ポケモンヒロインガールズ





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第二部 ポケモン少女群雄編
第21話 決着、正義の決戦!

第21話 決着、正義の決戦!



琉生
 「明日花……夢生」

琉生は鈴に全てを話した後、リビングで不安そうに俯いていた。
同様にアリアもまた、落ちつきなく周囲を歩いている。

アリア
 「私たちもなにか出来ないのでしょうか……」

琉生
 「不思議だよね……今まで当たり前だった事って、こんなに簡単に変わってしまう物なんだ」

琉生はこれまでを振り返った。
ポケモン少女になり、そしてゲシュペンストと戦い、2年生と模擬戦をした。
それらは全ては、琉生のそれまでの価値観を覆すには充分過ぎる物だった。
そして今、頼れる愛先輩はいない、明日花は病院で眠り、夢生は行方不明。
次は誰が消える?
その恐怖感が琉生の小さな体を震わせる。

琉生
 (オオタチさん……私、これで良かったの? 私は結局なにかになれたの?)

琉生には変身願望はなかった。
夢も希望もなく、あるのは絶望だけ。
それでも彼女はなけなしの勇気でここまで生きてきた。
オオタチは何も応えない。
内なるソウルが応じることは殆ど無いのだ。
だが、不意に琉生は顔を上げた。

アリア
 「琉生さん? 一体どうしました?」

アリアは突然顔を上げた琉生に訝しむ。
だが琉生は答えなかった。
正確には答えなかったのではない、聞こえなかったのだ。

琉生
 (なに、この感覚……なにか、何かが起きるの!?)

それはソウルの共鳴か?
オオタチの存在感が琉生の中で増し、琉生はその意味を探ろうとした。
だが、オオタチは何も応えない。
だが確実に言えるのはゲシュペンストが現れる時とこの反応は違うと言うことだ。

琉生
 (オオタチさんは怖れていない、でも何か良くない事が起きるの?)

琉生は立ち上がると、窓の外を見た。
外は既に暗く、寮の周辺には街の光もない。
だが、その遥か先の街に何かを感じたのだ。
そう、そこには今、二人のポケモン少女の姿が!



***



悠那
 「うふふ……アハハハハ! そう、貴方が来たのね!?」

悠那は狂笑した。
自分の前に星野きららが現れたのだ。
悠那は自分こそが最強という自負がある。
サザンドラという強力なポケモンと優秀な自分を越えるポケモン少女などいない。
それはきらら相手でも例外ではないのだ!

だが、きららはクールであった。
目的は悠那ではないのだから。
きららは悠那に抑揚のない声で聞いた。

きらら
 「江道夢生に心当たりは?」

悠那
 「さぁ? それよりそろそろ始めましょう!?」

悠那はソウルリンクスマホを手に取る!
きららは悠那を睨みつけ、同様にソウルリンクスマホを取り出した。

悠那&きらら
 「「メイク、アップ!」」

ほぼ同時に変身。
そこには純白の少女と、漆黒の少女が姿を現した。

一般人
 「ポケモン少女だ!?」

一般人
 「嘘、なんで!?」

一般人は大凡見掛ける機会のないポケモン少女に騒然とした。
誰一人、この二人の雰囲気を察することは出来ず。

きらら
 「悪いけど、立ち退いて貰うわよ」

きららは空間を弄くり、一般人を隔離した。
街から一瞬で声が無くなり、静寂が訪れる。
これこそがパルキアの力だ。

悠那
 「流石ね、あの規模を一瞬で黙らせるなんて」

きらら
 「違う、危険だから避難させただけ」

悠那
 「どっちでも良いわよ! 私は貴方に勝てば良いんだから!」

悠那は漆黒の四枚羽根を羽ばたかせると、高速で飛び上がった。

悠那
 「喰らいなさい!」

悠那は両手の龍の顎から、龍の波動を放つ!
きららは手を翳すと、龍の波動は空間の歪みにずらされ、きららの周囲に着弾した。

きらら
 「……無駄、それよりも貴方は悪なの? それとも?」

悠那
 「そんな物、私には関係ないわね!」

悠那は高速できららに接近する。
右手の顎が、きららを襲った!
だが、次の瞬間きららは悠那の後ろにいた。
きららは無慈悲に言う。

きらら
 「お前が私から大切な物を奪うなら、私は容赦しないと言った」

悠那
 「な!?」

きららは悠那の背中を蹴る!
悠那は苦悶の表情を浮かべ、距離をとる……が!?

きらら
 「答えろ……今度は何を奪う気だ!」

悠那
 「速っ!?」

きららは一瞬で悠那の目の前に転位していた。
悠那は咄嗟に防御をするが、きららの拳は悠那の防御をすり抜け、直接胸部を打撃した!

悠那
 「かは!?」

悠那は地面に手を付けた。
そして、この少女を改めて見る。

悠那
 「お、お前……あの時は手加減をしていたのか?」

悠那が感じたのはきららの凄みだ。
悠那に比べ、余りにもきららの身体は小さい。
それでもその身体から放たれる戦慄は本物なのだ。

きらら
 「あの時は私に戦う意思は無かった、守れれば充分だった……でも今は違う」

きららは今、悠那を倒すため、パルキアのパフォーマンスを最大まで引き上げている。
以前は町を守るため、青子を守るため必死だったが、今は誰もいない。
ゴーストタウンなら、何も守る必要が無い。

きらら
 「ふっ!」

きららはその場でローキックを放つ。
すると、その衝撃だけが離れた悠那の背中を蹴ったのだ!

悠那
 「がっ!?」

悠那は土下座するように頭を地面に当てた。
圧倒的すぎる、きららとの実力差であった。

きらら
 「降参しなさい」

それはきららの最後の温情だろうか?
しかし、悠那は震えながら笑っていた。

悠那
 「ふふふ……圧倒的な力がありながら、全て急所を外す……正に強者の余裕よね……」

きらら
 「……?」

悠那
 「そうよ、先生はだから恐れた……、お前のようなポケモン少女が起こす悲劇を!」

悠那は顔を上げる。
その顔は怨嗟であった。
その感情をきららは知らない。
ただ、八つ当たり染みてその生の感情をぶつけられたのだ。

悠那
 「星野きらら! お前の傲慢さは認めよう! だがお前でさえ本部の操り人形でしかない!」

きらら
 「操り人形? 私は自分の意思で動いている」

悠那
 「それは本当にお前の感情か!? 記憶か!? 意思か!?」

きららは気圧されていた。
正直悠那の言っていることを理解できていない。
だが、その気迫は本物で、そして憎悪もまた本物なのだ。

悠那
 「お前如きに勝てなければ! 奴にも勝てん!」

きらら
 「さっきから一体誰を……!?」

その時だ、悠那の足下から光りが放たれていた。
悠那は遠くでこの戦いを監視する冥子の声をインカムから聞き取った。

冥子
 『時刻、場所! 先生の言ってた通りだ! 来るぜ来るぜ!?』

悠那
 「教えてあげるわよ……圧倒的な力を!」

それは変化だった。



***



由紀
 「な、なんだ!? 空が紫色に!?」


 「……始まったのね」

由紀は空を見上げて驚愕した。
一方で桜は意識を取り戻し、何かを悟ったかのように言った。

由紀
 「おい!? 一体何を知っているの!? これも貴方達の仕業なの!?」


 「全てを知りたければ……私をあの光の元に連れて行きなさい……」

光、それは紫色の空に向かって伸びる光の柱だった。
桜は既にダメージで動けない、由紀の協力が必要だ。
由紀は週順した、素直に従って良いものか?
特に桜は油断のならない相手だった。

由紀
 「何か企んでないだろうな?」


 「ただ知りたいだけよ……本当に正しかったのか」

桜は知りたかった。
一体何が正義で何が悪なのか。
悠那は自分の行いが世界を変えられると信じている。
だが、桜は違う。
自分たちはちっぽけだ、所詮ポケモン少女も世界の歯車に過ぎない。

由紀
 「……何かしようとしたら、殴るわよ!? 私は!」


 「フフフ♪ 貴方結構好みよ♪」

由紀は桜を背負った。
由紀にとって桜は大きく重い、だがスタイルが違う。

由紀
 (うう……本当に同じ人間? 何食ったらこんなに差があるの?)

由紀はその歴然としたスタイルの差に絶望しながら走った。
果たしてあの光の柱はなんなのか?



***




 「これは……?」

愛はビルの外を見た。
遠くの空に光の柱が立ち、空が紫色に染まっている。
愛の周りには幾つかゴミが広がっていた。
愛を監禁したあのポケモン少女が用意した夜食だ。
そのポケモン少女は既にここにはいない。
愛は彼女が最後に言った言葉を思い出す。

(依乃里
 「もうすぐ全て終わるわ……貴方はもう少し待っていなさい、それで終わりだから」)


 (終わり……それは当然平和が訪れるんですよね?)

愛はそれを信じたかった。
だが信じ切れないのは、この空の性か?
あの光の柱はなんなのか。
本音を言えば直ぐにでも駆けつけたい。
きっとあそこには皆がいるのだろう。


 (お願いです神様……私も祈りますから、神様も祈ってください、皆の無事を)

愛は手を合わせて、目を瞑った。
誰かが見れば敬虔な十字教徒のように思えたかもしれない。
それ程、真摯に祈っているのだ。



***



悠那
 「アーッハッハッハ! これが力か!」

きららは愕然とした。
その顔は上を見上げている。

きらら
 「これは夢? それとも……?」

そこには悠那が立っていた。
ただ普通じゃなかった。
30メートルはあるのか?
とにかく巨大なサザンドラ少女は空気を震わせ、狂笑しているのだ。
こんな物を信じられるか?
悠那が突然巨大化した。
そのオーラは不気味に赤紫のハイライトを産み出し、パルキア少女であるきららを圧倒する。

悠那
 「奴が小さく見える! つまり私の方が強い! 私が勝つという事だ!」

きらら
 「くっ!?」

きららは巨人の顔面に向けて、拳を振り抜いた。
しかし、巨人は動じない……それどころか!

悠那
 「その程度? 蚊が刺したみたいね! 大きい方が勝つ! シンプルだ!」

悠那の両手の龍が口を開いた。
竜のオーラが奔流となってきららを襲う!

きらら
 「あああ!?」

ダイドラグーン、それはきららを襲うと、きららは何十メートルも吹き飛ばされ、倒れた。

由紀
 「嘘でしょ……あれもポケモン少女だっての!?」


 「悠那……貴方」

真希
 「これが本命? 馬鹿げている……あれじゃ怪獣よ!?」


 「悠那……」

そこには別々の方角から真希達が合流した。
悠那は見下ろし、ボロボロの仲間を見た。

悠那
 「無様ね……所詮その程度の存在か!」


 「っ!? 悠那……」


 「くっ……!」

悠那はここまで傲慢な女だったか?
確かにプライドは高い、しかし仲間を見下す女ではなかったはずだ。
それは巨大化した影響か?
力の奔流を直に浴びた悠那は何所までも傲慢になる!

悠那
 「いいわ! 全て私が始末してやる! アハハハハ! あん……?」

それはポケモン少女全員が感じた気配だ。
悠那も面白くなさそうに地面を見下ろした。
少女達の前に、ゲシュペンストが現れたのだ!

ミア
 「ゲ、ゲシュペンスト!?」


 「ち……しかしなんて数よ!?」

それは街を埋め尽くさん限りに出現したαやβたちであった。
だが、脅威はそれだけではない。
悠那の目の前には体長10メートルはあるゲシュペンストγが二体出現したのだ!

真希
 「ば、馬鹿げている……γが、二匹も同時に!?」

ゲシュペンストγ
 「ガオオオオオ!!!」

ゲシュペンストγは目の無い顔を悠那に向けると吼えた。
それは並のポケモン少女なら絶望で、戦意喪失させるには充分な威力だった。

きらら
 「く……このままじゃ」

きららはなんとか力を振り絞り、立ち上がった。
ダイドラグーンのダメージは凄まじい、だが泣き言は言ってられない筈だ。
ゲシュペンストにとってはポケモン少女であるだけで敵だろう。
もはやポケモン少女同士で争う時ではない。
だが、悠那は!

悠那
 「ふん!」

悠那はゲシュペンストγの一匹を右手の龍で咥えると、持ち上げ……噛み砕いた!
ゲシュペンストγは悲鳴に似た咆哮を上げて、霧散した。
その姿を見た全員は愕然とする。
恐らくここにいる全員をもってしても、γの撃破は楽ではない。
それを悠那はいともあっさりと撃破したのだ。

悠那
 「こんなもの? こんなゴミが! 私に楯突いた!? アッハッハ! いいわ、ゲシュペンストは私の敵! 駆逐してやる!」

悠那は笑いながら、もう一匹のゲシュペンストγを踏みつける。
γは暴れるが、パワーが違いすぎる!
そのまま悠那は地面が陥没するほどの力でゲシュペンストγを踏み抜いた!

ゲシュペンストγ
 「ガアアア!?」

きらら
 「まさか……こんなにも、あっさり?」

二匹のゲシュペンストγは消滅した。
他のゲシュペンスト達は潮が引くように消えて行く。
それと同時に……彼女も現場に現れた。

琉生
 「はぁ、はぁ……ここ、なのね?」

琉生だった。
琉生はゆっくりと前に進むと、悠那はその存在に気が付いた。

悠那
 「なんだお前は? 踏み潰されたいの!?」

悠那が喋れば、空気が震える。
琉生はそれだけで吹き飛びそうだった。

真希
 「ちょ、ちょっと姫野さん!? なんでここに!?」

アリア
 「ふ、藤原さん! 琉生さんを止めてください!」

遅れて、アリアもやってきた。
アリアは既にヘトヘトで、寮から全力で走ったのが分かる。
だが、アリアと琉生では様子が違わないだろうか?
何故アリアより体力の無い琉生が、まともに歩けているのだ?

それは明白な答えがあった。
琉生は変身しかけている。
誰よりもシンクロ率の高い琉生は、ソウルリンクスマホ無しに変身しえるのだ。

琉生
 「この力、そう……過ちだから」

悠那
 「こいつ……?」

琉生は悠那を見ていなかった。
見ていたのは光の方だ。
悠那はその態度が気に入らなかった。
思わず足を持ち上げ、踏み潰そうとする……が。

琉生
 「止める……それは使ってはならない力だ!」

きらら
 「琉生!?」

琉生は変身した。
その姿はオオタチ少女、そして悠那の目の前でその現象は起きた!

琉生
 「ああああああ! おおーっ!!」

巨大化だ。
琉生は悠那の目の前で悠那と同級の巨人となって立ちはだかったのだ。

悠那
 「ば、馬鹿な!? 何故お前がダイマックス出来る!? これは私だけの力だと先生は!?」

悠那は狼狽えた、それ程にこの力は特別な筈だったのだ。
この力は先生から教えてもらい知った。
そして強いポケモンとの適性がある自分なら可能だと知っていた。
ダイマックスは誰にでも出来るわけじゃない。
時間と空間が揃い、そして適性があれば初めて叶う現象なのだ。

その時、悠那は思い出した。
かつてゲシュペンストγを打倒したルーキーを。

悠那
 「お前……姫野琉生!?」

琉生
 「オオオオオ!!」

琉生は吼えた。
その目は人と言うより獣のようだ。
そしてそれをきららは気配で実感した。

きらら
 「まずいかもしれない」

真希
 「不味いってなにが!? もうこれ以上訳分かんない事態は御免よ!?」

アリア
 「る、琉生ちゃん……貴方は一体……?」

琉生は前へ進んだ。

ズシン!

その一歩は容易に地面を陥没させる。
悠那はキッと琉生を睨みつけると、殴りかかった!

悠那
 「例え貴様がダイマックスしたところで!!」

悠那の右の顎は琉生の肩に噛みつく!
琉生は呻いた! しかし闘志は収まらない。

琉生
 「オオオオオ!」

琉生は悠那に噛みついた!
琉生は感情を制御出来ていないのか!?
それはまるでオオタチそのものではないか!?

悠那
 「ぐあ!? き、貴様ぁ!?」

悠那は琉生を殴りつける。
怯んだ琉生はお返しと、悠那の顔面を殴り抜いた!

悠那
 「あああっ!?」

琉生
 「フーッ! フーッ!」

琉生は悠那を睨みつける。
正確にはその力の源流をだ。
悠那は恐れた。
この少女は訳が分からない。
だが、自分よりポケモンの力を引き出しているのか!?

悠那
 「例え! 貴様の方が私より優れていようと!? 私は負けられないんだぁー!!」

その時の悠那は必死だった。
ダイマックスに支配された狂気ではなく、それさえ原動力にする意思力だった。
だが、琉生は謎の壁を出現させると悠那の攻撃を無効化した。

琉生
 「この力は……持て余す!!!」

琉生は跳んだ。
そしてそのビルよりも大きな尻尾を悠那に叩きつけた!

ドガァァン!!!

悠那
 「が……は!?」

地面が砕けた。
悠那は地面に倒れ、意識を薄れさせていく。

悠那
 (私は……忘れない、あの人のことを)

悠那がこのような凶行に走る理由が生まれたのは2年前の事だった。



***



悠那
 「ああっ!?」

それは雪の降る夜のことだった。
悠那の目の前に突然黒い怪物が現れたのだ。
それはゲシュペンストβ、まだポケモン少女ですらなかった悠那にとっては恐ろしい存在だった。
βは悠那に狙いを定めると、ゆっくりと口を開き、コールタールのような涎を垂らしていた。
悠那は腰を抜かし、逃げることも出来なかったのだ。
だが、彼女を助けてくれた存在はいた。

ポケモン少女
 「はぁ、はぁ……!」

それはポケモン少女だった。
ピンク色の綺麗なドレスに身を包み、髪の毛が第三の腕のようなった少女だった。
そのポケモン少女は悠那を見つけ、ゲシュペンストβに挑んだ……が。
ゲシュペンストβを倒したポケモン少女はボロボロで、雪の絨毯を血で染めていた。

ドサリ!

悠那の目の前でポケモン少女は倒れる。
悠那は涙目で近寄った。

悠那
 「あ、あの!?」

ポケモン少女
 「だ、いじょうぶ? け、怪我はない?」

そのポケモン少女は自分を省みることはなく、ただ悠那に笑いかけた。
どうしてこの人は自分を助けてくれたのだろう?
自分なんか放って逃げればこんな目には遭わなかったのに。

悠那
 「な、なんでですか!? どうしてそこまで私を!?」

ポケモン少女
 「なんでって、ポケモン少女はヒーローだから♪」

それは悠那にとって正にヒーローだった。
彼女が憧れを抱き、同じ道を行くには充分すぎる理由になっただろう。

ポケモン少女B
 「大丈夫!?」

ポケモン少女C
 「助けに来たわよ!?」

そこへ、違う姿をしたポケモン少女が駆けつけてきた。
ボロボロのポケモン少女は二人を見て、安心したように笑う。

ポケモン少女A
 「もう……遅いよ♪」

ポケモン少女B
 「まだ間に合うから! 行くわよ!」

あるポケモン少女は彼女を背負うと、急いで駆けた。
もう一人は私を見ると。

ポケモン少女C
 「貴方、もう帰るのよ!? いい?」

悠那
 「は……はい!」

そう言うと、残りのポケモン少女も追っていった。
ポケモン少女のことはのテレビでも知っている。
なんて格好良いんだろう。
それは憧れだった。




***



その1週間後、あの名前も知らないポケモン少女にお礼がしたくて捜していたとき、偶然助けに来た二人を発見した悠那は、二人に声をかけた。

悠那
 「あ、あの!」

ポケモン少女B
 「おや? どうしたの?」

そのポケモン少女は笑顔で悠那を見た。
だが、その顔は初対面のそれだった。
悠那はその時、覚えていないのか訝しんだが、無理もないかもしれない。
彼女たちからしたら私は有象無象なのだから。

悠那
 「あの、1週間前助けてくれたポケモン少女、あの人は元気でしょうか?」

ポケモン少女C
 「1週間前? 貴方は初対面の筈だけど?」

二人は首を傾げていた。
おかしい、あの時死にかけたポケモン少女の事までまるで忘れてるように。

悠那
 「あの……ピンク色で三本目の腕みたいな物を持ったポケモン少女に助けられたんですけど……」

ポケモン少女B
 「誰それ?」

悠那
 「え……?」

ポケモン少女C
 「私たちずっと2人で頑張ってきたけど、そんなポケモン少女に心当たりはないわね?」

悠那
 (う、嘘……なんで?)

悠那は訳が分からなかった。
ただ少女達は笑顔で手を振ると、去って行った。
あの顔は全く邪気もなく、自然だった。
ならばこの違和感は?


 「この世界は欺瞞だらけだ、先ほどのポケモン少女達のように」

その時、彼女に現れたのは運命の人だった。
後に先生と呼ばれる男は、首を振ると悠那に言う。


 「世界の真理を知りたくないか、もしよろしければ力を貸そう」



***



悠那はその時既にサザンドラ少女のソウルを宿していた。
先生について行った悠那は先生に手ほどきを受けて、ポケモン少女の知識を学び、そして実力を付けた。
ポケモン少女学園には属さず、ひっそりと隠れたまま真理を知ろうとした。

悠那は元々の性格か意識が高く、同年代では馬が合わず仲が悪かった。
だからこそ、年上の男性は魅力的で、自分の力を肯定してくれて、そしてそんな先生と共にいることは心地良かった。
やがて、先生は同じ仲間を見つけてきた。
最初は銀河冥子、その後七海桜と古代燈が加わった。
皆この世界に疑問を抱いていた。

私たちは真実を知らない。

全ては記憶を『改竄』されているからだ。

ゲシュペンストの事を人々は知らない。
ポケモン少女はある時、何かを忘れてしまう。
そして悠那は知りたかった。
命の恩人の名前を。



***



悠那
 (私は、あの人を、正義の味方を無かった事になんて……絶対させない!)

悠那は既にダイマックスの姿は無かった。
なんとか歯を食いしばり、目の前の少女を睨みつけた。
琉生もまたダイマックスは終わり、辛そうに息をして、その周りにポケモン少女達が駆け寄っていく。

悠那
 (分かってる……彼女たちに罪はない……でも彼女たちだって死ねば忘れ去られるんだぞ!? そんなの、絶対に――)

その時だ、彼女はテレパシーを聞いてしまった。
初めて聞くポケモン少女の声は悠那の心胆を冷やすには充分すぎた。


 『そうしなければ、貴方達は怖くて戦えて?』

悠那
 「お前は……!?」


 『安心しなさい、貴方達も安心して戦えるようにしてあげるから』



***



冥子
 「う、嘘だろ!? あの悠那が負けただと!?」

冥子は扉も窓もない密室にいた。
そこは地下20メートルに埋められた脱出不可能の密室だ。
だがロトムのソウルを宿す冥子には問題ない。
彼女の目の前にはパソコンがある。
冥子は何時でもパソコンの回線を介して外に出ることが出来たからだ。
だが、同時にこれは冥子を守るための措置でもある
最も、彼女には無意味な障害であったが。


 「チェックメイトよ、銀河冥子……元北海道支部所属3年」

冥子
 「なっ!?」

冥子の真後ろにはポケモン少女が立っていた。
目を閉じ、尻尾を生やして浮遊する少女。

冥子
 「神成依乃里……!? ユクシー少女!?」

冥子は狼狽えた。
コイツの侵入を許さない為に冥子はここに閉じこもっていたのに!?
だが、依乃里はつまらなさそうに溜息を放つと。

依乃里
 「人間はやはり矮小ね……訂正してあげる、私はポケモン少女ではない!」

その時だ。
依乃里の目が開き、冥子の意識はシャットダウンされた。

依乃里
 「……生憎、今の言った事をもう貴方は覚えていないでしょうけど」

依乃里はそう言うと、意識の落ちた冥子を抱えて、その場から消えた。



***



アリア
 「琉生さん!?」

真希
 「姫野さん! 無事なの!?」

琉生
 「わ、私は……?」

琉生は気が付いたら、夜の街にいた。
正直前後の記憶がない。
ただ、気が付いたら事件は解決したらしい。

それを空から見上げる少女がいた。
神成依乃里だ、彼女は琉生を注視すると。

依乃里
 「あの人は、えらく気に掛けていたけど……私からしたら憐れね、所詮人間は……」

依乃里はそれだけ呟くと消えた。
やがて、一番ボロボロのきららが琉生の前に現れると、ギュッと抱きしめた。

琉生
 「き、きらら先輩……?」

きらら
 「良かった……無事で」

きららにとって1年生はとても大切な存在だ。
それが突然戦いの場に現れて、全てに決着を付けたのはきららにとっては恐ろしい物だった。
同時に自分が不甲斐なくてしかたがない。

一方で少し離れた場所にいた桜と燈は何か確信を得たように笑っていた。


 「やっぱりね……彼女たちだって、悪い子じゃない」


 「うん、正義の味方……ポケモンヒロインガールズ」


 「私たちも、もしかしたら彼女達側にいた未来もあったのかしら」


 「うん……」

二人はこれからどうなるのだろう。
少なくとも、悠那は相当の処分があるかも知れない。
自分たちも無事で済むとは思えない。
だけど、悪にだけはなりたくなかった。
罪のない人を傷つける存在にはなりたくなかった。

真希
 「ん? ちょっと待って! 電話きたから!」

突然真希のスマホに連絡が入ると、それは愛だった。


 『良かった〜! 繋がって良かったです!』

真希
 「愛!? アンタこそ今まで何があったのよ!?」


 『その〜、スマホを没収されていまして〜』

真希
 「だからってねぇ……!」


 「まぁ、それは置いておいて! 皆さん無事ですか!?」

真希
 「なんとかね……とりあえず1ヶ月分は働いた気分ね……」


 「ふふ♪ 明日には学園に帰りますので♪」

愛はそう言うと電話を切った。
真希は溜息を放つと、とりあえず事件の収束を感じる。
後は行方不明の江道夢生だが。

アリア
 「あの皆さん! 夢生さん……もう寮に帰ってるみたいです」

アリアもまた、電話に応じると門限で追い出されている夢生から連絡が入っていた。

真希
 「はぁ!? じゃあ行方不明ってなんだったのよ!?」

アリア
 「ただ夜遊びしていただけのようで……今鈴さんと一緒にいます」

真希は全力で項垂れた。
最近の若い子は〜……と眉間に皺を寄せるが、冷静に眼鏡を掛け直す。

真希
 「事情聴取……は、明日で良いか」

真希は周囲の惨状から、そう判断した。
それほど疲れたのだ。



ポケモンヒロインガールズ

第21話 決着、正義の決戦!

第二部 ポケモン少女群雄編 完。


KaZuKiNa ( 2020/04/12(日) 01:36 )