突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 サイドストーリー
魔術師の章 残酷な世界のロンド
魔術師 0.299385%
・茜は初めて人類の恐怖を知った。
そして無知なる自分こそがご主人様を苦しめていた事を知らない。
ただ唯一頼れるのはご主人様だけ、二週目の彼女が見る世界の絶望とは?



突ポ娘 サイドストーリー
魔術師の章 残酷な世界のロンド




 「止めて! 赤ちゃんを返して!」

真っ白で無機質な研究室だった。
私は、ただ手を伸ばす。


 「これが人間と異性物のハーフか、こういうのヒューメイリアンって言うんだっけ?」

白衣の男は酷薄な表情を浮かべて我が子を奪った。
私も赤ちゃんも、あの男にとっては自分の欲求を満たすだけの実験動物なのだろう。
私の必死の懇願もあの男には聞こえない。

白衣の男
 「母体にはまだ利用価値があるし、他の男と孕ませて違いも調べてみたいな」


 「あ……あ」

白衣の男
 「まぁどうせ孕むだけの機械になるんだ……男なんて誰でもいいだろう?」




 「いや……いやぁーーー!!?」


 「おい! 大丈夫か茜!?」


 「はぁ、はぁ……え?」

気が付いたら私の目の前には心配な顔で見るご主人様がいた。


 「ゆ、夢……?」

私はベッドから起き上がると、びっしょりと汗をかいていた。
7月……うだるような朝、私は気怠げに周囲を見渡した。
乱雑に物が散らかったワンルーム、空になったビール缶がその場に散乱しており、ご主人様はそれをゴミ袋に纏める。


 「悪い夢でも見たんだな……俺はとりあえず仕事に行くから留守番頼むぞ?」


 「は、はい……ご主人様」

ご主人様は今日も朝早く仕事に向かっていく。
私はあまりにも寂しく身体を丸めた。


 「夢……本当に夢?」

それは嫌にリアルな記憶だった。
ご主人様が突然警察に捕まり、私は謎の男に拾われ、研究所に監禁された。
そこからの生活は最悪だった。
私がご主人様の子供を授かっていると知ると、アイツらはそれを取り上げた。
それどころか知らない男たちとやらせて、それをレポートしようとさえした。


 「あれが人間? 怖い……!」

私はベランダの窓を見た。
ベランダからは道路が見える。
そこには幸せそうに歩く子供連れや、忙しく走るサラリーマンがいた。
しかしそれさえも私は強烈な吐き気と共に拒絶してしまう。
ご主人様以外が信用できない。
全てが敵に思えると、その狭い部屋だけが唯一の安全圏だった。


 「……最後の記憶、なんだっけ?」

私は三角座りしながら顔を埋めて、あの記憶の最後を思い出すが……何故か上手く思い出せない。
ただ……神々の王?
その言葉だけが浮かんできた。


 「私が世界を壊した? それじゃ……ここは何? 私は今何を見ているの?」

それは記憶に齟齬が生まれていた。
私はご主人様に拾われて、ずっと二人っきり。
身体だって重ねた、今はお腹も大きく……?


 「あれ? 小さい?」

そうだ……何を勘違いしている。
私とご主人様はまだ何もしていない。
何故そんな勘違いをしたのか……記憶が混濁している。

私はふとカレンダーを見た。
今は確か7月17日、事件が起きたのは9月だったはず。


 「……ご主人様、早く帰ってこないかな」

私はじっとしながらただご主人様の帰りを待つ。



***




 「よーし、帰ったぞー!」

タタタタ……!


 「ご主人様!」

私はご主人様に抱きついた。
ご主人様はビックリするも私の頭を撫でてくれる。


 「今日はやけに積極的じゃねぇか……とりあえず飯にするぞ!」

ご主人様はそう言うといつものようにコンビニ弁当をレンジに入れてチンした。
私達はリビングでそれを頂く。


 「頂きまーす!」


 「頂きます」

私はお箸を使ってお弁当を食べる。
ご主人様は缶ビールを開けるといつものように飲んでいた。


 「夏はキンキンに冷えたビールが一番だな!」

ご主人様が酒を飲むときはいつも上機嫌だ。
私は手早く食べ終えると、いつものようにゴミ袋にそれを入れた。


 「ご主人様……」

私はご主人様に身を寄せる。
ご主人様は驚いたが、拒否はしなかった。


 「ど、どうしたんだよ?」


 「ご主人様……私を抱きたいと思いますか?」


 「そりゃまぁ……茜は美少女だし抱きたいとは思うけど……」

やはりご主人様はどこか躊躇っている。
どうしてご主人様はそれに罪悪感を感じるのだろう。
私は欲しい……それが私の希望で依り代だから。


 「ご主人様……抱いてください」

私はご主人様の腰に手を回す。
ご主人様はゴクリと喉を鳴らし……。


 「駄目だ……! 今日の茜は変だぞ? 風呂入って頭を一度冷やせ」


 「はい……」

それでもご主人様は拒絶した。
だけどご主人様の身体は勃起していることを私は知っている。
私は静かに風呂場に向かった。
その間に溜まった物をご主人様は自慰で抜くのだろう。


 「いくじなし……」

私はお湯を張りながら、溜息をつく。
意気地無しは私もだ、勃起しているのが分かっていて、敢えて無視してしまった。
本当に今の私はどうにかしている。



***



ご主人様は今日も缶ビール3本を開けると床で眠りについていた。
私はお風呂で身体を綺麗にしてから戻ると、いつものように帳を落としベッドに横たわる。


 (……ご主人様はいつも通り、おかしいのは私だけ……一体何が?)

私はゆっくり目を閉じ、夢に落ちる。




 「王よ満足でしたか?」

誰? その人はとても綺麗な長身の女性だった。
真っ白なスーツを着ているが、完璧という言葉が似合うほどの女性。


 「……ちがう、こんなの……」

白い女性
 「まぁ運命というのは時に残酷な物です、それこそが神の定めでは?」

……これは夢だろうか?
私にそっくりの王は表情を凍らせ、長身の女性はそれを皮肉たっぷりに言葉を放つ。


 「助けて……ご主人様」

白い女性
 「助けてとは神々の王にあるまじき……と言うべきですかな?」

神々の王! それじゃ……この人は?


 「アルセウス……言葉を慎め」

アルセウス、妙にしっくりきたその名前の女性は肩をすくめて戯けた。
王はフラフラと玉座から立ち上がる。


 「ご主人様、今行きます……」

神々の王はそう言うと、私の夢はそこで終わった。



***




 「私が王……?」

それは不思議な感覚だった。
自分が茜というイーブイ娘であるという自覚と神々の王であるという自覚がある。
だけどそれならば、今の状態はなに?
私は誰? 茜なのだろう? 神なの?


「ご主人様は……私のこと……っ!」

駄目だ、考えても仕方がない。
私は床で寝るご主人様を起こさないように起きて、蛇口から冷たい水を飲む。


 「……はぁ」

今日は日曜日だっけ。
そうなるとご主人様は昼間まで起きない。
私はご主人様の寝顔を見ながら時間だけが過ぎるのを待つ。


 「んん〜……チクショウめぇ」


 「どんな夢見ているんだろう……」

ご主人様は寝返りを打って何か呟く。
私はふと、無意識にご主人様に手を伸ばした。


 「茜ぇ……」


 「!」

私は動きを止める。
ただ恋しかっただけ、だけどもしかしたら私とご主人様の間には壁があるんじゃないかと不安になる。


 「いっそこのまま寝込みを襲えば……どうしてそんな事を考えてしまったんだろう」

私は手を引くと壁にもたれ掛かる。
心の中のどこかにきっと黒い物がある。
ご主人様が好き過ぎて、行き過ぎてしまう事が怖い。
少なくともご主人様はそれを望んでいない。


 (私ってなんなんだろう……)

私は何も出来ない無能だ。
外に出るのも恐ろしく吐き気を催すし、家事も何も出来ない。
そしてご主人様を押し倒して繋がる勇気さえない。


 「ん……? 今何時?」


 「8時です……ご主人様」

ご主人様は突然覚醒すると手を弄ってスマートフォンを探す。
だけど私が説明する方が早いし、ご主人様はゆっくりと起き上がる。


 「まだ8時か……まぁいいや、おはよう」


 「おはようございます……」


 「洗濯物、溜まってるっけ……」

もそもそと起き上がると溜まった洗濯物を集める。
ベランダの洗濯機にそれを乱雑に放り込むと、洗濯を開始した。


 「あの、私でも洗濯って出来るでしょうか?」


 「え? でも茜……外出られないだろ?」


 「……っ!」

私はベランダに出ようとするが、急に視界が暗転し、倒れかけた。
なんとか倒れる事だけは持ちこたえたが、私はそれさえ出来ない事に絶望した。


 「そのな、無理しなくてもいいんだぞ? 吐くほどキツいのに無理なんかする必要は……」


 「でもそれじゃ私は一生無能です……! 何も出来ない……ベランダにすら出られない!」


 「茜……お前そんなに追い詰められていたのか?」

私は自分の想いをぶちまけた。
私が如何に無能か、如何に不安か。


 「結局私はご主人様の性奴隷程度の価値しかないんですよ……!」

 「それで昨日あんなに積極的になったのか……でも何を焦っている?」


 「……絶望」


 「え?」

私はもうどうすればいいのか分からない。
ただ、私は我武者羅に言った、自分でさえ意味が分からないほど。


 「終わるんです! ご主人様は警察に捕まって! 私はUMAのように実験動物として扱われる……! 訳が分からない!」


 「……」

ご主人様はそんな私を優しく抱きしめてくれる。
私はご主人様の胸で泣いた。


 「正直、お前の言葉が何を意味しているのか俺には分からん……だけど、お前が本気でそう思ってることは分かった」


 「……っ」


 「だったらさ……いっそ逃げるか?」


 「え?」

私はご主人様の顔を見上げると、ご主人様は朗らかに笑った。


 「結構貯金はあるし、数ヶ月の旅費にはなると思う……まぁ別の場所で新しい生活をするのも悪くはないしな!」


 「ご主人様……本気で?」

その瞬間、ご主人様は私の唇を奪った。
私はその数秒のキスを静かに受け止める。


 「これ位本気、お前がそんなに苦しいなら俺だって苦しい、なら一緒に捨てようぜ」


 「……はい、はい!」

私は泣いた。
ご主人様はやっぱ大好きなご主人様だった。
ちょっとヘタレだけど、優しく私を愛してくれる人だ。


 「だけど……そうなると移動の足が問題だな」


 「手を繋いでくれれば……耐えます」

私はご主人様の両手を強く握る。
するとご主人様は頭を優しく撫でてくれる。
それだけで私はなんだか安心してしまう。



***



『次は○○駅行き、お乗りの方は―――』


 「大丈夫か、茜?」


 「……は、はい」

私は身体の震えが止まらないが、なんとか我慢する事が出来た。
ご主人様と私は最低限の荷物だけを持ち、宛のない旅をすることにした。
これからはもっとこうやって人の多い所を行くはず、なら乗り越えないと……!


 「無理すんなよ? とりあえず次の電車で……」


 「常葉茂だな?」

その時だった、電車がホームに突入する。
まるで狙っていたかと思うほど完璧なタイミングで、私はそこでもう一度絶望の奈落に落とされた。


 「え? そうですが……?」

刑事
 「警察だ、少女監禁誘拐の実行犯で逮捕する!」


 「なっ!? 待てよ俺は茜を誘拐なんて!」

白衣の男
 「あーはいはい、被害者はこちらで引き取りますので♪」


 「!? お前、は……!?」

その時、私の時間は止まった。
痩せた白衣姿の男は細めを歪ませ、酷薄に笑っている。
ご主人様が警察に連行される中、その警察に命令して私の前に現れたのは私の人生を狂わせたあの男だった。
私は絶望に正気を失うかのような錯覚を覚え、大勢の人混みの中そいつしか見えなかった。
男は酷薄な表情で笑みを作ると私の手を取る。

白衣の男
 「ふふ、ミュータントかな? それとも異星人? まぁどっちでもいいか!」


 「いや……なんでお前なの?」

白衣の男
 「あれ? 俺のことを知ってるわけ? おかしいなぁ?」

白衣の男はどうでも良さそうに頭を掻くと、強く腕を引っ張った。


 「嫌……いやぁーーー!!」

私はその瞬間、人の皮捨て去った。
目の前にはアルセウスがいつも通り皮肉たっぷりに笑っている。
私はこの世界の理に触れ、世界を崩壊させる。
世界は白い光の粒子となり……全ては白に埋め尽くされた。


 「私は無能だ……だけどそれなら、私以外のご主人様を護るポケモンを召喚すれば……!」

そう、それは今度こそこんな終わり方を変える為の方法。
後に巻き込まれるウツロイド、ギルガルド、ヌメルゴン……それらさえ地獄に巻き込む、私の業だった。



突ポ娘 サイドストーリー
魔術師の章  残酷な世界のロンド


KaZuKiNa ( 2019/06/06(木) 15:32 )