世界の章 追加エピソード
世界 2.000000%
・戦いは終わった。
ギラティナに勝利し、世界線の大変動は終わった。
そして今はどんちゃん騒ぎ、これは本編の後日談。
常葉茂の僅かなエピローグを加筆する。
突ポ娘 サイドストーリーズ
世界の章 追加エピソード
フーパ
「えーそれでは、祝勝会始めたいと思いまーす」
12月24日夜、ギラティナとの戦いも終わってくたくたの中、祝勝会は始まった。
場所は自宅、今リビングは色とりどりのPKMたちで埋め尽くされている。
茂
「……狭い」
パルキア
「あ、それなら空間広げましょうか?」
保美香
「はぁ……流石に疲れましたが、お料理完成しましたわ!」
保美香も戦いの後だというのに、俺はデリバリーで良いと言ったにも関わらず用意してくれた。
最も想定外の人数に、冷蔵庫の中身を大層心配していたが。
フーパ
「それじゃ皆さん、グラスを片手に」
フーパがそう言うと俺たちはグラスを掲げた。
俺のグラスには今日はワインを入れてある。
流石にクリスマスもビールじゃ味気ないからな。
どういう訳かフーパが年代物のボルドー産赤ワインを振る舞ってくれたのだ。
本人曰く『思い出の味だからね』だそうだがワインに思い入れがあるようだ。
フーパ
「それじゃカンパーイ!」
全員
「「「カンパーイ!」」」
こうして祝勝会は開始した。
パルキアの力で少しだけ広がったリビングで皆好きな物を食べて、労を労う。
永遠
「はぁ……もう疲れた、コーラが最高だわ〜」
やけに親父臭い言い方をする永遠はついさっきまで1200発のICBM(大陸間弾道ミサイル)の撃墜に走り回されたのだ。
結果的に10人そこらの伝説のポケモン達の手によって見事全ミサイル無力化をやってのけたのだから、凄いものである。
茂
「お疲れ、永遠」
俺は机にぐったりと突っ伏す永遠の頭を撫でると、永遠は照れくさそうに頬を赤らめた。
永遠
「まぁ……この日のためだもの、へっちゃらよ!」
パルキア
「ふふ……永遠ったら」
永遠
「アンタ、私の名前……!」
隣でオレンジジュースを飲むパルキアはとても穏やかな笑顔だった。
心の中でのわだかまりも無くなって、ようやく永遠を認めたのだろう。
永遠は本当にそれに照れて、それを隠すかのようにコーラを一気飲みする。
永遠
「あーもう! なんなのさ! とりあえず食べなきゃやってらんない!」
パルキア
「照れてる照れてる」
茂
「永遠は子供だからな、それに褒められた事がないんだろ」
神と言っても、精神構造は人間とは変わらなかった。
特に永遠とパルキアは子供だと感じた。
パルキアも俺にはどこか遠慮しているが、時折みせる笑顔は子供らしくて、俺は胸を撫で下ろす思いだ。
シェイミ
「もう食べられないでしゅ〜」
マギアナ
「あらあら、大丈夫ですかシェイミ?」
キッチンには見慣れない奴もいる。
それがシェイミだ。
夜間のためかランドフォルムだが、大変小さく100センチ位、こんなのでもフーパが集めた助っ人であり、伊吹を助けて貰ったようだ。
茂
「ちびっ子ども、無理するなよ、ほらお水」
俺はシェイミに水の入ったコップを渡すとシェイミは屈託のない笑みを浮かべた。
シェイミ
「ありがとうでしゅ、お兄たま♪」
茂
「お、おう」
妹好きにはクリティカルヒットな一撃を自然と放つシェイミに俺も流石にタジタジになった。
一方でマギアナは笑いながら、料理を小皿に取り分けて、配っていく。
茂
「マギアナは食べないのか?」
マギアナ
「私は一杯試食させて貰いましたので……」
マギアナは料理が出来るらしく、保美香の手伝いをしていた。
保美香も筋が良いと言っていたし、料理は得意なようだ。
幼女組の中では一番身長があるが、おっとりしててどこかあどけない。
こんな子も戦いに参加したんだな……。
華凛
「美味い……やはり日本酒は良い」
華凛はわざわざ自腹で買ったという赤いお猪口に日本酒を入れ、呑んでいた。
一見するとそれは普段とは変わりないが、凪は気にかけて言った。
凪
「かなりの名刀だったように思えるが、アレで良かったのか?」
華凛
「私はもう戦うのには飽きた……あの時カゲツも許してくれた気がするのさ、普通の女になることを……」
あの戦いの後、華凛は丸腰だった。
いつも後生大事にしていた刀を失い、彼女はどこか憂いを持っていた。
茂
「そうだな、もうお前たちが戦う必要なんてない」
凪
「茂さん……ですが、私はこれからも有事があれば騎士に戻る所存です!」
華凛
「くそ真面目め、私は当面冬コミに集中だな」
12月29日より開催の日本最大の同人誌即売会。
華凛は常々レイヤーデビューをここに合わせていた。
遂に1週間を切り、コスチュームの完成も間近だろう。
凪
「自らの身体を周囲に見せるなど、考えられん……」
茂
(その割にはメイド服は許容するんだな)
凪はコスプレに否定的だが、ようは食わず嫌いだろう。
習うより慣れろを地で行くタイプだから、強引にさせれば理解もするか。
華凛
「なに、私も理解は求めないよ」
保美香
「さてと、デザートの用意もしませんと」
美柑
「手伝いましょうか?」
伊吹
「今日の保美香〜、過労で倒れそうだしね〜」
保美香は席にも座らず、さっきから働きっぱなしだ。
流石に見かねた美柑と伊吹が手伝いを申し出る。
保美香
「……そうですね、それでは美柑は配膳を、伊吹はお皿を洗ってくださいませ」
美柑&伊吹
「「ラジャー!」」
二人はそう言うと、直ぐに作業に取りかかった。
俺はそっと保美香の後ろに近づいて、肩にポンと手を置く。
茂
「疲労が目に見えてる、少し席に座れ」
保美香
「ですが……」
保美香は言われなければぶっ倒れるまで働く女だ。
奉仕することが生き甲斐なのは理解するが、それが倒れるまでなら話は別。
茂
「多分明日もこのどんちゃん騒ぎ続くだろうから……今のうち、英気を養ってだな?」
俺がそう言うと、明日を想像したのか保美香は溜息を吐くと渋々従った。
保美香
「分かりました、15分休憩しますわ」
茂
「保美香には本当に迷惑かけるな……」
保美香
「いえいえ♪ 楽しくやらせて頂いておりますわ」
保美香は熱々のお茶を頂きホッと一息つく。
美柑と伊吹もなんだかんだで、ちゃんと家事の手伝いも出来るし、少しは皆で保美香を労わんとな。
保美香
「ねぇ……だんな様?」
茂
「うん?」
保美香は突然神妙な顔をした。
俺は穏やかな気持ちで保美香の言葉を待つ。
保美香
「もしも、これからもこんな問題が起きるのなら、わたくしはだんな様の為に戦いますわ……ですが、だんな様はわたくしたちを信用してくれますか?」
……それは不信感だろう。
保美香はいつだって献身的だった。
俺が歴史改変に躓いた時も、理由すら知らない保美香は俺をずっと心配していた。
確かに終わらない世界線には辿り着いた……だからって明日の保証は何もない。
俺は家内に累が及ぶなら迷わず戦う、だがそれに保美香たちを巻き込むか……か。
茂
「保美香、俺は絶対って保証はできない、でも今思うのはお前のピンチは俺たちが助けるし、俺のピンチもお前たちが助けてくれ」
保美香
「家族として……でしょうか?」
茂
「ああ」
保美香は少し目をつむって黙考し、そして決断した。
保美香
「畏まりました、家内安全はわたくしの領分!」
きっとこれからも保美香が気を病む事態は存在するだろう。
でも家族である限り、助け合おう。
ジラーチ
「で、どうなの?」
フーパ
「今の所は大丈夫」
マナフィ
「ウチら、この世界に居れるん?」
幻でも力のある3人組、フーパたちは食べるのもそこそこに何やら話し合っていた。
ジラーチ
「どうせ、長くはないんでしょ?」
フーパ
「そりゃまぁ、アタシらはお宝そのものだからねぇ」
マナフィ
「やっぱ、定住は無理やね」
茂
「お前ら、どこか行くのか?」
俺がその輪に入ると、まずマナフィが抱きついてくる。
マナフィ
「せやねん〜、寂しいから暖めてぇなぁ〜」
フーパ
「ふふ、茂君。私達がいるとまた怪しい奴らが寄ってくるのさ、だからその前に旅立つ」
ジラーチ
「それが最善の策なのよ」
フーパたちは定住しない。
それは幻の定めとも言え、幾つもの世界線を渡り歩いて、その力を利用しようとするものと戦ってきたようだ。
だから彼女たちはまた次の世界線を目指すのだろう。
マナフィ
「なぁなぁ! このまま物別れなんてウチ寂しいわぁ! せやから子作りしよ!?」
ジラーチ
「マナフィ、アンタいい加減にしなさいよ?」
マナフィ
「アカン、アカンでジラーチ、アンタやと小っさすぎてアソコが裂けてまうやろ〜?」
あからさまに小さなジラーチを挑発するマナフィ、フーパはジラーチの横で笑いを堪えるのに必死のようだった。
ジラーチ
「はっ! ぶっ殺す!」
マナフィ
「上等や!」
フーパ
「喧嘩なら余所でやれ」
フーパはそう言って二人をボッシュート。
二人は次元の狭間に飲み込まれた。
フーパ
「悪いね茂君、正ヒロインの元に行ってあげて?」
茂
「正ヒロイン?」
フーパはリビングを指差す。
そこには先に食べ終えた茜がのんびりしていた。
茜
(神の時代が終わり人の時代が始まった……)
茂
「茜、ぼーっとしてどうした?」
茜
「ご主人様?」
上の空の茜、俺に気が付くと今度は俯いた。
やはり王である事を認めた今は茜であり王である。
その事が彼女を孤独にしているのだろうか。
茜
「私はご主人様の横にいても良いんでしょうか?」
茂
「今更そう言うこと言うなよ、これがお前の求めたハッピーエンドなんだろう?」
茜はコクリと頷く。
強い心を持ったといっても、この先の未来はお互い知らない。
強いて言えば、俺たちが作っていくんだろう。
茜
「私はもしかすれば、ちょっとした拍子に世界を壊してしまうかも知れないんです……」
茂
「なら安心だな、扱うのは茜だ」
茜
「……」
茜にとって王の力はやはり無用の長物だ。
それでも持たされた力を御するのは茜自身。
茂
「いいか茜? どんな理不尽な力でも、それは善悪のベクトルではない。善のお前を信じろ! そして俺を信じろ!」
茜
「……ご主人様、はいっ」
俺は茜なら正しく御せると信じている。
文字通り世界創成の力、しかしそれは力でしかない。
茜は怖れるのではなく、受け入れる事が出来れば、きっとこの世界はもっと続くだろう。
茂
(何より、俺が頑張れたのはお前のお陰なんだぜ?)
俺は心のどこかで、きっともう茜の事を完璧に好きになってたんだろう。
ただ怖かった……でも今は違う。
茜
「! あの……入口に気配が?」
茂
「え?」
***
入口の外、どうやら雪が降ってきたらしく凍える寒さだった。
俺はドアの外を見ると足下に見覚えのある姿を発見した。
アグノム
「……あ」
常葉茂
「そんな所に座っていたら風邪引くぞ? ほら中に入れ」
それは寒さに縮こまって体育座りするアグノムだった。
俺はアグノムの手を引くと、中へと招き入れる。
中は今もどんちゃん騒ぎ。
ああ、終わったんだな……俺は改めてこの大分起点を越えた世界線に安堵した。
突ポ娘 サイドストーリーズ
世界の章 追加エピソード end