女教皇の章 少女はヒーローに憧れる
女教皇 1.890021%
・グリナは自分を助けてくれた変なおじさんの事が忘れられない。
レトロヒーロー大好きなグリナは遂にあのおじさんが常葉茂という名前であることを突き止める。
グリナはお礼を言いに茂の住むマンションを目指すのだった。
突ポ娘 サイドストーリーズ
女教皇の章 少女はヒーローに憧れる
『中々の腕前だな、しかし……その腕前も日本じゃ二番目だ!』
グリナ
「二番目だと!? なら日本一は誰だ!? 最高です!」
お爺ちゃん
「ほっほ、そうじゃろうそうじゃろう! 快傑○バットの次は○グマ大使にしようかのぅ」
グリナ
「○人戦隊○ェットマン!」
私はそうリクエストするとお爺ちゃんは○ェットマンのVHSを段ボールから取り出してくれた。
アセリナ
「マスター……頼みますからグリナをこれ以上ヒーローマニアにするのは止めてください……!」
私の名前はグリナ、マスターはこの好々爺としたお爺ちゃんで、泣いて懇願しているのはお姉ちゃんのアセリナだ。
私はお姉ちゃんが嫌がる理由が分からず反論する。
グリナ
「ヒーローには夢と希望が詰まってるんです! ○ルディオスの意味不明な歌詞とか、チェンジ○オパルドンからのソード○ッカーとか理不尽すぎて最高です!」
お爺ちゃん
「そうじゃぞ! この黄金○ットを見よ!」
アセリナ
「だからって……何でレトロヒーローばっかりなんだぁぁぁぁ!?」
お姉ちゃんの悲痛な叫びが響く。
***
アセリナ
「私とした事が取り乱した……すみません」
お爺ちゃん
「築80年の古民家じゃからのぅ……大声で揺れたのは驚いた」
あれからお姉ちゃんは平常心を取り戻すと、いつもの忠犬っぷりを取り戻した。
最初の頃はお姉ちゃんはレトロヒーローだって嫌いじゃなかった。
ただ宇宙刑事○ャパン全話ノンストップ視聴した辺りから「胸焼けがする」と見なくなった気がする。
アセリナ
「そもそもだ、グリナ位の年齢なら○リキュアとかあるだろう?」
グリナ
「魔法少女と言えば○ワトリン!」
アセリナ
「駄目だ……早くなんとかしないと……!」
そもそもどうしてお姉ちゃんは私の趣味をそんなに否定しようとするんだろう?
アセリナ
「それはそれで、そう言えばお前を助けてくれたあの人にそろそろお礼をするべきじゃないのか?」
グリナ
「う……」
私は以前通り魔に襲われた。
それを助けてくれたのは常葉茂という人だった。
因みに名前は御影さんに聞いて初めて分かった。
なんでもちょっと特別な人らしい。
私は直ぐにお礼をしたかったが、どういうお礼をすればいいか分からなかった。
アセリナ
「普通にありがとうでいいだろう?」
グリナ
「でもでも……! あの人の顔が思い浮かぶと凄く恥ずかしくなっちゃうの!」
お爺ちゃん
「恋、ですかな?」
アセリナ
「なっ!?」
お爺ちゃん
「意外かの? ワシとて木の股から生まれた訳じゃないぞ?」
私はあの人に頭を撫でられたとき凄く暖かくて気持ちよかった。
あれはきっと魔法の手に違いない、だから特別なんだ!
アセリナ
「く……! いくら助けて貰ったとは言え妹を簡単にやれるか!」
グリナ
「お、お姉ちゃん変なこと言わないでよ!?」
お爺ちゃん
「ほっほっほ、若者よ、大志を抱け」
***
結局、私はお姉ちゃんと一緒(監視)に常葉さんのお宅に向かっていた。
その際にはお爺ちゃんにお茶菓子を渡され、それを紙袋に詰めた。
私は緊張した面持ちで家へと向かう。
子供
「ねえあのお姉ちゃん動き変ー」
親
「ロボットダンスかしら?」
アセリナ
「頼むから普通に歩け、白い目で見られているぞ」
グリナ
「そ、そんなこと言われても」
私は緊張で体が殆ど動かないのだ。
永遠
「ガガガ・ガガガ・○オガイガー!」
グリナ
「はっ!?」
私は熱いアニソンに体が動く!
永遠
「空間湾曲!」
グリナ
「ディバイングドライバー!」
アセリナ
「!?」(ビクッ!)
永遠
「何やつ!?」
当然歌に割り込まれ、女性はこちらに振り向く!
私はキメポーズを作ると。
グリナ
「1キロ先の針の音も聞き取る男! スパイダーマッ!」
アセリア
「いやお前は女だろう!?」
永遠
「ほう東映版とは! お主やるな!」
グリナ
「貴方こそ街中で堂々○者王誕生を歌えるのは勇者です!」
私達はグッドサインを掲げて、お互いを讃えあう。
お姉ちゃんは頭を抱えると深いため息をつくが、お陰で身体の緊張がほぐれた。
アセリナ
「まさか同類がいるとは……?」
永遠
「あれ……もしかしてアセリナとグリナ?」
グリナ
「え? どうして……?」
この人は初対面の人だった。
でもどうして私達の名前を知っているの?
アセリナ
「失礼だが、何者だ? 返答次第では……!」
お姉ちゃんは警戒心を顕わにすると毛を逆立て、唸り声を上げる。
永遠
「待って待って! 私は永遠、君たちを助けた茂君と同居しているの!」
アセリナ
「なに?」
グリナ
「え、それじゃ常葉さんは?」
永遠と名乗る女性は目の前のマンションを指差すと。
永遠
「今家に居るわよ、用があるなら案内するわ」
グリナ
「……ゴクリ、い、行くよお姉ちゃん」
アセリナ
「また硬くなってるぞ……」
永遠
「なら歌うのさ! 勇気! 神秘!」
グリナ
「真実! 愛!」
永遠&グリナ
「「誕生! 無敵の! ど・で・か・い守護神! 僕らヒーロー!」」
永遠
「ガガガ・○オガイガー!」
グリナ
「これは熱き勇者達の戦いの物語である!」
アセリナ
「はぁ……」
***
その後、結局2番まで歌いきって私達は常葉さんの家へと到着した。
アセリナ
「……隣何があったんだ?」
目的の部屋の隣には、何故かドアが取り除かれ、黄色いテープで入口が封じられていた。
永遠
「あー、押し入り強盗に爆破されてね」
グリナ
「何それ怖い!?」
強盗に入られるとか、部屋を爆発されるとか絶対変だよ!
ていうかここは日本!? いつの間にそんなに危険な国になったわけ!?
永遠
「ただいまー、お客さん来てるわよー」
茂
「お客さん? あ……!」
グリナ
「あ、あの……! その!」
私はいざ、対面するとやっぱり頭の中が火照ってしまう。
兎に角お礼言って和菓子渡さないと……はわわ!
アセリナ
「すみません、妹を助けていただいたのに、このように挨拶が遅れて……」
私がテンパっていると、お姉ちゃんは先に挨拶をしてくれた。
お姉ちゃんは凄いよ、いつも毅然で、こうやってちゃんと向き合っている。
私はなんとか言葉を捻りだし、お姉ちゃんの隣で頭を下げた。
グリナ
「あ、あの時は助けて頂いてありがとう御座います! その、これお礼です!」
茂
「返礼なんて……俺は礼目的で助けたんじゃないんだけどな……」
永遠
「むしろ世界の命運と比べたら安すぎだからね」
私はなんとかお菓子の箱は渡すことに成功する。
常葉さんはお菓子を隣の長身のモデルのような美人女性に渡す。
保美香
「あらあら? これはこれは贈答用の詰め合わせですわね」
茂
「結構いい店の奴か……まぁなんだ、良かったらお茶でも飲んでいってくれ」
保美香
「では直ぐにでもご用意致しますわ」
グリナ
(はわわ〜……なんだかここ凄い華やか……私場違いじゃないかな?)
見るとここには一杯PKMがいる。
身長も胸も凄いおっとり顔の人、美しく光沢のある天使のような羽根を持つ女性。
ゆったりと赤い和服に身を包んだ銀髪の麗人。
あと、何故か場違いな男の子も混じってるみたいだけど。
美柑
「今凄い失礼なこと言われた気がした!」
保美香
「被害妄想乙」
反応された……もしかして心読まれた!?
後はお人形さんみたいなイーブイ娘が居るけど。
セローラ
「うーむ、揉み心地は悪くないけれど……小さいわね60点」
グリナ
「はわ〜!?」
突然音もなく現れた謎のメイド少女に私は後ろから胸を全力で揉まれる。
驚きのあまり凄い声が出て、全身の毛と尻尾が逆立つ。
保美香
「害虫が! また性懲りもなく!」
アセリナ
「死に晒せぇ!」
セローラ
「ギャース!?」
お姉ちゃんは瞬時にこの謎の変態メイド少女にコークスクリューブローを叩き込む。
変態メイド少女は私から離れて2メートルは転がった。
アセリナ
「なんだなんだコイツは!? いきなり妹に強姦仕掛けて!」
茜
「あれはセローラのスキンシップ、レズじゃない」
超寡黙なイーブイ娘が喋った!?
そうか、あれはこの人なりのスキンシップだったんだ。
グリナ
(でも60点って何? 私誰と比べられたの!?)
華凛
「しかしゲストに手を出したのは不味かった……ダーリンどうする?」
茂
「有罪(ギルティ)だ!」
美柑
「燃えるゴミって月水金でしたっけ?」
セローラ
「あああ……皆さん血も涙もない……普通に重傷なんですけど?」
アセリナ
「すまないとは思うが、いきなり妹に手を出す貴様が悪い」
セローラ
「むぅ〜、こんなに怖いシスコン姉が居たとは……やはり茜ちゃんこそが至高!」
セローラは重傷とか言う割にはすかさずイーブイ娘に飛びかかる。
しかしイーブイ娘は容赦なく腕を取ると捻って頭から床に落とした。
セローラ
「むぎゅ!?」
グリナ
「ぴゃぁ!? そこまでするんですか!?」
マットに沈むセローラという少女。
この家の人は日常茶飯事なのか誰も慌てていないが、あれ死んでない?
保美香
「全くこの阿呆は……いつになったら学習するのやら」
伊吹
「あはは〜、とりあえずベッドで手当てするねぇ〜」
そう言うとワールドクラスのダイナマイトボディのお姉さんがセローラを抱っこして部屋を後にした。
完全に気絶していたみたいだけど、後で慰謝料とか請求されないのかな?
保美香
「さて、よろしければお席にどうぞ」
気が付けば、あんな中でも動じず、モデル系美人がお茶会の準備を終えていた。
私は恐る恐る席に座ると、隣にあの寡黙なイーブイ娘が横に座る。
グリナ
「あ、の?」
茜
「……私は茜、貴方は?」
茜と名乗った少女は顔を凄く近づけてくると、その大きな瞳で私と目を合わす。
私は心の中まで見通されたかのような感覚に圧倒された。
アセリナ
「改めまして、アセリナと申します」
グリナ
「ぐ、グリナです!」
茜
「ググリナさん?」
茂
「グリナちゃんな、まっ、気楽にしてくれ」
そう言うと常葉さんは私の頭に手を置くとわしゃわしゃと撫でてくれる。
グリナ
「は、はぅぅ〜」
私はとっても気持ちよくなり、何故か凄くリラックス出来た。
見ると隣の茜ちゃんも仏頂面は変わらない物の尻尾が凄く振られていた。
茂
「茜もか?」
常葉さんは今度は茜ちゃんの頭を撫でた。
その美しい毛並みを優しく撫でられると、茜ちゃんの目はトロンと垂れた。
グリナ
(やっぱり魔法の手だ! 間違いない!)
私だけじゃなく、あの手に掛かるときっと誰でも気持ちよくしちゃうんだ。
やっぱりこの人はヒーローだ。
私を助けてくれたのもヒーローだから。
見返りを求めない、正にヒーローそのもの!
茜
「ねぇ、グリナは好きな物ある?」
グリナ
「ヒーロー物が大好きです!」
茂
「ヒーロー物? 今時の女の子ってヒーロー物なのか?」
アセリナ
「……はぁ」
見ると、またお姉ちゃんが頭を抱えてため息を吐いた。
だけど私は止まらない、こうなってはもう怒濤に喋る!
グリナ
「はい特に好きなのは快傑○バットです! 他にも超人○ボーガー、大○人17も良いです!」
凪
「華凛……分かるか?」
華凛
「分からん。何を言ってるんだコイツは?」
茜
「一つも分からない……」
アセリナ
「だから○リキュアとかあるだろうと言ったのに……」
茂
「俺が生まれる前の作品ばっかりだな……」
グリナ
「そんな……誰も知らないなんて……」
私はこの総スカン食らった状況に愕然とした。
どうして!? 日本のヒーロー物は素晴らしいのに、なんで分かってくれないの!?
だけども、立った一人だけ私の理解者がそこには居た。
永遠
「若さ、若さってなんだ?」
はっ!? 私はその歌に即座に答える!
グリナ
「宇宙刑事○ャパン! 迷わないことさ!」
永遠
「嵐起こる〜、スタジアムに〜」
グリナ
「○イアンリーガー!」
永遠
「迫る、ジ○ッカー」
グリナ
「仮面○リダー!」
彼女はニヤリと笑うと手を差し出してくる。
私はその手を握った!
永遠
「貴方とは良い酒が飲めそうね! 今度W ○NFINITYデュエットしましょう!」
グリナ
「○EAR戦士○童ですか!」
茂
「……あー、お茶が美味しい」
アセリナ
「すみません、ウチの妹が迷惑かけて」
アルェー? むしろ滑ってる!?
私の趣味を理解してくれているのは一人だけのようだ。
常葉さんもなんだか遠いところを見る目に変わっていた。
茂
「ああ、そう言えばあれから変な奴は現れていない?」
アセリナ
「暫くは国から派遣されたガードもついていましたし、特に問題はありませんでした」
茂
「そうか……それなら良いんだが」
常葉さんはもしかして、まだあると思ってるんだろうか?
そもそもどうして常葉さんはあの時はあんな工場街に現れたんだろう。
あの日私達は、マスターより先に亡くなったお婆ちゃんの墓参りに行っていた。
偶々疲れて足の遅れた所にあの通り魔は現れ、そして常葉さんに助けられた。
正直どちらも偶然にしては出来過ぎている。
グリナ
(だからこそ、常葉さんはヒーローなんだと思う!)
空想の中で活躍するヒーローたちは私の憧れだ。
必ずしも鮮やかに勝つわけじゃないし、救えない犠牲者もいるけど、それでも貴賎老若男女なく救うヒーローは物凄く輝いている。
茜
「ん……そろそろ再開」
グリナ
「はえ?」
茜ちゃんは席を立つと、リビングに向かう。
リビングにはファミリーコンピュータが置いてあった。
家にあるのと少し違うみたいだけど、一体何やってるんだろう?
私は気になって後ろからそれを見ると。
茜
「ん……左の」
五つある選択肢からどうやら正解を答えるみたい。
たまたま正解し、次へと進む。
次もヒントなく5択の連続、やっぱり正解し扉を進む。
茜
「3時間掛かったけどやっとクリア?」
伊吹
「むしろ3時間で○インドシーカークリアできる茜ちゃんがすごい〜」
茂
「サイポイントオーバーフロー起こして一度やり直してたけどな!」
グリナ
「………???」
茜
「……やる?」
グリナ
「格闘ゲームとかなら……」
私が出来るのはアクションゲーム位だ、それもゲームは得意という訳じゃない。
なによりレトロゲーム位しかプレイした事無いんだよね。
だけど、それに反応したのは常葉さんの家族達だった。
美柑
「!? それ以上は駄目だ!」
茜
「では、この○ョイメカファイトで」
茂
「終わりだぁ……もう何もかもおしまいだぁ」
アセリナ
「? 格闘ゲームだとなにか問題があるのか?」
私達はなんだか意味が分からないが兎に角まずはキャラ選択。
茜
「○ウオウ使って良いよ」
グリナ
「じゃあ遠慮なく」
茜
「○カポンで」
早速キャラも決まったし対戦開始。
茜ちゃんは速攻でローリングスカで攻撃してくる、何故か赤いが。
グリナ
「えとアッパー……間に合わない!?」
茂
「赤ローリングスカとか、まじ分からん殺しだからな」
そのまま私は為す術なく負けてポカーンとした。
この子……もしかしてゲーム凄く上手?
茜
「……貴方の好きな物はよく分からないけど、貴方のことは嫌いじゃない」
グリナ
「え?」
茜
「また、遊ぼう?」
グリナ
「あ、はい! 遊びましょう!」
茜ちゃんは私の手を取るとブンブン振った。
凄く表情が硬い子だけど、この子も私と同じくらいの歳。
私はなんとなく茜ちゃんとは友達になれる気がした。
茂
「はっはっは、よかったな茜、友達出来たじゃないか」
茜
「……うん」
茜ちゃんは嬉しそうに尻尾を振る。
私もなんだか気が付いたら緊張もほぐれて尻尾を振っていた。
どうやら、私は無事お礼も出来て、おまけに友達も出来たみたい。
勇気を出してここまできたのは、とっても良かったみたい!
突ポ娘 サイドストーリーズ
女教皇の章 少女はヒーローに憧れる