッグの一撃は凄まじかった。
だけどアタシは歯を食いしばった!

コマタナ
 「うわぁぁぁぁぁ!!」

ドクロッグは今、技の終わりで目の前にいる!
アタシは渾身の力で頭を振り上げると、ドクロッグの頭に振り下ろした!

ゲオルク
 「ぐふ!?」

『アイアンヘッド』、今のアタシが出せる最大の技が無防備なドクロッグの頭部に突き刺さった。
頭蓋を割った感覚が、アタシに残る。

ドクロッグはフラフラと後ろに下がった。

ゲオルク
 「馬鹿な……我が全身全霊の一撃でも倒せないと……? 貴様何者……?」

相手は信じられないという顔だった。
だけどそれはきっと信じるって力なんだと思った。

コマタナ
 「アタシはただのしがないコマタナ……でも、特異点の剣になれる!」

アタシの言葉にドクロッグは急に微笑んだ。

ゲオルク
 「くく……バディーズの本質は信じ合う事……ぬか、た……わ!」

そしてドクロッグは崩れ去った。
前のめりに倒れ、その姿は光に変わって行った。
ドクロッグは死んで、どこかへ送還されたのだろう。
だが、その顔は穏やかであった。



***



メリオ
 「は、はは……嘘だろう?」

ロッソ
 「終わったのか?」


 「……ああ、メリオはポケモンを失った、終わりだ」

気が付くと、メリオ一味を全員どうにかしたのか、ロッソが現場に現れた。
ロッソはまだ信じられないようだが、放心したメリオを見て何か納得していた。

ロッソ
 「ありがとう……旅のトレーナー……!」


 「いい、それよりコマタナを休ませたい、良いだろうか?」

ロッソ
 「ああ、ああ! 俺の家を使ってくれ!」

俺はとりあえず休める場所を確保するとコマタナを見た。
コマタナはなんとか立っているが、その姿はボロボロだった。

コマタナ
 「特異点……アタシ、勝った、よ?」

ふらりと、その時コマタナの身体が横に揺れた。
俺は急いで駆け寄りコマタナを抱きかかえる。


 「ありがとう、そしてよく頑張ったなコマタナ」

コマタナ
 「ケヒケヒ♪」

お世辞に可愛くない不気味な笑い方をするコマタナは、それっきり気絶してしまう。
コマタナにとっては雲を掴むような勝利であった。
事実ゲオルクの凄まじい一撃をもって、耐えたのは奇跡としか良いようが無いだろう。
だが、本人は見たことのないような充足した顔で眠っている。
俺はそんな彼女を優しく抱きかかえた。



突然始まるポケモン娘シリーズ外伝

突然始まるポケモン娘と理を侵す者の物語

#3 VSドクロッグ 完

#4に続く。


KaZuKiNa ( 2019/09/21(土) 10:06 )