突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 サイドストーリー
塔の章 世界の片隅

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・御影真莉愛はその日出会ってしまった、美しきダークライの少女と。
それは天才であり、将来を有望された真莉愛の未来を決定した。

突ポ娘 サイドストーリーズ
塔の章 世界の片隅で



私の名は御影真莉愛、私が検察局で主席検察官に選ばれたのも去年の話。
そう、それは私がPKMという者に本格的関わる4ヶ月前の事だった。
私は出会ってしまった……その奇跡に。



真莉愛
 「なに、これ……?」

それは突然開いた空間の穴だった。
そこから黒いドレスを来た少女が舞い降りる……。
それは暗闇にも関わらず、その少女は闇より暗く、なお艶やかな闇の光、私はそう思えた。


 「ここ……は? っ!?」

少女はゆっくりと目を開く。
魔性の赤い瞳が、それを妖艶に彩った。
しかし少女は驚愕の動きを見せる。
私に気が付くと、身体を闇に埋めた。


 「人間? また私を苛めるの?」

真莉愛
 「苛める? いや、それより貴方は一体……?」

私はその人間離れしたこの子の正体を知りたい。
一体何者で、空の穴や、この状態は一体何なのか?


 「私はダークライ……」

真莉愛
 「ダークライ!? まさかポケモンだとでもいうの?」

ダークライと名乗る少女は身体の殆どを闇に埋めながらコクリと頷いた。
私は俄には信じられないが、その存在そのものがそれを肯定させている。
だけどなぜ女の子に?
その少女はダークライのコスプレをした少女にしか見えない。
だが、闇にその体を埋めるなど、人間には不可能だ。
だから私はそれをダークライだと認めざるをえない。

真莉愛
 「私は御影真莉愛、大丈夫よ、苛めたりなんかしないから」

私はなるべく彼女の目線まで屈み、安心させるため微笑んだ。
少女はまだ私に不信感を持っているのか鼻から下は闇の中に埋め、私の顔をじっと見た。

真莉愛
 「ほら、大丈夫よ?」

私は少女に手を差し出すと彼女は少しだけ怯んだ。

ダークライ
 「……!」

真莉愛
 「うーん、直ぐには無理よね」

少女が人間に怯えているのは明白、そう簡単に私の言葉は彼女には通じない。
さて、どうしたものか……?

ダークライ
 「……?」

真莉愛
 「え? あ……もしかしてこれ?」

私はたまたま持っていたコンビニ袋を持ち上げる。
私はその中に夜食で買ったおにぎりがあることに気が付いた。

真莉愛
 「えと……食べる?」

私はコンビニおにぎりを渡すと、彼女は少しだけ闇から顔を出した。

ダークライ
 「……はむ」

真莉愛
 「あ! フィルムは!」

少女はなんとフィルムを剥がさずに食べようとする。
しかしそれはポケモン娘でも無理のようで、少女は涙目になる。

真莉愛
 「ああもう、いい? このフィルムはまずね?」

私は彼女の目の前でおにぎりのフィルムを剥がす。
それにしてもおにぎりの食べ方も知らないなんて……やはり人間じゃあり得ない、か。


それは、まだ茹だるような暑さからは遠い6月の事。
私はこの少女、後に愛紗と名付けるダークライを保護したのだ。



***



真莉愛
 「可愛い寝顔ね」

私はあの後、疲れていたのか眠ってしまった少女を抱きかかえて、住んでいるタワーマンションへと向かった。
そして自室のベッドに彼女を寝かしつけると、もう一度今のことを振り返る。

真莉愛
 (ダークライ、この世の者とは思えないほど美しく、そして人とは違う力がある)

それは正に世界の常識が一瞬で一変したかのような感覚だった。
同じような出来事が起きてないかパソコンも使って調べたが、全くヒットしない。

真莉愛
 「ダークライ、暗黒ポケモン、高さ1.5m、重さ50.5kg。人々を深い眠りに誘い夢を見せる能力を持つ。新月の夜に活動する……か」

ダークライはゲームの中では幻のポケモンだと言われる。
もしかしたら今も私は夢を見ているのかしら。
それともわたしが検察局で働いている今そのものが夢?

真莉愛
 「一体何を信じればいいのよ……」

私は未だ整理できない気持ちをそのままに気がつけば、パソコンの前で寝落ちする。



***



ダークライ
 「……眩しい」

私は気が付くと、ベッドで眠っていた。
目が覚めたのは日差しのせいだ。
本来私は光を嫌う、実際私もこの明るさは苦手だ……だけど。

ダークライ
 「この身体って一体?」

私はベッドから起き上がると、自分の異変をようやく理解する。
それは紛れもなく人間の姿だった。
純黒のドレス、コルセットで絞ったかのような腰、似ている部分もあるが、違う部分が圧倒的に多い。

ダークライ
 「足……え?」

私は自然とベッドから出て歩いた。
ダークライが歩く? ダークライの不自然なほど細い足は歩くための物ではない。
本来ダークライは人型のポケモンでも、人型の生態じゃない。
それなのに、まるで何年も歩いてきたかのように足は自然と動いた。

ガチャリ。

ドアノブに触れて、眠っていた部屋から出ると広いリビングだった。
リビングの端っこに、昨日出会った女性がまだ眠っていた。

ダークライ
 「御影真莉愛……」

私はどうするべき迷った。
即ち、この場から逃げ出すか、彼女を信じて頼るか。
正直言ってまだ人間は信じられない、でもここで逃げたら次はどこへ行けばいい?
もしかしたら真莉愛は本当に私を苛めないかもしれない。

真莉愛
 「ん……?」

ダークライ
 「っ!?」



***



真莉愛
 「ん?」

気が付くと身体の全身が痛い。
しまったパソコンの前で寝落ちしたのか。

真莉愛
 「ていうか今何時? はぁ!? 8時!? やば!?」

私はポケットから取り出したガラケーから時刻を確認すると、猫のように飛び起きて局へと向かう準備をする。

真莉愛
 「ああもう! 身嗜みだけ整える時間も無いって!? あれ、そう言えばあの子は!?」

私は忙しさの余り忘却していたが、ダークライの少女を保護していた事を思い出す。
とりあえず後ろを振り返ると。

ダークライ
 「……うぅ」

首から下を闇に埋めながら、ソファーの影に隠れていた。
良かった、逃げ出していたらどうするべきか本当に悩んだ。

真莉愛
 「あの、昨日はご免ね! でも安心して、私は絶対貴方を護ってあげるから」

私はダークライに近づくと、その頭を撫でた。

真莉愛
 「さてと……しかし仕事には連れて行けないし、どうしたものか」

と、その時だった。
突然ガラケーが鳴り出す。

真莉愛
 「はい、御影です!」

それは検察局局長、つまりトップからの連絡だった。

局長
 『御影君、今どこにいるのかね?』

真莉愛
 「すいません! 寝坊です!」

局長
 「なら丁度良い、今日は局には来なくていい。変わりに今からある人の屋敷に行って貰いたい」

真莉愛
 「え?」



***


家から車で1時間、私は念のためにダークライを後部座席に座らせて目的の場所に向かった。
そこはある大物政治家の家だった。




 「待っていたよ御影君」

齢60、やんわりとした表情で、既に白髪も目立ち始めている老人。
現職の政治家で金雀児(えにしだ)氏だ。

真莉愛
 「それで、お話しとは?」

話は薄暗い部屋で行われた。
使用人にも出払って貰い、完全な密室で話を聞くことになるなんて。

金雀児
 「君はこの世界で起きている異変に遭遇したね」

真莉愛
 「異変?」

私は思い当たる節があるとすれば昨日のダークライが浮かんだ。

金雀児
 「ここ最近、異常な重力力場が発生している。中にはそこから異種生命体の姿も確認されていてね」

真莉愛
 「!?」

私はこのご老人がどれだけ情報を掴んでいるのか、正直驚かされた。
異常な重力力場の発生、それがダークライをこの世界に呼び込んだ。
いや、もしかしたら既に何人も?

金雀児
 「不思議かな? こう見えても私公安部の元局長でね、今でもこの国の諜報のトップだよ?」

真莉愛
 「それで……私に求めるのは?」

金雀児
 「これ辞令、ちゃんと読んでね」

金雀児氏は懐から一枚の紙を取り出し、私は受け取ると完全に面をくらった。

真莉愛
 「公安部第二特務調査課へ出向!? 私はしがない検察職員ですよ!?」

それは司法から諜報への異動だった。
私は遂に去年最も優秀な検察官にも選ばれた。
これからもそれは有望で、ゆくゆくは局長だって狙えたはずだ。
しかし得体の知れない公安の中でも最も不明な特務調査課とは……。
しかし第二?

金雀児
 「現在、我々は便宜的にPKMと呼ぶ存在を徐々にだが数を増している……君の能力は非凡であり、是非ウチに来て欲しい。PKM達を調査し、保護して欲しいのだ!」

真莉愛
 「!」

金雀児氏は憂いていたのだ。
もしこのまま増え続ければ、必ず社会に影響が出る。
だからいち早く情報を集めて、社会を護ろうとしているのだろう。

真莉愛
 「……はぁ、分かりました。全力で取り組みます!」

それははっきり言えば出世街道からの転落だ。
だけど私は後悔しなかった。
もしまたもダークライようにこの世界に怯えた子が現れたなら、私はそれを放っておけない。
それはある意味人を裁くことよりも難しい事だ。

金雀児氏
 「それでは後日、詳細な活動内容を知らせる」



公安部第二特務調査課……後のPKM対策部はこうして誕生した。
私は検事としての職を捨て、ただこの世界の裏側と向き合う。



***



真莉愛
 「ねぇ? サングラス似合うかしら?」

ダークライ
 「よく分かりません」

あの後、数日ダークライと一緒に過ごし、なんとなく彼女の事を理解してきた。
ダークライは一言で言えば大人しい子だ。
争いごとを好まず、何かあれば逃げてしまう弱さもある。
まるで等身大の少女だった。
でも、裏返せばそれは優しさで、私が護るべきものだと自覚する。
とりあえず検察時代はイメージ的に無理だったサングラスを掛けてキメポーズすると、ダークライは苦笑する。

真莉愛
 「それにしてもまだ現れたポケモンって3例しかないなんてね」

ダークライ
 「私ってそんなに珍しいんですか?」

私は頷く、正直珍しいってレベルじゃない。
既にその2例も調べたが、特に問題はなさそうだし、条例整備が終わるまでは現状維持となる。

真莉愛
 (とはいえダークライは生粋の良い子だった。でもそうでもないのが出てきたら?)

きっと大惨事だろう。
特に伝説のポケモン級が現れたら世界は一体どうなってしまう?
その時私はこの子を護れるだろうか。

真莉愛
 「ねぇ、ダークライ、貴方はこの世界がまだ怖い?」

ダークライ
 「怖くないと言えばまだ嘘になります。でもこの世界の人々が私を苛めてきた人達とは違うという事は分かりました」

真莉愛
 「そうね、人は様々だけど少なくとも理由なく貴方を苛めるなんてないと思うわ」

私はそう言って近くに駐車しているマイカーに乗り込む。
今ではダークライも助手席に座るようになった。
私は車を動かして目的の場所まで向かう。

真莉愛
 「そう言えばさ、貴方の名前考えたんだけど、いいかしら?」

ダークライ
 「な、名前ですか?」

ダークライは名前と聞くと顔を紅くして驚いた。
随分照れているみたいだけど、私は考えた名前を発表する。

真莉愛
 「愛紗、どう?」

ダークライ
 「愛紗……はい、とっても嬉しいですマスター!」

真莉愛
 「ま、マスター? まぁいいか」

彼女は名前を貰えたのがそんなに嬉しいのか終始笑顔だった。
しきりに助手席で愛紗、愛紗と嬉しそうに呟いている。

愛紗
 「あのっ、マスター!」

真莉愛
 「何かしら?」

愛紗
 「お願いします! マスターの仕事、私に手伝わせてください!」

私はサングラス越しに彼女を見た。
彼女の熱っぽい表情。
まるで憧れを抱くかのようで。

真莉愛
 「オーケー、その代わり泣き言は許さないわよ!」

私はアクセルを強める。
数奇な運命の巡り合わせだけど、私はこの道に後悔はしない。



***



愛紗
 「対象、ゴウカザル! 民家の屋根に!」

それから、愛紗は私の傍をべったりで常に影からサポートをしてくれた。

真莉愛
 「よっと、はぁい♪ そんな警戒しないで?」

私はなんとか民家の屋根に登ると、ゴウカザルと対峙する。

ゴウカザル
 「ち……なんなんだよここは?」

ゴウカザルの女性は屋根の上に立て籠もってしまう。
その姿はやはり愛紗と同様に彷徨う子羊といった所。
しかし力がある以上、放っておくわけにもいかない。

真莉愛
 「ここは人間の世界、かしら? 兎に角一緒に来て?」

私はゴウカザルに手を差し出した。
ゴウカザルは様々な部位から炎を吹き出せるポケモン、一瞬の判断で私は火達磨になるだろう。
民家の下で緊張の面持ちのまま愛紗は私を見守る。
いざという時は実力行使に出る構えのようだ。
私はその危険性を無視する訳ではないが、なぜか安心している。
私が手を差し出して数十秒、その手を警戒したゴウカザルは遂に。

ゴウカザル
 「ち……! わかったよ、アンタに従う!」

真莉愛
 「ほっ、良かったわ。それじゃ一緒に降りましょうか」

それは後にほむらと名乗る事になる女の子との出会い。
更に……。



***



ザァァァァァァ……。

雨……と言ってもゲリラ豪雨だけど。
8月の日本、台風も多い中PKMの確認数は100を超えた。
近々国もその存在を公にして、PKM法成立に向けて動き出している。

真莉愛
 「風邪……引くわよ?」

ザァザァ降りの中、重たい石の上にちょこんと座る少女が上を見上げた。
まるで生きることを諦めたかのような暗い表情。
私は少女に傘をかける。

真莉愛
 「貴方名前は?」

少女
 「ミカルゲ……それだけ」

真莉愛
 「ミカルゲか、私は御影真莉愛、一文字違いね」

私はサングラス越しに微笑むと、ミカルゲは不思議そうに首を傾げた。

真莉愛
 「私と一緒に行きましょう?」

ミカルゲ
 「……私、邪魔になる……ロクに動けないし」

私はミカルゲの頭に手をおいた。
そしてパパッと髪の毛の雫を振り払う。

真莉愛
 「構いはしないわ、この世に迷惑を掛けない子なんていないんだから」

ミカルゲ
 「……」

ミカルゲはただじっと私の顔を見た。
私は彼女を抱きかかえると、彼女には温かさがあった。

ミカルゲ
 「熱い……けど、悪くない」



愛紗、ほむら、白……共に生きる私達とPKM。
例え種は違っても、同じ目標に向かって頑張ることは出来るはず。
これはこの世界で生きる私達の小さな物語。


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KaZuKiNa ( 2019/07/13(土) 08:10 )