突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 サイドストーリー
隠者の章 闇を見れば、その闇はお前を見る

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・美柑はある日、一人で家に居ると幽霊を見てしまう。
しかしそれは己自身だった。
それは異なる世界線の自分、今美柑は世界線を放浪する。


突ポ娘 サイドストーリーズ
隠者の章 闇を見れば、その闇はお前を見る



美柑
 「ただいま〜」

10月、なんだかんだであの異世界の大冒険からもう一月か。
思えば色々あったけど、海へ行ったり、異世界にほうりだされたり、あげく帰ってきたらボクたちはPKMと呼ばれていた。
ボクは昼のトレーニングを終えて家に帰ると、何故かいつもいるはずの茜さんや保美香さんの気配がしなかった。
出かけたのかな……と思うが、お昼御飯の用意もないのはおかしい。

美柑
 「まさか……新手の○タンド使いの攻撃か!?」

なんて○ョ○ョ立ちするが、あの人たちに限って万が一もないだろう。
ふと、ボクはベランダ側を見た……いや、見てしまった。

美柑
 「え……?」

ボクは背筋に冷たい物が落ちると、枯れた声を零した。
そこには半透明の女性がボクを見ていたのだ。

美柑
 「冗談ですよね!? セローラでしょ!? ゆ、ゆゆゆゆ!?」

ボクはこの家が何故曰く付きで安い賃金なのかを思い出す。
この家ではかつて死人が出て、幽霊が出るのだと。
そ、そそそそ、その幽霊が!?

美柑
 「そ、それ以上近寄るんじゃねぇー!!?」

ボクは某ボスのような悲鳴を上げた。
次の瞬間、視界が急激に歪む。
私の前に立つ女性はなんだか哀しそうな顔をしていた。
そして意識がむしり取られるような感覚を覚えると、一瞬で意識がブラックアウトした。



***


保美香
 「――かん! 美柑! どうしたんですの!?」

美柑
 「え? あ……保美香さん?」

ボクは突然保美香さんの声に意識を取り戻した。
だが……ボクは何かがおかしい事に気付く。

美柑
 「保美香さん身長が……あれ、ボクの声が?」

ボクは保美香さんの身長がボクより低いのはおかしいと気付き、更にボクの声がいつもより低いと思った。


 「美柑、なんか変……」

保美香
 「そうですわよ? さん付けなんておかしな人、いつもなら『私に近づいてまた変な事する気だな!?』って反応のはずかしら!」

伊吹
 「あっはっは♪ 似てる似てる〜!」

美柑
 「………」

ボクは呆然とした……。
部屋が狭い、それはボクが大きいから。
保美香さんの巫山戯たかのような対応、そしてそれに笑いこける伊吹さん。
ボクは、迷わず洗面台に走った。

美柑
 「こ、これは……!」

洗面台にある鏡を見たボクは驚愕した。
そこにいたのはボクじゃないからだ。
身長は高く180はある。
元のボクよりも筋肉質で、伊吹寄りのスマートなマッスルさだ。
髪の毛も豊かで、腰までウェーブして伸びている。
そして……。

美柑
 「保美香さんより大きい!?」

そう! 茜さんよりも! 保美香さんよりも胸が大きい!
……まぁ流石に伊吹さんや華凛さんには負けるけどさ。

保美香
 「えい♪」

美柑
 「ひゃぁ!?」

突然鏡に保美香さんが映る。
その保美香さんはボクの後ろから胸を鷲づかみすると、触手でボクの身体を拘束する。
ボクは身動きがとれず、何故保美香さんが突然こんな暴挙に出たのか分からず混乱した。

保美香
 「ほれほれ〜、抵抗しないのかしら〜?」

美柑
 「あう……んん!?」

こんな事されたのが初めてのせいか、保美香さんはまるで熟知しているかのようにボクの気持ちいい所を的確に責めてる。

保美香
 「う〜ん? いつもならもう音を上げて『くっ! 殺せ! こんな生き恥を晒してまで生きたくない!』って言っているはずかしら!」

美柑
 「それ明らかにボクとキャラがちが……んんんー!?」

保美香さんの責めが激しさを増して、ボクは本気でイキそうになる。

保美香
 「貴方……まさか偽物かしら!? 何者ですか!? 言わなければ純潔を散らす事になるかしら!?」

美柑
 「そんなの……ボクが知りたい……ひぐっ! ですよぉ……」

保美香
 「あらあら? もしかし泣いてるかしら? マジ泣きかしら!?」


 「保美香が泣かした」

伊吹
 「やり過ぎ〜」

保美香
 「あらあら〜!? 味方0かしら〜!?」

保美香さんは慌てて触手を全て解き、私から手を離した。
私は崩れ落ちると伊吹さんが介抱してくれる。

美柑
 「うぅ〜、ボクだって何がなんだか分からないのに……保美香さん酷いよぉ〜」

保美香
 「ご、ごめんなさいかしら〜!」

一体何が起きているんだろう……保美香さんはやたらかしらかしら五月蝿いし、伊吹さんもなんだか少し冷たい気がする。
茜さんだけはいつも通りな気がするが。

美柑
 「うぅ〜、一体どうなってんの〜」

なんだか皆様子がおかしいし、それにどうしてボクだけこんなに容姿まで違うの〜?
そんな泣きべそをかくボクに見るに見かねた保美香さんもボクの肩に手を掛けた。

保美香
 「その……貴方がおかしい事は分かりました、とりあえず事情を説明してくれないかしら?」


 「リビングに行こう」

美柑
 「はい……了解です」

ボクたちはリビングに集まるとまずはボクから説明を始める。

美柑
 「ボクはギルガルド娘の美柑、主殿と共にこの家で暮らしていました」


 「同じだね」

伊吹
 「う〜ん、なにかおかしいと感じたことは?」

美柑
 「まずは当然自分、ボクはこんなに身長も高くないし……その、胸も……小さくて」

言ってて悲しくなるな……これ。
ボク自身、自分の身体の事は嫌いじゃない。
とはいえ胸が有るか無いかなら、欲しいに決まっている。
背が低いうえに、顔つきも男の子っぽくて、挙げ句胸もない性で、男の子と間違われるなんて日常茶飯事。

保美香
 「何? それは本当かしら? それは……お気の毒にかしら」

美柑
 「今馬鹿にしましたよね!? なんかボクの知る保美香さんより腹黒い!」

明らかに嘲笑する気配にボクは噛みついた。
そりゃ保美香さんは、誰もが振り向く美女ですけど!?
やっぱり、この保美香さん、絶対おかしい。

伊吹
 「ふむふむ、貴方の知る保美香はドSじゃ無いわけだ」

美柑
 「伊吹さんも、ボクの知るそれと微妙に違うんですよね」

まず一番引っかかったのは伊吹さんの口調が間延びしてない事。
ややおっとりしているながらも普通に喋っているのだ。
二人とも見た目の上では違和感がないのに、どうしてこんなに違うのだろう?

美柑
 「それと……さっきから気になってたんですけど、凪さんと華凛さんの居たという気配がまるで無いんですが……?」


 「だれ?」

保美香
 「聞いたことのない名前ですわ」

伊吹
 「う〜ん、やっぱり似ているけど決定的齟齬があるのよね」

美柑
 「………」

やっぱり凪さんたちはそもそも居ないのか。
伊吹さんは両手を組んで冷静に考察している。
やっぱり行動で見てもまるで違う。
伊吹さんは性格こそ似ているようでも、若干ボクの知るそれより冷徹さが増しててる気がする。
保美香さんなんか、そもそも冗談をしでかす人じゃない、ましてドSの気なんて全くなかった。
茜さんだけは、逆になんでこんなに違いが無いんだろう?

美柑
 「そう言えば主殿は?」

保美香
 「会社ですわ、日曜だというのに相変わらず社畜な事かしら、いつかあの方の上司の手首を折ってやりたいかしら!」

日曜……日付は同じみたい。
そしてこの世界の主殿は、こっちでも日曜出勤するほどの社畜か。
そう言えばボクのいた世界では気が付いたら日曜出勤は大分減ってたっけ。

伊吹
 「まぁでも、もうすぐ帰ってくるんじゃないかな〜?」

ガチャリ!

そんな言葉を待っていたかのように、玄関の扉は開かれた。
それに耳をピンと立てた茜さんは直ぐさま立ち上がる。
玄関からは帰りを伝える声が聞こえた。


 「皆ー、帰ったよ〜」


 「! ご主人様!」

美柑
 「?」

茜がいつものように一目散に玄関に駆ける。
あの犬かなにかのような反応は殆ど変わらないな。
ただ、気のせいか今のは主殿の声じゃ無かった気が……。

やがて、嬉しそうにハグする茜さんを抱きかかえて、主殿はリビングに現れた。


主殿?
 「ただいまー、皆ご飯食べた?」

美柑
 「誰だアンター!?」

茜を脇に抱えてリビングに入ってきたのは死んだ魚のような目をしたスーツの『女性』だった。
女性はボクを見ると、ギョッと後ろによろめいた。

主殿?
 「うわ、ビックリした〜! なによ美柑……どうしたの?」

美柑
 「ボクの主殿はまず眼鏡をしていない! 長髪じゃない! そもそも女性じゃない!」

あと、普通にボク(貧乳の方)より胸があるのが傷付くんですけど……。
ボク以外の全員が主殿と認める女性は身長160センチ台、取り立てて美人でもなく眼鏡の奥には女性とは思えないやさぐれた目がある。
腰まで伸びるロングヘアーも残念すぎるほど手入れがされておらず枝毛だらけで、化粧する気も感じられなかった。

伊吹
 「アオちゃん、この子ね〜」



***



動揺しまくるボクを余所に、伊吹さんはこの女性に事情を説明した。
説明を聞いた女性は何度かボクの顔を見て、戸惑っていたが、意外に順応力が高いのか直ぐに頷くと。

主殿?
 「私は常葉青子(ときわあおこ)、えと……本物の美柑はどこに行ったのかとかも気になるわけだけど、貴方も美柑なのよね?」

美柑
 「はい……ビックリしすぎてすいません。ボクの知る主殿は常葉茂という男性であって」

青子
 「ないわ〜、ただでさえ男っぽいって言われるのに、これ以上女子力下がる自分とか見たくないわ〜」

そう言って自己嫌悪する青子さん。
ボクも女性の主殿は見たくなかったです。
一体これを主殿が見たらどう思うのだろう?
でもこれで最も決定的に違う部分が見えた。
この世界に茂さんはおらず、逆に青子さんがいる。

保美香
 「パラレルワールドから紛れ込んだのかしら?」

美柑
 「パラレルワールド……?」

青子
 「並行世界のことだよ、似ているけど違う結果を辿った世界線。結構古い作品から使われてるネタよね」

……そう言えば、確かにこの世界のボクはどこに行ったんだろう?
ボクがここにいるなら、逆もあり得るのか?

美柑
 「! そうだ!」

ボクはあることを思い出し、もう一度洗面台に向かう。
洗面台の鏡からなるべく遠景で自分の姿を確認すると、その答えは徐々に浮上してきた。

美柑
 「同じだ……幽霊と!」

そう、ボクが目撃した半透明の幽霊はボクだったんだ!
それも並行世界のボク、哀しい顔でボクを見つめる女性の正体が、並行世界のボクだなんて。
何らかのタイムパラドックス? ならば向こうにはこの世界のボクがいるのか。
そんな難しい理論はボクには到底分からない。
だけども、現実にボクはここにいる。

美柑
 「でも……どうやったら戻れる?」

もし仮説が正しいなら、恐らく入れ替わったんだ。
なら同じ現象が起きれば恐らく戻れる……ただし、それは奇跡を起こせと言っているような物だ。

美柑
 「……兎に角早く戻らないと、え?」

それは鏡に映ったボクだった。
厳密に鏡の中に空間の穴が生まれ、そこにボクがいる。
傍らにリングを手で回す小さな浅黒い少女を傍らに。

ボクは振り返ったが、そこには何もない。
つまりこれは鏡の中だけのもの。
そしてもう一度振り返った時、私は一瞬自分と鏡の中で交錯した。

美柑
 「貴方がもう一人のボクですか」

交錯は一瞬だった。
引き寄せられるように身体と心が入れ替わる。

女性
 「アクシデントさ、私よ、あの世界はやはり私の世界ではない」

それだけ、それだけの会話を持って、一瞬でボクたちはゲートを通り抜ける。



***



美柑
 「……あ?」

気が付いたらリビングに立っていた。
そこは見慣れた光景で、見えている目線も声もボクの物だった。
家には誰もおらず、きっと出かけているのだろう。

美柑
 「……酷いなぁ、ボクだけ置いてけぼりか」

それにしても数奇な物だった。
もしかしたらアレは夢だったのではないだろうか。
全てがなにか違う世界線……これは運命のパラドックスだったのか。



フーパ
 「まさかいくら世界線が不安定とはいえ、プロトタイプの世界と繋がるなんてね……アタシが居なきゃどうなってたことか」



……それは産まれる前の世界。
今では全てが違うが、−100%の先、オーバーフローの世界線。
だが、そのプロトタイプとも言うべき世界があって今がある。
今という世界線はそれだけ、貴重なのだ……。







・おまけ

常葉青子
本編執筆以前の主人公。
当初は本当にYuki氏の魔更聖の対とするため女性設定だったが、メイドドラゴンの方に似すぎる為に没になった。
妹への再利用も考慮されたが、それも没に。
性格は茂君よりも大分臆病で俗物的、良くも悪くも1部の茂君の女性版。


殆ど正式版と変更がないが、唯一の違いは神々の王ではないということ。
ただのタイムリーパーで、滅び行く世界を変えるために彼女が奮闘し、それを青子たちが支えるというものだった。

保美香
かしら星人、実は第2話初登場の彼女はプロト版に非常に近い。
現在の保美香とはかなり変化したが、あらあら、〜かしらが口癖で、当初より○ン娘の○クネラ寄りの人物だった。(結果的にこのキャラ人格は杏で再利用したが)

美柑
長身巨乳くっ殺属性持ち、当初は○ン娘の(以下略)だったが、このキャラ時点で伊吹が確定していたため、全員巨乳はどうなのかと今の美柑産まれる原因になった。
非常に騎士道然としておりお堅く、その性で保美香との相性は最悪だった。
くっ殺せ! は代名詞。

伊吹
元々はメイドドラゴンの○コアをモデルとしたキャラクターで、その差別化要素がまだ薄かった頃の姿。
基本形は今と殆ど違いはないが、聡明で思慮深い物の優しいだけの人物ではなかった。

なおプロト版は2部が存在せず、1→3部という流れだったため、4人のPKMと永遠以外は存在しない世界線だった。
2部は本来別の戦記物作品を修正して利用したため、結果流れはそれなりに変わったと言える。
しかしこの没設定の数々は現行のキャラや世界観設定の礎になっているのは間違いない。



突ポ娘 サイドストーリーズ
隠者の章 闇を見れば、その闇はお前を見る end


KaZuKiNa ( 2019/07/07(日) 20:31 )