突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 special
SP14

#14




 「流星群……? 綺麗」

美柑
 「凄い……一杯、流星が雨のように!」

それは人工衛星が燃え尽きる際に見せる輝きだ。
レックウザが破壊した人工衛星の残骸が、この幻想的な光景を作り出したのだ。

保美香
 「……完全勝利ね?」

保美香はドヤ顔でマギアナを見る。
マギアナはもう、完全にお芝居は終了だ。
だから彼女はどこか安堵した顔をした。

マギアナ
 「お見事です」

そう言って最後にマギアナは光へと消えていく。

ディン
 「あれ……俺も、ここまでか」

気が付くと光に変わっているのはマギアナだけではなかった。
ツンベアーも己の手を見てそう呟いた。
どうやら次のステージに進めるのはあくまでも私たち6人だけらしい。

ディン
 「はは……お頭、お別れらしいっす」

保美香
 「御免なさい……私は貴方達を見捨てた、その事は恨んでいない?」

ディン
 「恨んでいないって言ったら嘘になりやすけど、戦争が終わって雪山も少しだけ豊かになったんすよ、だからお頭のやりたいことに助力出来て光栄っす」

保美香
 「そう……さようなら、息災にね」

ツンベアーは初めて笑った気がする。
ツェンも光になって消えて、今度は自分の番だ。
ツンベアーのこの後は何も分からない。
それでもツェンと一緒にやっていくのだろう。

ディン
 「お頭、ご武運を――」

そして……ツンベアーも光に消えていった。



***



アマージョ
 「ここは……」

アマージョは気が付けば光の回廊にいた。
なんとなく足を動かすと動き、自分の身体が元に戻っていることに気付く。
アマージョは光の回廊を歩くが、進む感じはしない、ただ足音だけが響く。

アマージョ
 「地獄……かね?」

フーパ
 「天国かもしれないぜ?」

フーパはリングを開き、重力を無視して逆さまになって現れた。
このイタズラ者が天国と言ってもアマージョは一笑に付す。

アマージョ
 「馬鹿言うんじゃないよ、そんな甘い世界に招かれるほど徳積んじゃいないさ!」

フーパ
 「ケケケ! その通り、お前は悪党だからな」

アマージョはふん! と鼻を鳴らすと胸元で腕を組む。
フーパの態度はイマイチ気に入らない。
だが、目の前に現れた以上、最後通知をするのだろう。

アマージョ
 「それで、楽園には連れて行ってくれるのかい?」

フーパ
 「さてさて……アタシも鬼じゃないしな〜……この光の回廊を進め。お前の運命を決めるのはお前だ」

アマージョ
 「……ガキが。アンタみたいなガキは大っ嫌いだよ」

アマージョは回廊を進む。
無限に思える光の道筋、気が付けばフーパも遠くに消えて、アマージョは光の中へと融けていく。

アマージョ
 「ああ―――意識が―――とけ――――――――」



***



マギアナ
 「ふんふんふ〜ん♪」

気が付けば何処で覚えたのか、鼻歌を歌いながらマギアナはエプロン姿で厨房に立っていた。
その姿は忙しく、でも彼女はとても楽しそうだ。


 「……なにか、手伝おうか?」

俺は流石の分量に手伝おうか何度も聞いているのだが、彼女はと言うと。

マギアナ
 「駄目ですご主人様! これはご主人様の為に愛を込めて、お出しするのですから♪」

……こう言って聞かないんだよな。
つまりだ、これは他でもなく俺のために作っているのだ。
一体何がマギアナをそこまで駆り立てるのか分からんが、この晩餐は盛大に行きそうだ。

フーパ
 「最後の晩餐会なんだ、マギアナだって張り切るさ」

突然後ろからリングを通って現れるフーパ。
相変わらず神出鬼没な奴だ。
俺は脇にいる神出鬼没なちびっ子を見ながら、少し考える。
ジラーチはフーパも弱虫だと言った。
きっとフーパはまだジラーチと仲直りしてないんじゃないだろうか。
最近俺自身フーパと顔を会わせるのは久し振りだ。

フーパ
 「何か言いたい事があるなら言った方が良いよ、明日茂君は元の生活に帰るんだから」

フーパはもう怒ってないのか、普段の気さくなフーパに戻ったように思えた。
でもフーパは底の読めない奴だけに、簡単には判断できないんだよな。


 「その、今まで聞いてなかったけど、なんで俺と俺の家族を巻き込んだんだ?」

確か参加者を決めたのはフーパだと聞いている、ジラーチはフーパに聞けば全て分かると言うが、フーパはというと答えるとは思えない。
でも最後なら、フーパも答えてくれるんじゃないか。

フーパ
 「……実はね、意味はない! あの選出メンバーは偶々良さそうなのがいたから目を付けただけ! はっはっは! 何事にも意味があると思っていたかい!? 実は意味のないことなんて結構あるのにさ!」

……フーパの奴、本気か馬鹿にしているのかさっぱり分からん。
意味もなく俺を含めて茜たちを選ぶなんて本当なのか?
茜たちはまだ、異世界慣れしているし、実際上手くやっている。
でも俺が必要かって言ったら、そこは幾らでも代替できるだろう。
そもそも本物である必要さえなかったはずだ。
俺は茜たちがゲームクリアした時のご褒美である。
逆に言えば、俺を動機に茜たちが戦っているなら釣りは成功している。
つまり、俺はいなくてもこのゲームは成立している。

フーパ
 「ねぇ茂君、君はこのゲームに自分が必要かって考えたよね?」


 「読心術なんて使えた?」

フーパ
 「あはは♪ 年の功だよ。それでだね、茂君の存在なくしてこのゲームは成り立たない、分かる?」


 「……どういうことだ?」

フーパ
 「マギアナを見て、マギアナが茂君の為に最高の御飯を作りたいのは、最初に教えて貰ったのが料理だから。ジラーチやシェイミだって一体誰に感謝していると思う? 茂君にどれだけ助けられ、支えられたと思う?」

確かに、俺と皆はもう家族同然だ。
それは代替では出来ない事か。


 「フーパにとって俺はどうだ? 役に立ったか?」

フーパ
 「あはは♪ 最初の方にも言った! ゲストが頑張る必要ないの! 茂君は役に立つ必要はないんだから……」

言葉自体は最初の頃と同じだな、でも決定的に違うのはフーパの雰囲気だ。
あの時は小馬鹿にしたような印象で近いのにとっても遠い所にいる印象だった。
でも今は逆だ、こんなに近くにいるのに、まるで俺を寄せ付けない壁のような物を感じる。
これがジラーチのいう弱虫って事なのか?


 「フーパは俺とジラーチをくっつけたいんだよな?」

フーパ
 「出来ることならね、まぁ無理だと諦めているけど」


 「お前は俺と一緒にいるのは嫌いか?」

フーパ
 「っ!? や、やめてよ……そういう冗談は嫌いなんだ」

フーパが動揺した。
やっぱりフーパは俺から距離を離すのはそれだけの理由があるんだな。


 「フーパ、お前はずるいと思うぞ、好きっていう感情に嘘をつく、それで誰が幸せに出来るんだ?」

フーパ
 「……ずるいのは茂君だ」

フーパはそれだけ言うとリングの中に消えた。
これ以上俺に追求されるのが耐えられなくて、逃げたようだ。


 「……マギアナは料理に集中しているか」

マギアナは凄い奴だ。
最初は俺より家事スキルが劣っていたのに、あっという間に俺なんて追い抜いていった。
ただ、どうも俺が先生だったためか、その味付けは家庭的というか、お袋の味って感じなんだよな。
良くも悪くも保美香とは違う、でもこの城のちびっ子たちにはマギアナの味の方が良いのかもしれない。
でも願わくば、最後の晩餐は任せて欲しかったな。



***



とりあえず暇なので夜の散歩にと、城の庭園を歩いていると、片隅で歌が聞こえた。

シェイミ
 「♪〜♪〜〜〜♪」

夜、ライトアップされた庭園は昼とは異なる美しさがある。
そんな中地面に座り込んで、知らない歌を歌っていたのはシェイミだ。
流石に夜間だけにランドフォルムだが、随分優しい歌を歌うのだなと関心する。


 「よ、シェイミ。歌上手いんだな」

シェイミ
 「! 茂お兄たま……」

俺はシェイミの隣に座ると空を見上げた。
空には満天の星が煌めいている。

シェイミ
 「あのお兄たま……シェイミは精一杯やれたでしゅか?」


 「シェイミは良くやったよ、誇っていい」

シェイミ
 「嬉しいでしゅ♪ シェイミはお兄たまに感謝してもしきれないでしゅ、お兄たまと出会えて幸せでしゅ」

シェイミは本当に屈託のない笑顔だった。
俺はシェイミは頭を優しく撫でると、シェイミは嬉しそうに俺の手に頭を擦りつける。
シェイミの身体からは植物特有の良い匂いがした。


 「シェイミの明るさには一杯助けられたもんな、なんだかんだで問題児だらけのちびっ子の中で、シェイミは良い子だったし、本当に感謝しているよ」

シェイミ
 「お兄たま……あの、これ! 貰って欲しいでしゅ!」

シェイミはそう言うと一輪の花を俺に差し出した。
それはグラデシアの花だ、確か別名は感謝の花。
シェイミは本当に感謝した相手に渡すという。


 「ありがとう、受け取るよ」

俺はグラデシアの花を受け取ると、胸ポケットに挿した。
シェイミは俺が胸元に挿すと、なんだか顔を赤くしてモジモジとしていた。
俺が不思議に思っていると、シェイミは恥ずかしそうに語り出す。

シェイミ
 「グラデシアの花って愛する人に渡すのってぷ、プロポーズなんでしゅ……これってやっぱりプロポーズなんでしゅかね?」

そういや、原種のシェイミってブーケソックリなんだよな。
結婚とシェイミは割と縁のあるポケモンだという。
実際ゲームにおいては縁結びになったシリーズもあったな。


 「はは、可愛らしい嫁さんだな」

シェイミ
 「〜〜〜〜! やっぱり無しでしゅ! 今回はなかったことにしてでしゅ〜!?」

シェイミはお嫁さんというキーワードに頭を沸騰させると、一目散に走って逃げてしまった。
思わず転ばないか不安になるが、入れ替わるようにジラーチが庭園にやってきた。
ジラーチは俺を発見すると気怠げに手に持ったティーカップを飲む。


 「珍しいな、いつも作戦司令室に引き籠もっているのに」

ジラーチ
 「ゲームが完成したんだもの、もうあそこにいる理由がないわ」

俺はジラーチのそばに行くと、ジラーチは相変わらずコーンポタージュを飲んでいるようだ。


 「すっかり気に入ったよな、コーンポタージュ」

ジラーチ
 「見た目が好きっていうのもあるけど、切欠は最初よね……底に出来る幸せの輪っか、あれをもう一度見たくって」


 「ああ……そう言えば教えたな、その都市伝説」

願いを叶える力を現実に持つポケモンが、本当かどうかも分からない迷信を信じるってのもなんだかと思ったが、それがジラーチの何気ない支えになったのかな。

ジラーチ
 「……だめか、結局最後まで出ないか」

ジラーチは飲み干したカップの底を見て、消沈する。
最後……そうか、コーンポタージュもこれで飲み納めか。


 「このゲームが終わったら、お前たちってどうなるんだ?」

俺は自分たちが元の世界に帰る事はフーパも約束している。
あくまでもこれはフーパのワガママであり、そして巻き込んだ全てにケアをすることを約束している。
恐らく俺の予想なんだが、俺たちが帰ると……そこにはこのゲームに参加した記憶なんて無くなるんじゃないだろうか。
それを前提にして、ジラーチたちは終わった後どうなる?
少なくとも、フーパたちはこの先もリアルを生きるだろう。

ジラーチ
 「正直まだ分からない……でも旅をするとか良いかもって思うわ」


 「旅か、まぁ普通ジラーチって言ったら1000年に7日のみしか活動できないもんな、じっくり何年も掛けて旅するってのは悪くもないかもな」

最もどんな世界かによるが……。
ナツメたちがいるような世界なら何も問題ないだろうが、逆に俺たちの住むような世界なら危険かもしれない。
ジラーチは相当にレアなポケモンであり、同時にその能力も貴重な物だ、誰がその力を狙うか分からない。


 「もし同じ道が歩めるなら、俺は迷わずウチにくるかって聞くんだけどな」

ジラーチ
 「それって……」


 「でも、何となくだが分かっちまうんだよな……所詮この出会いは胡蝶の夢、きっとお前たちって俺たちとは住む世界が違うんだろう?」

ジラーチ
 「……そうね、きっと貴方はこのゲームが終われば何も覚えていない。でもそれでいいの、私たちは歴史のノイズに過ぎないから」


 「……もし俺たちの世界に召喚されたら、迷わず俺を頼ってくれ、多分忘れても俺はお前たちを絶対助けるから」

このゲームが終わるまであと何時間なのか?
最後の晩餐会を済まして、あらゆる事を最後にしなければいけない。
そして記憶までも最後にするとしても、俺はここで出会った4人が好きだ。
それは記憶を失っても変わらない、そう確信している。


 (茜たちとももうすぐ再開か……)


#15に続く。


KaZuKiNa ( 2019/05/04(土) 09:21 )