SP03
闘子
「ミュウ……ねぇ」
放課後、職員室で3年の剛力闘子と友井愛は新発見のポケモン少女、ミュウの事を話していた。
ミュウは不思議な少女だ。
本人がミュウと名乗っているが、それが名前として正しいのか分からない。
出会ったときにはぶかぶかの白いワンピース以外はなにも身につけておらず、大凡現代人には見えなかった。
愛
「悪い子じゃないんです……決して」
愛が少し言葉を濁したのを、闘子は見逃さなかった。
根っからの聖人な愛がミュウに大して確信を得られていないのだ。
いや、信じたい……その気持ちは痛い程に分かる。
だが闘子も愛も、そこまで素直になれない理由があるのだ。
闘子
「話は変わるが、八神悠那と古代燈の様子はどうだ?」
愛
「燈ちゃんは早くもクラスに溶け込んでます、悠那ちゃんも……率先して馴染もうと頑張ってますよ?」
先の騒動、八神悠那らが起こしたポケモン少女管理局への反乱。
それは闘子はおろか、愛にとっても忘れられない程の衝撃だった。
特に愛は、ポケモンバトルさえも忌諱する程であり、あんな私情で起きた抗争は二度と起きてほしくないと思っている。
闘子にとっても同じだ、あんな理不尽を翳した戦いは主義に反する。
試合としての形式なら望むところだが、場外乱闘はナンセンスだ。
しかし同時に二人は理解した……いや、分からされてしまった。
愛
「まだポケモン少女は……痛みが伴う時代何でしょうか……?」
闘子
「分からない……しかし、俺達の前に壁が反り立つなら、それを越えなければならねぇ!」
愛も頷いた。
1年生にとっては試練だ。
ポケモン少女は正義のヒーローでなければならない。
それぞれが自分を律しなければ、愛たちは容易に世間から爪弾きにされてしまう。
ポケモン少女管理局は、そうやって個々のポケモン少女たちが露頭を彷徨うのを、高度に組織化させ、そして社会にPRすることで保護してきた。
まさかその保護から離れ、アウトローになったポケモン少女がいるとは考えなかったのだ。
そしてミュウ……彼女は何者か?
そんなアウトローのポケモン少女なのか?
いや、そんな筈はない。
愛は首を振って否定した。
愛
「ミュウちゃん、すごく琉生ちゃんに懐いているんですよ、とても微笑ましい位に」
闘子
「だから信じろ、か。1ヶ月前なら出来たんだがな」
そう、無条件に信じるなんて既に出来ないのだ。
闘子自身、自分のクラスに七海桜を抱えている。
闘子自身が不意打ちとはいえ、場外乱闘で負けた相手、そしてあの八神悠那の一味だ。
桜自身は、最もリベラルで危険性は薄いと判断されている。
ただ、それでも闘子は愛ほど人類皆善人とは信じられないのだ。
だから闘子は悲しくなる。
そしてそれを間近で見た愛も顔を暗くした。
闘子
「それで、肝心のミュウって子は?」
愛
「ミュウちゃんなら……」
***
ミュウ
「ミュミュミュ〜!」
ミュウははしゃいでいた。
両手を広げて、放課後の僅かな自由時間を琉生達と共に過ごしている。
一体何が楽しいのか、ミュウは両手を広げて走り回っているのだ。
琉生
「こら、ちゃんと前を見ないと危ないよ」
そんなミュウを琉生は周りから過保護に思える程、一緒に付き合っている。
琉生自身、まだお互いを殆ど知らないにも関わらず、ミュウが放っておけなかった。
ミュウ
「琉生お姉ちゃん! 手!」
琉生
「手?」
琉生は手を差し出すと、ミュウはそれを握り込む。
そして琉生を引っ張って走るのだ。
琉生
「ちょ、ちょっと!?」
明日花
「全く、呆れるぜ」
それを見て明日花は頭を振った。
流石にちょっとどうかしている。
琉生自身、あの引っ込み思案がミュウにここまで心を開いているのが不思議なのだ。
アリア
「結局、彼女のこと、分からずじまいでしたね」
ミュウは愛が調べた結果、名前以外なにも分らなかった。
何処に住んでいるのか、家族はどうしているのか。
そんな事さえミュウからは分からない。
結局愛はポケモン管理局にミュウについて相談したが、その答えはいつも通り愛達に任せるだった。
勿論その理由を愛は管理局に務める神成依乃里に相談した。
しかし彼女の回答も「局長の命令が絶対よ」との事で、結局は押し付けられた形だ。
明日花
「案外、実は工作員だったり?」
燈
「そう思える?」
明日花
「分からねぇだろ、ぱっと見だったら古代だって、夢生だって敵とは思わねぇもん」
夢生
「むう〜! 夢生のは事故だもん!」
夢生は暴走、燈は悠那のために戦った。
そう、かつては敵であり、決して彼女たちは悪ではなかった。
いわば善と善のぶつかり合い。
結果としては勝ったが、もし逆になっていたらどうなっていたのか、想像力の足りない明日花には分らなかった。
明日花
「アリアと八神はどう思う?」
アリア
「工作員ですか? そうですね……彼女、頭が悪そうで、でも、本当にそうなのか判断しきれません……」
悠那
「ないわね」
悠那は腕を組んで胸を持ち上げ、そう即断した。
一番ミュウを警戒しているように思えた悠那が?
全員が悠那を見た。
悠那
「ミュウは姫野に懐いている、子供が親に愛情を求めるように……あれは演技では不可能よ」
ミュウは琉生の手をギュッと握りしめると、嬉しそうに引っ張り回し、それは踊るようだった。
満面の笑顔、それは周囲を納得させるには充分だった。
明日花
「だよなぁ……深読みしすぎか」
夢生
「そうビュン! あすちんは早合点し過ぎ!」
明日花
「うっ!? い、言ってくれるなぁ」
アリア
「どうどう、喧嘩は駄目よ、二人共?」
ちょっと言葉が喧嘩腰になった二人をアリアが諌める。
これだけならいつも通りの光景だ。
だが……。
悠那
(そう、ミュウが危険だとは思っていない、だけど彼女がそれを理由に安全と言い切れる?)
悠那だけが、かつてこの世の理不尽を思い知り、反逆を決断した少女だけが、その疑惑をミュウの小さな背中にぶつけた。
悠那
(彼女が工作員? それは無い……でも、ミュウが得体の知れないポケモン少女なのは間違いがない、例え彼女が信用に値しても、それが善なる行為だとしても……過失は存在するのよ)
そう、かつて自分がそうだったように。
悠那は自らの戦う意味を再び自分に問うた。
それは正義のため、弱者を弱者として見捨てないため。
かつて自分の命を救ってくれた名も分からぬヒーローを裏切らないために。
悠那
(ミュウ……アンタが過失に繋がるなら、私は戦うわよ、過ちが起きてからではお終いなのよ!)
***
ミュウ
「ミューミュミュー!」
琉生
「はぁ、はぁ! ま、待って……ちょ、ちょっと」
琉生は息を切らしていた。
ミュウはそれに気がついたのは、もうすでに琉生がフラフラの状態の時だった。
ミュウ
「琉生お姉ちゃん? だ、大丈夫!?」
ミュウは慌てふためいた。
顔を青くし、琉生に起きた事態に怯え震えてしまう。
だが、琉生はなるべく笑顔を見せてミュウを安心させた。
琉生
「大丈夫、疲れただけだから……」
ミュウ
「疲れた? ミュウは琉生お姉ちゃんが疲れてるのに、楽しくてしょうがなかった……ミュウ、悪い子……ぐす!」
琉生
「ふふ、そう。楽しかったんだ……良かった」
ミュウ
「え?」
琉生はそう言うと、河川敷の前で座った。
ミュウは不思議そうにその隣に座る。
琉生
「私、体力が少ないから……一応鍛えてはいるんだけどね?」
琉生は生真面目な女だ。
オオタチ少女としての身体能力は1年生でもトップレベルだが、人間としての琉生は誰よりも弱い。
それを恥じて、琉生は心身を鍛える事に余念はなかったが、元から線が細く体も小さい琉生ではハンデを覆すには至っていないのだ。
もとより比べる相手がスポーツ万能の明日花や才色兼備のアリアなのでは、分が悪いのも仕方がないだろう。
ミュウ
「琉生お姉ちゃん……あんなに凄いのに?」
琉生
「凄い?」
ミュウ
「いっぱい、一杯戦った! 誰よりも激しく戦った!」
ああ、琉生は意味が分かった。
ミュウは琉生をポケモン少女を前提に考えているのだ。
琉生は苦笑した、確かに見ていたならあっちの方が印象的かもしれないから。
琉生
「あれは、オオタチさんの力だから」
ミュウ
「? でも琉生お姉ちゃんだよ?」
琉生
「私であって、私でない」
ポケモン少女としての姫野琉生、それは今の琉生とは些か印象が異なるだろう。
琉生の琉生としての自我は、魂は何処にあるのか?
ミュウ
「ミュウー……分かんない、今の琉生お姉ちゃんは、琉生お姉ちゃんじゃないの?」
琉生は笑って首を振った。
琉生
「そうじゃないの、ごめんなさい。難しいよね、オオタチ少女も私だし、姫野琉生も私なのに」
だが、それは同じであるはずなのに違うのだ。
ミュウ
「ミュウ〜、難しいの」
琉生
「ふふ」
琉生はミュウの頭を優しく撫でた。
ミュウにはまだ哲学的な話は難しいようだ。
琉生
「もう少し休憩したら、今度はゆっくり歩こう?」
ミュウ
「ミュウー、うん!」
ミュウが笑顔になった。
そう、それでいい、ミュウは笑顔が似合う。
?
「琉生?」
琉生
「え、あ……」
琉生は顔を上げると、そこには小さな少女が立っていた。
星野きらら、背丈は琉生よりも小さいが、それを基準に彼女を見てはいけない。
彼女は3年性であり、あの愛と同輩なのだ。
ミュウ
「ミュウ〜?」
きらら
「琉生、その子は?」
きららは相変わらずの無表情でミュウを一瞥する。
ミュウは不思議そうに首を傾げた。
琉生
「えと、ミュウちゃんです。現在支部で保護しているポケモン少女で」
きらら
「……そう」
きららは深くは追求しなかった。
いや、というより愛が相談してこないなら、これは自分が関わるべき物ではないのだろうと、考えた。
きららが心配したのは、また1年生が巻き込まれたという一点だ。
琉生の周りはちょっとでは済まない数奇な運命でもあるかのようだ。
しかし琉生は超人ではない、勿論精神的にもまだまだ未熟だ。
きらら
「星野きららよ、よろしく」
ミュウ
「ミュウ〜? きらら〜?」
琉生
「先輩なのよ? 愛先輩と同じ」
ミュウ
「愛と同じ……」
ミュウは愛ときららが同じと受けて、それを整理した。
その結果、ミュウはきららの立ち位置を確定する。
ミュウ
「ミュウ! なら琉生お姉ちゃんの大切な人!」
そのド直球な言い方に琉生は思わず顔を真っ赤にした。
大切って、そりゃ大切な先輩だけど、言葉で聞いたら全然違う意味に聞こえるし!
琉生は顔を真っ赤にして、苦笑いするも、ミュウはそれが分からず頭に疑問符を浮かべた。
琉生
「きらら先輩はね? とっても凄くて尊敬出来る人でね? 大切な人って言っても……?」
ミュウ
「琉生お姉ちゃんは大好きなんでしょ? ならおんなじ!」
琉生
「〜〜〜!!」
遂に、琉生は耳まで紅くしてしまう。
一方極力無表情に努めていたきららもほんのり頬を紅くしていた。
きらら
「愛は、学園にいるかしら?」
琉生
「は、はい、いつも通りの筈ですけど?」
きららは気を利かせて話を変えた。
琉生は顔を隠すように下を向いて、震えた声でそう言った。
ミュウは「大丈夫?」と心配するが、今は火に油である。
きらら
「そう、二人共門限までには帰るのよ?」
琉生
「は、はい!」
きらら
「それじゃ、さようなら」
琉生
「きらら先輩こそ、お疲れ様です!」
ミュウ
「ミュウー! きらら、バイバーイ!」
最後にきららはもう一度ミュウを見た。
特にこれと言って悪意はない。
きららは歩きながら、思考を巡らせる。
それは琉生を含む学園の全てを護るために。
悠那
「星野きらら……」
きらら
「八神悠那……?」
それは因縁の相手だった。
お互いにとってある意味で憎しみをぶつけあった。
事実超然とした力を持つゆえに、大抵のことには波風立てないきららが唯一感情を顕にさせたのは悠那だけであった。
悠那にとってきららは超えなければならない壁だ。
本気の彼女と戦うために、文字通り清濁併せ呑む万策を尽くした。
その結果、悠那はきららの逆鱗に触れただけで、その圧倒的実力差を思い知らされた。
きらら
「……なんの用?」
悠那
「……っ、今のアンタに勝っても意味はないわ」
きらら
「正式に手続きしてくれれば、いくらでも相手をしてあげる」
悠那
「相変わらず上から目線ね……っ!」
きららは周囲に目を配らせると、悠那以外も少し離れた場所にいた。
きらら
「これはどういう事?」
八神悠那が一年生として転入したのは知っている。
この性格だから琉生達も苦労しているだろう。
だが、今回はオールスター?
明日花
「ちーっす星野先輩!」
アリア
「今、琉生さんとミュウちゃんの観察中でして」
随分珍しい光景だった。
1年生全員が一緒に行動するなんて、そう滅多にないのでは?
きららは悠那を見て自分の意見を述べる。
きらら
「そんなに心配なの?」
悠那
「ある意味心配ね、アンタと違って四六時中付き合う事になる同級生なんだから」
きらら
「ふーん」
きららは微笑を浮かべた。
悠那はそれを見て不機嫌そうに後ろ髪を掻いた。
プライドの高い女だ、だが完全に誰も寄せ付けぬ程孤高ではない。
特に仲間は大切だ、それを理解しているから、琉生を心配しているのだ。
悠那
「星野きらら、アンタにも一応聞いてみたいんだけど、ミュウをどう思う?」
きらら
「良い子だと思うわ、裏表があるようには思えない」
夢生
「先輩も同じビュンか」
燈
「だとしたら、やっぱり大丈夫じゃない?」
アリア
「皆さん、やはり疑念を抱き過ぎなのでは?」
明日花
「だな、もういいだろ。ちょっと琉生の様子がおかしいが、あいつは意外と不思議な奴だからな」
もう、ミュウと琉生を監視するのも限界だろう。
ミュウは琉生を振り回してはいるが、それは困らせたりする目的じゃない。
純粋に琉生と一緒にいることを楽しんでいるようだった。
それを理解できた数人はそれぞれ帰路についた。
最後まで動かなかったのは悠那だった。
燈
「悠那?」
悠那
「燈は先に帰ってなさい、あまり買い食いはしないようにね?」
燈
「ん、悠那はどうするの?」
悠那
「もう少し二人を観察してるわ」
燈は「そう」と頷くと、そのまま夢生の背中を追った。
すでに琉生とミュウも立ち上がっている。
悠那は目を補足して二人を見るのだった。
***
琉生
「ふう、さて……そろそろ私達も帰ろうか?」
ミュウ
「帰る?」
琉生
「そう、私達は皆寮に住んでいるのよ?」
ミュウ
「ミュウー? 皆で?」
琉生
「1年生達だけじゃないくて、2年生もいるのよ?」
最も2年生は別の棟にいるので、普段は顔を合わせる事はないが。
ミュウは頭を天に向け、「んー」と人差し指を口元に当て、考えた。
琉生は少しずつミュウの事が分かってきた。
ミュウは知りたがりで、なんだか不思議なほど常識が足りていない。
でもそれ無知によるもので、彼女はよく考え思考を巡らせる。
本質的に言えば、彼女は利口だと言える。
ミュウ
「ミュウも? ミュウも含まれる?」
琉生
「んー、愛先輩に聞かないと分からないけど、多分大丈夫」
ミュウはそれを聞くと目を輝かせた。
そして彼女は何度も万歳するようにジャンプする。
ミュウ
「ミュウーミュミュー! 一緒だー! ミュウー!」
天真爛漫が服を着たような少女だ、琉生は素直にそう思った。
正直この子は謎が多い、でも琉生は信用できると確信した。
そしてこの子を護り導かなければとも考えた。
それは母性に似ており、きっと愛が琉生達に向ける感情も近いのだろう。
どうして年端も行かない琉生がそれに目覚めたのか、謎ではあるが心地良かった。
ミュウ
「ミュウ?」
ふと、ミュウはダンスを止めると、明後日の方角を見た。
琉生はミュウの視線を追うと。
ミュウ
「悠那お姉ちゃん……」
琉生
「っ!」
八神悠那が二人を見ていた。
いや、監視している。
でもどっち? いや、今は関係ない。
琉生は悠那に対して歩みだす。
悠那は気づかれた事にため息を吐くと、琉生と向かい合った。
琉生
「どっちが目的?」
悠那
「姫野琉生、お前に関係がある?」
琉生
「ミュウは危険じゃない」
悠那
「誰もそんな事言ってないでしょう?」
琉生
「でも監視していた!」
琉生にしては珍しかった。
変身もしていないのに、声を荒げている。
それはミュウを護りたいからだ、それがまるで暴走しているかのようだった。
一方で悠那は辟易としながらも、負けん気をぶつけてしまっていた。
琉生の前で、大人げないと自覚しているのに、ついぶつかってしまうのだ。
ミュウ
「止めて! お姉ちゃん達!」
琉生
「っ!?」
悠那
「!?」
そんな二人を静止したのはミュウだった。
ミュウは涙を貯めると、二人に懇願するように言って涙した。
ミュウ
「駄目、琉生お姉ちゃんも悠那お姉ちゃんも喧嘩しちゃだめ……ぐす」
ミュウが泣き出すと、二人は熱が抜けるように落ち着いた。
琉生は過剰に悠那に噛み付いた事を反省し、悠那はなぜあのような言葉で対応したのか。
何れにせよ、ミュウは二人の争いを望んでいない。
誰よりも仲良くしなければならないって事を理解していたのはミュウだった。
そんなミュウを前に二人は罰を悪くする。
琉生
「ご、ごめんなさい」
悠那
「私も悪かったわ……」
ミュウ
「お姉ちゃんたち喧嘩しない?」
琉生
「う、うん」
悠那
「善処するわ」
ミュウはそれを聞くと、涙を拭いた。
そしてにこやかに笑うと、琉生と悠那の手を取る。
ミュウ
「琉生お姉ちゃん、悠那お姉ちゃん! 一緒に帰ろう!」
悠那
「ちょ、ちょっと!?」
琉生
「わわ!?」
こうなるともうミュウのペースだ。
ミュウが両手を振ると、つられて琉生も悠那も揺られてしまった。
ミュウのペースは琉生達を振り回してしまう。
しかし彼女の顔は笑顔だ。
それを見ると二人はそれを許してしまう。
そして、それを空から観察するのは。
依乃里
「……さて、一体何者? 新種ポケモンミュウ……」
神成依乃里、ユクシー少女はその開かれる事のない瞳で夕暮れを歩く三人を眺めた。
彼女の望みは至ってシンプル、安寧だ。
必要とあれば、人々から記憶を奪うポケモン少女は、イレギュラーの出現に憂鬱とする。
ポケモンヒロインガールズ
SP03 完
続く……。