突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 special
SP13

#13



鐃背
 「その通りじゃ! 妾こそが龍神、名を鐃背(ドラセナ)よ!」


 「伝説のポケモンとの連戦か……」

美柑
 「流石にハードですねぇ、レベル上げが足りなかった?」

目の前の小さな少女、その力は未知数である。
現実ならば、レックウザを名乗る以上、相応の力はあると思われる。
ここは良くも悪くもゲームの世界だ。
ただ、金竜銀竜より弱い訳がない。
寧ろあの二匹同時に相手するより厳しいと考えるべきか。

全員が戦慄する中、しかし龍神はキョトンと敵意を見せない。
不思議に思っていると。

鐃背
 「何か勘違いしているようじゃな? 試練はここで終了じゃぞ?」

伊吹
 「え? 戦わなくても良いの〜?」

鐃背
 「すでに死活を持って、金竜銀竜を斃した! あれだけの戦を見せれば合格よ!」

カッカッカッ! 再び豪快に笑う。
龍神と戦わないでいい、それは充分皆を安堵させる。
というか、回復する間もなく連戦は流石に厳しい。

保美香
 「それじゃ、マギアナ打倒に力を貸してくれるのかしら?」

鐃背
 「ん? それはお主らのやることよ。妾が与えられるのは褒美のみ」

龍神がそう言うと、祝詞を紡ぎ、私たちの身体光が覆う。

華凛
 「なんだ!? 身体……!」


 「っ!」

身体が再構築されていく。
それに伴い、身体に感じる力が増す。

鐃背
 「さぁこれで汝らはクラスチェンジした、新たな力を持ってマギアナを討つがいい!」


 「クラスチェンジ……」

それは身体レベルでの変化を起こしている。
見た目においては変わらないが、パラメータが変化したことで劇的に強くなっている。

美柑
 「凄い……なんだか身体が軽い! 本来の力にかなり近いかも!」


 「だからといって翼が飾りなのは相変わらずか」

保美香
 「まぁ、旅を始めた時点を考えると、だいぶ本来の力に近づきましたわね」

皆実際のパラメータ上昇を実感しているようだ。

鐃背
 (ふふ、あくまで暇つぶしで協力してやったが、どうして中々力が疼く……)


 「?」

何か不穏な視線を感じて龍神を見ると、龍神は目をそらす。

鐃背
 「さぁ! もう行くがいい!」



***



アマージョ
 「あーもう! 鬱陶しいガードロボだねぇ!」

核廃棄場を攻略するアマージョ一味、中は多数の作業機械やガードロボひしめく魔境と化していた。
すでに目標のプルトニウムは入手出来ている。
後は撤退なのだが、そこが問題だ。

ガードロボ
 『排除シマス、排除シマス』

施設の大きさを無視したガードロボがその巨体を活かして襲いかかる。
無駄にデカく、周囲の破壊も気にしないのはガードロボットとしておかしいと思うが、お陰で壮絶な撤退戦になっている。

ボーロン
 「!」

何処に隠れていたのか、ボーロンはガードロボの上から大きな杭を打ち込む。
ガードロボは大ダメージを受けて、一時行動停止する。

ボーロン
 「ンー、ロボットはつまらないですねー。エー、早く生きたポケモンをオブジェにしたいですねー」

セローラ
 「どうせゲームの中じゃ、蘇生アイテムで一発復活なのになんで拘るんですか?」

ボーロン
 「あー、趣味ですねー、ハイ」

ツンベアー
 「お前ら! さっさと走れ! 脱出するまでがダンジョンだぞ!」

ユキノオー
 「序でに逃げながらプルトニウムを弾頭にするのは骨がおれるんだなー」

ユキノオーの職業はメカニック、この作戦で最も重要なポケモンだ。
彼は幾つかのアイテムを駆使して、バズーカの弾頭を作り出す。
それを護るのがツンベアーであり、ボーロンやセローラだ。
だが正直セローラとボーロンが信用できるかが分からない。
実際二人の実力は高く、何度も三人で挑んだダンジョンも遂に攻略したのだ。
それだけにフーパの望みは分からない。
アマージョは本当にフーパが自分を楽園に案内するのか疑っている。
元々死んだ身、その間際も記憶している。
アマージョは目を細める。
元々目つきの悪い方であったが、更に悪くなったのは言うまでもない。

ガードロボ
 『ガガ……侵入者確認、排除シマス』

アマージョ
 「あーもう復活しやがった! さっさととんずらするよ!」

ツンベアー&ユキノオー
 「「アラホラサッサー!」」

ガードロボは一定時間経過で再び復活する。
厄介だが機能を停止させて逃げるの繰り返し。
兎に角アマージョ一味は出口に向かって走った。

セローラ
 「見えた! 外ですよ!」

セローラが指を差して叫ぶ。
そこは厳重にガードされたフェンスの内側。
薄暗い雲が覆う、この世紀末世界、それでもその空は救いだった。

アマージョ
 「よし、こうなりゃここであの馬鹿ロボットを解体するよ!」

ボーロン
 「解体って趣味じゃないんですねー」

ツンベアー
 「どの道テメェはサイコパスだろうが!」

ツンベアーは両手にサブマシンガンを持ち、ガードロボに乱射する。
しかし厚い装甲板は容易に弾丸を弾き飛ばす。

ガードロボ
 『排除シマス』

ガードロボはその無骨なモノアイカメラからレーザーを放つ。
ツンベアーは咄嗟にサブマシンガンを捨てて横に転がってレーザーを回避する。
サブマシンガンはあっさり赤熱して、爆散。

セローラ
 「フレアー!」

セローラは魔法使いのクラスに属する、各種上級魔法を使いこなし、ガードロボの周囲の空間を歪め、高圧の爆発を起こす。

アマージョ
 「ほら! ほらほら! もっと頑張りな!」

アマージョはクラスルーラーに属し、通常攻撃は出来ないが、強力なバフやデバフを扱える。
彼女の鼓舞によって全員の攻撃力が上昇するのだ。

ツンベアー
 「ち! 応援だけなんだから楽だよなぁ!」

ツンベアーはいつの間にか装備がサブマシンガンからバズーカに持ち替えていた。
バズーカ砲が火を噴くと、ガードロボの身体が傾く。
ツンベアーのクラスはマーシナリー。
各種装備を事前にマウントすることで、戦闘中に自由自在に装備を変更出来る。

ボーロン
 「さて、どんな硬い装甲でも必ず接合部分がありますよねー」

そう言ってボーロンはガードロボの肩口に杭を差し込む。

ガードロボ
 『ピーガガガッ!?』

ガードロボが痙攣した。

ユキノオー
 「皆、何か来る!」

ドシュウウウ!

それは二発の小型ミサイルだ。
明けの空より放たれた二発のミサイルはアマージョ一味を襲う。

ツンベアー
 「ぜ、全員退避ー!」

慌てて蜘蛛の子を散らすようにその場から離れる中、一切動けないガードロボはただ、そのミサイルの爆炎に飲み込まれる。
ミサイルは核廃棄場そのものを破壊した。
阿鼻叫喚の大災厄、ツンベアーは爆風に巻き込まれながら、空を見上げる。

ツンベアー
 (クソが……ここまで、か?)

空に浮かぶ無骨な機械の身体。
それはマギアナだ。
マギアナはただ破壊された施設を見下ろすしている。



***



 「爆炎が!」

クラスチェンジを終えた私たちはすでに龍神の塔を出ていた。
伊吹がハンターからレンジャーにクラスチェンジした事で、ダンジョンを脱出する特技を習得し、帰るのは簡単だった。
だが、塔を抜けると最初に見たのは雲を切り裂くミサイル。
そしてミサイルを放ち、それを高速で追うマギアナだった。

私たちはがむしゃらにマギアナを追いかける。
だが、こちらが走っているのに対して、向こうは空を飛行機の速度でかっ飛んでいるのだから、全ては遅すぎた。


 「急がないと」

保美香
 「あーもう、煩わしいですわね! 飛べれば直ぐですのに!」


 「同感だな! こういう時は不便だ!」

伊吹
 (多分イベント……となると、やっぱり?)



***



アマージョ
 「う……く?」

アマージョが目を覚ました時には自分の身体がおかしくなっている事に気がついた。

アマージョ
 「あ……あはは、腕折れてるね……足も駄目か」

動けない、恐らく内蔵も駄目になっている事だろう。
だが痛みはない……この辺りはフーパの気遣いか。
アマージョはこれまでの人生を比べていた。
やりたい放題していた時は一番楽しかった、まぁそれも一瞬でラランテスの前に崩されたが。
この第二の人生はどうだったか……?
全然敬わないし、文句ばかり言う部下たち、更に制御不能の馬鹿二人。
はっきり言って最低か……でも、過去最低じゃない。

アマージョ
 「あの……馬鹿どもは?」

ツンベアー
 「うぐぐ……生きてる?」

ツンベアーが見えた。
元から醜いのに、全身を真っ黒に染め上げてもはやどこの野獣かも分からないが無事のようだ。

ツンベアー
 「皆は!? クソ女王! セローラ! サイコパス野郎! ユキノオー!」

アマージョ
 (……相変わらず口の悪い奴だねぇ、でも最初に呼んだのは評価してやるよ)

ツンベアーは皆を探す。
ガララ……瓦礫が崩れるとそこからユキノオーが顔を出した。
ツンベアーは急いでユキノオーに駆け寄る。

ユキノオー
 「うぅ……ごめん、足手まといになっちゃった」

ツンベアー
 「お前太りすぎなんだよ! いいか、絶対生き残るぞ!」

ユキノオー
 「はは……山では助け合い」

それは二人の絆である。
山賊として貧しい雪山で暮らし、共に助け合った。
無理矢理こんな世界に拉致られたが、それでもやっていった。

マギアナ
 「……生存者を確認」

ツンベアー
 「くそ! かかってきやがれ! テメェなんか怖くねぇぞーっ!」

ツンベアーは二丁拳銃を手に持つとマギアナに乱射する。
しかしマギアナの全方位を覆う粒子バリアは拳銃を容易に弾き返した。

カチカチカチ!

ツンベアー
 「あ……ああ……」

弾が切れ、ただ撃鉄を叩く音だけが響く中、ツンベアーは絶望の顔を浮かべた。
マギアナは心苦しくて仕方がない、しかしそれを顔に出すわけにはいかない。
なるべく無感情に徹して……。

保美香
 「はぁぁぁ!」

突如奇襲だった。
保美香は後ろからナイフで斬りかかるが、当然後ろであってもそれは無意味だ。
だが、完全に無意味じゃない。
少なくともマギアナの視界は保美香に移り、そしてその後ろから迫る茜たちを捉えた。

マギアナ
 「……撤退します」

マギアナは保美香を弾き飛ばすと、そのまま上空に飛ぶ。
彼女は後はラストダンジョンで待ち構えるのみだ。
全ての役者が揃った、後はシナリオをなぞるだけ。



***



保美香
 「ツンベアー! 何してるの! 早く瓦礫を取り除きなさい!」

ツンベアー
 「お、お頭……」

保美香
 「返事より先に手を動かしなさい!」

保美香のその様子はお頭であった頃と変わらない。
ただ厳しくも優しい人だ。

ツンベアーは必死に瓦礫をどかしていく、徐々にユキノオーの下半身が見えてきた。
だが、それを見てツンベアーは手が止まってしまう。

ユキノオー
 「はは……お頭、これ……受け取ってください」

ユキノオーの下半身は真っ赤に染まっていた。
山賊の生き方をしていた以上、いつだって死は覚悟していた。

保美香
 「ま、まって! 今回復を!」

ユキノオー
 「もう無理だよ……下半身が反応しないんだ……それってさ……もう……」

ユキノオーの下半身は存在しなかった。
そう、ユキノオーはすでに上半身だけの存在になっていたのだ。
もはや命からがら、ユキノオーは最後に『ソレ』を託す。

ユキノオー
 「これ……マギアナのバリアを破壊する弾です……」

それは弾頭だった。
バズーカ砲に装填して使う、つまりこの場で使えるものはツンベアーしかいない。
ツンベアーと保美香は弾頭を受け取ると、ユキノオーは笑った。

保美香
 「貴方たしかツェンだったわね……ご苦労様」

ツェン
 「っ!? お頭……名前、覚、えて……」

ユキノオーのツェンはそこまでだった。
ユキノオーの身体が光の粒子に変わっていく。

ツンベアー
 「くそが……くそがぁぁぁぁ!! なんでオマエが先に死ぬんだよ!? なんで俺の方が先じゃねぇ!? お前が何をした!?」

保美香
 「歯を食いしばりなさい!」

保美香は全力でツンベアーを殴り倒す。
ツンベアーはその巨体も情けなく地面に手をついた。

保美香
 「ツンベアー……いえ、ディン。貴方が生き残ったのは哀しいけど運命よ、運命は悪党を裁くとか善人を助けるとか期待しないこと……」

ディン
 「それにしたって! ツェンは俺より善人だ! バズーカだってアイツでも扱えた……!」

これが作劇上の必然だというのなら、保美香は胸くそ悪くて仕方がない。
それでも、現状を受け入れ戦うしかない。
だんな様を救うため止まることは許されない。



***



アマージョ
 「……?」

アマージョは目を覚ますと、そこは見慣れた薄汚いアジトの天井だった。
まず自分が生きていることに驚いた、次に驚いたのは自分の全身が包帯でグルグル巻きだが、手当てされていた事。
アジトに運んだのもそうだが、こうやって手当をしてくれた人がいるというのが驚きで仕方がない。

アマージョ
 (最後の方……ツンベアーの慟哭が聞こえた、ユキノオーが死んだんだ)

自分の記憶はその辺りで消えている。
アマージョは自嘲するしかなかった……自分こそが一番のド悪党なのに生き残る、おかしいったらありゃしない。
元の人生じゃ、そうやって殺されたのに、今度は生き残ってしまう。
因果応報って一体なんなのか、おかしいったらありゃしない。

セローラ
 「はーい、大丈夫? 何処か痛い所ない?」

首を横に回すとそこにいたのはセローラだった。
彼女も生き残ったのは、何というか意外だった。

アマージョ
 「ざまぁないね、アンタもボロボロじゃない」

セローラ
 「お恥ずかしいながら、生き残ったみたいですね、まぁ日頃の行いが良かったからでしょうか」

とは言っても、セローラも片腕が折れているらしくギプスで補強している。
それ以外にも至る所に傷跡があり、運の良さはどっこいな気がした。

アマージョ
 「ボーロンは?」

セローラ
 「分かりません……死んだのか、それとも身を隠したのか」

セローラは哀しそうに首を振る。
きっと死んだユキノオーのことにも胸を痛めているのだろう。
セローラ自身はそこまで非情ではない、でも一緒に過ごした仲間を無下には出来ないだろう。

セローラ
 「ツンベアーさんは茜ちゃんたちに着いて行きました」

アマージョ
 「マギアナを倒すためか……」

情けないがこれが敗者の末路だろう。
だが生き残った敗者は……まだ終わっていない。



***



美柑
 「邪魔です!」

美柑はファイターからナイトにクラスチェンジした事で、更に高い戦闘能力を発揮する。
美柑の一撃はそれまで手こずっていた雑魚敵を一撃で倒すほどだ。

華凛
 「イヤー!」

更に華凛は侍から剣聖にクラスチェンジ。
それまで扱えなかった剣技を習得し、刀を水平に振るうと、敵全員を切り裂く。

ディン
 「すげぇ……なんて強さだ!」


 「……クラスチェンジしたからね」

一方で私はヒーラーからメディックにクラスチェンジ。
更に回復系を極め、回復系特技も習得している。
とはいえ、基本的にはアイテムの方が効率が良く、特技による回復は雑魚戦用といった感じか。

保美香
 「ここ、隠し通路がありますね」

保美香はシーフからマスターシーフにクラスチェンジ。
戦闘能力もかなり上がり、更に新たな技能でトラップや隠し通路を発見出来るようになった。


 「びっくりするほど雑魚戦も楽になったな」

凪は魔法戦士から魔法騎士にクラスチェンジし、遂に上級魔法を扱えるようになり、更に前衛能力も上がって、晴れて器用貧乏から器用万能になった。
欠点はそこまでMPが上がっていないため、乱発は厳禁な事か。


 「ショートカットかもしれないし、通っていこう」

私たちは保美香の発見した隠し通路を通っていくと、そこには宝箱があった。
保美香は慎重に箱を開けると、中から出てきたのは……。

保美香
 「茜用かしら……?」

保美香はそれを訝しみながら私に渡すと、それを装備できるようだ。

『ビームライフルを装備した』

そう表示された。
私は呆然としながらも、今まで光学兵器は出ていなかったし、これがオーバースペックな兵器だと気付く。
実際道を戻って、マギアナの潜むマザーベースを進む道中の雑魚戦で私はボウガンの感覚でトリガーを引く。

ボフゥゥゥン!

ピンクのビームが敵一体に直撃して、爆発した。

伊吹
 「戦艦の主砲並み〜?」

美柑
 「あの……装備込みの攻撃の値がボクより上なんですけど……」

保美香
 「この分ならビームサーベルもあるんじゃない?」

そんな事を呟きながらマザーベースを探索していると、本当にレーザーブレードなる装備を入手するのだった……。



***



フーパ
 『どうだいマギアナ、気分は?』

マギアナ
 「あまりよくはありません……一杯死にました、哀しいことです」

私はまだ涙を流すという機能を上手く使いこなせない。
でも、あのツンベアーさんの顔や、ボロボロの皆さんを思い出すと涙が零れて仕方がなかった。

マギアナ
 「あの……死んだ人達は」

フーパ
 『大丈夫、アタシが丁重に扱う』

私はそれを聞いて安心する。
もうすぐ最後の戦いが始まる。
きっとツンベアーさんは私を憎んでいるに決まっている。
私はその罰を甘んじて受けよう。
でも、せめてこの役がご主人様に褒められるよう、頑張りたい。

フーパ
 『盛大にやられてこい、そして私たちと最後の晩餐だ!』

マギアナ
 「はい……その際には私に用意させてくださいませ、ご主人様に私の成長を見ていただきたいのです」

フーパ
 『好きにしな』

やがて、フーパとの談笑も最後を迎える。
足音が近づいてきた。



***




 「マギアナ……!」

マギアナ
 「愚かな人類よ、なぜ我々の管理に逆らう?」

華凛
 「管理統制……ディストピアを否定はしないが、せめて誰も不幸にするな!」

伊吹
 「……人が生み出した英知なら〜、それは人に乗り越えられる宿命だよ〜」

マギアナ
 「愚かな、我ら機械種族が管理運営してこそ、人類は永久に生き長らえるというのに」


 「はっきり言う……それは反感を育てるだけの行為だ! 私かつて無知な加害者であり、被害者だった……貴様は反感の芽だ!」

美柑
 「嫌いですね、自分こそが神だと嘯く!」

マギアナ
 「やはり語るに落ちる……この世界の神の力を受けよ!」

マギアナはその場で翼を広げた、それは光の翼。
まるで天使であるかのように振る舞う傲慢さであり、その禍禍しい機械の身体は生きているように蠢く。
全長4メートル、機械天使は私たちを上から見下ろす。

ディン
 「くそったれがー! くらいやがれぇぇぇ!」

ツンベアーはバズーカ砲を構えた。
そこにはユキノオーに託された弾頭が入っている。
バズーカ砲から光が溢れた。
それは正にビームバズーカ、プルトニウムを原料とする高出力ビームバズーカがマギアナのバリアを破砕した!

マギアナ
 「く……、作戦続行可能、戦闘行動を開始します」


 「とりあえず、出会い頭!」

私はビームライフルを構える、発射即着弾するビームはマギアナの謎のフィールドに相殺された!

美柑
 「あーもう! またあのバリア!?」

そう言って美柑が斬りかかると、ようやくダメージが通る。

保美香
 「これ本当の使えるのかしら?」

そう言って追い打ちをかけたのは保美香だ。
保美香? マギアナはその戦闘メンバーに疑問を持ったろう。
今回の戦闘メンバーは私、美柑、華凛、保美香だ。
普段攻撃力も防御力も低い保美香はボス戦に出ることはない。
だが、ある装備によって前線に出る価値が生まれたのだ。

保美香
 「はぁ!」

バチィ!
マギアナの身体からスパークが発生する。
保美香の装備武器、猫の爪は攻撃力を素早さで算出する特殊武器。
猫の爪を模したナイフは高い素早さを誇る保美香が使うことで、美柑を越える攻撃力を叩き出す!

マギアナ
 「アサルトキャノン!」

マギアナの肩のキャノンが正面を向く、キャノン砲は火を噴き、私たちにダメージを与える。


 「大したダメージじゃないけど」

私も攻撃力的には参加出来るけど、回復は念入りしておく。
なにせまだ行動パターンが分からない。
今の所行動回数は1、例によってダメージを打ち消すバリアをシェイミ同様に持っているらしく長期戦になりそうだけど、私たちはそれを余裕持って迎える。

保美香
 「不自然ですわね」

保美香はマギアナの三連ガトリング砲を回避しながらそう言った。
マギアナの後ろをとり、斬りかかる華凛も同様に言う。

華凛
 「クラスチェンジして、実際に強くなったが強くなりすぎたか?」

美柑
 「やぁぁぁぁ!」

マギアナ
 「く……システムイエロー?」

美柑
 「……確かに金竜銀竜戦の方がよっぽどキツいですね」

全員やっぱり感じている。
このマギアナ、弱い。
正確には私たちがそう感じるくらい強くなっているんだが、それにしたってクラスチェンジを想定した強さでない気がする。

ディン
 「へへ、さすがお頭たち! さっさとくたばれ化け物め!」

その後も、私たちは優勢に戦い、徐々にマギアナは損傷により爆走箇所を増やしていく。

マギアナ
 「く……レッドアラート」

華凛
 「口ほどでもなかったな」


 「これで……トドメ!」

私はトリガーを引いてビームを放つ。

マギアナ
 「パージ!」

それはマギアナの外郭に直撃、外郭は連鎖爆発を起こすが本体のマギアナが脱出している。
マギアナはそのまま部屋の後ろへと逃げ、私たちはその後ろを追いかけるとそこには……!

ディン
 「な……何じゃこりゃー!?」

部屋の奥には吹き抜けの天井がある部屋だった。
恐らくロケットの発射場だと思われるその場所に……全長20メートル近い巨人がいた。

保美香
 「第2形態……ということですか?」

流石にそれには唖然とするしかない。
しかし向こうは待ったなんかかけてくれる訳もない。

マギアナ
 「敵を排除します」

マギアナの各所に配置されたビーム砲は建物全体にさえダメージを与える。
そしてビーム砲に晒された私たちは大ダメージを受ける。

美柑
 「こんなのどうやってダメージを与えれば?」

伊吹
 「普通に考えたら頭部のマギアナ本体だけど……見て、各部にターゲットがある」

伊吹はこういう時も冷静で、後衛から足下を指すと少なくとも4カ所のダメージ部位があるみたいだ。

保美香
 「兎に角やるしかないですわ!」

そう言って私たちはまずは足下の各ターゲットを破壊していく。
攻撃箇所が多く、敵の攻撃も激しい。
だけど、一つ一つの部位の防御力はそれほどでもない。

保美香
 「あーもう! バルカン砲鬱陶しい! 回避しきれませんわ!」

伊吹
 「そもそもバルカン砲は掠っただけでも即死だけどね〜、普通〜」

思わず苦笑いで突っ込む伊吹だが、そこはゲームライクにだろう。
そもそも生身で巨大ロボを相手にする方がおかしい訳だし。

華凛
 「水平斬り!」

こういう時実に便利な特技を持つ華凛は全体攻撃で足下の4ターゲットを全て攻撃して、内一つを破壊した。


 「よし! 後3つ! 皆頑張れ!」

美柑
 「ボクも頑張らないと……ね!」

美柑の強烈な一撃が、更にターゲットを破壊する。
直後、全身から放たれるビーム砲の反撃を貰うが、美柑は踏みとどまり継戦を続ける。


 「回復しないと」

私はあくまで安全を重視する。
回復によって体力を大幅に回復すると、皆も更にターゲットの破壊を進めた。

保美香
 「これで! 全ターゲット破壊!」

最後は保美香の斬撃で足が破壊される。

マギアナ
 「く……下半身大破……」

マギアナの巨体が崩れると、膝をつくようにターゲットが下まで降りてくる。

マギアナ
 「戦闘レベルを2に移行! ドローン射出!」

マギアナの腰の後ろから2機のドローンが射出される。
それは大きな3枚羽を回転させて、機体下部にサブマシンガンをマウントした攻撃ドローンだ。
2機のドローンはすかさず援護射撃でこちらを攻撃してくる。

美柑
 「ターゲットは……ん? あれって!」

敵の周囲を旋回する美柑は上を見上げながら何かに気がついた。
そのまま敵の身体を登り、胸部装甲を攻撃する。
しかし流石に厚く守られているらしく、装甲は容易く美柑の攻撃を弾いた。
しかし、美柑は何かを確信したようだ。

美柑
 「胸部装甲の中何かありますよ! 多分ギミック!」


 「胸部装甲の中? おっぱいミサイル?」

伊吹
 「スーパーロボットなら胸に武装があるのは基本だけど〜」

保美香
 「でもまぁ、よく気付きましたわね!」

美柑
 「装甲の隙間から中が空洞なのが見えたんですよ!」


 「○S初期のポリゴンに見られた粗さじゃないんだから」

華凛
 「よく分からんが、壊せば分かるか!」

華凛も胸部装甲を攻撃すると、自然と保美香も参加する。
相手の攻撃は依然激しいけど、私はこまめに回復をしながら、余裕を見て攻撃にも参加する。
そうして数ターンが経過すると、遂に胸部装甲が破壊される。

マギアナ
 「危険危険、これより最終フェイズに移行します。マザーベースより衛星にマイクロウェーブ送信を指示、後5分でスターバスターを発動し、この星を破壊します」

マギアナがそう宣言すると、空から光線がマギアナに降り注ぐ。
そしてそのエネルギーは剥き出しの胸部に集中していた。


 「動きが止まった……つまり5分以内に倒せ、か」

私は攻撃力アップするアイテムを使うと、回復は捨てる。

保美香
 「星を破壊と来ましたか! スケールの大きい事で!」

華凛
 「だが、させん! 一意専心!」

美柑
 「全力で! でぇりゃああああ!」

伊吹
 「皆〜! 多分5分って言うのは装甲を込みにした時間〜! だから余裕持って〜!」


 「これが最後だ! 皆でクリアしよう!」

余裕と言っても、時間は刻一刻と減っていく。
だけど焦りはない。
寧ろ、この勝利を漠然と感じている。
どうしてそんな自信が湧くのか、分からないけど私はいけると思った。
きっとこの頼れる皆がいたからに違いない。


 「ラスト、シュート!」

私が構えたビームライフルが遂に相手の身体を貫通した。

マギアナ
 「機能……てい、し」

内部を破壊されたマギアナは連鎖爆発を起こして崩れていく。
そして胸部に溜め込まれたエネルギーは暴走を始め、ついには大爆発する!

ドォォォォン!

星を破壊するには物足りない威力だけど、その爆発はマザーベースを吹き飛ばして、厚く覆っていた雲を吹き飛ばした。




 「……けほ、皆無事ー?」

保美香
 「ああ、なんとかな!」

美柑
 「何だこの階段は!?」

伊吹
 「上からくるぞ〜、気をつけろ〜」


 「折角だから赤の扉を選ぶぜ!」

華凛
 「こうして茜はクリムゾンを手に入れた……」

ディン
 「……なにこれ?」

生存確認である。
ご丁寧に爆心地にいたにも関わらず、私たちは無事である。
全員五体無事で爆発の影響でダメージを負ってもいない。
後衛メンバーの伊吹凪ツンベアーに至っては傷一つない。

マギアナ
 「う……」

ディン
 「な!? テメェ! 生きてやがったか!」

私たちが慎ましく勝利を喜んでいると、瓦礫の中からマギアナは顔を出した。
しかしその姿はすでにボロボロで戦える姿ではない。
今やそこにいるのは華奢な女の子でしかない。
それでも、ツンベアーは憎しみを募らせ、拳銃をマギアナに向ける。

ディン
 「マギアナ……なんで死なねぇんだ、ユキノオー……ツェンは良い奴だった。なのにアイツが死んでお前が生きてるなんておかしいじゃねぇか!?」

保美香
 「もうお止しなさい、敗者をなじるのは貴方の心を苛める行為だわ」

保美香は、ツンベアーをなだめるように拳銃に手を置いて、マギアナに向き直る。
マギアナは一瞬哀しい顔をしたが、直ぐに機械染みた無表情で語り出した。

マギアナ
 「なにゆえ、お前たちはここまで戦える?」

保美香
 「さぁね、生きるって戦いだもの。それは全ての生命体が背負った宿命だもの」

マギアナ
 「愚かな、やはり有機生命体に未来はない」

保美香
 「だから進化するのよ、生命体ってそうやって過ちを認め、進化するの、進化は生命体の特権よ」

なんだか、その会話は保美香らしくないと思った。
急に保美香まで演じ始めて、皆戸惑いながら見ていて、ふと気がついた。
マギアナが笑っていた。

マギアナ
 「威力は落ちるが、衛星を一つプレゼントしよう。この辺りを焦土に変える程度の質量はある」

美柑
 「な!? 所謂コロニー落とし!?」


 「いや、隕石爆弾かも」


 「クソ! もしかしてあれか!?」

凪が空を指す、そこには赤熱しながら落ちてくる衛星の姿があった。

華凛
 「逃げても……いや、もう遅いか」

保美香
 「……大丈夫ですよ、皆さん。この一帯が吹き飛ばされて困るのは何もわたくしたちだけではありません」


 「私たち以外?」

保美香
 「ふふ……そこのお嬢さんの性格からしたら、まぁ陳腐すぎて読みやすかったですわ」

そう言ってチラリとマギアナを見ると、マギアナは視線を逸らす。
やがて僅かにその輪郭が拝めるようになると、その人工衛星は何かによって貫かれた。
それは一筋の流星、気が付けば暗くなった夜空を切り裂いて走る流星であった。



***



鐃背
 「ふん、この出番のために戦うなとは、フーパも言ってくれる! しかし良い戦いを見せて貰った。これはその礼じゃ」

レックウザはその姿を成層圏の彼方に浮かべる。
『ガリョウテンセイ』、空を切り裂く一筋の流星となった彼女は人工衛星を完全に破壊して茜たちを守った。
そして最後にレックウザは彼女たちにプレゼントを贈る。

今、彼女の眼下には無数の残骸が地表に降下するのが分かる。
対流圏を越え、オゾン層を越えて……星は煌めく。



#14に続く。


KaZuKiNa ( 2019/05/04(土) 09:20 )