突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 special
SP16

#16



フーパを取り囲むポケモン達。
それはこのゲームに参加したポケモン達。
今魔神に自我を蝕まれ、全てを終わらせようと自暴自棄になるフーパを止めるために集まった。

俺は自分の腕で浅い呼吸をするジラーチを見ると、ジラーチは微笑を浮かべた。
まるで俺たちの行動を嬉しく思っているような微笑みだ。


 「ごめんなジラーチ、お前の親友を傷付ける事になるかもしれない」

ジラーチは何も言わない、すでに意識が落ちかけており返事が出来ないのだ。
ただ、俺の手を少しだけ強く握った。


 「皆、フーパを止めるために力を貸してくれ!」


 「うん、それがご主人様の願いなら」

マギアナ
 「当然ですよ、家族が悪いことするなら引っぱたくんですよね?」

鐃背
 「カカッ! 今回は龍神として働いてやろう!」

アマージョ
 「ふん……! アタシは地獄に堕ちるつもりはないんだよ! フーパに楽園へ連れて行って貰うんだからさ!」

それぞれの戦う意思は違う。
俺のために戦う茜たち、家族のために戦うマギアナとシェイミ、自分の為に戦うアマージョ、皆バラバラだ。


 「憎しみで戦うな、憎しみは憎しみしか産まない、そんな憎悪ではフーパは救えない」

保美香
 「殺す気でくる相手にこっちは殺気を持つな等、甘いですわね……ですがオーダーを通すのが一流のメイド」

華凛
 「安心しろ、戦いの生み出すものを、私が知らない訳ないからな」

伊吹
 「助けるよ〜、それがまだ救えるなら〜」

皆が武器を持った。
フーパのリングが怪しく宙を踊る。

保美香
 「それじゃ行きますわよ!」

まずは保美香が飛び出した!

フーパ
 「お前から死にたい!?」

リングが保美香の前に展開する!
保美香は急ブレーキをかけて止まると、リングからは何も出ない。
恐らく入口だ、迂闊に入れば次元の狭間行きだろう。
保美香の判断は正しい。

アマージョ
 「ボサボサしてんじゃないよ!」

アマージョが鼓舞を行うと、全員に攻撃バフが掛かる。
それに合わせるように鐃背が飛び込んだ。

鐃背
 「強いなフーパよ! 出来れば本当の妾で戦いたかったぞ!」

鐃背はその場でムーンサルトを行い、尻尾でフーパを殴打する。
ポケモンの技で喩えれば『ドラゴンテール』といった所か。

シェイミ
 「シードフレア!」

マギアナ
 「フルールキャノン!」

更に追撃をかけるのはシェイミとマギアナ。
二人の奥義ともいうべき専用技がフーパに炸裂する。
フーパの身体が煙に飲み込まれ見えなくなると、俺は危惧を抱き叫ぶ。


 「姿を見失うな! 何をしでかすか分からんぞ!」

ツェン
 「なら! これで!」

ツェンはアイテムをその場でアイテムを合成し、強力なアイテムにする。
そのアイテムを煙の中に投げると、空気が弾けて煙を吹き飛ばす。

ツェン
 「風の上級魔法相当! これならダメージも――!?」


 「いないぞ!?」

ディン
 「ぐあぁぁぁ!?」

煙の中にフーパの姿はなかった。
すでにシェイミたちの攻撃の前に姿を消していた。
そして今ディンの首を掴み、持ち上げる腕があった。

アマージョ
 「腕だけだって!?」

フーパ
 『ふふ……アッハッハ! 踊れ!』

その瞬間空中にフーパの腕6本が自在に宙を舞う。
そしてその腕たちは茜たちに襲いかかる。


 「く!?」

茜はフーパの腕が繰り出すオールレンジ攻撃をなんとか回避するが、それでも攻めあぐねている。
すでにディンも意識を失い、その場で倒れ、他の者も対処に困っている。

悠和
 「はぁ!」

悠和ちゃんはなんとか動きを見切り風の剣で腕の一本に斬りかかる。
しかし腕は、悠和の攻撃を指二本で受け止めると、6本全てが悪の波動を放った。


 「きゃっ!?」

保美香
 「この……! ○ァンネルもどき!」

保美香が腕に斬りかかるが、俊敏性では腕の方が素早い。
というよりはリングを伝ってワープする腕を捉えろという方が無理があるか!


 「皆伏せろー! フレア!」

そう、それが正解だ。
ゲームの世界では喩え無差別攻撃でも味方を巻き込むことはない。
その無差別攻撃ならこの場に存在する限りよけようがない。
勿論俺は味方扱いじゃない生身だから、なるべく後ろに離れるが離れすぎるつもりはない。

フーパ
 「ハハハ! 簡単にはいかないか!」

腕を焼かれて、溜まらずフーパが現出した。
とはいえ、フーパの顔からは何も焦りがない。
痛覚がないのか、それともそれさえ狂気が上回るのか?


 「フーパ! 本当にお前はそのままでいいのか!? ただの魔神でいいのか!?」

フーパ
 「うるさい、煩いよ!!! それ以上あたしを惑わすな! あたし、私は……世界に復讐を……?」


 「? フーパ?」

フーパの様子がおかしい。
俺を拒絶している事に違いはないが、今いたずらっ子のフーパが表に現れた?
でもそれは凄く曖昧だ、まるでぐちゃぐちゃに混ざった絵の具のような印象を受ける。
今フーパは完全な魔神ではないのかもしれない。
だが復讐と言った?

フーパ
 「くぅ!?」

フーパがリングを曼荼羅のように並べる。
何を出す気なのか警戒していると、フーパはそこから6つの竜の頭が飛び出した。

美柑
 「なっ!? 本当に何でもありですね!?」

ドラゴンの頭はそれぞれ炎、氷、雷、光、闇、毒のブレスを放つ。
その威力は凄まじく事前にアマージョの防御バフがなければ半数以上が倒れていたかもしれない。


 「回復!」

鐃背
 「ええい! 鬱陶しいわ!」

鐃背が光の矢となり、竜の首をなぎ払う。
ガリョウテンセイの威力は凄まじく、フーパの召喚したドラゴン6匹を容易く倒す。

華凛
 「くらえ!」

華凛は両手で刀を握り、フーパに斬りかかる。
フーパは瞬時にリングから悠和を取り出した!

悠和
 「え!?」

華凛
 「な!?」

華凛が悠和という盾を斬る、すると属性が合わず悠和のオート反撃が華凛を吹き飛ばす!

保美香
 「く!? 肉の壁まで扱い始めましたか!」

フーパなら当然出来る事、だが虚無への扉を開いて、そこに押し込めば即死である以上そっちを予想したが、唐突に味方を壁にするという方法に変化した。
俺はやはり確信する、フーパはまだ完全に魔神になってはいない。


 「フーパ! お前の求める最高の結末ってなんだ!?」

フーパ
 「それは、だいだ……めつ、はめつ……ッ!?」

フーパが顔を歪める。
だが、直ぐにフーパは新たなリングを召喚し、何かを取り出す。
それは剣、無数の剣が雨のように降り注ぐ!


 「ああっ!?」

凄まじい攻撃だ、次々と身体を貫かれ、その場に皆が倒れていく。

フーパ
 「あ……ははは! これで全滅! もう誰も……?」


 「……確かにゲームの世界は夢だらけだな、なんでだって出来るし、叶う」

俺は確かに見た。
茜は事前に1度だけやられても復活できるアイテムを仕込んでいた。
これ自体は回復アイテムではないから全体化出来ないが、茜が立ち上がる。


 「はぁ、はぁ……! 皆!」

茜は最上級の回復アイテムをその場で使う。
それは死亡者を全て全回復で回復させるアイテム、現実ならばチートも良いところの効果だが、ここはゲーム世界、どんな理不尽も夢も許容される!

華凛
 「全く、ビックリさせる……」

美柑
 「全滅しなければ負けじゃないですからね」

伊吹
 「それも茜あってだけどねぇ〜」


 「我々も負けていられないな」

保美香
 「当然ですわ、だんな様の前で恥ずかしい姿は見せられません!」

フーパからしたらこれ程理不尽な事はないだろう。
現実の彼女たちはもっと強いが、この世界で戦うならそれを補うシステムがある。
アマージョの強力なバフ、その場で強力なアイテムを生成するツェン、更にそれを有効に扱う茜。
どれだけ大ダメージでもHPが1でも残る限り戦うのがゲームのキャラだ。
こういったアドバンテージは魔神フーパとの実力差を徐々に埋める。


 「フーパ……大団円だろ! お前が求めたのは惜しみない最高の別れ方だろう!?」

フーパ
 「うあっ!? アタシは……! アタシは魔王フーパだ!」


 「……なら、もう終わりにしよ」

茜がフーパの正面に立つ。
その手にボウガンを構え、フーパと対峙する。

フーパ
 「……いいぜ、これで!」


 「ッ!!」

フーパがリングから銃を取り出した。
お互いが構えて放つ。
弾速は銃の弾の方が速いかもしれない。
だが、後ろに倒れたのはフーパだった。
ボウガンはボウガンでも、茜が持つのは最強の武器、その光の矢は弾丸よりも素早くフーパの胸に突き刺さった。

ドサァ!

フーパが大の字に背中から倒れると場が静寂に包まれた。


 「……フーパ、今のお前はどっちだ?」

俺はジラーチを抱えて、フーパの元に立ち寄るとフーパは満足そうにその場から動かない。
光の矢は粒子状になってその場から消え、そこには美しい褐色美人が眠っているだけだ。

フーパ
 「……身体は魔神、でも中身は子供、その名は……」

ジラーチ
 「……馬鹿みたい」

ジラーチがフーパを見て、冷たい目で見下し、そう言うとフーパはガバッと起き上がった。

フーパ
 「ジラーチ! お前無事なのか!?」

ジラーチ
 「駄目かと思ったけど……眠ったら全回復した」


 「ポケモンの身体ってスッゲー! 眠る使ったら瀕死の重傷でも治るんだとよ!」

実は俺の胸で安らかな寝息を立てているのは途中で気が付いた。
ジラーチはレベルで『眠る』を2回習得するポケモン、ある意味代名詞である。


 「フーパがギャアギャアと喧しかったが、ほれ! この通りピンピンしてるだろうが」

ジラーチ
 「んふふ〜、特等席で貴方の中二病見せて貰ったから♪」

フーパ
 「うわーっ!? 忘れろー!」

ジラーチは俺にもたれ掛かりながらドヤ顔でフーパを見、フーパは自分の激しい取り乱し方を思い出して顔を真っ赤にした。
俺は周囲を見渡す、そこには全員無事な姿があった。

シェイミ
 「フーパ! もう大丈夫!?」

マギアナ
 「お手当必要でしょうか?」

シェイミとマギアナも、さぞ心配だったろう。
このちびっ子たちもフーパを愛している。
家族の絆は簡単には切れないのだ。

フーパ
 「ごめんね……二人とも」

フーパは母のように屈むと二人を抱きしめる。

ジラーチ
 「……パンパカパーン! 見事このゲームをクリアされました皆様には、囚われの王子と、この後の宴会への出席を進呈します」

ジラーチは俺の腕から降りると俺の背中を押した。
俺は改めて茜たちの前に立つ。


 「皆よく頑張ったな、ありがとう! そしてお疲れ様!」


 「ご主人様……!」

まず真っ先に俺に飛びついてきたのは茜だった。
茜は本心ではとても寂しがり屋な所がある。
俺とずっと会えなかった事は本当はとても辛かったに違いない。

保美香
 「だんな様がご無事で本当に何よりです」

美柑
 「やっぱり、主殿がいないとしっくりきませんもんね!」

保美香と美柑は流石に抱きついてはこないが、俺が帰ってきた事に素直に笑顔で出迎えた。

伊吹
 「えへへ〜、本物だ〜♪ 温か〜い♪」

華凛
 「ふふ、今日は記念日だな、ダーリン♪」

逆にもろに俺の両腕に抱きついてくるのは伊吹と華凛。
片方は純粋なスキンシップだが、もう片方は明らかに性的な意味がある気がする。


 「全く皆! 茂さんをあまり困らせるな」

最後にそんな皆を一喝する凪は俺にニコッと微笑みかける。
本当はもっと色んな言葉を交わしたいのだろうが、年長者という事もあり、他に譲るという事か。

ジラーチ
 「それじゃゲームを終了します、もう少しだけ付き合って貰うわよ
?」

ジラーチが虚空に何かを描くと、ゲームの世界が消えていく。
そして気がつけば俺たちはいつもの城の大広間にいた。



***


大宴会が始まったのは夜だった。
皆に祭りの終わりの宴会を楽しんで貰うために、料理の用意を俺とマギアナで始めたんだが、そこに保美香と悠和ちゃんが混ざって、あれよあれよと大量の料理が調理場からパーティ会場に運ばれる。
全ての料理が並び終わったら、ジラーチの祝辞とフーパの言葉、そして無礼講の時間がやってきた。

アマージョ
 「ふぅーん、アンタ良い腕しているねぇ。ウチの宮廷料理人と同レベルあるんじゃない?」

悠和
 「私なんてほんのお手伝いですが、そう言って貰えると嬉しいです」

アマージョが食べているのはちらし寿司のようだ、和食の担当は悠和ちゃんで、その料理の腕はかなりの物で、マギアナも尊敬の眼差しだった。
保美香はオールマイティで作れない料理を探す方が難しい感じだが、悠和ちゃんは和食専門のようだったし、職人のようだとマギアナも妙な憧れを抱いていた。

ディン
 「お頭の料理〜! ありがたや〜!」

ツェン
 「ああ、久し振りの味だぁ〜♪」

保美香
 「ちゃんとした設備と食材があれば、この程度は簡単ですわ」

別の場所を見れば保美香が旧友と談笑していた。
本来保美香は人の繋がりを大切にするから、向こうの世界にある意味で置き去りにしたことは思うところがあったようだ。
強そうで実際はそこまで強くないのが保美香だ、この後の別れで泣かなければいいが。

華凛
 「ほぉ夜だとそこまで小さくなるのか」

美柑
 「フォルムチェンジするポケモンも様々ですね」

鐃背
 「ふむ、しかし昼の時の戦いは見事じゃった!」

シェイミ
 「は、はわわ〜」

シェイミは人見知りのあるポケモンだ、特にランドフォルム時は極端に大人しい。
それ故にこれ程好奇の目で見られるのも慣れていないし、常に顔を真っ赤にしてテンパっている。

マギアナ
 「まぁ騎士様なのですね! 格好良いです!」


 「いや、わ、私などそんな良いものではなく」

マギアナは本の中で出てくるような本物の騎士という物に強く憧れているようだ。
と言っても騎士に憧れるというよりは、その騎士の背景や物語が好きなのだろう。

伊吹
 「あはは〜、凪は騎士だった時は本当に格好良かったよね〜」

マギアナ
 「しかも恋の末の逃避行、はぁ〜憧れます♪」


 「と、逃避行では!」

皆随分楽しんでいるな。
最初は実際終わった後、仲良く出来るか不安だった。
でも実際には皆楽しんでいる、それがあくまで中立の立ち位置で見ていた俺の安心だった。

フーパ
 「茂君、一人かい?」

俺はパーティ会場のテラスでゆっくりとワインを飲んでいた。
普段はビールばかり飲んでおり、ワインはあまり好まないが、ここで供されたワインは良い物なのか、良い喉越しと口触りだった。


 「良いワインだな」

フーパ
 「ブルゴーニュ産200年もの」


 「まじか……もしかしてかなり高い?」

俺は改めてワイングラスを見る。
はっきり言ってソムリエのような感性は持っていないが、流石に高いワインには驚くな。
しかしフーパはその様子を見てクスクスと笑っている。

フーパ
 「うーそ♪ はは、騙されたね」


 「な……嘘かよ、本当は安物ってことか」

そう言われた途端急に安っぽく見えるんだから、人間って単純だよな。
でもフーパは首を横に振る。

フーパ
 「本当はボルドー産、日本円で2万円」


 「生々しい値段だな、なるほど……分からん!」

フーパはそれを見て面白いんだろう、ワイングラスを片手にクスクス笑っている。
俺はそんなフーパを見て、やはり疑問を投げかける。


 「やっぱり自分で戒められし姿に戻れないのか?」

フーパ
 「うん、一度この姿になると3日は戻れない」

今のフーパは解き放たれし姿のフーパ、通称魔神。
俺と同じくらいの身長までなり、更に体付きも大人らしい物になった。
特に胸は嫌が応にも目が行く。
当然そういう目線に目敏いフーパはわざとらしく胸を両腕でギュッと引き締め強調する。

フーパ
 「クスクス、やっぱり大きい子が好きなんだね」


 「それが男の性か……!」

俺も男、ちっぱい幼女より、エロい大人のお姉さんの方が好みだ。
そういう意味では褐色で金髪、更に相当の美人である魔神フーパはバッチリヒットだと言える。
それを悟られるのは悔しいが、フーパは別にどうこうするつもりもないらしい。
だが、フーパはワイングラスを呷ると少し暗い顔を浮かべる。

フーパ
 「……やっぱり茂君には説明しないといけないかな」


 「どういう事だ?」

フーパ
 「まずこれから話すことは、恐らく元の世界に帰った後覚えていない。それでも君に話す義務が私にはあると思う」

俺はワイングラスを近くのテーブルに置くと、そっと頷きフーパの言葉に耳を傾ける。

フーパ
 「この世界は君が考えているよりずっとディストピアなんだ。力を持ちすぎた存在は封印される……突然現れたあのミュウツーも私も封印されたんだ」


 「封印……一体誰が?」

フーパ
 「大いなる者……それ以上の説明方法はないかな、そして私は力を壺に封じられ、幾星霜の時を封印されたんだ」

大いなる者、それは喩えるなら神という事か?
恐らく口振りはアルセウスよりも更に格上、恐らくアルセウスさえフラスコの中の実験動物にしている上位存在ではないだろうか。
俺には到底理解が追いつかないが、何となくアザトースのような物を想像する。

フーパ
 「私は最初世界に産まれた時、無邪気に力を振るっていた、でも私の力は禁断の力だった。私はそれを知らずアカシックレコードを滅茶苦茶に書き換え、宇宙をぐちゃぐちゃにしてしまった」

フーパにとってその記憶はどんなものなんだろう。
少なくとも楽しい記憶でない事は分かる。

フーパ
 「それでも、その当時私にはマスターがいた。私はランプの魔神のように働いた、それが世界を消滅させうる危険行為とも知らずに。やがて時が経つと私もある疑問を抱いた、それは私は何者なのか? 主の願いを何でも叶える魔神は自分を神なのではと傲慢にも思った、だがマスターが私に求めていたのは力であって、人格ではなかった」

その時、フーパは無性に哀しい顔をした。
俺はほぼ無意識だが、フーパの手を優しく握る。
フーパは両手を俺の手に重ねて、少しだけ涙をこぼした。

フーパ
 「傲慢な私は自分を認めてくれないマスターと喧嘩をした、でもそれが切欠で大いなる者は私の力を戒め、そして過剰な力を手にしたマスターを殺した。私は誰なのか? それは未だに分からないまま、やがて世界に憎悪を抱くようになったんだ」


 (世界に復讐……あれは紛れもなくフーパの本音でもある、か)

フーパ
 「でもね、段々と気が付いた何もない真っ暗な空間に封印されて、無駄に時だけを重ねて……私が誰で何を成すべきなのか、それを教えてくれなかった世界を恨んでも、自分が誰かなんて分からない。なら寧ろこうだと思う自分になった方が100倍楽しいって」


 「それで? 楽しみを見つけたフーパはどうしたんだ?」

フーパ
 「気が付いたら、私の封印は解かれていた。私は外に出ると色んな世界を旅したんだ、旅の中でジラーチと出会い、シェイミやマギアナの世界にも立ち寄って……この世界に辿り着いた」

フーパは少しだけ笑った、きっとその時はとても楽しい思い出だったんだろう。
いや、きっと今も楽しい思い出のはず、きっとフーパはこれからも人生楽しむ筈だから。

フーパ
 「このゲームを開始する前、私はある事実を知った。大いなる者が君の近くにいるという事だ」


 「……え?」

それはどういう……?

フーパ
 「ここでなら恐らく検閲には引っかからない、でもきっと元の世界に帰ったら綺麗に抹消されると思う。だから言うけど、君は大いなる者に―――!」


 「……?」

突然、フーパの言葉がかき消えた。
まるで不自然に消された言葉、それが意味は分かる筈なのに理解できない。

フーパ
 「……やっぱり駄目か」


 「なんの話……だっけ?」

フーパ
 「ふふ、これからベッドで子作りしようって話」


 「な!? はぁ!? 子作りって……!」

俺は突然の言葉に顔を真っ赤にした。
いつもならガキンチョを孕ませられるかと言えるのだが、目の前にいるのは大人の女性、上手い返しが出来なかった。


 「……少し酔いが回ったのかな? ちょっとそこで休んでいる」

俺は突然の記憶齟齬、そして確かに上質のワインに酔った感じもあり、部屋の端の椅子に向かった。



***



ジラーチ
 「フーパ、茂お兄ちゃんはやっぱり?」

フーパ
 「ああ、運命の犬だな。主人公補正とも言えるが、自由がないのは憐れね」

ジラーチは茂君がいなくなるとタイミングを図ったように現れた。
私はある意味哀れみの目で茂君の背中を見た。

フーパ
 「私たちは孤独だけど、ある意味一番孤独なのは茂君だね」

ジラーチ
 「そうね、愛するって事さえ許されないならば、それは拷問に等しい……だけど私たちは無力」

フーパ
 「大いなる者の干渉を受けない世界をジラーチが生み出し、私が繋げる……しかしそれだけじゃやっぱり不完全か」

ジラーチ
 「……でも例え大いなる者に反逆してでも茂お兄ちゃんを助けたい……そうでしょ?」

フーパ
 「当然ね、愛しちゃった男の為に何かをしたいってのは、当然の欲求よ」

ジラーチ
 「……だけど、私たちは小さき者」

フーパ
 「声は聞こえても、応えられない……か」

私たちは今日をもって解散する。
でももしかしたら私たちもあの世界に召喚されるかもしれない。
そしたら茂君に一杯甘えて、一杯尽くそう。
それは私たちも4匹の幻のポケモンの総意だ。
恐らく私は茂君の元には召喚されまい、それでもいい。
どうせ召喚されても向こうは絶対覚えていないし、それでも私は茂君のためならどんな無茶でもすると決めたんだ。
本当に恋って厄介だ……一度患うと中々治せない。

フーパ
 (私たちは所詮小さき者……それでも生きる、そして抗う)



***




 「………」


 「……様、ご主人様!」

なんだろう、声が聞こえる。
俺は少し酔った気がして、頭を揺らす。
ゆっくりと目を開けると、そこには心配そうに俺を見る茜がいた。


 「あれ……眠ってた?」

俺は気が付いたらゲームセンターの壁にもたれ掛かりながら眠っていたらしい。
記憶を振り返ると、そう言えば茜たちが新型の体験型ゲームを試遊していたのを思い出す。


 「終わったのか?」

伊吹
 「いや〜、30分ってあっという間だったねぇ〜」

保美香
 「何が楽しいんだか、結局よく分かりませんでしたわ」

美柑
 「それにしても五月蝿いゲームセンターで眠っちゃうなんて、主殿疲れているんですか?」


 「大変、ご主人様御免なさい……本当なら今日は休みなのに」

茜は俺が休みを潰されて、疲労回復できてないと思ったのだろうか、シュンと耳をしおらせて悲しむ。
俺はそんな茜の頭を優しく撫でた。


 「大丈夫だよ、ただ退屈だっただけさ」

俺はそう言うとゲームセンターを出ていく。
今日はやることもないしな、ポケにゃんにでも突撃しようか?


 (……しかし、一体寝る前になにがあった?)

俺は僅かだが記憶から欠落した部分があることに気が付いた。
それは茜たちがゲームを開始した数分間。
だが答えは出ず、身体も問題ないことからそれほど気にしなかった。
きっと日頃の疲れだろう。


 「よし、このままポケにゃんに行くか!」




『Re突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』
『special 神秘の世界と魔神と呼ばれたポケモン娘』

―――fin

KaZuKiNa ( 2019/05/04(土) 09:22 )