ポケモンヒロインガールズ - 第三部 ネクストワールド編
第22話 ポケモン少女達のネクストステージ

第22話 ポケモン少女達のネクストステージ



明日花
 「うーん!」

ポケモン少女学園関東支部を巻き込んだ、大きな騒動から2週間。
街はいつもの静けさを取り戻していた。
あの戦いのあと、怪我から復帰した宝城明日花は久しぶりの授業復帰に朝から、体操をしていた。

明日花
 「アタシもやっぱりまだまだだよなぁ〜」

明日花は自分の手を見て、それを強く握りしめた。
正直、剛力闘子や砂皿由紀に比べて、自分の力はまだちっぽけだ。
強くなっているという自覚はある。
だが、先輩達との差は縮まるどころか、離されたようにさえ感じたのだ。

明日花
 「駄目だ駄目だ! 最近運動不足だったから、頭までおかしくなっちまった!」

明日花は自信のない自分になんとか鼓舞をすると、走り出した。
ランニングで気分を紛らわそうとしているのだ。



***



琉生
 (うぅ?)

姫野琉生は微睡みの中にいた。
微睡みの中で見たのは、戦いの記憶だった。
特に琉生の脳裏にこびりついたのは八神悠那との戦いだった。
あの時の自分は本当に姫野琉生だったのか?
自分とオオタチとの差が分からず、徐々に混ざり合う感覚。
琉生は微睡みの中でそれを恐れた。
いつか自分は人間の殻を捨てるのではないか?
ありもしない現実と、空想の夢の狭間で琉生は呻いた。

琉生
 「は……?」

目を覚ました。
琉生はまず初めに天井を見た。
いつもの白い天井、部屋の中は秋の寒さが感じられるが、琉生の身体は汗まみれであった。

琉生
 (今の私は人間? それともポケモン?)

そんな自問自答をするが、答えは明白だ。
琉生は自分の細く小さな手を眼の前に掲げ、ゆっくりと握り込んだ。

琉生
 「私だ……!」

琉生は神がかっている。
それは高いオオタチとのシンクロ率でも証明しており、時折この物静かな少女は、儚き姿を見せてしまうのだ。

琉生
 「変だよね、私は私なのに」

琉生はゆっくり起き上がると、時計を確認した。
壁に掛けられた丸時計は6時を示している。
大分早起きをしてしまった。
二度寝しようかとも考えたが、琉生は首を振る。
今から二度寝したら多分寝坊する。

琉生は窓の外を見る。
寮の直ぐ側に建てられた校舎が見える。
しかしそんな何気ない行動、だが琉生は『ソレ』を見て、何かを感じとった。

琉生
 (この感覚以前どこかで!?)



***



依乃里
 (このザラつき、見られている?)

ポケモン少女管理局本部直属のポケモン少女神成依乃里は関東支部の学園校舎を訪れていた。
本来なら絶対に自分が訪れる筈のない場所。
しかし今回ばかりは、依乃里にしか任せられず、この場所に来たのだ。
彼女の前には一人の女性がいる。
一度顔を合わせた程度だが、その小さなレディは優しく微笑んだ。


 「朝早くから、ご苦労さまです♪」

3年教導部の友井愛だ。
愛は本部の通達から、彼女の来訪を心待ちにしていた。

依乃里
 「こちらこそ、こんな朝早くに申し訳ないわね」


 「うふふ〜、慣れてますし、人の動きが少ない時間の方が都合も良いのでしょう?」

愛はとことん依乃里に合わせる気だろうか?
少しは自分の来訪を迷惑がればいいものを、愛はまるで奉仕係のような接し方だった。

依乃里
 「一応辞令、ポケモン少女3名を追加で関東支部の管理下に置く」


 「報告で見ましたが、なぜウチなのでしょう?」

愛は少し不安だった。
そもそも転校生の話が出たのは僅か3日前。
そして実際の転入手続きに入って、その3名のバイタルデータが愛の元に届いた。
そのデータを見たとき、愛は驚いた。
新しく転入する3名は、果たして本当に大丈夫なのか。
あの慈愛の神とさえ称される愛が、極めて珍しく疑問視した程だ。

依乃里
 「私はあの方……、局長の支持に従うだけよ、あの方は貴方に強い関心を抱いている」


 「局長が、ですか?」

依乃里
 「まぁ転入生なら、多分大丈夫よ」


 「多分では困るのですが〜」

愛は苦笑した。
何せ出会っていきなり喧嘩沙汰にでもなれば、監督不行き届きになってしまうのだ。
それだけなら、愛はまだ良いと思っている。
真希や闘子も喧嘩から生まれる友情もあると言っているし。
問題はそれ以上の亀裂が発生した時だ。
愛は皆を信じている、きっと仲良く出来ると。
でも足りない事をどれだけ自分が補えるのか、今回ばかりは見当がつかない。

依乃里
 「寮の方の用意は?」


 「10時から搬入始めます」

新しく来る3人は、学園だけでなく寮でも共同生活をしてもらうことになる。
果たしてうまくやれるのか、愛の不安は募るばかりだ。


 「はぁ……それにしても大所帯になってきますね」

依乃里
 「普通の学校に比べたらそれでも片手で数えられるレベルでしょう?」


 「個性が強い皆さんですからねぇ」

そういえば、代理で講師を努めてくれたきららはたった一日にも関わらず顔色を悪くしていた。
その時「愛の事尊敬するわ」なんて言っていた。
愛からすれば普通だが、他からすればそうでもなく。
だが、愛にも限界はあるのだ。


 「依乃里さんは直ぐに?」

依乃里
 「ええ、3人が学校に届くまでには本部に戻るわ」

3人が届くまで、その言葉にも愛は余計な不安を募らせた。
今回の転入生、つまりそれほど問題があるのだ。


 (私がこんなので、どうするのっ! 私が信じなきゃ、誰が信じるって言うんですかっ!)

愛は自分にそう言い聞かせた。
そうだ、自分は琉生ちゃんたちみたいな、不安で一杯の子たちに、不安を取り除くために教導部に入ったのだ。



***



朝ごはん、それは1年生の場合、1階のキッチンが使われた。

明日花
 「いや〜! 運動の後の飯は美味い!」

7時を迎えると、ランニングから帰ってきた明日花は、元気溌剌であった。
元々夢生と並んで元気娘であったが、怪我もあり、このような姿に皆安堵したのだ。
だが、少々朝は低血圧の江道夢生は鬱陶しそうに、トーストにジャムを塗っていた。

夢生
 「エウ〜、朝から元気過ぎるビュン〜」

アリア
 「ふふふ、明日花さんも元気になって何よりです」

1年生の中でも人際大人っぽい東堂アリアはそう言うと優しく微笑んだ。

琉生
 「うん、これで本当の意味でいつも通りだね」

明日花
 「ハッハッハ! 取り敢えずタンパク質とって、肉体改造しねぇとな!」

アリア
 「段々剛力先輩に似てきましたわね」

夢生
 「朝はちょっと鬱陶しいビュン……」

琉生
 「夢生、もうジャム無くなってるよ?」

半分寝ぼけながらジャムを塗りたくる夢生だが、その消費量は半端ではない。
大の甘党とはいえ、最初はその使用量にはドン引きしたものだ。
夢生はそれに気づくと、大きな欠伸をした。

明日花
 「にしても、今日は夢生、特に低血圧だな?」

夢生
 「はむ、むぐむぐ……、なんだか最近寝付きが悪いんだよね〜?」

アリア
 「まぁ、何かストレスでも?」

明日花
 「夢生にストレスはあり得ねぇだろ」

明日花はそう言って大笑いする。
やや申し訳ないと思いながらも、それはアリアと琉生も同意した。
夢生程明るく元気な子はいない。
寧ろ明るさに何度助けられた事か。

夢生
 「もう! 皆酷いビュン! 夢生だって悩みの一つあるんだもん!」

明日花
 「例えばどんな?」

夢生
 「記憶……」

琉生
 「記憶?」

夢生
 「……やっぱりなんでもないビュン!」

夢生はそう言うと、急いでトーストを食べた。

琉生
 (記憶って言った? 一体何が?)

夢生の事は夢生にしか分からないだろう。
だが彼女は無かった事にした、つまりは触れられたくないのだろう。

夢生
 (最近? 何か記憶に齟齬があるなんて、絶対あすちん馬鹿にするもん……)

夢生の記憶齟齬、些細なことなのだが、たまに自分の記憶と実際が違う事があるのだ。
それ自体覚え間違えかもしれないけど、しかしこう言った不思議な経験をするようになったのは、あの『おじさん』に出会ってからだ。
あのおじさんは誰だったんだろう?
夢生はずっとそれがモヤモヤしていたのだ。

明日花
 「ご馳走さま! 夢生も早く食べろよ!? 遅刻するぜ?」

アリア
 「ゆっくりでいいんですよ? 早食いは消化に悪いですし、それにそこまで時間は切羽詰まってませんから」

夢生
 「うん♪ アーちゃんは優しいビュン♪」

夢生はそう言うと、ゆっくりジャムの芳醇な味と甘さを味わった。
その間にも琉生も朝食を食べ終える。

琉生
 「ご馳走さま」

明日花
 「さて、取り敢えず学校へ行く準備をするか!」

琉生
 「私先に行ってるね?」

アリア
 「あら? 一緒には行かないのですか?」

琉生
 「なんていうか……少し身体動かしたくて」

琉生の態度にアリアは不思議に思った。
琉生は物静かでストイックな子だが、基本的に規則正しく優等生だ。
その琉生が今日は少し余裕がないように思える。

アリア
 (元に戻った? ううん……何かが違う、やっぱり何もかもが元通りじゃないんじゃないかしら?)

アリアは自分だけが何故か取り残されている気がした。
明日花も夢生も琉生も、皆少しだけ変わった気がした。
それが成長であり、それは喜ぶべきかもしれない。
だけど本当にそうなんだろうか?
アリアはゴチルゼルのポケモン少女だ。
ゴチルゼルは未来予知に優れたポケモンだ。
もしかしたら、何か良くない未来を予知してしまったのだろうか?

夢生
 「ごちそーさまー!」

アリア
 (杞憂よね)

アリアはそう言うと、食事を終え、食器を洗い場に運んだ。
まだハッキリとした未来は分からない。
何より未来は確定していない、それは手繰り寄せる物だ。

アリア
 (もしなにかあるならば、私が皆さんを支えましょう!)



***



琉生
 (やっぱり愛先輩に相談するべきかな?)

琉生は一人学園の中を歩いていた。
生徒数の割に大きな学校は、異様に静かだった。
元々学校というよりも、研究所という方が正しい場所で、人が少ないのはそのためだ。
最初はあまりにも違う環境に戸惑いもしたが、今では誰も疑問には思わない。
だが、彼女たちは普通の少女ではない。
彼女だからこそ、その問題も、解決できる場所は普通の場所ではないのだ。

琉生
 「あ、愛先輩?」

ふと、いつもより早く校舎に入ると琉生は、愛を発見した。
愛はいつものようにタブレットPCを両腕で抱え、誰かと話していた。
しかし、それも直ぐに終わったのか、踵を返すと琉生と目線が合った。


 「琉生ちゃんですか? 今日は早いですね〜!」

愛は琉生を発見すると、いつものような笑顔でチョコチョコと駆け寄ってきた。

琉生
 「おはよう御座います、愛先輩」


 「はい♪ おはよう御座います♪ 皆さんはどうしました?」

琉生
 「私一人です」


 「あら? それは珍しいですね〜、一体どうしたんですか?」

琉生は少しだけ顔を俯かせると、愛にあの事を相談した。

琉生
 「あの、愛先輩はポケモンに魂を引っ張られる感じとかあります?」


 「え? いえ……ありませんが、琉生さん?」

愛は琉生の表情から、なにか深刻さを感じた。
琉生は高いポケモンとのシンクロ率がある。
それは愛やきららでさえ、その高いシンクロ率はない。
高いシンクロ率はそれだけポケモン本来の力を引き出せるが、その弊害もある。
高すぎるシンクロ率は人格面にもポケモンの影響が出ることがあるのだ。
一般的には、それを暴走という。
かつて夢生やアリアもソウルの暴走を招いた。
琉生は過去に暴走手前のシンクロ率を何度か示していた。
一度目は最初のゲシュペンストγ出現の時。
琉生は朝の段階で自然変身を仕掛けていた、結果的には暴走には至らなかったが、問題は二度目の方だ。
その時の詳細は愛も知らない、だが後日琉生のバイタルデータには驚いた物だ。
事件は八神悠那がダイマックスと呼ばれる巨大化現象を発生させた時だった。
琉生は突然、現場に現れ、ダイマックス現象を引き起こし、悠那を圧倒、鎮圧したのだ。
その時の琉生はデータだけなら、暴走していただろう。
だが、制御装置であり、観測装置となるソウルリンクスマホは琉生を正常と判断した。
誠に恐るべき事だ、常人なら暴走している数値も、琉生なら許容しうる。


 (うー、こればかりは私にも分かりません……多分誰も答えられないでしょう)

本部のデータベースにも、琉生の例は見当たらない。
琉生はそれ程、特例的存在だ。


 (あ……いえ、一人近似値が近い人がいました。悠那ちゃんです!)

八神悠那、サザンドラ少女の彼女は琉生に比較的近いシンクロ率を誇っていた。
そのシンクロ率から発揮されるポケモン少女のパフォーマンスはきららをして、「世界で五指に入るレベルかもしれない」と言わせる程だ。
ダイマックスした時には、周囲に出現したゲシュペンストγを握りつぶし、踏み潰して倒したという。
きららでさえ、その状態の悠那はどうにか出来るレベルを越えていた。


 (シンクロ率がダイマックス現象と関係があるのなら、悠那ちゃんならば答えられるかもしれない!)

琉生
 「あの、先輩?」

琉生は、じっと考え込む愛に首を傾げた。
そんな琉生をなんとか助けてあげたいと必死になる愛は、琉生の手を掴んだ!


 「心配しないでください! 私は絶対、琉生ちゃんを不安から護って見せますから!」

琉生
 「は、はぁ?」

琉生はその予想外の熱意に面を食らっていた。
なにせ愛は目を輝かせて、そう自信ありげに言うのだ。
愛の対応は少なからず琉生の不安を取り除く物だったが、なんだろう?
少し不安も覚えてしまう。
愛は聡明で慈愛に満ち、そして行動力もある。
だが時々それが空回りする事もあるのが彼女だ。
特に貧乏くじの引きっぷりは1年生にもネタにされている部分がある。


 「あっ、私一旦職員室に向かわないといけませんので、失礼しますね!」

琉生
 「あ、はい……すいません、忙しい中時間を取ってしまって」


 「ウフフ♪ 皆さんのお悩み相談は24時間対応ですから♪ それではホームルームで♪」

愛はそう言うと足早に去っていった。
琉生は、それを見送ると、自分の手を見る。
普通の手だ、今は不思議なほど安定している。

琉生
 「私は、姫野琉生だ」

そう呟いて、彼女は教室に入るのだった。



***



そして時間はあっという間に進み、ホームルームの時間には4人も揃っていた。

明日花
 「久しぶりにパトロールにも参加できるな♪」

夢生
 「あすちんパトロールがそんなに嬉しいの?」

明日花
 「嬉しいっていうか、暫く病院生活で、仲間はずれって感じだったじゃん? それが嫌っていうか」

アリア
 「単純に座学ばっかりで気が滅入っていたのでは?」

明日花
 「う、うるせぇ! アタシは体育で推薦入学したんだよ! 頭使うのはいいんだよ!?」

明日花は顔を真っ赤にして、自分の勉強嫌いを肯定すると、周囲からは笑い声が出た。


 「はいはーい♪ 皆さんおはようございまーす♪」

そこへいつもの調子で愛は教室へと入ってきた。
愛は教壇へと登ると、ニコニコ笑顔で言った。


 「今日は新しい転入生を紹介しまーす♪」

明日花
 「は? 転入生?」

夢生
 「なんでこの時期ビュン?」

今は秋だ、もう既に粗方のポケモン少女は発見され、各支部に送られているはずである。
この時期に転入生はどういうことか?
愛は教室の前に待たせていた転入生を呼んだ。


 「それじゃ、お二人! 入ってくださ〜い♪」

アリア
 「二人?」

そう、二人だ。
愛に呼ばれて教室に入ってきたのは二人いた。
だが、人数よりもその顔を見て、一同は絶句した。
その少女たち、片方は夢生をも下回る小さな少女、白い肌に紅いセミロングの髪、顔はボーっとした印象を受けるが、琉生に近い美少女だ。
もう片方はアリアよりは小さいが、明日花よりは大きい。
髪はまっすぐの腰まで伸びた黒髪、スタイルは非常に良く大変大人びた印象を受ける。
何よりも鋭い眼光は、とても同い年には見えないだろう。


 「はい、それでは自己紹介を♪」

小さな少女
 「古代燈、ウルガモスのソウルを持ってます」

吊り目の少女
 「八神悠那、サザンドラ少女よ」

電子黒板に表示されたのは顔写真と二人の名前。
だがそれよりもこの二人、それが意味する事に驚いたのだ。

アリア
 「な……なぜ!?」

琉生
 「八神悠那……!?」

悠那は琉生を見つけると、強く睨みつけた。

悠那
 「姫野琉生……! アンタに負けたの偶然、それを証明してやるわ!」



***



冥子
 (はぁ、何やってるんだろうなぁアタシ)

銀河冥子、かつて悠那達をバックアップし、神成依乃里を捕獲する事を目的とした主犯格の一人。
ロトムのソウルを宿し、自身を量子化させて、現代ならあらゆる場所に潜入できる彼女も、今はスーツに見を通していた。
パンク・ロックを愛し、このような正装を嫌っている彼女も今の立場を考えれば、こうせざるを得ない。
彼女は今、ポケモン少女管理局本部にいた。
それも組織の一番のお偉いさんの前だ。
冥子の少し後ろには依乃里の姿がある。
まるでいつでもお前を殺せるぞと言わんばかりのプレッシャーだった。

冥子
 「報告します、八神悠那、七海桜、古代燈の三名、予定通り関東支部に転入させました!」

冥子の今の立場はこの『お偉いさん』の補佐であった。
冥子自身この不可解な人事に正直納得していない部分はある。
だって、積極的に冥子はこの組織に反逆していたのだぞ?
なのにこの『男』は冥子を自分の側近に仕立て上げた。

冥子
 (分かんねぇ……馬鹿なのか、超大物なのか?)

だが、冥子自身分かっていることもある。
冥子は人質だ、悠那達はなんのお咎めもなく、関東支部に引き渡す事となった。
だがそれも冥子が大人しく従っている限りだ。

冥子
 (正直待遇はかなり良い、何より潜伏生活をしなくて良いのはかなり良い、だけどなんでアタシまで無罪なんだ?)

正直、冥子は捕まったら何をされる覚悟も出来ていた。
特に神成依乃里の悪い噂はよく知っていただけに。
組織にとって不都合な事象を消すことが依乃里の仕事、その性質上、自分がどのように記憶を改竄させられるか、分かった物ではないのだ。

冥子
 「おい、神成、お前……、アタシから何を奪った?」

冥子は小声で依乃里に言った。
依乃里は、つまらなさそうに。

依乃里
 「何も、私は雌奴隷にする位、改竄するつもりだったけど、あの方に止められたからね」

冥子
 (この神成が盲目的に従う管理局局長、一体何者なんだ?)

冥子はこの男に近い人物を知っている。
悠那を唯一女の顔にさせる事が出来る男。
冥子達が先生と呼ぶ彼とこの男は似ている気がした。
それは依乃里がこの男に心酔し盲目的になるように、先生もまた悠那を盲目的に変えた。

あの戦いは終わった。
でも、まだ物語は終わっていないのかもしれない。
本当の敵はなんなのか……神成依乃里とこの男が、諸悪の根源なのか?
ポケモン少女達のネクストステージは今、始まった。



ポケモンヒロインガールズ

第22話 ポケモン少女達のネクストステージ 完

続く……。


KaZuKiNa ( 2020/04/12(日) 12:49 )