突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 サイドストーリー
正義の章 復讐の炎

正義 1.434643%
・大切な者を奪われた上戸紅理朱、彼女は人類解放軍に参加する。
しかしその胸には戦いの哀しみ、そしてどうしようもない憎しみも渦巻く。
それは移ろう者の小さき物語。

突ポ娘 サイドストーリーズ
正義の章 復讐の炎



20XX年12月……PKM連合は首謀者グリナを指導者として独立を宣言した。
東京を占拠したPKMたち、人類は全力で迎え撃つも敗北。
PKM連合は関東1000万人の虐殺を開始した。



***



紅理朱
 (だめ……! 行かないで!)

街が炎に包まれる。
取り残された家族たちが炎に消える。
私は必死に手を伸ばすが、家族は炎に飲まれて消えた。

紅理朱
 「嫌ぁー!? お父さんお母さん!?」

私は今日も悪夢から一日は始まる。
あの悪夢の日、俗に火の七日間と言われるあの時を思い出す。

紅理朱
 「絶対に、絶対に許さない……!」

私は避難所生活の中、日々PKMへの憎悪を燃やし、募らせた。
既に首都は戦争初期の激戦によって壊滅し、都市機能を完全に消失させた。
結果として私の働く街までPKM連合は進出し、瓦礫を集めた奴らの居城瓦礫の城を眺めるに至る。

男性
 「おい、上戸! 朝の訓練始まるぞ!」

紅理朱
 「直ぐに準備します!」

避難所には幾つものテントが張ってあり、そこは人類解放軍のベースキャンプだった。
既に政治機能を失った日本は、ここに来てゲリラ戦を余儀なくされ、義勇兵を募ったのだ。
私は志願兵として、キャンプに参加してただ訓練に明け暮れた。



***



紅理朱
 「このパワードスーツ、凄いですね」

人類解放軍、それは名ばかりの寄せ集めの部隊に過ぎなかったが、幸運にもパトロンがついていた。
欧州の軍需複合メーカーで、様々なテスト機が供与されたのだ。
その一つが今私が着ているコンバットスーツ。
見た目は黒ずくめの特殊部隊風戦闘服だが、中身は超小型化したパワードスーツなのだ。
専用のフルフェイスメットを被れば、私のような未熟者でも超人的な兵士になれる。

紅理朱
 「あの……ゴーグルに色々表示されているんですが、CPってなんですか?」

研究者
 「コンバットパワー、複合的な戦闘能力を可視化したものになります。そのスーツを着ればCP1000相当、これは一般的なPKMの水準を超えます」

紅理朱
 「PKM並!? 凄い……!」

スーツには小型のローダーが入っており、私の動きをスムーズに拡張してくれる。
時速60キロで走り、2メートルの垂直跳躍、+40キロの重量をサポート、人類最高レベルの戦闘服に違いはないだろう。

紅理朱
 「こんなに軽いのに……」

研究者
 「それがセールスポイントになります。今までの戦闘服は重量が重すぎて兵士にも敬遠されてきましたが、今回の物は女性にも安心して貰えます!」

パトロンの派遣した開発者は熱心に説明してくれた。
その後は戦闘服を着て訓練、仮想のPKMを相手に行われた。


***



兵士
 「よぉ、上戸。お前なんで人類解放軍に入った?」

訓練後、ランチを食べる私の前にドスンと乱暴に座った男は、そんな下らない事を聞いてきた。
私は握り拳を作ると。

紅理朱
 「……復讐です」

兵士
 「復讐ねぇ……まぁいいさ、いつまで持つかね!」

男にとっては陳腐な事だろう、実にどうでも良さそうだ。
人類解放軍には私と同じ動機の人も多いことだろう。
関東から避難の遅れた者は犠牲となり、孤独な生き残りを産んでいった。

紅理朱
 (そうよ……紅恋さん、大城さん、夏川さん、常葉さん……皆いなくなった……私にはもう復讐しか無いじゃない!)

12月、雪の降る季節……私はただあの炎を忘れず、復讐をすることしか出来はしない。



***



最初の出撃は、前方で展開する前線部隊の支援だった。
私達新兵では、敵の前線には投入して貰えない。
相手は虎の子、米軍空母3隻を含む打撃軍を壊滅させたPKM共だ。
いくら最新鋭の装備とはいえ、相手を侮る訳にはいかない。
特に初戦で失った人的資源の大きい日本にとって、損害はなるべく出したくないのだろう。

兵士
 「前方! お客さん来てるぜ!」

依然ランチで私に絡んできた兵士は、私のバディとなった。
私としてはどうでもいいけど、相変わらず軽快な軽口で、重苦しいよりはマシだと思える。

ダタタタタタタ!

私は両手でエイミングしてアサルトライフルのトリガーを引く。
戦闘服のお陰で銃は羽のように軽く、相手の射程外から牽制をした。

紅理朱
 「それにしても妙ね……」

兵士
 「なにがだ!?」

ビルの残骸を背にして、私は今回の任務を不信に思う。
弾込めをする兵士が大声で言った。

紅理朱
 「どうして包囲戦? それも円から出すななんて!」

兵士
 「噂じゃ凄い秘密兵器使うらしいぜ! 核とかな!」

紅理朱
 「核じゃ、私達まで危ないわよ!?」

ダダダダダ!

前方にはCP600前後のPKMが二人、こちらを攻めあぐねている。
こちらは優れたセンサーで相手を正確に捕捉し、相手を一方的に封殺する。

同僚
 「上か! ビンゴォ!」

右上からアラート、センサーが鳥のPKMをキャッチして、相方が打ち落とす。
私は前方の二体の牽制を続ける。
戦闘服のお陰で、私達はまるでベテランのように戦う事ができた。
如何にPKMが強力でもアサルトライフルの掃射を受けて無事で済むPKMなぞ少ない。
厄介な鳥ポケモンもレーダーに映れば、丸腰で鴨同然だ。

拮抗する戦局の中やがて、上空に爆撃機の機影を確認した。

同僚
 「おっ、アメリカの虎の子か。1機2000億円とかいう奴!」

紅理朱
 「Bー2戦略爆撃機か……大物が出てきたわね」

これまでの戦闘結果で爆撃がPKMに有効なことは分かっている。
いかなPKMでも高度1万メートルで活動できる個体は少ない。
またそういう個体でも、頑丈な爆撃機の装甲を容易く破れる個体は少ない。
戦略爆撃機は頭上を通り過ぎると、円の中心で爆撃を開始する。
響く爆音、大地を揺らしあちこちで火の手を上げる。

紅理朱
 「でもあのゴキブリ共は爆撃程度では駆逐なんて出来ない!」

爆撃は何度も繰り返されたが、PKM連合はしぶとく生き残っている。
重要なのはこの後の決戦!
だけど……参謀本部からの命令は引き続きその場でPKMを円の外に出すなだった。
第一陣の爆撃機が空中を通過すると、直ぐに入れ替わるように第二陣がやってくる。
しかし第二陣が投下したのは爆弾ではなかった。

同僚
 「なんだぁ!? 味方識別? 降下部隊だってのか!?」

ゴーグルのHUDは爆撃機が投下した物を味方だと表示した。
しかし問題なのが識別マークの下に表示された個体名。

紅理朱
 「対PKM人型戦術兵器?」

そう表示されているのだ。
それも20機余り、無数に地上に降下し戦闘を開始する。
丁度1機が目の前に降下した。
それは映画ターミネーターにも出てきそうな鋼の人型ロボットだった。
右腕の大型ガトリングを空転させ、それをPKMに向ける。

PKM
 「なんだこの化け物は!?」

背中から炎を吹き上げる少年のPKMは口から炎を吐く。
かなりの熱量だが、兵器は物ともせずに少年を銃撃した。

PKM
 「あば!?」

兵士
 「ありゃ酷ぇ、ミンチじゃねぇか……!」

兵器は冷媒を吹き出して、装甲の熱量を下げ、仲間の死を目撃したもう一人をも無慈悲に撃ち殺す。
そして兵器は無言のまま、円の中心に敵を求めて去って行った。
私達は銃を下ろし、ただ呆然とする。

兵士
 「は、ははっ! あんな虎の子隠してやがったのかよ! これじゃ兵隊なんていらねぇだろ!?」

紅理朱
 「……私の復讐は」

その後も辺りからあの兵器の戦う音は止まなかった。
1時間後には撤収命令を受領して、私達はベースキャンプに帰還する。



***



兵士
 「ち! 参謀本部の奴ら、あの兵器の事は極秘だってよ!?」

ダァン!

夕方、提供される夕食を待つ兵士たちの中で、共に戦った男が不機嫌そうに机を叩いて椅子に座った。
毎日命がけで訓練に励む身としては、血も涙もない工業製品に持っていかれるのは我慢ならないのだろう。

兵士
 「お前はよ〜、あの兵器が美味しい所持っていくの我慢できるか?」

紅理朱
 「分からない……私が欲しいのは勲功じゃないから」

ここではPKMを殺せば殺すほど賞賛される。
だけど、欲しいのは栄誉でもお金でもない。
両親の復讐、無念のまま炎に包まれた家族の復讐だ。
ただ、それでも自分の手で復讐を遂げなければ、私の悪夢は終わらない。

紅理朱
 (そう、悪夢よ……炎に焼かれる家族のように、アイツらも地獄に叩き込まなきゃ……!)

だけど、その先に何がある……?
ふと、復讐の先を考えると、私には何もない事に気付く。
だけど私は直ぐにその考えを振り払った。

PKMは突然現れた侵略者だ。
私のようにその存在を受け入れなかった者は多い。
仕事場にはたまたま常葉さんのような保護者や、夏川さんのような前向きな人等容認者が多いが、私は違った。
PKMなんて現れなければ、こんな戦争もなかった。
PKMを駆逐しなければ、元の人類史は取り返せない!

兵士
 「おい? お前体震えてるぞ……?」

紅理朱
 「殺さなきゃ……PKMを……!」

憎悪、ただ憎悪を炎にくべて私は闘争心を維持する。
相方はそんな私を見て一歩退いたようだ。
いいわよ、どんなエゴでも貫けば力になるんだから。



***



人類解放軍とPKM連合の戦いは熾烈を極めていた。
対PKMの虎の子、人型戦闘ロボットは目覚ましい戦果を上げているものの、今だ決定的な一撃を与えるに至ってない。
解放軍の兵士の中にはワザと手を抜いているんじゃないかと噂する者がいるが、そんなことする意味があるの?
だけど、人類解放軍のパトロン、多国籍複合企業にはなにか裏があるのかも知れない。



兵士
 「噂じゃ有明に馬鹿でかいの出すらしいぞ」

紅理朱
 「馬鹿でかいの? 盗み聞きしたの?」

時は12月24日、膠着状態のまま結局年が過ぎようとしていた。
私達は今日も後方から対PKM兵器のバックアップをやらされる。
同僚もあまりモチベーションは高くなく、これではなんのために訓練したのか分からない。

同僚
 「何でも空母並みの大きさを持つ、対PKM殲滅兵器って話だが……おっと、ブリーフィングが始まる」

約40名が集まるベースキャンプ、野営のコテージに集められた私達は、上官のブリーフィングを受ける。

上官
 「今回各隊は他の基地と連携して、伊豆方面より東京へ進軍する。更に米軍が虎の子を発進させた!東京湾からPKM連合を挟撃する手筈だ!」

紅理朱
 (北部は手薄なのね? まぁPKM連合もそっちには進出していないし、問題ないのか)

兵士
 「なぁ米軍ってマジかね? 初戦空母3隻落とす失態してから、積極的に出てなかったのに!」

相方は口は軽いが、どこから情報を得てくるのか妙に詳しい。
確かに、この戦争で一番痛い戦費を出したのはアメリカだろう、結局目立つのは遠くの基地から爆撃する程度、ロクな結果は出せていない。

上司
 「いいか!? 静岡栃木ラインは絶対防衛線上にある、絶対に抜けさせるなよ! 各員、所定の位置へ出撃!」



……私達が配備されたのは僻地と言えば僻地だった。
激戦地のPKM連合勢力下から少し北西の位置、後ろを見れば奥羽山脈と言ったところか。

兵士
 「しっかし暇だね……」

紅理朱
「対PKM兵器にある程度の戦闘能力を施したドローン、結局上も人的損害が一番怖いんでしょ?」

私達は今もPKMと小競り合いを続ける対PKM兵器の音を聞き取っている。
廃墟群とはいえ、大きなビルの残骸なんかもあり、視界は良くない。

兵士
 「……いつの間にか戦争に人間っていらなくなったんだな〜……」

紅理朱
 「……」

でもそれって……もしPKMを殲滅し終えたらどうなるの?
あの対PKM兵器だって、設定を変更すれば特定の人間だけを殺す機械になるんでしょ?
なら、戦争とはなにか……。
PKM連合の目的はあくまでも独立。
一方で解放軍の目的は東京奪還。
その裏で甘い汁を啜る奴らを解放軍も分かっていながら無視してきた。
でもその後も考えなければ、今度は人類同士の戦いになるんじゃないかしら……。
そんなことを考えていると、突然包囲網を突破する影を見つける。


 「ここは……?」

兵士
 「なっ!? 包囲網が突破された!?」


 「人間か!?」

目の前に予想もしなかった一団が現れた。
私達は即座に銃を構えようとしたが、相手はそれよりもなお速い!

保美香
 「遅い!」

長身の美人な女性は人間とは思えない速度で踏み込むと、異形の髪の毛を私達の裏筋に突き刺す。
身体が勝手にビクンと跳ね、そして動かなくなった!

兵士
 「あがが……身体が……!」

紅理朱
 「まさか……常葉さん?」

私はこの事態に至り、ようやくその男性に気が付いた。
常葉茂、職場では頼りになる先輩で、尊敬する部分もあった。
まさか一番最初に行方不明になった人が生きていたことに私は戸惑った。


 「! アンタなんで俺を知っている!?」

私に髪の毛を突き刺した女性はヘルメットを剥ぎ取ると、今度は常葉さんが驚愕した。
そりゃそうよね……お互いこんな有様なら。


 「嘘だろ……? 上戸さん!?」

紅理朱
 「く……貴方はまだPKMなんかと一緒にいるのですか!?」


 「上戸さんこそなんで! そんなにPKMを憎む!?」

この人は本当に人間なのか。
親兄弟を殺されて無表情でいられるというのか!

紅理朱
 「ええ! 憎いですよ! 元々PKMなんて信用していませんでしたけど! 私の両親はPKM連合に殺されたんですよ! 民族浄化で!」


 「っ!?」

今度は常葉さんが止まる、浄化作戦の犠牲者じゃなければ、この憎しみは完全には分からないだろう。

紅理朱
 「どうしてPKMは私たちの世界を侵すの!? PKMはこの世界から出ていけ!」


 「っ! 上戸さん! PKMはその全てが悪じゃない。俺たちのように共存を望むPKMだって一杯いる!」

私はこの今も私を冷たい目線で見下ろすPKMを見る。
殺そうと思えば殺せる状況、相方は声を押し殺して震えている。
やはりそれは傲慢ではないだろうか。

保美香
 「だんな様、急いで離脱しましょう。兵士が二人だけの筈がありません」


 「く……上戸さん! 俺たちは道を踏み間違えたのは事実だよ! それでもその怨念の意味を考えてくれ! PKMじゃない! 目の前の相手をだ!」

紅理朱
 「目の前の相手……!?」

私は不意に目線を正面に向けた。
まだ年端もいかない少女が大きな目で見ている。
ふいに急激に顔を近づけると、私は唾を飲み込んだ。
その間も少女は無言だった。


 「……」

紅理朱
 「な……なに?」


 「……悪意はあるけど、悪党じゃない」

顔を離すとそう呟いた。
悪党じゃないって……心でも読めるの?


 「保美香、毒はどれ位持つ?」

保美香
 「30分ほど」


 「襲われたら大変だ、5分で解けるようにしてくれ、銃さえ奪えば大丈夫だろう」

常葉さんはそう言ってアサルトライフルを拾う。

保美香
 「畏まりましただんな様」

保美香という名前のPKMは再び髪の毛を裏筋に突き刺した。
この心理的恐怖感は好きにはなれない。

常葉さんたちはそれっきり東京方面へ視線を向ける。
私はどうしていいか、分からずに彼を止めた。

紅理朱
 「待ちなさい! 逃げるなら北よ……東京方面は得体のしれない超兵器が運用されているらしいわ」


 「上戸さん?」

紅理朱
 「私の憎しみは消えない……でも、貴方には恨みがないもの」

そう、私の憎しみのエゴは人に向ければ、途端に意味の無いものになる。
あの三人を見ると、段々悲しくなってきた。
対立は結局、融和をイタズラに遠ざける行為……ということ。


 「ありがとう上戸さん! また一緒に仕事が出来りゃ良いな!」

しかし常葉さんはとびっきりの笑顔でそう言うと、北へと走り出す。
……5分後、本当に毒は抜けて動けるようになった。



紅理朱
 (常葉さん……全然変わってなかった、私何やってるんだろう)

常葉さんたちが逃げていく中、私は呆然と1カ月間を思い出した。
元々PKMの事は好きじゃなかった。
徹底的に嫌いになったのは戦争からだけど、もし戦争がなければどうだったのだろう?

(茂
 「く……上戸さん! 俺たちは道を踏み間違えたのは事実だよ! それでもその怨念の意味を考えてくれ! PKMじゃない! 目の前の相手をだ!」)

紅理朱
 (目の前の相手を……)

あの時イーブイの少女は私の目を見た。
大きな目は純心で、心を奪われそうな程美しかった。
あの時私は本当に撃てただろうか?
相手の事を考えた時、私は撃てるだろうか?

やがて戦争は更に激化していく。
遠く離れたこの地までその異様を轟かせる対PKM戦略抹殺兵器がPKM連合を蹂躙し、続くように上空を飛び交う爆撃機たち。
ふと、空を見上げると大きな……あまりにも大きすぎるゲートが開いていた。
そこから現れる無数のPKMたち。

紅理朱
 「まさに終末のラッパが吹かれた……ということか」

世界はカオスへと加速度的に向かっている。
ではカオスの先には何があるのか? そこには虚無しかない。
光が……世界を包み込む。

紅理朱
 (光あれ……旧約聖書の一文……ならこれは失敗した世界であって、新しい世界を創るのかしら?)

そして光は全てを消し去った……私さえも。



突ポ娘 サイドストーリーズ
正義の章 復讐の炎 end

KaZuKiNa ( 2019/07/08(月) 22:45 )