ポケモンヒロインガールズ





小説トップ
ポケモンヒロインガールズ
第2話 ドキッ!? ポケモン少女の戦い!

第2話 ドキッ!? ポケモン少女の戦い!



アリア
 「メイク・アップ!」

『ソウルゴチルゼル、コンバート』

東堂アリアはソウルリンクスマートフォンを翳すと、ソウルがアリアとリンクする。
そのままスマホの表面をなぞると、そこにはゴチルゼルのシルエットが映った。
そしてアリアの姿は光に包まれて、変身が行われる。

あすか
 「おー! アリアも変身できるようになったんだな!」

朝、授業前の教室では、アリアがポケモン少女に変身していた。
その姿は真っ黒な喪服に見えるドレスだ。
アリアの美しい肉体のラインがうっすらと出る妖艶な姿。
薄らと顔の前にはヴェールが垂れ、アリアの美しい金髪は黒い房のような髪に変貌している。

アリア
 「は、はい……昨日練習していたら出来るようになりました」

そう言うアリアは照れくさそうに頬に手を当てて笑った。
しかしその内心では。

アリア
 (ふふ、絶対に言えませんわね……私の変身条件がアレなんて)

決して顔には出さない、策士めいたアリア。
その内心に感づく者はいない。

あすか
 「しかしこれで後は琉生だけだな〜!」

るい
 「私、出来るよ」

あすか&アリア
 「「えっ?」」

琉生もまた、昨日我武者羅の中、オオタチに変身することが出来た。
しかしそれよりもだ、琉生は明日花の発言に耳を疑った。

るい
 「ところで今……名前で呼んだ?」

あすか
 「あれ? 嫌だった? とりあえず仲良くなるなら名前で呼び合うくらい親密にならないとさぁ〜」

アリア
 「少し早すぎると思いますが……」

琉生は戸惑った。
中学時代から、彼女は暗くて友達と呼べる人もいなかった。
誰かと親しくしたいとは思わなかったから、心が押し潰される事もなかったが、その分彼女の中には虚無感が漂った。
だが、琉生はクスッと笑う。
明日花もアリアも自分とは違う、それが当たり前。

るい
 「宝城さん……ううん、明日花、よろしく」

あすか
 「おうっ! よろしくな!」

琉生はこの二人が嫌いな訳ではない。
明日花のハイテンションについて行けない事もあるが、だからといって不和を起こす気もない。
出来ることなら仲良くなりたいのだ。
そんな三人の前に、今日もほんわか笑顔がトレードマークの愛が現れるのだった。

あい
 「ふふ、皆さん優秀で助かります♪ 僅か3日で全員変身できるようになるなんて♪」

あすか
 「あ、愛先輩おはようございまーす!」

アリア
 「おはようございます、あの……どうして私達が変身できた事を愛さんが?」

愛はそれを聞くとふふんと鼻を鳴らす。
そして懐からソウルリンクスマホを取り出すと、ある画面を表示させた。

あい
 「貴方たち三人はソウルリンクスマホで観察しているのです、私のスマホにはこうやって変身した時間や場所が逐一届くのですよ!」

あすか
 「うげ!? プライバシーの侵害だーっ!?」

それを聞いた明日花は顔を真っ青にして悲鳴を上げた。
何もやましい事があるわけでもないのに、非難囂々だ。
一方でアリアはある程度察していたのか溜息を吐いた。

アリア
 (薄々感づいていましたが、やはり24時間監視されているのですね……ですがなぜ? 些か保護にしても厳重すぎるのでは?)

それはアリアにも分からない。
ある意味組織の秘密であり、学生である3人が踏み込んでいいラインではないのだろう。
だが、保護か監視かは微妙ではあるが、正しいとも言えるだろう。
少なくとも愛は彼女たちのために最善を尽くしているのだから。

るい
 「あの……それで今日の授業は?」

あい
 「今日は課外授業です! 皆さんポケモン少女のお仕事はご存じですよね?」

アリア
 「日々市民の安全を守ること、ですよね?」

それは授業内容で聞いたことだ。
特別な力を持ったポケモン少女達にはある義務が付きまとう。
それこそが、その力を持って市民に迫る脅威から守ることなのだ。
だが、アリアは疑問に思った。

アリア
 (ここ最近同市の事件発生率がかなり上昇している様子……果たして私達はどんな脅威と戦っているの?)

あすか
 「成る程〜! パトロールっすね!」

あい
 「はい♪ 初めのうちは私も同伴しますから、街を見回りましょう!」



***



愛に引きつられた一同は何時でも変身できるようにソウルリンクスマホを持って、街へ出た。
パトロールの時、普段から変身はしない。
変身には時間制限があり、常に変身できる訳ではないためだ。
訓練によって変身時間は延ばせるが、彼女たちはまだ新人。
愛は過去の分析データを元にある程度安全なエリアを見回るのだった。

あすか
 「異常なし! 平和ですねー!」

あい
 「平和が一番ですから♪」

アリア
 「電話は二番でしょうか?」


 「三時のおやつは○明堂ね!」

突然、四人に割って入ったのは、スーツ姿の眼鏡の女性だった。
琉生達三人は知るはずもないが、彼女は藤原真希、諜報部に所属するポケモン少女。
愛やきららと比べると、紺色のスーツ姿が似合うオフィスレディー然とした美しい女性だ。

あい
 「あっ、マキちゃんお疲れ様です♪」

まき
 「こほん、見回り?」

真希はその両手には食べかけの菓子パンと牛乳パックが握られている。
随分遅めの朝食の様子だった。

アリア
 「あの……この方は?」

あい
 「藤原真希ちゃんです♪ 私の同期生なんですよ♪」

あすか
 「え!? 全然年齢違いません!?」

あい
 「失礼な! 私はもう18歳! オトナなんですー! プンプン!」

背もちっちゃくて童顔な愛と、既に社会人のようにさえ見える真希では見た目のギャップは凄まじいが、実際に事実だ。
真希は三人に向き合うと自己紹介を行う。

まき
 「改めて藤原真希です、ポケモン少女諜報部に所属するアギルダーのソウルを宿したポケモン少女です」

るい
 「諜報部って?」

あい
 「皆さんも何れ進路を決める時が来ますからねー、私達は大きく分けて教導部、諜報部、執行部に別れます」

教導部に所属するのは愛、主に後方支援から未熟なポケモン少女たちの訓練を担当する。
真希の所属する諜報部は、市民を脅かす脅威の調査を専任とする特殊部隊。
そしてあの星野きららが所属するのが執行部だ、脅威が発生したとき、真っ先に駆けつけ万事を解決する実働部隊である。

るい
 「諜報部……一体なんの調査を?」

真希は菓子パンを一気に頬張り、牛乳で流し込むと。

まき
 「それは……」

その時だった、街の外れから悲鳴が上がる!
そして嬌笑の声が!


 「アーッハッハッハ!」

まき
 「現れたか!?」

真希はすかさずソウルリンクスマホを取り出す!
そして慣れた手つきで彼女は変身ポーズを取った!

まき
 「メイクアップ!」

『ソウルアギルダー、コンバート』

真希のソウルリンクスマホに表示されるアギルダーのシルエット、それを真希は素早くなぞると、彼女は光に包まれた!
スーツはニンジャの装束のようになり、青いマフラーが風に揺れる。
頭部に生まれる十時傷、彼女はアギルダーのポケモン少女に変身したのだ!

あい
 「マキちゃん!?」

まき
 「愛は生徒を下がらせて!」

真希はそう言うと凄まじいスピードで駆ける。
三人は突然の事態にただ戸惑った。

あすか
 「な、なんなんすか!?」

あい
 「……マキちゃんの意見に従いましょう、皆さん避難を!」

るい
 「ま、待ってください! 私達は市民の安全を守るため!」

あい
 「それも大事です! ですがまだ貴方たちには危険なのです!」

アリア
 「危険?」

それは、三人の視界に映った。
マキが向かったのは刃のような金属の光を放つ、大きな翼を持ったポケモン少女。
その物々しい少女は狂笑をあげて、暴れる!

あい
 「暴走です……皆さんには何れ授業で教えるつもりでしたが、ポケモン少女は危険と隣り合わせなのです……!」

あすか
 「ぼ、暴走……? それってどういう?」

暴走状態、ポケモン少女がもしも精神のタガが外れたらどうなるだろうか?
その力は絶大である、その少女は鋼の翼に風を集め、それを周囲に解き放った!
それは一瞬で信号機を切り裂き、電信柱が斜めに切り落とされた。
地面には無数の切り傷が放射状に広がっている。

あい
 「ソウルリンクスマートフォンはいわば安全装置、ポケモン少女の暴走を抑えるための装置なんです」

アリア
 「それでは、私達もあの少女のようになりえると?」

あい
 「なりません! そのために私がいます!」

愛はそう言うと三人に頼れる先輩の顔をした。
一方で破壊は続いている。
愛は真希の事をただ、心配していた。
真希は愛と違って優秀だ、冷静で時に冷徹な判断も出来るからこそ18という若さで諜報部のエキスパートに抜擢された程だ。
だが、彼女は苦い顔をした。

まき
 (江道夢生(えどうむう)、14歳……エアームドのソウルを宿したポケモン少女)

彼女の適性調査漏れを確認したのは2日前の事だった。
事実確認のため現場の調査に向かった真希は暴走状態の夢生と遭遇したのだ。
暴走した少女の力は真希を上回り、真希は夢生を取り逃してしまう。
それから夢生は暴走したままこうして白昼の下に現れてしまったのだ!

まき
 (あれは私の失態!)

真希はあの夜の事を思い出す。
夢生が真希に向かった飛び込んだとき、彼女は3枚の水手裏剣を放った。
真希の水手裏剣は鉄板も切り裂く攻撃力を誇る。
それ故に彼女は正確に鋼の翼を狙ったのだ。
だが、夢生の能力はその上を行った。
エアームドは鎧鳥ポケモン、時速300キロで飛行する能力を有すると言う。
その刃に似た翼が放つ風の刃は水手裏剣を弾き飛ばしたのだ!

(むう
 「アーハッハッハ!」)

(まき
 「なっ!?」)

夢生はそのまま真希に突撃する。
咄嗟に真希は身を捻り、夢生の致命的な一撃を回避したが、夢生は真希を無視してそのまま夜の闇へと飛び去った。

まき
 「手心を加えたから、貴方を取り逃した……でも、もう手加減はしない!」

真希は水手裏剣を両手に生成する。
そしてそれを夢生に投げつけた!
しかし夢生は翼でそれを切り払う!
強力な水手裏剣でも、夢生の翼を折ることは出来ない!
だがそれは折り込み済みだ。

むう
 「アハハハッ!」

夢生の周りに風が集まる。
それは風の刃となり、真希に放たれた!
先ほどの無差別攻撃から予想される攻撃力から、真希の判断は正確だ!
まるで分身、残像が残る動きで風の刃を回避する!

まき
 (アギルダーの俊敏さはポケモン界でもトップクラス! 私のトップスピードを舐めないでよ!?)

それは風だ、まるで色つきの風と化した真希のスピードを一般人では追えないだろう。
そしてそれはポケモン少女でも難しい。
真希は夢生の周囲を駆ける。
夢生はその場から動けなかった!

まき
 「一発二発止められた位で!」

もしもその動きを見ることが出来る者がいるなら分かるだろう!
真希は夢生を中央に固定して、周囲を旋回しながら水手裏剣を次々と放つ!
全方位から襲いかかる水手裏剣は夢生を襲う!
夢生の全身は鋼の皮膚で覆われ、生半可な打撃は通じない。
だが、防ぎきれない弾幕に夢生は消耗した!

むう
 「あ、あ……!?」

まき
 「とどめ!」

真希は真後ろから、夢生の頭を手で抑え付けた!

そして相手の内部に虫のさざめきを流し込む!
外部は頑強であろうと、肉の内側は別だ。

むう
 「……あ」

夢生はそのまま、前のめりに倒れた。
そして変身が解ける。
そこに居たの年端もいかないピンクの髪が特徴的な幼げな少女だった。

アリア
 「藤原先輩が勝った?」

あい
 「マキちゃん! その子大丈夫ですか!?」

愛は戦いが終わると、夢生の元に駆け寄った。
夢生は気絶しているが、その身は何所にも傷が見当たらない。

まき
 「外傷はないわ、でも急いで病院でCTスキャンをお願い」

あい
 「分かりました!」

三人はゆっくり後ろから、そんな先輩達に近寄る。

あすか
 「これが……先輩達の仕事なんすね……」

あい
 「そうです、ポケモン少女はとても強力な存在です。だからこそ力をみだりに奮うのは危険なのです……ですが、彼女が悪いのではないのですよ……暴走のリスクがあるのに、それを放置した私達の責任なんです」

きらら
 「反省は何時でも出来るわ……」

そこへ、瞬間移動するようにパルキアのポケモン少女きららが現れた。
彼女は真希の戦いを見て、即座に自分の役割を定め、二次被害を抑えるために避難を誘導していたのだ。

まき
 「きらら、周りから市民を匿ったのは貴方ね」

きららはコクリと頷いた。
空間を自由に操作できるきららは、市民を別の空間軸に避難させたのだ。
きららは気絶した夢生の背中に手を当てると、夢生は歪んだ空間の中に消え去った。

きらら
 「情報操作は任せるわよ?」

まき
 「ええ、それが仕事だもの」

きららはそう言うと、その場に市民達を戻す。
市民達は突然の事態に戸惑った。

まき
 「皆さん! もう安全です! 念のため皆さんの無事を確認するため、私の誘導に従ってください!」

真希は声を張り上げる。
情報操作と印象操作、それは諜報部の仕事であった。
ポケモン少女が悪の存在であってはならない。
そのために市民は記憶操作を受けており、江道夢生というポケモン少女の事は記憶からさっぱりと消えるだろう。
これこそが、正体不明のポケモン少女たちの実態なのだ。

アリア
 「……成る程、私達が全然ポケモン少女たちの活動を知らなかった訳です」

るい
 「うん……それにしても私達が暴走するなんて……」

衝撃的であった。
ポケモン少女同士の戦いは正直恐くて、明日花でも震えている。
それが当然であり、そして大切なのだ。

あい
 「一旦学園に戻りましょう……説明しないといけない事もありますから」



***



学園に戻った一行の前で愛は電子黒板にあるデータを見せた。
それはポケモン少女に関するデータだ。

あい
 「ポケモン少女はある感情を爆発させると暴走する事があるんです」

あすか
 「あの少女みたいに……ですよね?」

あい
 「そうです。なぜ適性検査が中学卒業前に行われるか、ご存じですか?」

アリア
 「いいえ、なぜでしょう?」

あい
 「ポケモンの力の発現は多くの場合15歳前後で起きます、普通にしていたら特に問題はないのですが、あるフラグが成立すると変身してしまうのですよ」

るい
 「変身条件?」

琉生は自分のソウルの声を聞いた時のことを思い出す。
あの声は優しくて、とても暴走したあの状態は想像できない。
だが、愛は首を横に振った。

あい
 「ポケモン少女は凄く怒ったり、絶望するほど悲しんだりする時でも変身してしまうのです、そしてそういう時精神のタガが外れて暴走状態になるのです」

あすか
 「そうなんだ……アタシもああなっちゃうのかな?」

あい
 「大丈夫です明日花ちゃん! そのためのソウルリンクスマートフォンです!」

ソウルリンクスマートフォンは変身を促す補助であり、暴走を防ぐセーフティ装置でもある。
常に脳波を感知し、危険な状態であればそれを封じる。
ソウルリンクスマートフォンを持っている限り、彼女たちは安全だと言えるだろう。

あい
 「誠に残念な話ですが、現代の技術では100%ポケモン少女を見つける事は出来ません」

ソウルが表層に浮上するのは大体14歳頃。
中学3年から高校1年頃にソウルは浮上する。
これを組織はソウル検知装置で探すのだが、稀にソウルが浮上するのが遅れる子もいるのだ。
それが今回の被害者、江道夢生だ。
彼女は適性検査ではポケモン少女ではないと判断されて、普通の高校へと進学した。
しかしある出来事が切欠で、彼女は暴走状態のエアームドになってしまったのだ。
今回は早期発見が出来てまだ良かったと言える。
だが、ふとした疑問に明日花は愛に質問した。

あすか
 「アタシらってそんな危険なソウルを持っていたんすね……でもなんで暴走するんすかね?」

あい
 「……すいませんが、本部でもそれはまだ仮説の域を出ていないので、私の口からは言えません」

アリア
 (言えない? と言うことは暴走の原因は他にある?)

るい
 (あのオオタチさんがそんな悪いソウルな訳ない! きっと他に原因があるんだ!)

あくまでも聡明に言葉を分析して事実を確認しようとするアリア。
そして内なる声を信じる琉生、二人はまだ知らない。
ポケモン少女の真実を……。

あい
 (……まだ三人には『アレ』と遭遇させる訳にはいきません、あれは理屈とか通じませんからね……)



***



三人が授業を受けている頃、星野きららは裏路地にいた。
少女はすでにパルキアのポケモン少女に変身を終えており、闇を覗き込む。
闇の中で何かが蠢いた。

きらら
 「憎いの? それとも恋しいの? どっちでも良い……人類の災厄は排除する……」

きららは闇に手を翳した。
闇の中で何かは激しく蠢く!
しかしきららはキューブ状の結界でそれを封じ込め、圧縮した。
結界がマイクロサイズまで圧縮されると、路地裏は静かになった。



……なぜポケモン少女はこの世に顕現したのか?
そしてなぜポケモン少女はヒーローで人類の希望と言われるのか?
人類の災厄……それは、ポケモン少女にしか抗えない。



ポケモンヒロインガールズ

第2話 ドキッ!? ポケモン少女の戦い! 完

続く……。

KaZuKiNa ( 2019/07/04(木) 15:48 )