突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 サイドストーリー
戦車の章 伊吹は今日も誰かのために頭を悩ませる
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・伊吹はある日トルネロスと再会した。
トルネロスは彼女にある悩みを相談する。
伊吹は持ち前のお人好しっぷりでそれを助けるのだ。

突ポ娘 サイドストーリーズ
戦車の章 伊吹は今日も誰かのために頭を悩ませる



伊吹
 「一日一歩、三日で三歩〜♪」

アタシは毎日日課のように散歩を繰り返す。
1月、あの戦いを終えて既に2週間、いつも通りの日常を少なくとも家族は取り戻していた。

伊吹
 「あれ……あの姿は〜」

アタシは道すがらで、見覚えのある姿を発見した。
それはトルネロスだ、一見すると小学生位の子供に見えるが実際には大きな力を持つPKMだ。

伊吹
 「トルネロス〜、無事だったんだね〜」

アタシはトルネロスの元に駆け寄ると、トルネロスは暗い顔を上げた。
なんだか凄く辛そうで、アタシは心配した。

伊吹
 「ど、どうしたの〜?」

トルネロス
 「あの時のお人好し……か、奇遇だな」

伊吹
 「ここ、散歩コースだからねぇ」

そう言えば、馴れ初めってこの近くの民家の上だったんだよね。
屋根に登っちゃ駄目って教えたのが最初だった。

トルネロス
 「アレから色々あってな、今は嵐花(らんか)という名前を頂いている」

伊吹
 「え〜!? 保護責任者を頂いたの〜!?」

アタシは純粋に驚く。
風来坊というか、人間の枠に囚われることを嫌った彼女が人間のパートナーを得たことが驚きだった。

嵐花
 「それはいいんだ……問題は、いやついてきてくれ」

嵐花はそう言うとやや不安げな足取りで歩き出す。
彼女が向かったのは繁華街の片隅、古物商店だった。

伊吹
 「貴方の責任者は古物商を営んでいるの〜?」

嵐花
 「ああ、今はいないみたいだが」

ふぅん、結構珍しい仕事かも。
古物店は古くさい木造民家で、家の中は所狭しと物が置かれている。
そんな物置のような空間の奥に一人カウンターで項垂れる一人の女性が見えた。

嵐花
 「ボルトロスだ、名を雷花(らいか)」

伊吹
 「ボルト〜!? あなた達もしかして〜」

嵐花はコクリと頷く。

嵐花
 「同じマスターを戴いているのだ」

なんと、因縁のトルネロスとボルトロスが同じ保護責任者を持つなんてね。
だとすると、トルネロスのこの燃え尽きたかのような顔は。

伊吹
 「ボルト〜……雷花ちゃんとは決着はついたの?」

嵐花
 「ついた……私の勝ちだった……」

そうか、嵐花ちゃんは勝ったんだ。
でもその顔は一切晴れはしない。
嵐花ちゃんはその時の記憶を思い出しながらワナワナと震えていた。

嵐花
 「アイツはわざと負けたんだ……アイツにとってもう私なんてどうでもいいんだ!」

そうか、それが原因で嵐花ちゃんはこんなに落ち込んでいるのか。

伊吹
 (嵐花ちゃん……結構、構ってちゃんなのかも〜)

嵐花ちゃんの目は今も雷花ちゃんに向いている。

嵐花
 「! マスター……!」

店の奥から嵐花の保護責任者が現れた。
雷花は保護責任者が現れると嬉しそうにじゃれついた。
保護責任者はまだ年若く20代位だろうか。
身長はそれなりにあるようで黒縁眼鏡をかけている。
今時では珍しく甚平柄の和服を着ていた。

嵐花
 「うぅ〜、雷花ぁ〜……」

保護責任者が現れると、嵐花ちゃんは恨めしそうに雷花ちゃんを睨んだ。
アタシはその微妙な変化を見逃さない。

伊吹
 (嵐花ちゃん……もしかしてマスターを独り占めに悔しがってる?)

嵐花ちゃんに比べて、雷花ちゃんは見ているだけでも微笑ましい光景だった。
保護責任者との関係も良好のようで、二人して笑っている。

伊吹
 「とりあえず〜、ご挨拶しよっか〜?」

アタシはそう言って古物商の正面からお店に入る。

店長
 「いらっしゃ……嵐花? そのお客さんは?」

保護責任者の店長は暇そうに新聞に目を通していたが、嵐花ちゃんと一緒だったため、アタシに注目する。

雷花
 「ワーオ、ダイナマイト」

雷花ちゃんが開幕ポカンと口を開けた。
どことは言わないが、間違いなく注目したのは胸だろう。

伊吹
 「どうも〜、嵐花ちゃんのお友達の伊吹です〜」

雷花
 「友達? アンタ友達いたの?」

雷花ちゃんは嵐花ちゃんに比べると少し大人っぽい。
と言っても中学生位の少女に見えるし、でんでん太鼓みたいな物が巻き付いていなければ、人間とは区別し辛いだろう。

嵐花
 「う、うるさい……伊吹は、友達っていうか……」

店長
 「どうも嵐花がお世話になっているようで。僕は蘭(あららぎ)と申します」

蘭さんは新聞を閉じると、深々と会釈する。
やっぱり、どちらかと言えば好青年だよね。
結構いい人に拾われたみたい、事実雷花ちゃんは本当に幸せそう。

伊吹
 (でも一方で嵐花ちゃんは〜……)

嵐花ちゃんは今も不機嫌そうに雷花ちゃんばかり見ている。
でも時折蘭さんに視線を向けており、複雑な乙女心が垣間見られた。

伊吹
 (あ〜、そっかぁ〜嵐花ちゃん、この人のこと好きなんだ、それでこんな膨れてるんだぁ)

なんとなくこの家の人物相関が理解出来ると、なんだかとっても微笑ましい事に気付く。
嵐花ちゃんは、本当は寂しがり屋なんだろう。
それで雷花ちゃんにはそっぽを向かれるし、蘭さんも気になって仕方がないのだ。
でも二人とも嵐花ちゃんの望むべき反応をしてくれず癇癪を起こしている。

伊吹
 (う〜ん、なんだかすっごく面白い状態みたいだけど、このままじゃ嵐花ちゃんが拗らせちゃうかも)

出来れば、嵐花ちゃんが拗らせない程度に、この関係が良好になればいいんだけど。


 「伊吹さんは、こういった古物に興味はありますか?」

伊吹
 「う〜ん、御免なさい〜、骨董品は流石に〜」


 「ふふ、ですよね。正直僕も親から仕事を引き継いだだけで、そこまで古物が好きなわけじゃないんですよね」

特にこの店は純粋な骨董品以外もかなり扱っているみたい。
正直使い道あるのかっていうような物もあり、買うのは本当に物好きなんだろうな〜。

雷花
 「あら、私は嫌いじゃないわよ? じゃなきゃこんな所に嫁いだりしないわ」

嵐花
 「わ、私だって!」

伊吹
 「うふふ〜、二人に愛されてますね〜」


 「おかげさまで」

伊吹
 (う〜ん、これは結構難しいなぁ)

嵐花ちゃんの構ってちゃんをなんとかするのは可能そう、だけど他人のアタシが言ってもいいものか。
既に雷花ちゃんは本当に嵐花ちゃんが眼中に入ってないらしい。


 「折角のお客で嵐花のお友達なら、お茶の一つでも用意しないとね」

雷花
 「なら、私が淹れてきてあげるわ」

雷花は立ち上がらないまま、ふわりと浮かんだ。
翼やサイキック等ではなく、特殊な飛行タイプのボルトロスらしい離陸の仕方だけど、色々と不味いことに雷花はスカートだった。

嵐花
 「お、おい!? パンツ見えてるぞ!?」

雷花
 「馬鹿ね、パンツは見せるためにあるのよ」

嵐花
 「なに!? そうだったのか!?」

伊吹
 (違います。まぁでもこれはチャンスかな?)

明らかにパンチラを越えて、パンモロする雷花ちゃんを必死に隠して二人は奥へと引っ込んでいった。
私はその隙に、蘭さんに近寄る。


 「? 何か?」

伊吹
 「うふふ〜、嵐花ちゃんと雷花ちゃんはどう〜?」


 「どうって……そうですね。雷花はよく働いてくれるし、気立ての良い子です。嵐花も頑張り屋で」

伊吹
 「う〜ん、でもね〜? 嵐花ちゃんは不満みたいよ〜」


 「え?」



***



嵐花
 (はぁ……何やってるんだ私は)

私は茶葉を探しながら一人愚痴る。
今までボルトロスと決着をつけることが生き甲斐だった。
だけどこの世界に顕現したとき、私は海上にボルトロスの気配を感じて飛び立った。
しかしそれは罠で、実際にはボルトロスはまだ顕現していなかった。
私は組織に捕獲され、言うことを聞かないのを見ると、ダーク化処理を施されたが、それも根性で耐えた。
そして伊吹とシェイミに助けられた後、路頭を迷った私を拾ってくれたのは今のマスターである蘭だった。
しかし、いざこの人に仕えてもう終わりにしようかって思っていたら、そこに雷花はいた。
私は勇んで雷花に挑むも、雷花はまともに立ち会おうとせず、いざ戦ってもあっさりと負けを認めた。
今や雷花には私との決着より、マスターと今の方が大切だった。
マスターも、雷花ばっかり構ってる気がして、私は益々疎外感を覚えた。

嵐花
 「うん? 鏡?」

私は茶葉を探してキッチンの棚を探すと、古ぼけた手鏡を発見する。
手鏡はこちらを覗くと、そこには私の顔が映る……しかし。

雷花
 「ちょっと〜、茶葉まだ見つからないの〜?」

嵐花
 「うううう……!」

手鏡に映っていたのは私だ。
だけど、それは私じゃない……今の私は。

嵐花
 「ああああ! もうやってられるか−!!!」

雷花
 「!? アンタその姿!?」



***



ビュゥゥゥ……!


 「! 風が……?」

突然室内に風が吹く。
どこかからの隙間風かとも思ったが様子が違う。
次第に風は直強くなっている。
古民家はガタガタと震え始めた。

雷花
 「マスター! 嵐花が!?」

伊吹
 「!? 嵐花ちゃんがどうかしたの〜!?」

雷花ちゃんは随分余裕がない様子で奥から飛び出してきた。
その直後、緑の鳥が店内を駆け抜ける!
暴風が店内を撒き散らし、雷花ちゃんは外に吹き飛ばされた。
緑の鳥……それは姿の変わった嵐花ちゃんだった。

伊吹
 「アタタ……なに、フォルムチェンジしたの?」

私は暴風に吹く飛ばされて、地面に突っ伏すと腰を擦りながら、上を見上げる。


 「まさか……アレは映し鏡を見てしまったのか?」

伊吹
 「映し鏡〜? 何それ〜」


 「あれは霊獣フォルム、映し鏡の中に封印されたもう一つの嵐花です」

アタシはトルネロスの詳しい生態なんて知る由もない。
だけど、今の彼女がかなりやばいことだけは分かる。

嵐花
 「雷花−! アンタだけはー!?」

雷花
 「やば……!」

嵐花ちゃんはその両腕を大きな翼に変え、髪は長く鬣のようになっている。
そのシルエットは巨大な鳥。
嵐花ちゃんは凄まじいスピードで雷花ちゃんに襲いかかる。

雷花
 「この戦いはアタシの負けで良いって言ってるでしょ!?」

雷花ちゃんは紙一重で回避するが、空中での機動性は圧倒的に嵐花ちゃんが上回る。

嵐花
 「アンタばっかりマスターとイチャイチャしてー!」

雷花
 「! アンタのそういうウジウジしたところ、嫌いなのよ!」

雷花ちゃんが電撃を放った。
電撃は雷花ちゃんの脇を越え、周囲は風と雷が飛び交う事態になった。

雷花
 「大体なんでアンタが私とマスターの関係を気にするのよ!?」

嵐花
 「私だって構って貰いたいんだー!」

伊吹
 「ち、痴話喧嘩で災害起こさないで〜!?」

嵐の霊獣と雷雨の化身がぶつかり合う。
私達はその暴威に耐えながら、その戦いを見舞っていると、突然空に穴が空いた。

伊吹
 「え? なに〜?」


 「!? 彼女は!」

それは二人に似た女性だった。
赤毛のショートカットで小麦色の艶やかな肌の爆乳筋肉女性が腕を組んで空から降りてきた。
風雷の二人は呆然と見上げた。

女性
 「この! 馬鹿もんがぁー!!!」

空気が震える程の怒声を出し、謎の女性は二人にげんこつ(むしろアームハンマー?)を叩き込む。

嵐花
 「いっ!?」
雷花
 「んぎゃ!?」

頭に星が飛ぶほどの痛烈な一撃に、二人は地面に落下する。
空から嵐と雷雨が消え去ると、空に虹がかかった。
ガチムチの女性は地面に降り立つと、蘭さんは駆けた。


 「豊花(ゆたか)! 帰ってきてくれたんだね!」

豊花
 「ダーリン! 会いたかったぞー!」

豊花と呼ばれたガチムチ女性は蘭さんに飛び込むと、二人は抱き合った。
その様は随分仲の睦まじいカップルのようだった。

雷花
 「うう……あなたランドロス……?」

嵐花
 「どうしてマスターと……?」

二人はよろよろと顔を上げて二人を見た。

伊吹
 「あの〜、つかぬ事をお伺いしますが〜、その方とは〜?」


 「彼女は豊花、私の最初のPKMで」

豊花
 「妻じゃ」

そう言って見せる結婚指輪。
それに一番反応したのも二人だった。

嵐花&雷花
 「「えええー!?」」

豊花
 「改めて自己紹介じゃ! ランドロスの蘭豊花じゃ!」



豊花さんは、この世界に現れてもう半年になるらしい。
かなりの古参PKMみたいで、彼女は夫さんと結婚してその後嵐花ちゃんと風花ちゃんの気配を感じて捜しに行ったそうだ。
そのまま蘭さんはまず雷花ちゃんに会い、豊花さんとの約束で大切に保護した。
次に嵐花ちゃんを見つけ、同様に保護したらしい。

雷花
 「よーするに、私達に初めからフラグなんてなかった……ガク!」

嵐花
 「なんでこーなるの……ガク!」

二人は衝撃の事実を知り、見事に燃え尽きた。

伊吹
 「あはは〜、見てる分にはなんだか楽しかった気がするねぇ〜」

豊花
 「なんだかよく分からんが! まずは片付けだ! 全くアイツら大切な商品を散らかしおって!」

伊吹
 「手伝いま〜す♪」

アタシはそう言うと豊花さんと一緒に片付けを開始した。
それにしても豊花さんアタシと同じくらい身長も高くて、凄い爆乳。
同様に相手も驚いていたけど、すごいパワフルな人だなぁ。

伊吹
 (それにしても、嵐花ちゃん〜、ご愁傷様!)



突ポ娘 サイドストーリーズ
戦車の章 伊吹は今日も誰かのために頭を悩ませる end

KaZuKiNa ( 2019/07/07(日) 16:42 )