突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 サイドストーリー
教皇の章 金剛寺晃の選択

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・戦争が起きた、ポケにゃんの店長金剛寺晃は家族を守る為に選択を迫られる。
頼れる者は少ない、それでも晃は最善の選択を選べるのか?

突ポ娘 サイドストーリーズ
教皇の章 金剛寺晃の選択



12月某日、メイド喫茶ポケにゃん。


 「はーい! オムライス出来上がり♪ 8番テーブル席に運んでね♪」

希望
 「はい、お運びします♪」

私は今日も盛況なポケにゃんの全体を見渡す。
もうすっかり慣れたものでジグザグマ娘の希望(のぞみ)も笑顔で接客出来ている。
最初の頃は慣れない接客業に覚束なかった皆も今じゃ、どこに出しても恥じないだけのスキルを身につけている。
そんな皆が立派に働いているのを見て嬉しく思うが、しかし足りない二人に私は憂いを覚える。


 「華凛ちゃん……凪ちゃん、どうしたのかしら?」

彼女たちには連絡も入れたけど、繋がらなかった。
それどころか、直接見に行っても玄関は破壊されており、警察の捜査線が張られていた。
家族達も皆不安に思ったが、私もこの仕事があり、彼女たちの安否を知ることも出来ない。

流花
 「オーダーです、5番テーブルショートケーキとコーヒーを」


 「了解♪」

私はドラミドロ娘の流花から伝票を受け取ると、直ぐにケーキの用意をする。
それにしても、最近おかしな事ばかりだ。
近くで殺人事件は起きるし、ここ一週間凄い勢いでPKMが顕現している。
確実に誰もが分かるレベルで世界は変容しつつある。


 「あれ? 今の店の外に……」

私は常に店の中と外に気を配っている。
何故なら、メイド喫茶は中に入りたくても気後れして入れないお客さんも多い。
だから私はそんなお客さんを少しでも、入りやすくするため、内装は普通のファミレス寄りにして、BGMもジャズなど落ち着いた曲を選択した。
そんな私があの姿を見逃すはずがない。


 「! すこし外すわよ!」

団子
 「にゃ? 店長?」

私は早速ショーガラスの向こうの道路に見えた女の子を保護に向かう。


 「あなた! どうしたの!?」

私は外でふらつく襤褸を着た少女に声をかける。
襤褸の少女はフードが外れると、その細った顔を見せた。

襤褸の少女
 「にゃ、あ……」

それは猫のような容姿をしたPKMの少女だった。
耳はピンク色で、毛並みはぼろくしゃだけどピンク色だ。


 「事情を聞くのは後で良いわね! 中に入りなさい!」

私は少女を抱きかかえると、直ぐさま店に入り、バッグヤードに向かう。


 「店長〜?」


 「照、暫くキッチン入って!」

私はキッチンで作業できる照をキッチンに入れると、直ぐに生活スペースのあるバッグヤードに引っ込む。
とりあえず、暖かい飲み物を作ろう。


 「ちょっと待ってね! 今温かいココアを振る舞うから!」

襤褸の少女
 「ここあ……?」

私は電気ケトルの電源を入れると、直ぐにココアの用意をする。
ケトルの水は直ぐにお湯に変わり、それでココアの粉末を溶かすと、少女に差し出した。


 「どうぞ♪ 外は寒かったでしょう?」

少女は不思議そうにカップを受け取ると、湯気立つココアをじっと眺める。
一度、私の顔を見つめたので私はウィンクすると、少女はココアをゆっくりと口に含んだ。

襤褸の少女
 「美味しい……」

少女は口から湯気を吐き、ようやく安堵した表情をした。


 「貴方、お名前は?」

襤褸の少女
 「ない……」


 「うーん、それじゃどうしましょうか?」

多分この子エネコよね。
容姿から見て、普通じゃないのは分かる。
多分顕現したばかりなのだろう、かなり過酷な世界の出身なのかしら。


 「結構汚れも目立つわね……お風呂の用意もしないと!」

希望
 「ママ、その、大丈夫ですか?」

そこへ、心配そうな顔をした希望がバックヤードに現れる。
少女は希望の格好にキョトンとしていた。
パッと見だと、同じくらいの背丈で、年齢も同じくらいに見えるけど、あまりに違いすぎる境遇の差に驚いているのかも。


 「丁度良かったわ、お風呂湧かしてくるから相手して頂戴!」

私は様子を見に来た希望に少女を任せると、急いでお風呂場に向かう。


 「オペレーターの方は大丈夫かしら……ここから客入りもピークに向かっていくし……」

私はお風呂場に火を入れると、直ぐにお湯が湯船を満たしていく。
後は10分も待てば湯が張るだろう。


 「後は着替えの用意だけど……」

体格的には希望と同じくらいに思えたけど、かなり体重が軽かった。
着替えは希望の控えで良いとして、とりあえず食べられる物も必要ね。


 「固形物は食べられるかしら……?」

私は少女たちの元に向かうと、希望と少女が会話しているようだった。

希望
 「そう、大変だったのね……」

エネコ娘
 「……うん、お姉ちゃん、ここは何処なの?」

希望
 「大丈夫、ここは安全よ」

希望は少女を抱きしめると、そう言って母親のように少女を安心させた。
私はそんな希望の後ろから近づくと。


 「ありがとう希望、後は任せて頂戴」

希望
 「あ、はい……ママ、あの子奴隷だったみたいです」


 「奴隷……それであんな格好だったのね」

少女は襤褸の下も人の服装とは思えない格好だった。
顕現するPKMも様々だ。
この世界で突然擬人化した子も、初めから擬人化した世界で生まれた子もいる。
あのタイプの子は擬人化した世界の生まれだろう。


 「待ってて、直ぐ食べられる物を用意するから」

希望
 「それじゃ私は表に戻ります」

希望が仕事場に戻ると、再び二人っきりになった。
私は事情とかは深くは聞かない。
それぞれにはそれなりの事情がある、私はこの店をそんな訳ありなPKM達の駆け込み寺に出来ればいいと思っている。


 「因みに、何か食べたい物はある?」

エネコ
 「よく分かりません……だけどお芋はご馳走でした」

お芋がご馳走か……もしかして戦争でもしていたのかしら。
相手の世界の事情が分からないから何とも言えないけど、そもそも知識という物が殆ど感じられないわね。
いずれにしても、やはり過酷な世界だったのでしょうね。


「シチューが良いかしら、弱っている身体でも食べられるわよね」

とはいえ用意するならお風呂の方が先か。
とりあえず手早く野菜を刻み、鍋の用意をする。
その間も私は少女に目配せをし、用意を急ぐ。


 「もう少しで用意できるからね♪」

エネコ娘
 「良い匂い……」


 「さぁ、まずは身体を綺麗にしないとね?」

私はお風呂の準備が出来ると少女の手を引いて、お風呂に連れて行く。



***



それから2時間後、急激に忙しくなる中、私もキッチンに戻らざるを得なくなる。
それにしてもいつもならPKM対策部がそろそろ回収に来ても良い頃合いのはずだけど。


 (やっぱり変だわ……何が起きているのかしら?)

店内を眺めると、席は満席。
だがいつもの活気とは何か違った。


 「希望、対策部には連絡したの?」

希望
 「はい、店長があの子を連れてきて直ぐに」

私の一番傍にいた希望伝えたと言う。
にも関わらず回収班が来ないのは不安ばかりが募る。
そして、この店内に充満する違和感が、遂に動き出す。

ザワザワ、ザワザワ!


 「? 騒がしくなってきたわね……」

店内の全員が設置されたテレビに注目する。
そこには国会中継が流れていた……しかしそこに居たのは政治家じゃない。

アセリナ
 『我々PKMが何故、人間によって虐げられなければいけないのか!? 我々は立たねばならない! PKMによる自治権の獲得! PKMのユートピア! PKMの真の自由を獲得するために! 全人類に対して宣戦を布告する! これは冬の時代を乗り越える独立戦争である!』

ザワザワ、ザワザワ!


 「……偉いことになったわね」

希望
 「……こんなのって」

希望は胸を抑えて、その事態に不安を募らせる。
不安に胸が張り裂けそうなのは、他の皆も一緒だ。
同様に店に訪れていたお客たちもざわついてしまう。
変な事態……それはこんなことすら引き起こすのか。


 (華凛ちゃん達が失踪して、今度はPKMによる宣戦布告?)

何かがおかしい、でもそれがなんなのかが全く分からない。
だけど、私はこんなときでも何をすべきか理解している。


 「ご主人様の皆様! ご心配なく! 我々ポケにゃんの一同はご主人様方とより良い関係を築いていきますので!」

希望
 「っ! 私たちは皆さんのメイドですっ! 一杯ご奉仕させてくださいませ!」

団子
 「そうだにゃ、ポケにゃんはご主人様に最高のサービスでもてなすにゃ」

不意に、生首が宙を舞う。
星火が自分の頭部を高く投げたのだ。

星火
 「……おーし、上等じゃん! 戦争がなんだ! 私たちはメイドだー!」

流花
 「そ、そうね……私たちがご主人様達を不安にさせる訳には……」


 「そのためにはより一層のご奉仕が必要」

PKMたちの様子に、最初は不安そうだったお客たちも徐々に不安を消していった。


 「ふふ、とはいえ皆さんにはお詫びとしてコーヒーを無料で配らせて頂くわ♪」

店内の雰囲気が少しだけ和らぐ。
私は兎に角皆を安心させる事が重要だと考える。
いずれにせよ、事態は収束するはず。
……しかし、事態は最悪の方向へ収束していく。



***



 「やっぱり駄目か……通信障害かしら?」

夜、仕事が終わり私は改めてPKM対策部の方にもう一度連絡を入れようとしたが、それは出来ない。
宣戦布告の影響なのか大規模通信障害が発生しており、もしかしたら東京の基地局がやられたのかも。

星火
 「冗談抜きにこのままだと明日の仕事に響くよねぇ」

団子
 「にゃ〜……悪い予感するにゃ」

皆も不安で一杯なのだろう。
ズガドーン娘の星火はさっきから、イライラしているし、ニャスパー娘の団子は表情に影を落としていた。
今の所、宣戦布告の影響はこちらまで伝播してはいない。
しかし客の中にはPKMに対する不信感を強めた人もいただろう。

流花
 「PKMの為のユートピア、ですか……」

希望
 「私には良く分からない……」

エネコ娘
 「……」

誰もが明日に安心できない。
ただ、それでも日々を生きなければ……。



***



そして数日が経った。
当初鎮圧は直ぐだろうと思われたPKM連合は東京を制圧した。
国家は鎮圧のためとはいえ、痛い損害を出し、遂に米軍が動き出す。
しかし空母打撃軍が出した結果は東京を火の海に変えただけだった。
そして打撃軍は報復によって壊滅。
PKM連合は東京を放棄し、移動を開始したとのことで一斉に疎開指示が出された。
私達もまた、悔しいことだが疎開を選ぶのだった。


 (どうしてこんな事に……)

私は軽自動車を運転しながら後ろに疲れた顔の家族を乗せていた。
疎開はまず渋滞からのスタートだった。

星火
 「新天地でもポケにゃんの営業できると良いね〜」


 「うん、でも全然調理具持って来られなかった」


 「大丈夫よ! 絶対なんとかするから!」

店舗は残念ながら放棄せざるを得なかった。
調理器具など、必要な多くの物が今も店舗に置いてある。
あの辺りは今頃どうなっているだろう?
PKM連合は急速に勢力を拡大させているらしい。
人間とPKMの亀裂も、それは目に見えて変わり始めている。


 (少しずつ…・・・良くなっていたのよ? 街の人達がPKMに向ける目線は本当に少しずつ……それが)

私はまだショックからは抜けきれてない。
もし同じだけ信頼を回復するなら、どれだけの努力が必要だろう。
それでも歯を食いしばって頑張るしかないのか。

エネコ娘
 「戦争……ここでも戦争」

結局引き取り手もなく、ウチで引き取ったエネコの由恵(ゆえ)は不安そうに俯く、希望はそんな由恵を優しく抱きしめた。

希望
 「大丈夫だよ、私が絶対に守るから」

由恵
 「希望お姉ちゃん……」

希望は由恵を特に気にしていた。
境遇はまるで異なる二人だが、その仲は私から見てもとても良い。
願わくば、こんな悲惨な世界ではなく、もっと二人に優しい世界だったらいいのに……。

団子
 「あれ、何にゃ?」

不意に団子は前方を指差した。
そこには赤い光りが誘導灯のように振られている。


 「検問?」

それは交通整理のように見えたが、一つ一つ車をチェックしているようだ。
無理もないか……こんな状況じゃ神経質にもなる。
そうして遅々として進む中、私たちは検問所の前で停車する。
ヘルメットを被った警察官が近づいてくる中、私は自衛隊と思しき物々しい装備の集団が道路の脇に控えていることに気付く。

警官
 「失礼ですが、身分証か運転免許証の方、ご確認させて頂きます」


 「これで良いかしら?」

私は免許証を差し出すと、警察官はリーダーを取り出して免許証を読み取る。
一瞬、警察官の顔が険しくなるのを私は見落とさなかった。
嫌な予感……それも一生で一番クラスの悪い予感が脳を過ぎる。
お願い……当たらないで。

警官
 「失礼ですがPKMは何人?」


 「6人よ」

私はやや警戒しながら人数を言うと、警官は言った。

警官
 「申し訳御座いませんが、PKMはこちらで預からせて頂きます」

私はその言葉に耳を疑った。
嫌な予感は、こうして私達を嘲笑うのか。


 「? どういうこと?」

警官
 「現在PKM連合は次々とその数を増やしており、臨時政府の元PKMの隔離が決定しています」


 「な!? 彼女たちを実験動物か何かのように扱うわけ!?」

私は今、後ろにいる自衛隊の意味を知った。
彼らが物々しいのはPKM連合を警戒してじゃない、確実に人の住みかにPKMを入れないためだ。

警官
 「ご理解ください、今は戦時なんです」


 「だからって! ここまで苦労して皆逃げてきたのよ!?」

希望
 「ママ……」

皆不安そうにしている。
私はそれを見て、ハンドルを強く叩いた。


 「良いわよ! だったら引き返す! それなら文句ないでしょ!?」

警官
 「いけません! 危険すぎます!」


 「アンタたちの方がよっぽど危険よ!」

私は車を降りて、戻ろうとすると数人の警察官が私を取り押さえる。

警官
 「落ち着きなさい! 現在PKM連合は人間となると無差別に攻撃をしているのですよ!? そして防衛線は直ぐそこまで迫ってるんです!」

私はそれでも前に進もうとした。
私は体格も良いし、なにより身体を鍛えているから、警察官3人がかりでも抑えられはしない。
だけど、それを後ろで見ていた自衛官は無情な宣言をする。

自衛官
 「おい、PKMの方を抑えろ!」


 「! 希望! 由恵を連れてアンタたちだけでも逃げなさい!」

希望
 「ママ!?」

団子
 「にゃ……二人を跳ばすにゃ!」

団子が耳を開く。
ニャスパーの高いサイコパワーは本来コントロールは出来ない。
しかしこの時ばかりは希望と由恵を車から弾き飛ばした。
数百メートルを飛んでいく二人に、自衛官も直ぐに追うことは出来なかった。
私は地面に抑え付けられ拘束され、家族もまたホールドアップして抵抗しない。


 (御免なさい貴方たち……私ではこれ以上は無理みたい)

私は精一杯PKMと人間の架け橋として頑張ってきた。
でもそれも限界かもしれない。
ただ、争いだけは絶対に否定する。
家族を戦火には絶対に巻き込ませない。


 (希望、御免なさい……でも貴方は私の希望(きぼう)なの)

由恵を任せたこと、きっと希望は辛い人生になるだろう。
それでも、自由は何よりも尊い。
だから……生きて!



突ポ娘 サイドストーリーズ
教皇の章 金剛寺晃の選択 end

KaZuKiNa ( 2019/07/06(土) 18:14 )