突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 サイドストーリー
力の章 ビークインは幸せになれるのか

力 1.190002%
・ハニーの運命の決定は出会いにある。
もしもその出会いその物が違っていればそれは幸せにもなりえるのか?
彼女は運命に惑わされる悲劇のヒロインなのか?

突ポ娘 サイドストーリーズ
力の章 ビークインは幸せになれるのか



2018年8月……。
PKMが徐々に観測されつつあり、日本政府がその存在を認める発表をする1月前。
私はこの世界に召喚されたのはそんなうだるような暑さの夜の事だった。



ミーンミンミン。

ビークイン
 「……ここは?」

私は今まで一族の長として平和にビークインの世界を作ってきた。
全ては悠久に続くと信じていた、ビークインを頂点とするミツハニーの群れ。
しかし突然巣の中に開いた次元の穴は、私を吸い込み異世界へと誘う。
私は自分の手を見て戸惑った。

ビークイン
 「手が……足がある?」

不思議な感覚だった。
私の身体には足があり、そしてそれが誰に教えられたわけでもなく自然と自由に動かせる。
自分の姿が明らかに変化しているのに、それが自分だと正しく認識したのだ。

ビークイン
 「一体ここは……?」

そこは神社の境内のようだった。
ミーンミンミンと蝉が鳴き、空には星が瞬く。
暑い……かなり温暖な地方なのかしら?
私はそろそろとその場から動き出すと、人の気配を感じた。


 「でや、そこはやなぁ……あん?」

私は妙な言語を扱う人間と出会う。
身長は170センチ程、男性にしては長いセミロングの髪をしていた。
暑さのためか男は随分ラフな格好で、それなりに軽そうにも見える。
男性は私を見ると、口をポカンと開けて呆然とした。
構えていた小さな箱形機械から、何やら声が聞こえる。

男性
 「なんやコスプレか? 夏コミはまだやで?」


 『え? 何? 夏コミ? 仕事の話を……』

男性
 「すまん夏川、一旦切るで」

それっきり、機械から声は聞こえなくなった。
男はそれをズボンのポケットにねじ込む。

ビークイン
 「あ、あの……貴方は……?」


 「俺は紅恋葛(ぐれんかつら)、ほれ、名乗ったんや、姉ちゃんは?」

ビークイン
 「ビークインと申します」

私は両手を腰に当て、深々とお辞儀する。
男……紅恋さんは私を見て、何やら頭を掻いた。

紅恋
 「……最近、コスプレしたモンの目撃が相次いどる……ネットのデマかとも思ったが……噂じゃそれはコスプレやない、本物やって言われとるが……」

ビークイン
 「あの……コスプレとは……?」

紅恋さんは私を何度も見る。
その視線は私の触覚に、私の羽に注がれた。

紅恋
 「ホンマにポケモンなんか?」

ビークイン
 「ポケモンです……ですがこの身体は一体?」

私は触覚だって自由に動かせるし、軽く空中浮遊程度ならこの小さな羽でも問題ない。
しかしそうやって動かすと紅恋さんは何かの確信を得たらしい。

紅恋
 「姉ちゃん行くところはあるんか?」

ビークイン
 「……いえ」

私はまずこの世界のことを何も知らない。
この身体も気持ち悪いくらいしっくりくるし、人間の言葉を操れることも驚きだ。

紅恋
 「しゃーない、今日はウチ来るか? 夜も遅いし……何より女一人で夜は危険やからな」

紅恋さんはそう言うと、踵を返した。
私はその背中を追いかける。
紅恋葛さん……まだどういう人物なのか分からないけど、なんだか安心できる気がする。

紅恋
 「あんま人目につかん方がええか」

紅恋さんはそう呟くと、薄暗い道を進む。
そこは人混みもなく、ただ静かな時間が流れた。
やがて、住宅街に出ると、電灯が辺りを照らす。

ビークイン
 「すごい……これが人間の世界……」

それは隔絶されたポケモンの世界とは大きく違う、高度に文明化され幾何学化されたような錯覚さえ覚えた。

紅恋
 「ここやで、ここが俺の寝床や」

紅恋さんはそう言うと、あまり大きくはないアパートの一室の鍵を開けた。
中は真っ暗で特に誰かが待っているという事もないらしい。
紅恋さんは靴を脱いで電灯を付けると、内装が初めて分かる。

紅恋
 「靴はちゃんと脱ぐんやで〜」

紅恋さんはそう忠告し、私はいつから履いていたのかも分からない靴を脱ぐと、中へと上がらせてもらった。

ビークイン
 「すごい……なにこれ?」

まず目に映ったのはリビングを埋め尽くす黒い箱。
紅恋さんは箱のスイッチを入れると、全ての箱からファンが回る音がした。
次に紅恋さんは白い棒状のリモコンで部屋の上にあった機械に信号を送ると、冷たい風が部屋に広がった。

紅恋
 「改めて、俺はこの街でフリーランスの情報屋やっとる紅恋葛や、お望みの情報ならお値段次第で何でも手に入れる仕事やな」

そう言うと、机の上に置いてあった複数のモニターに光が灯る。
私は箱たちの耳を突き刺すような騒音は虫たちの出す羽音に似ているように思えて、不思議とこの場所が落ち着く気がした。

ブゥゥゥゥン……!

紅恋
 「なんや? 冷却ファンの真似か? 羽を震動させてからに」

ビークイン
 「! なんだか巣の中に似ている気がしてつい……」

不思議と、私の作ってきた巣の中とはまるで違うのにここはどこか真逆で繋がっている気がする。

紅恋
 「まぁ、適当に腰掛けや、茶でも出したる」

そう言うと紅恋さんは冷たい冷気を吐き出す箱から茶色い液体の入ったポッドを出した。
紅恋さんは透明なグラスにそれを注ぐと、琥珀色の美しい液体となった。

紅恋
 「麦茶やけどな、ポケモンってお茶大丈夫やんな?」

私は並々注がれた麦茶をまじまじと見た。
光を通すとこれ程美しい物を私は見たことがない。
どんな綺麗な琥珀でもこの輝きに劣るだろう。
それ程に私はその麦茶という液体に心を奪われた。

紅恋
 「なんや? 飲まへんのか?」

ビークイン
 「美しくて……飲むのが勿体ないです」

それを聞くと紅恋さんは腹を抱えて笑った。

紅恋
 「40袋入り198円の麦茶も、アンタみたいな別嬪さんにそう言われれば本望やろうなぁ、せやけど飲んどき。そんなねーさんに飲んで貰うのが麦茶の一番の幸せやで?」

ビークイン
 「はい……」

私はそう言われ、麦茶に口を付けた。
その味は、私は初めてで驚かされる。

ビークイン
 「美味しい……」

紅恋
 「おっ、笑ったらええ顔やん」

ビークイン
 「え?」

私はキョトンとした。
紅恋さんはそれ以上は言わず、机の前に座る。

紅恋
 「さて、そろそろ仕事に取りかかるか」

紅恋さんは椅子に座ると、大量のボタンのついた横長の板を全ての指を使って、カタタタタタとリズム良く叩き、音が鳴る。
私はそれを興味深く見ていた。

紅恋
 「そう言えば……名前、ないんか?」

ビークイン
 「……はい」

今まで名前なんて必要になった事がなかったから。
ビークインは一匹の女王と大量のミツハニーで構成されるから、その中で名前は必要ない。
個体を識別するのはフェロモンで、それがあれば充分だった。

紅恋
 「うーん、ビークインやと種族名やしな」

紅恋さんはどうやら私の名前を考えてくれているようだ。
暫く、上の空になりながら、なんとか声を捻り出すと。

紅恋
 「うーん蜂……緋○、あかん最終鬼畜極殺兵器やないんやぞ……」

ビークイン
 「? 極殺兵器?」

紅恋
 「○クスプロージョン・○ーネット……○ックマンやないんやから! 蜂蜜……いや、ハニー? せや、ハニーはどないや?」

ハニー
 「ハニーですか、畏まりました……これからはハニーと名乗らせていただきます」

私はもう一度この人に頭を下げた。
私はなんとなく本能か、この人が自分のご主人様なんだと理解した。
これからはこの人に全てを捧げないといけない。

ハニー
 「ご主人様、これからよろしくお願いします」

紅恋
 「ご主人様〜? なんや急に! ええでええで! もう普通に葛とも呼び!」

ハニー
 「では葛様と……」

私は土下座するように頭を降ろす。
紅恋さんは面倒くさそうに頭を掻くと、もうどうにでもなれとモニターに向き直った。

紅恋
 「まぁそれで許したるわ」

ハニー
 「はい」

葛様はそう言って再びカタタタタタと板を叩き出した。
しかしその目は板の方を見ていない、ただモニターだけを見ている。
私にはまだ何が何だか分からないが、これが葛様の仕事なんだろう。
私に出来ることはなんだろうか、どうすればこの人のためになれるだろう。

紅恋
 (今の所、この辺りの地域でやっぱりポケモンの出現が多いんか? 嫌な予感するで……)



***



朝私は葛様を起こすことから始まった。
葛様は随分と夜遅くまで起きていたようで、いつの間にか寝室で倒れるように眠っていた。

ハニー
 「葛様、朝です……起きてください」

紅恋
 「んが? 今何時や……?」

葛様はごそごそと枕元で手を動かす。
葛様はそうやってスマホという小さな箱を手に取ると、ギョッとした。

紅恋
 「5時15分!? なんでこない早く起こすんや!?」

ハニー
 「でも……朝です」

リビングとは違い、寝室はそれ程物に溢れてはいなかった。
窓からは既に日が昇っており、生き物の声がそこかしこから聞こえている。

紅恋
 「かなんでホンマに……ええか? このスマホが鳴ったら起こしてくれたらええ! 分かるな!?」

ハニー
 「……はい」

紅恋
 「つーわけで二度寝や!」

葛様はそう言うと再び布団に籠もる。
私はじっと葛様の寝顔を覗った。

紅恋
 「……寝れん! なんでそないじっと見つめるんや!?」

葛様はそう言って起き上がる。
既に目は完全に覚醒したようだ。

紅恋
 「……しゃーない、こないなったらハニーに徹底的にこの世界の常識教えたるわ!」

葛様は完全に起きると、一から私に色々な事を教えてくれた。
人間は日が昇ったら起きるものじゃないということ。
あの大量の箱はパーソナルコンピュータという物で、絶対に触ってはいけないということ。
その他にもスマホの事や、家の中のことも外のことも教えて貰えた。

ハニー
 「成る程」

紅恋
 「それじゃ、まずは朝ご飯や。コーヒーの淹れ方教えたるわ」

ハニー
 「……所で不躾にもこのような虫が一杯いますが食べますか?」

私は家の中に虫を放ち、異物の索敵を行い、パソコンの裏から大量の黒くてテカった虫を集めた。
虫は全て死んでいるが、葛様はそれを見た瞬間奇声を上げる。

紅恋
 「ぎゃぁぁぁぁぁ!? Gやないけ!? 人間はそないな食わん! さっさと処理せい!」

ハニー
 「成る程、覚えました……あなた達」

私はスカートの裾から虫を飛び立たせると、Gと呼ぶ虫に群がり姿が見えなくなるほど集まると、綺麗に捕食していく。

グチャ、ゴキュ、クチクチ……。

虫たちの咀嚼音は数分間続いた。
しかその音が止む頃には。

ハニー
 「綺麗さっぱりです」

紅恋
 「トラウマになるから二度とそれやめぇい!」

20匹位いたGは綺麗さっぱり私の眷族が食べ尽くす。
葛様はとっても気分が悪いらしく、私はシュンとする。

紅恋
 「と、とりあえずコーヒーや、こりゃ苦労するで」

ハニー
 「御免なさい……」

私はまだまだこの世界のことを何も知らない。
だけども葛様はそんな私に一杯丁寧に教えてくれた。
その結果1週間で私はある程度の家事をすることを覚えた。



***



ハニー
 「……うん、肉じゃが成功です」

1週間、葛様と共に過ごして私はどんどん家事スキルを上達させていった。
そしてそれは葛様も「ハニーは飲み込みが早い」と驚きつつ喜んでくれた。
私はそれが嬉しくて、毎日この人のために奉仕出来ることを楽しんでいる。
しかし葛様は時折とても帰りが遅い日がある。
葛様は自分の事をまだ隠しているのかも知れませんが、私も深くは聞かない。
きっと葛様も詮索されたくないはずだから。
だから私は何も言わずにあの人の帰りを待った。

ガチャリ。

紅恋
 「帰ったでー!」

ハニー
 「お疲れ様でした葛様」

紅恋
 「アカンアカン! やり直しや! そこは御飯にする? それともお風呂? それとも私? やで!」

ハニー
 「えと、御飯は直ぐにでも出せます。お風呂は御免なさい……まだ湧かしてません。えと私……?」

紅恋
 「勿論ハニーや!。ただし食べるのはベットでやでー! って冗談は止めや、今日は肉じゃがか」

葛様は乱暴にスーツを脱いでネクタイを外すと私はそれを受け取る。

ハニー
 「直ぐに御飯の用意をしますね」

紅恋
 「楽しみにしてるでー!」

私は洗濯籠に荷物を入れると、直ぐに晩ご飯の用意を始める。
リビングに丸テーブルを置くと私は肉じゃがの入った御前を並べ、次に炊飯器から御飯をお茶碗に盛り付ける。

紅恋
 「もしもし、なんや大護(だいご)か!? お前懐かしいなぁ! なんや? 日本に帰ってくる? 依頼か?」

ハニー
 「電話の相手……大護さん? 随分親しげ……」

私は晩ご飯を用意しながら葛様が電話する光景を眺める。
随分親しげで葛様も笑顔で応対している。

ハニー
 (そう言えば葛様のご友人、誰も知りません)

葛様は普段朝からお仕事に出て、暗くなると帰ってくる。
決してルーチン化した日常じゃないけど、私は実際の仕事を見たこともない。
きっと私の知らない所で色んな繋がりがあるんだろう。

ハニー
 「葛様、ご用意出来ました」

紅恋
 「おう! じゃあな、依頼あったら何時でも聞いたるわ!」

葛様はそう言うと電話を切った。

紅恋
 「それじゃ晩飯にしよか!」

ハニー
 「あの……さっきの電話、大護さんですか? どのような方で?」

紅恋
 「うーん、まぁ悪い奴やない。機会あれば紹介したるわ!」

葛様のご友人、きっといい人なんだろう。
良いな……と、私は思った。



***



私と葛様の同棲生活は1カ月を越えて、9月を迎えていた。
丁度8月の終わり頃、私たちはPKMと呼ばれ、一般認知されることになった。
同時にPKMの管理は国の物になり、PKMと暮らすには認可証が必要になり、晴れて葛様は保護責任者となり私はPKM認可ナンバー007番の証明カードを頂いた。

今現在この国にいるPKMはまだ100人足らず、まだまだ珍しい私達は街では奇異の目で見られていたが、私は負けなかった。
葛様は私を愛してくれている、それはこの世界で私の救いだった。

ハニー
 「ら〜らら〜♪」

だけど、私は悪意には全く耐性がなかったのかもしれない。


「アレを捕まえりゃいいわけか」

ハニー
 「?」

私は買い物袋を片手に後ろを振り返る。
それは街中で、幾つもの目があった筈だ。
サングラスを掛けたガタイの良い二人組が、私に近づき素早く、首に何かを打ち込む。

ハニー
 「なに……を?」

私は急激に眠くなり、その場で落ちてしまう。



***



紅恋
 「ハニー? どこ行ったんや……まさか!?」

夜、いつものように葛は家に帰ってくると、鍵が掛かっていた事に疑問を覚える。
中に入るとそこにはハニーの靴がなく、全く姿がない。
葛はその事態にある情報を集めていた事で気が付くが、そうではないと信じたかった。
だが、街中の監視カメラをハッキングして、情報を集めた結果……それは最悪の結果だと知る。

紅恋
 「クソッタレが! 最近PKMは争奪戦や、街中で拉致しよるような組織までありやがる!」

紅恋はその組織をあと少しの所まで突き止めていた。
謎のPKMを商品として裏社会に売る非合法組織。

ブルルルル!

ふとその時、紅恋のスマホが着信を捉えた。
そこに表示されていたのは石蕗大護(つわぶきだいご)の名。
それは最大の幸運だったのかも知れない。



***



ハニー
 「……く?」

私は目を覚ますと、真っ暗だった。
両手両足を括り付けられ、何かの袋に詰め込まれている。
だが幸いなことにスカートは縛られていなかった。

ハニー
 「眷族よ……ここを調べて」

私は偵察用の眷族を射出すると、袋の隙間から外に飛び出す。
それから10分後、戻ってくると眷族の情報を私は手に入れる。

ハニー
 (暗い工場の中? 夜の波止場? 周囲に同じような袋が6個、黒い服装の男たちが8人)

……どうやら、誘拐されたらしい。

ハニー
 (どうしましょう? 晩ご飯用意出来てませんわ! 葛様がお腹を空かしてしまいます!)

私は覚悟を決めて眷族を次々解き放つ。
幸い私を縛っていたのは植物性繊維質であり、眷族は容易にそれを消化していく。
これが金属製だったらこうはいかなかった。
眷族が住まうスカートの下を縛らなかったり、相手はビークインの特性を良く知らないようだ。

バサリ!

男1
 「ん? なんの音だ?」

男が一人こちらを向いた。
その瞬間……。

ガッシャァァァァン!

突然工場の入口が突入してきた車に突き破られる。
必然的に注目は私ではなく車の方に向いた。

男2
 「なんだ!? サツか!? 撃て!」

男たちはフロントライトが激しく光り、ハレーション効果でよく見えない中拳銃を乱射した。


 「馬ー鹿、こんな古典的な手に引っかかってんじゃねぇよ!」

ハニー
 「上!?」

私は音を頼りに上を見上げた。
車はオトリだった。
工場の2階の窓からガタイの良い男性が侵入する。
私はその時点で、その人が私にとって敵か味方か分からなかった。
男性は工場の2階から飛び降りると、すかさず落下しながら男たちを撃つ。
その攻撃で4人が額を打ち抜かれて即死だった。
その男は暗闇で顔はよく分からないが、185センチはあるガタイの良い男だった。
地面に着地すると残り4人がその男に銃を向ける。

ハニー
 「攻撃指令!」

私は咄嗟に危ないと思い、男たちの銃に眷族を巻き付かせる。
眷族は金属を捕食出来るほどの攻撃力はないが、時間稼ぎにはなるだろう。


 「あんだ!? まぁいい!」

ダァン! ダァン! ダァン!

その隙に3人が頭を打ち抜かれ、最後の一人に男は近づいた。
車のライトに照らされ、男の全貌が映る。
見た目は30歳かその下か、良く鍛えられた筋肉質で、格好は男たちとは対称的だった。


 「PKMの密輸を専門とする中華系マフィア黒龍会だな?」


 「き、貴様一体!? 警察か!?」


 「警察が問答無用で撃ち殺すかよ」

男は銃を最後の生き残りに向けた。
私はどうするべきか考える。
この人を咄嗟に助けたけど、まだ味方かどうか分かっていない。
私はこの人に信用はしきれない何かを感じたのだ。


 「お前……ハニーちゃんか? 紅恋葛、この名に覚えは?」

ハニー
 「葛様をご存じなのですか!?」

私は驚いた。
この人は私のご主人様を知っている。
男は銃を逆さまに持つと、ストックで相手の頭部叩く、男はその場で昏倒した。


 「後は警察にでも任せりゃ良いだろう、任務完了だからな」

男は辺りの袋を確認すると、タバコを取り出した。

ハニー
 「あの……貴方は一体……?」


 「誰でもいいだろう、とっとと行きな」

男は出口を指差した。
私は一応この人に頭を下げると、工場を出た。

紅恋
 「ハニー! 良かった! 無事やったんやな!」

ハニー
 「葛様! 申し訳ございません! ご夕飯の用意が!」

工場を出るとそこには葛様がいた。
私は葛様にご奉仕する立場なのに、こんな迷惑をかけてしまうなんて思っていなかった。
急いで帰って御飯を作らないと! なんて思っていると葛様は。

紅恋
 「あっはっは! なんやねんそれ!? 自分誘拐されたって自覚あるん!? あっはっは!」

ハニー
 「えと……そのようで」

紅恋
 「ええわ……今日は外食や! 手ぇ繋ぐで!」

そう言って葛様は手を差し伸べてきた。
私はその手を握ると葛様と一緒に夜の街を歩く。

ハニー
 「そう言えば、すっごく危険な人に助けられました」

紅恋
 「大護か?」

ハニー
 「ええ!? あれが前に電話されていた大護さんなのですか!?」

私はその事実に驚いた。
私は正直あの人の気配が気分のいいものではなかった。
何か、暗いものを感じたと言うか……兎に角危険だと感じた。
その人が、葛様のご友人の大護さんだなんて……。

ハニー
 「……決めました、二度とこのような事がないように、葛様は私が全力で護ります!」

紅恋
 「いやいや! 俺より自分をやな!?」

私は二度とこのような事がないように誓う。
この方の幸せは、私の幸せだ。
もし葛様に出会えなかったら、私はどうなっていたのだろう?
それは……私には分からない。



突ポ娘 サイドストーリーズ
力の章 ビークインは幸せになれるのか


KaZuKiNa ( 2019/07/07(日) 17:32 )