突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 サイドストーリー
吊された男の章 それは可能性の世界線

吊された男 1.500029%
・ディアルガはただ終わらない永久ループと戦っていた。
次第に疲弊する常葉茂、やがて彼は思いも寄らない手段に出始める。
ディアルガはただ、彼の行いを受け入れるだけ……しかしそれは正解なのか?
これは失敗した世界線。

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吊された男の章 それは可能性の世界線



ディアルガ
 「お帰り……茂君」

私はディアルガ、ある世界線の失敗を見て私は神々の王を見返すため、常葉茂という男を利用することにした。
だけどもこの結託はお互いを苦しめる苦難の道だった。


 「……なぁ、これで何回目の失敗だ?」

ディアルガ
 「10回目かな? 記念品でも欲しい?」


 「……」

茂君は無言のまま俯いた。
私達は絶望の世界線を越えて、戦争も起きない、王が絶望しない世界線をただ我武者羅に目指したが。
しかし一向にその希望の世界には辿り着けそうにない。
それは人の限界でもあり、私の無能さでもあった。


 「……すまん、少し気持ちを整理したら次にトライするわ」

ディアルガ
 「うん……」

私は茂君に寄り添うように横に座る。
私に出来るのは、茂君に運命を変えるチャンスを与えるだけ。
それ以外にはなにもしてあげられず、ただ茂君を焦燥させてしまう。

ディアルガ
 「歌でも、歌ってあげようか?」

私は出来る限り茂君をサポートしてあげたいと思う。
気分でも紛らわせようか、そう思ったのだが、茂君の反応は予想外の物だった。


 「止めろ……!」

ディアルガ
 「っ!」


 「ごめん、言葉がキツかったな……ただ、今はそっとしておいて欲しい」

それは少なからず茂君の拒絶だった。
茂君は完全無欠ではない、心の強さは人相応であり、クソゲーを掴まされたら相応に憤慨する。
それもクソゲーをクリアするまで、他のことを出来ないって言うのなら、この世は誰もが想像する地獄より恐ろしいだろう。
そんな絶望にもう1000時間を超える程茂君は挑んだが、世界線はいつまでも滅び行く。

まさに滅びこそが定め、そう嘲笑われているのか。
神々の王でさえ、完全勝利の世界線には到達していないのに、私が到達しようなど傲慢の極みなのか。


 「……兎に角、やるしかねぇよな」

茂君は立ち上がる。
また地獄へ行くのか、どうすれば戦争を止められるのか。
私には観測できるのは茂君と共有出来るものだけ、故に私が茂君に出来るサポートは限られる。

ディアルガ
 「着地点はいつも通りでいい?」


 「ああ、29日……そこで止めるしか!」

私は頷くと、茂君を指定の時間帯に飛ばす。
茂君の肉体はその場から失せ、過去の茂君を上書きして同期する。
私は茂君に渡した時の結晶を観測の目印に使い、サポートする。
29日、ターニングポイントとなる独立の翌日。
茂君は様々な手段を用いたが、全ては無駄だった。
前日にグリナを抑えるという手段も、逆に茂君が警察に捕まり阻止できず、当日抑えても別のPKMが独立を宣言した。
千日手……薄々気付いていても、私達には解法が掴めない。



***




 「くそ! なんなんだよ……! 世界線の固定って奴か!? どんな無茶振りでも戦争が起きちまう!」

茂君は本当に無茶苦茶もした。
国会議事堂を先に占拠して、啓発しようとした時は自分が警備に撃たれたり、もう考えうる限りの手は尽くした筈だ。
何回目の失敗……途中からどちらも口にせず、回数は覚えていない。
ただ、茂君の疲労はピークに達している。

ディアルガ
 「いっそさ、1年くらい前まで戻ってみる?」


 「1年前? まだ茜にも出会う前か?」

ディアルガ
 「うん……茂君には気持ちの整理だって必要だと思う」

茂君は俯いて黙考した。
もしかすればもっと過去から改変すれば意味も変わるかもしれないから。
だけど茂君は無言で首を振る。


 「駄目だ……きっと俺の精神が持たない」

ディアルガ
 「茂君、貴方を誑かした私が言うのも難だけど、使命感を忘れてもいいんだよ?」

正直茂君、根を詰めすぎている。
このままじゃ、肉体は無事でもいつか精神が崩壊しかねない。
何年も同じ時間を繰り返して正常でいられるほど人間は強くは創られていない。


 「だが、茜はそれだけ苦しむんだよな? それこそ今の俺の何倍ももう頑張ってるんだろ!? そして俺たちが諦めたらアイツは新しい物語を始める! その時もう俺たちはいないんだろ!?」

ディアルガ
 「そ、それは……」

その通りだ、私が時を止めて茂君を過去に送り込む。
一つでも王が満足する世界が産まれれば、それで成功でもそれとは別に失敗する世界線も産まれる。
王が諦めるまで、様々な可能性世界線が産まれるだろう。
王は常葉茂という個人に拘っている。
だから可能な限り変化しないように少しずつ世界線を動かした。
この茂君だって試行錯誤の中で産まれた可能性の一つに過ぎない。

ディアルガ
 「ごめんなさい……やっぱり私じゃ役不足だったんだね……」


 「! 巫山戯んな! お前は俺にチャンスを与えた! それだけで俺はここまで頑張れたんだぞ!? なのにお前が諦めるのかよ!?」

ディアルガ
 「きゃあ!?」

突然茂君が私に掴みかかってくる。
私はビックリして後ろに倒れ、そのまま茂君に押し倒された。


 「あ……」

ディアルガ
 「茂君……」

図らずも押し倒してしまった茂君がその自分の行為に驚いた。
私は少し鼓動を速めながら言う。

ディアルガ
 「いいよ、好きにして……どう犯されようと、性の慰めでも受け入るよ……茂君にそうさせたのは紛れもなく私の性なんだから」


 「違う……俺はそんな言葉が聞きたかったんじゃ……!」

私は下から茂君を抱きしめる。
もう茂君は限界なんだ、もうどんな時間軸にいても心が休まらないなら、私が茂君の癒やしにならないといけない。

ディアルガ
 「茂君、言っておくけど私は君が好きだから力を貸しているんだよ? 好きって思ってくれてる子の行為を無碍にするのが大人なの?」


 「据え膳を出されれば皿まで……か?」

私は頷く、お互いの鼓動が繋がった気がした。
私だけじゃなく、茂君も鼓動が早くなっている。

ディアルガ
 「私じゃ不満?」


 「そうじゃない……ただディアルガを抱くと、茜への想いが薄れそうで怖い」

私は一度茂君から手を離し、もう一度茂君が覆い被さる形で無防備に晒す。
茂君がその気になれないなら、それはやっぱり私の責任だ。
私の魅力が足りなかっただけ。

ディアルガ
 「茂君……今言うのは反則なんだろうけど、愛してます」


 「っ!? お前……それ!」

私と茂君は顔を接近させる。
それは短いキスだった。
どちらかが、静かに唇を離すと、私は笑った。
そして……時の力を解放する。

ディアルガ
 「私は絶対に茂君の味方だよ、それだけ……忘れないで」

それだけを彼に伝えると私は彼を過去へと送った。
その時間は1年前……まだ茜様にも出会う前。
彼が気を病むなら私が全力でサポートしよう。
ただ、彼には安寧を……。

ディアルガ
 「あーあ、結局私じゃ愛人にもなれないのかなぁ……」

私は立ち上がると、一人愚痴った。
私は茂君と契約する時約束した事がある。
それは成功したとき、貰うはずのモノだった。
一つは名前……茂君に素敵な名前を付けて貰いたかったな。
もう一つは……。

ディアルガ
 「茂君に、お父さんになって欲しかったんだよねぇ」

私は神だから人間的な家族は存在しない。
強いて言えばパルキアは妹で、王かアルセウスが母親かな。
だから人間的な母性や父性を知らずに育って、それが恋しい。

ディアルガ
 「まぁ現実は非情である、答え3でファイナルアンサー」

私は一度、時の結晶を確認した。
ちゃんと時の結晶は1年前に送られている。
さぁちゃんとサポートしようか、多分茂君はまだ気持ちの面では厳しいだろう。
でも問題が起きるのは1年後、それまでに彼をどれだけ癒やせるだろうか。

ディアルガ
 「聞こえる茂君? とりあえず気楽に行こうか」



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吊された男の章 それは可能性の世界線

KaZuKiNa ( 2019/07/09(火) 19:18 )