SP04
愛
「ええ、そうですね。ミュウちゃんはそちらの方で……」
愛が今、電話で応対していたのは寮の管理人だった。
ミュウの処遇を任された今、愛はそれを決めなければいけない。
愛
(ふぅ、それにしてもミュウちゃんは何者なんでしょうか?)
愛は受話器を置くと、ため息を吐いた。
考えても答えは出てこない。
ミュウは答えられないのか、知らないのか。
愛
「でも、悪い子じゃないですよね!」
真希
「相変わらず人類皆善人思想ね」
愛がそう言ってやる気を込めると、担任室に藤原真希が入ってきた。
愛は真希を見るとにこやかに笑う。
愛
「真希ちゃんが直接ここにって、珍しいですねぇ」
真希
「次いでよ、それとミュウについてだけど……」
愛
「何か分かったんですか!?」
愛は机から勢いよく身を乗り出した。
何か進展があったのか、愛は、周りに積もった書類を蹴散らす勢いだった。
真希
「あ、いえ……寧ろ分からない事が分かったというか」
愛はそれを聞くと、瞬く間に萎んだ。
真希は期待させた事に申し訳なく思ったのか、何度も謝るが、それだけのために来たのではない。
真希
「で、でもね? 逆に言うと分からないってそれだけ意味があるのよ?」
愛
「……そうですね、単純に戸籍不明者という訳でもない」
愛は気を取り戻すと、そう付け足す。
頭の回転の速さはトップレベルの愛は、真希も舌を巻く速度でその言葉の意味に正解を付け加える。
真希は頷くとそれがどういう意味を持つか解答した。
真希
「結論から言うと、彼女この世の者とは思えないわね」
愛
「でも……あり得るのでしょうか?」
真希
「ゲシュペンストやポケモンのソウルはどこからやってきた?」
そうだ、一見突拍子も無い発想だが、それを言えば愛達ポケモン少女に宿るソウルは何処からやってきた。
そしてゲシュペンストは何処にいる?
それらの回答は何れも異世界の存在を証明している。
ゲシュペンストが何故この世界を侵略するのか。
ポケモンは何故ゲシュペンストに憎悪を抱くのか。
愛
「パラレルワールド、だったりするんでしょうか?」
真希
「或いは、過去……もしくは未来とかね」
しかし……愛はやはり腑に落ちなかった。
ミュウは肉体を持っている、この特性はゲシュペンストや肉を失ったポケモンのソウルとは大きく異なる。
未来や過去ならば、彼女でも分かる事は何かあるんじゃないだろうか?
愛
「……なにか、何か間違えがあるのでしょうか?」
真希
「間違え、ね」
愛は思った。
私達はあと何回間違えられる?
恐れなければならない、いつか本当に取り返しのつかない事態を招かないために。
そしてそれは真希も思った。
1年生達は有望だが、危うい所もある。
自分たちが守っていかなければならない。
だが、それは限界もあるのだ。
真希
「私、とりあえず戻るわ」
愛
「あ、はい。あ……闘子ちゃんに連絡あるなら覚えておきますけど?」
真希
「別にいいわ、愛がやらず、あの馬鹿に直接出向かせればいいのよ!」
相変わらずだ、真希の闘子に対する反応に愛は苦笑した。
今は闘子がいないからいい物を。
真希
「兎に角、ミュウは絶対的に情報が足りない! グレーの存在よ」
真希もミュウと出会って、その人格に触れた。
まるで子供だ、それも幼稚園児かそれ位の。
とても裏表があるようには思えなくて、愛ほど性善説を信じる訳ではないが、それでもミュウは信じたいものだ。
だけど、真希も理解していることがある。
真希
「八神悠那、古代燈、七海桜……いずれもそれ単体を見て悪人と思ったかしら……?」
真希はそう言うと、担任室を出ていった。
その言葉は愛にも響いた。
それはある意味で神成依乃里にも通じた。
そうして段々分からなくなる。
愛
「大丈夫です、大丈夫……です」
***
ミュウ
「ミュー♪」
1年生の住む寮はそこで住むための施設は全て揃っている。
ミュウは早くも迎えいれられ、今はお風呂に入れられている。
ミュウと一緒に入っていたのは琉生だった。
琉生
「こら、暴れないの!」
ミュウはシャワーを浴びながら、燥いでいた。
琉生はなるべく抑えるように、ミュウの頭を洗う。
ミュウ
「キャキャ♪」
琉生
「もう、何が楽しいの?」
ミュウ
「全部! 全て! キャキャ♪」
兎に角楽しいらしい。
琉生は兎に角苦労しながら、この暴れん坊少女を取り押さえ、頭を洗う。
今時の子とは思えない程燥いだミュウは兎に角汚れが酷い。
琉生
「はぁ……、勿体ないよ、折角可愛いのに」
ミュウ
「ミュウ? 可愛い?」
琉生
「そう」
ミュウ
「可愛いってなに?」
琉生
「え……?」
ミュウは振り返ると、真剣な眼差しで琉生を見た。
可愛い、それは色んな意味が籠もっている。
一言で言えば、なんと言えるだろう?
琉生
「可愛いはえーと……?」
ミュウ
「ミュウ?」
ミュウは首を傾げた。
その仕草は愛らしい、そうだ、きっとこういうのが可愛いなのだろう。
琉生
「ミュウみたいなのが、可愛いなのよ」
ミュウ
「ミュウ〜、ミュウが可愛い? 琉生お姉ちゃんは違うの?」
琉生
「うー、それは……」
どう答えろと言うのだ。
琉生は心底困った。
謙遜すれば惨めだし、自己を肯定すれば、自意識過剰ととられる。
かくも人の世は生き辛い、過去の文学者もそう述べるが、正に琉生はそれを実感していた。
ミュウ
「ねぇ? 琉生お姉ちゃんは可愛い?」
ミュウは追求した。
恐らくそこにあざとい意図は無い。
純粋に可愛いとは何か? それを定義付けしたいのだろう。
だが、純粋な心理の追求は時として理不尽だ。
人間はそれ程白黒ハッキリ別れた精神はしていない。
だからこそ、琉生は顔を真っ赤にして理不尽を振りまいた。
琉生
「知らないっ!」
琉生はそう言うと、湯船に向かった。
兎に角今日は疲れた。
この後食堂で晩ごはんがあるが、それを食べたら直ぐに寝ようか?
いや、日課の筋トレは欠かせない。
非力虚弱だからこそ、琉生はそれを恥じ、改善しようとしている。
明日花のようになるのは土台無理だろうが、それでも自分で出来る努力は熟したい。
ミュウ
「ミュウ〜、怒った? ねぇねぇ、怒った?」
琉生
「怒ってないよ」
ミュウ
「嘘、琉生お姉ちゃん怒ってる」
琉生
「だから、怒ってないって……!」
琉生は思わず怒鳴りそうになったが、それは寸前で留まった。
何故なのか、それは今にも泣きそうなミュウが目に映ったからだ。
ミュウ
「ミュウ、琉生お姉ちゃん怒らせた……人間分からない、どうして怒るの? どうして悲しくなるの?」
琉生
「……っ」
琉生は改めて自分を恥じた。
この少女はただ探求しているだけなんだ。
それは理不尽な質問も交じるが、それなくして彼女は止まらない。
琉生は彼女にどう説明すればいいだろうか?
彼女は決して頭の悪い少女などではない。
寧ろ利口で理知的でもある、ただ致命的に知識が足りない。
琉生
「ミュウ……貴方はなに?」
ミュウ
「ミュウはミュウ……だよ」
琉生
「それは理不尽な回答よ」
ミュウ
「……ミュウ」
ミュウは何を知ろうとしているのか?
そのまま二人には静かな時間が流れた。
今日一日で見れば驚異的な程静かな時間を。
***
鈴
「あ〜! お風呂上がりの琉生ちゅわんだぁーっ!!」
浴室を出て、着換え終わった琉生はリビングに向かうと、そこには吉野鈴の姿があった。
鈴は琉生を発見すると、奇声を上げて突撃してくる。
琉生は思わず構えるが、抵抗は無駄な事で、鈴は思いっきり琉生をハグするのだった。
鈴
「ああ〜、いい匂い、ねぇねぇ使ってるシャンプーはなんなの!?」
ミア
「鈴、セクハラは良くないわよ……」
琉生
「あの……これは?」
鈴に全力でハグされ、身動きの取れない琉生はなんとか首を回すと霧島ミアと砂皿由紀、そして七海桜の姿があった。
2年生オールスターだった。
由紀
「噂の不思議少女の顔を見たいって鈴が言い出してね?」
鈴
「それで、皆でご挨拶ということになりました!」
ご挨拶……そう言えば、こういうのは初めてだった気がする。
少なくとも歓迎会は初めてだ。
2年生が1年生の寮に来るだけでも珍しいのに、それが態々ミュウに会うためとは。
ミュウ
「ミュウ〜?」
琉生に遅れてミュウもリビングに顔を出した。
ミュウは見知らぬ顔に首を傾げていた。
鈴
「わお! これはまた琉生ちゃんにも負けず劣らず美少女ね!?」
鈴は琉生を離すと、ミュウに向かった。
ミュウは少し警戒するように後退る。
鈴
「うふふ〜♪ そんなに警戒しちゃやだ〜♪」
ミュウ
「ミュ、ミュウ……!」
鈴は指をワキワキと動かし、怪しげに笑むと、ジリジリ距離を詰めた。
しかし、それを阻止したのはまだ新顔の桜だった。
桜
「こら、怖がらせないの」
鈴
「ムギュ!?」
文字通り首根っこを掴まれた鈴は苦しい悲鳴を上げた。
桜
「可愛いって言うのは認めるけど、怖がらせるのはいけないわ」
鈴
「む、むふふ〜、流石桜ちゃん、可愛いの真髄をよく分かってる♪」
由紀
「あいつら、時々意味わからねぇ事言ってるよな?」
ミア
「あ、アハハ……」
それは暗に桜を変態だと認める発言で、ミアは苦笑するしかなかった。
ミュウ
「ミュウ? ねぇ、可愛いって何?」
鈴
「ふ、決まっているわ! それは絶対で、尊く! そして神に与えられた才能なのよ!」
桜
「いいえ! 可愛いは作れる! しかし、真の可愛いはその生き方に現れる! つまり可愛いは人生よ!」
ミュウ
「ミュミュミュ? つまり可愛いは才能で人生?」
ミア
「……元々は愛おしいから変化した言葉なんだけど、英単語にもkawaiiは既に登録されているんだよね……」
由紀
「kawaiiとcuteの違いって日本人にはよく分からないわよね」
ミュウは目を閉じて考えた。
彼女が高速思考している時のルーティンだ。
つまり、可愛いの意味を紐付けしているのだろう。
ミュウ
「ミュウ♪ 可愛い、覚えたっ!」
明日花
「おーい、先輩方何やってんだ?」
暫く先輩方が喋っていると、キッチンから明日花が顔を出した。
恐らく琉生とミュウを待っていたのだろう。
明日花
「さっさと飯にしようぜー?」
明日花はそう言うと腹を擦って、腹ペコをアピールする。
かくいうミュウもぐうう……と今腹を鳴らした。
鈴
「ありゃりゃ、時間取りすぎた?」
由紀
「要領よくやらねぇからだ、私は砂皿由紀、覚えときなさい」
ミュウ
「ん、覚えた」
ミア
「霧島ミアです」
桜
「七海桜」
鈴
「いやーん、最後になっちゃったけど私が吉野鈴よ! 鈴ちゃんって呼んでね♪」
ミュウ
「皆覚えた」
2年生達は軽い自己紹介を終えると、皆その場を去っていった。
明日花
「やっと帰ったか」
琉生
「待ってる?」
明日花
「お前達以外な」
明日花はそう言って苦笑した。
琉生は少し微笑むと、ミュウを手招いた。
琉生
「晩ごはん、いこっか?」
ミュウ
「うん!」
***
晩御飯は賑やかだった。
と言っても、ミュウが来たからそうなったという訳ではないが。
しかし、ミュウは楽しげに皆との晩御飯も楽しんでいた。
そして誰もがそれを笑顔で迎えていた。
既にミュウは仲間だと認識されたのだ。
悠那
「……」
学生寮には共用のベランダがある。
普段ここを利用する生徒は少ないが、悠那は夜空を見上げて考え事をした。
悠那
(ミュウ、か)
今宵は空も晴れ、月が美しい。
当初はそれを愛でる意図もあったが、考えに耽るのはやはりミュウだった。
ミュウ自身が特別な子か、特別は特別だろう。
だが、それだけならば琉生やきらら以上の存在にもならない。
悠那自身、一先ず決着はつけたいが、銀河冥子の詳細が分からない以上、迂闊な事は出来ない。
では、何故今ミュウの事を考えたんだ?
悠那
(あり得ないじゃない、今の私はまず最強を目指さないといけないのよ……なのにそれと関係ない彼女を)
ミュウ
「ミュウ? 悠那お姉ちゃん?」
悠那
「っ! ミュウ?」
突然後ろから、悠那に近づいてきたのはミュウだった。
ミュウは悠那を確認すると、にこやかに笑って、隣に向かった。
ミュウ
「悠那お姉ちゃん、一人でどうしたの?」
悠那
「別に……ただ星を見ていただけ」
ミュウ
「星?」
ミュウは空を見上げた。
しかしここは都会だ、人工の光が邪魔して星など殆ど見えない。
ミュウ
「星、どこ?」
悠那
「比喩よ、これ位察しなさい」
ミュウ
「ミュウ〜?」
ミュウにはまだ難しいのか。
ミュウは何でも安直に考えすぎる。
悠那のような複雑なメンタルは特に理解しにくい方だろう。
ミュウ
「ミュウ〜、難しい……でも理解する!」
悠那
「向上心があるのは評価するわよ」
悠那がそう言うと、ミュウはその言葉が嬉しかったのか、横から抱きついた。
当然悠那は驚いて、態勢を崩すが踏み止まり、ミュウを見た。
ミュウ
「ミュウ〜♪ ミュウ、悠那お姉ちゃんの事も好き♪ 悠那お姉ちゃん、ミュウの事、いつも真剣なんだもん♪」
悠那
「え!?」
それは意外な回答だった。
悠那からすれば、ミュウは邪険にしていたつもりだ。
寧ろ琉生を絆されて、迷惑に感じていた部分さえある。
しかし、ミュウの屈託の無い笑顔は、悠那のある疑問を氷解させた。
悠那
(もしかして私……ミュウの事を心配しているの?)
自分と向き合っても、何故か出てこなかった答え。
ミュウが自分にとって特別になり得る要素は何か、今それが分かった。
悠那
「母性が芽生えたのは琉生だけじゃないって事か……」
ミュウ
「ミュミュウ?」
悠那は自嘲気味に笑ってしまう。
そりゃそうだ、彼女は孤高と言えるほどストイックに生きてきた。
ミュウを見て心配する理由、そして琉生が急激に変わっていった様に苛立ったのはこれだったんだ。
悠那
「ねぇ、ミュウ? ミュウは私がどう見える?」
悠那は多分ミュウに対して初めて使うであろう優しい言葉で聞いた。
ミュウは顔を上げて、その優しげな悠那の顔を覗き込む。
ミュウ
「悠那お姉ちゃんは、厳しい、でも優しい……ミュウ、大好き!」
悠那
「そう……フフフ、アハハハ……アッハッハ!」
悠那は顔を手で覆うと、そう言って高笑いした。
自分までもがミュウに絆された自嘲、そしてそんな自分を受け入れている甘さ。
それがどうしてもおかしかったのだ。
自分に限ってあり得ないと思っていた感情が存在したことに。
悠那
「ククク……! ミュウ、言っておくけど私は本当に厳しいわよ? アンタを特別扱いはしないんだから!」
ミュウ
「ミュ、ミュウ!?」
悠那は覚悟を決めた。
琉生が優しき母になるなら、悠那は厳しき母になろう。
琉生はミュウを甘やかしてしまう。
それはミュウの為にはならない。
だから自分が厳しさを教える。
ミュウを一人前にするために。
悠那
「さ、良い子はもう寝なさい」
ミュウ
「う、うん」
悠那
「明日早起き出来れば、褒めてやる」
ミュウ
「う、うん! 頑張るっ!」
ミュウは笑顔で頷いた。
そのままミュウは走って寮へと向かうと、悠那はもう一度月を見上げた。
悠那
「嘲笑いたくば嘲笑いなさい……これが私、八神悠那なのよ!」
***
それから1週間が経過した。
ミュウは1年生として迎えられ、琉生と悠那はミュウを優しく、そして厳しく見守った。
次第にそれは他の生徒達にも伝播していき、ミュウは気がつけば欠かせない存在になっていった。
だが……ミュウが何者なのか、その答えをポケモン少女達は知らなさすぎた。
***
鈴
「はぁ〜体育か」
桜
「何? 鈴って体育嫌いだったっけ?」
学園が所有する運動場には今、2年生が運動着に着替えて集まっていた。
今はまだ2年担当の剛力闘子の準備が終わってないらしく、それぞれ準備運動していた。
鈴
「運動は嫌いじゃないよ? ただ闘子先輩って厳しいでしょ? あんまり筋肉つけちゃうとプロポーション崩れちゃうしさ〜?」
由紀
「な〜に、言ってんだか! まだアイドルのつもり?」
鈴
「ブ〜! これでもまだファンはいるんですー!」
鈴はあざとく顔を膨らませてそう言うと、ミアは空笑いした。
闘子は心身ともに鍛える、割とガチのアスリートだが、鈴はそうではない。
そもそもポケモン少女の状態とは別に、人間としても身体を鍛えさせる事に、鈴は辟易しているのだ。
まぁ勿論、素の鈴あってのポケモン少女、素の鈴を鍛える事にちゃんと意義はあるのだが。
ミア
「それにしても遅……え!?」
ミアは闘子の到着が遅いことに危惧して、入口に目を向けた。
しかしその時、最悪の来訪者が彼女たちの前に現れた!
桜
「ゲシュペンスト!?」
それはゲシュペンストαの群れだ!
αだけだけではない、上半身が人形の異形の怪物βも複数確認出来る!
ミア
「嘘!? ゲシュペンストβが7体!?」
それは2年生達が聞いたこともない、数だった。
ゲシュペンスト達は2年生を取り囲むと、当然というように敵意を振りまいた。
由紀
「ち! 現状に喚いている暇があったら、戦え! 変身行くわよ!?」
桜
「おっけー!」
ミア
「メイク・アップ!」
2年生達はソウルリンクスマホを翳すと、変身していった。
それぞれユキノオー少女の鈴、サンドパン少女の由紀、ブロスター少女のミア、そしてシロデスナ少女の桜が現れた!
桜
「とはいえ、多すぎでしょ?」
ミア
「救援送っておきました、βに気をつけて戦いましょう!」
鈴
「あーもう! こうなれば、撃って撃って撃ちまくってやる!」
***
そんなピンチな2年生とは裏腹に座学に励んでいた1年生達だが、2年生達のピンチをいち早く悟ったのはミュウだった。
ミュウ
「っ!? ミュウ……このざらついた嫌な感じは……?」
愛
「どうしましたミュウちゃん? お気分でも?」
ミュウ
「愛ちゃん先生! 鈴ちゃん先輩達が危ないの!」
ミュウは机を叩いて、立ち上がるとそう言った。
直後、愛のタブレットに救援信号が走った。
愛
「え!? 運動場でゲシュペンストの大群!?」
ミュウ
「!!」
ミュウはその瞬間テレポートした。
それは琉生達の前で変身する事なく使った超能力だ。
明日花
「うええ!? ミュウが消えたぞ!?」
琉生
「ゲシュペンストって……!」
悠那
「ち、考えるより先ね!」
琉生と悠那は立ち上がった。
ミュウはおそらく運動場にいる。
あの豹変ぶりから考えれば、助けに行ったのは明白だろう。
琉生
「先輩! 助けに行きます!」
愛
「うぅ〜! 分かりました! でも無茶は駄目ですよ!?」
愛はミアが送った敵の情報から、これは危険度が高いと思った。
2年生は早々に戦意喪失することはないと思うが、だからといって絶望的な数の差と直面すれば、いつ心が折れるか分からない。
ここは1年生の力を借りるべきだ、愛はそう判断したのだ。
愛
「皆さん! 変身して救援に向かってください! 勿論私も出ます!」
愛たちはソウルリンクスマホを翳すと、次々と変身していった。
空から飛び出す悠那達、愛もそれに続きながら、高速で現状を分析した。
愛
(それにしてもミュウちゃん、変身してないのに超能力を使った?)
ミュウはまだソウルリンクスマホを持っていなかった。
ソウルリンクスマホは生産数が少数で現在予約待ちだったのだ。
だからミュウは一緒に学生生活をしながら、まずはお勉強だった。
しかし、彼女は生粋の超能力者だったのか?
いや、彼女が平時から超能力を使う姿を見たことがない。
隠していたとしても理由が分からない。
愛
(何故か嫌な予感がします……私はミュウちゃんについて、何か勘違いしている?)
ポケモンヒロインガールズ
SP04 完
続く……。