ポケモンヒロインガールズ - 第二部 ポケモン少女群雄編
第13話 対抗戦、決着!

第13話 対抗戦、決着!



司令室、そこからは様々なドローンカメラから送られる映像で、各員の状況を逐一確認出来る。
そこで1年生達の動きを見て唸ったのは監視役の闘子である。

闘子
 「ううむ、吉野がやられたか……」


 「琉生ちゃん相打ちですね……やっぱり不安の方が大きいですが、皆着実に強くなっています」

1年生を担当する愛はいつだってハラハラだ。
琉生の怪我も心配だし、今もピンチの明日花とアリアも心配だった。

闘子
 「よし、吉野鈴と姫野琉生を回収しろ!」

闘子はマイクを手に取ると、そう指示を送った。



***



闘子
 『姫野琉生、吉野鈴戦闘不能!』

そのアナウンスは会場全体に流れた。
それを聞いて信じられない顔をしたのは明日花であった。

明日花
 「嘘だろ……もう琉生が落ちたのかよ!?」

琉生は1年生の中でもエースだった。
機動性に優れ、戦闘センスも群を抜いている。
逆に本格的に動かれると夢生以外ついて行けないという問題点もあったが、そんな簡単に負ける子だとは思わなかった。

アリア
 「やはり2年生……数は勝っていても総戦力では負けていますね」

明日花
 「どうする? フラッグ奪取は琉生に任せる予定だったけど……」

アリア
 「確か鈴先輩はユキノオー少女でしたね」

アリアはゴチルゼル少女の能力を活かし、高速で思考を巡らせる。
アナウンスでは教えてくれなかったが、恐らく琉生は鈴先輩と相打ちだったのだろう。
此方も最大戦力を失ったが、相手は残り二人。
この広大なエリアを二人でカバーするのは難しい筈だ。

アリア
 (あの狙撃手、確か霧島ミア先輩ですわね、ロブスター少女)

あれは狙撃と言うより砲撃だったが、凄まじい威力だった。
しかし真に恐ろしいのはその砲撃で此方の居場所がバレる事だ。

アリア
 (動けば砂皿先輩と霧島先輩の挟み撃ちですか……不倶戴天ですね)

明日花
 「動くしか……」

アリア
 「砂皿先輩の勝てる自信がありますか?」

明日花
 「くっ……!」

明日花は悔しさに舌を噛んだ。
悔しいが砂皿由紀は何枚も上手の相手だ。
ポケモンバトルにおいても自分は末席、相手は相手はランキング2位。
何一つ勝っている部分が見つけられない事に明日花は自分を責める。

明日花
 「何やってんだよアタシ……これじゃ完全に足手まといだぞ!」

アリア
 「明日花さん……」

明日花
 「くそ……一体どうすれば」

元からネガティブ寄りではあったが、明日花は本格的にまずいかとアリアは考える。
しかしアリアは明日花を信頼している。
土壇場でなんとかするのは明日花のお約束だ。

ゴゴゴゴゴゴ!

突然足場が揺れる。
アリアたちが隠れ潜んでいるのは崩壊した貸しビルの3階だった。
アリアは周囲を索敵する、近くのビルが地盤沈下を起こしていたのだ。

アリア
 「迷ってる暇はありませんわ! 砂皿先輩が近づいてきました!」

明日花
 「まじか!? ここもやばいんじゃ!」

砂皿由紀はサンドパン少女である。
地中から獲物の僅かな震動を元に正確に移動する性能を有し、空でも飛ばない限り人間は音の塊だ。
砂皿由紀は正確に明日花の居場所を特定している。

アリア
 「明日花さん、打ってでましょう!」

明日花
 「でも相手は!?」

アリア
 「私達はチームですわ! 一人で無理なら二人で!」

明日花
 「! アリア……!」

アリアは覚悟を決めている。
明日花とは比べものにもならない程、戦況を良く理解している。
その状況をシミュレートし、アリアは前線の出ることを決意したのだ。

明日花
 「アタシは学がない、いつも決断できないでいる馬鹿だ……だから、アタシはアリアを信じるぜ!」

アリア
 「ええ、お任せを!」



***



由紀
 「この付近ね……気配を感じるわ」

由紀は着実に1年生を追い詰めていた。
自身の技砂地獄は、地面を液状化させ、邪魔な遮蔽物を地盤沈下させていく。

由紀
 (ミアの砲撃が止んでいる……アイツらどこかのビルに息を潜めているはず)

ミアは頭が回るし、よく周囲を見渡せる。
諜報部でオペレーターを担当し、徐々に才覚を見せている。

由紀
 「アンタに負けるわけには行かないのよ、宝城明日花……!」

由紀にとって、それは邪魔者でしかない。
由紀にとって剛力闘子は憧れであり、そして越えなければならない壁だ。
由紀はその壁の目前まで辿り着いた。
だが、いきなりそれを後ろから追ってくる奴が現れた、それが明日花だ。
明日花は闘子から直接指示を受けている。
まるで自分は眼中にないかのようで、由紀は苛立った。

由紀
 「近い……どこ?」

由紀は身構えた。
射程においては大きく負けている。
知覚を鋭敏にして、相手の気配を探ると!

明日花
 「くらえ!」

バチィン!

電撃? 否!
貸しビルから飛び出た明日花は電撃を纏った岩を投げてきたのだ!

由紀
 「姿を見せたわねぇ!?」

由紀は岩石を回避する。
岩石は着弾すると、炸裂弾のように破片を飛び散らせる!

由紀
 「ちっ!?」

ドッスゥゥゥン!

明日花は砂埃を上げて着地すると、由紀を見た。
今は単独で勝てる相手ではない。

明日花
 (電撃弾、まだ上手く行かないなぁ……!)

先ほどの技はアローラ種のゴローニャなら出来て当然の技だと言う。
しかしポケモン少女の体ではそう上手くは行かない。

明日花
 (サンドパンは地面タイプ、電気は無効!)

電撃に頼る戦い方では勝ち目がない。

明日花
 「うおおおお! やってやるぜ!」

由紀
 「こっちの台詞よ!」

明日花が突進する、同時に由紀も真っ直ぐ走った。
体重差で言えば、この勝負明日花の勝ちだろう!
だが由紀はこういう状況に慣れている。
既に幾つかのシミュレーションを頭の中に終えていた!

由紀
 「格の違いを教えてやるわ!」

明日花
 「アタシはやれるだけやるだけだーっ!」

明日花は帯電する!
ワイルドボルトか?
由紀は訝しむが、そんな物意味は無い。

由紀
 「電気が通用するか−!」

明日花
 (アタシだって馬鹿じゃない!)

しかし明日花は電撃を脚部に集中させた!
重すぎるボディを如何に効率よく動かすか、それをずっと考え続けた明日花は電流を各部に配分する方法を思い付いた。
そしてそれを一カ所に集中させれば!

明日花
 「らぁぁ!」

由紀
 「加速した!? くっ!?」

由紀の目の前で、明日花が突然加速する!
360キロの巨体が時速50キロで走ってきたら一体どうなるだろうか?
人間なら一溜まりもないだろう!
だが由紀はポケモン少女なのだ!

由紀
 「ぐうう!?」

由紀の身体が吹き飛んだ!
まるで暴走トラックに吹き飛ばされた子供のように!
しかし、由紀は空中で姿勢を制御して、四つ足で着地する!

明日花はぶつかった衝撃を利用して、反動を緩和するものの、地面を滑った。

明日花
 (ぶつかった衝撃は純粋なエネルギー、無効化は出来ない……だけど私の敏捷性じゃ奇策は2度無理だ!)

由紀
 (咄嗟に後ろに跳ばなかったら失神してたかも……恐ろしい真似を!)

体重でぶつかり合えば、勝負は火を見るより明らか。
だがスピードは由紀が大幅に勝つ。
スピードで入れ替わって、そのまま地面に押し倒す算段だったが、直前で加速されたのは想定外だった。
それでもダメージを最小限に抑えてみせたのだから、由紀はそれだけポケモン少女同士の戦いに手慣れているという事だろう。

由紀
 「だけど、まぐれは二度続かないって事を教えてやるわよ!」

由紀は手を地面に突き入れる!
その瞬間、明日花の地面が泥濘んだ!

明日花
 「やば!? 砂地獄!?」

由紀の攻撃で最も警戒しなければいけないのはこの砂地獄だ!
明日花も過去のポケモンバトルの由紀のバトルでこの技に嵌まってから脱出した者は見たことがない!
唯一はそこからの猛攻を耐え抜いて、一撃必殺を成し遂げた闘子だ。

明日花
 (アタシじゃまだそれは無理! でもアタシたちは……!)

由紀
 「貰ったわよ!」

由紀は素早く、飛び上がる!
そのままスコップ状の手を下に向けて!

由紀
 「私の得意技!」

アリア
 「そうはさせません!」

由紀はその瞬間を信じられなかった。
ずっと姿を見せなかった東堂アリアが脇から姿を現していた。
だが問題はそれじゃない。
自分の体が……浮いている!?

由紀
 (しまった!? テレキネシス!?)

由紀はこの戦いを純粋なポケモンバトルとして楽しんでしまった。
ただ明日花とタイマンで戦う……それだけを。

由紀
 「邪魔をするなー!」

由紀はアリアに罵倒染みて叫ぶ。
だが同時に同僚はどうしたのか?

由紀
 (ミア!? 何やってんだよ!?)



***



時同じくして霧島ミアはある存在から逃げるように距離をとっていた。

ミア
 (くぅ……江道夢生! 低空でこっちの対空射撃を掻い潜ってきたの!?)

夢生は琉生からフラッグ奪取を託された。
森の中で鈴に追い詰められて行く中、琉生は起死回生のために打って出た。
夢生はエアスラッシュで援護射撃を熟した後、直ぐに迂回するように山間部を目指した。
後から琉生と鈴が戦闘不能と聞いて、夢生は心を痛めた。
自分の性で琉生が無理をする羽目になってしまった。
だからこそ、必ずフラッグを奪わないといけないと! 夢生は自分に誓ったのだ!

夢生
 「見つけたびゅん!」

ミア
 「!?」

夢生は霧島ミアを見つけた。
フラッグは必ず彼女が護っている!

ミア
 「水の波動!」

ミアは左手を夢生に向けると、小さな水の波動を放つ。
右手は砲撃用、左手は白兵戦用使い分けているのだ!

夢生
 「エアスラッシュ!」

しかし、実戦慣れしているのは夢生の方だ!
夢生は水の波動を容易く相殺すると、姿を眩ます。
ミアは手段をしくじった。
接近戦では自慢の高火力は活かせない上に、右腕が重すぎて機動性に難がある!

ミア
 「くっ!? どこに消えた!?」

夢生
 「やぁぁぁ! ミィ先輩! フラッグはどこビュン!?」

夢生は真上だった。
ミアの背中回り込んだ夢生は乱暴に地面に押し付けると、フラッグの所在を尋ねる。

ミア
 「く……!」

夢生
 「ミィ先輩を傷つけたくないビュン……だから素直に場所を教えて欲しいビュン」

ミア
 「ふ、ふふ……優しいのね、でも……!」

ミアは一か八かの賭けに出た!
夢生の優しさにはミアも涙が出そうになる。
恐らく夢生は愛先輩のような慈しみある女性なのだろう。
出来ればミアだってそんな子を傷付けたくない。
だけど、それでは鈴と由紀に申し訳が立たないのだ!
絶体絶命、でもそこは起死回生のチャンスでもある!

ミア
 「イヤー!!」

ミアは右手を大きく持ち上げる。
その巨大さは夢生よりもミアよりも大きい!

夢生
 「なっ!?」

ミア
 「クラブハンマー!!」

背中を押さえつけた夢生は予想外の反撃に遭った!
その一撃は強烈で、岩壁に叩きつけられた。

夢生
 「ま、まだ大丈夫だもん!」

夢生は直ぐに顔を上げる。
だが、ミアの行動は早かった。

ミア
 (夢生ちゃんに半端な真似は通用しない! でも私には私に出来る仕事がある!)

ミアは夢生の目の前で、山の斜面に飛び降りた!
それは崖だ! 落ちれば一溜まりもない!
血の気の引いた夢生はすかさず飛び出した!
勿論ミア先輩を助けるためだ!

だが、その優しさこそが、計算されたミアの戦術の布石だった!
ミアは見た、苦戦する由紀を! 無防備なアリアを!

ミア
 「いっけぇぇぇ!」

ドォォォン!

空中で右手の砲を撃てば、容易に反動でミアの体は山の斜面に叩きつけられる。

ミア
 「くあ!?」

夢生
 「ミィ先輩ー!」

ミア呻いた。
夢生は慌ててミアの体を掴んで、低空飛行を行う。
後は……最後の砲弾次第……!



***



ミアと夢生が接戦の中、明日花達の戦いもクライマックスだった。

明日花
 「悪い……けど!」

由紀はゆっくりと顔をアリアから明日花に向けた。
明日花は……自分の有に3倍は大きいであろう巨大なコンクリートの塊を持ち上げていた。
苦悶の表情を浮かべる明日花、だが友のためになら明日花は戦える!

明日花
 「アタシたちはーー!!!」

明日花はそれを投げつけた!
テレキネシスで浮かされた由紀は避けられない!

由紀
 「くっそぉぉぉ!?」

由紀はコンクリートの塊に爪を立てた!
だが、如何にポケモン少女でも純粋な質量攻撃を防ぐ手立てはない!

ドォォォン!!!

由紀は抵抗も虚しく巨大なコンクリートの塊に押し潰された。

明日花
 「やった……?」

明日花は信じられなかった。
二人がかりで、しかも奇襲だったが……由紀がコンクリートの下から動き出す様子はない。
二人で強敵砂皿由紀を倒せたのだ。
だが……!

ヒュウウウ……ドバァァァン!

明日花
 「かはっ!?」

それは砲撃だった。
幸い直撃はしなかったが、明日花は衝撃で吹き飛ばされる。

明日花
 「霧島先輩の砲撃……アリア気を付けろ!」

明日花は地面に転がりながら、そう叫ぶ。
しかし、アリアの声が返ってこない。

明日花
 「アリア? おい……嘘だろアリア!?」

アリア
 「……」

アリアは一切返事を返せなかった。
悪の波動の直撃を受けたのだ。
メガランチャーから放たれる一撃は砲撃と言って相応しい。
恐ろしい一撃だった。

闘子
 『砂皿由紀、東堂アリア戦闘不能!』

それは無慈悲な宣告だった。
明日花はそれに掌を強く握りこんだ。

闘子
 『1年生のリーダー戦闘不能により2年生の勝利だ!』

明日花
 「くっそーーーー!」

明日花は地面を叩く。
戦略的には勝てていた。
だが、戦術で負けた。



***




 「……だってさ」

琉生
 「残念です……」

医務室で琉生は鈴と一緒に放送を聞いていた。
琉生は一番最初に脱落して、すかさず医務室に送られ一通りの治療を受けた。
琉生は鈴を見て尋ねる。

琉生
 「その、腕大丈夫ですか?」

鈴のダメージは全身に及んでいるが、特に危険なのは両手だ。
種爆弾を掌で爆発させるという自爆戦術は見るからに琉生より鈴の方が痛々しい。


 「あー、まぁここ医療は優秀だから〜」

琉生
 「すいません……」


 「謝る必要なんてないんだよ? それより私はもう琉生ちゃんとは戦いたくないなぁ〜」

琉生
 「……それ、私もです」

鈴は素晴らしい戦士だった。
葉っぱカッターの鋭さは驚異的で、あれは簡単に使っちゃ駄目な技だと言える。
友としてならばとても心強いが、敵に回すと命が幾つあっても足りない。


 「それにしても琉生ちゃん、もう少し自分を大切にしなよ?」

琉生
 「鈴先輩?」


 「私からしたら、琉生ちゃんの戦い方、ちょっと危なっかしいんだよね〜、自分を省みて無いって言うか……」

琉生
 「……」

琉生は黙り込んでしまった。
確かに自分は群を抜いて怪我が多い。
気付かない内に自己犠牲な戦い方をしてしまったのだろうか?

琉生
 (でもそうしなければ勝てない……)

琉生は只管に不器用である。
だがその様を見た鈴先輩は。


 「琉生ちゃん危なっかしいから、私が護ってあげる!」

琉生
 「えっ?」

琉生は驚いた。
鈴はこの不器用すぎる後輩が可愛くて仕方がない。
何かと薄幸少女っぷりが目立つ琉生は鈴とは対称的だ。


 「琉生ちゃんが無茶せずに済めば良いんだから、私達は仲間でしょ♪」

鈴はそう言ってウィンクする。
それを見て……琉生は柔和な笑みを浮かべた。
仲間……そうだ、鈴先輩も仲間なんだから。

琉生
 「はい♪ よろしくお願いします……」



ポケモンヒロインガールズ

第13話 対抗戦、決着! 完

続く……。


KaZuKiNa ( 2019/09/19(木) 22:01 )