突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 special
SP12

#12




 「私たちが挑むのは地上一万階のタワー……」

美柑
 「○ペクトラルタワーはやめろー!!!」

伊吹
 「冥界住人にはなりたくないね〜」

保美香
 「しかも結局もう一つ地上一万階のタワーあるじゃないですか、やだー」

華凛
 (でも、○ロのコスプレはしてみたいかも……)

……なんて冗談もそこまでに、私たちは龍神の住む塔へとやってきた。
物資の補給も、この世界では不自然に配置されている自動販売機で出来ることが判明し、一応準備万端だ。


 「しかし、なんでこの塔だけ、この退廃世界で無事なんだろうな」

保美香
 「それだけ龍神とやらの力が凄まじいのでしょう? 行きますわよ」

明らかにサイバー世界に混じったファンタジー、龍神の塔の異質さは、少なからず私たちを竦ませる。
保美香を先頭に塔の入口に入ると、早速何かが待ち構えていた。

ドラゴン赤
 「グオオオ!」

華凛
 「久し振りにファンタジーな奴が出たな……」

最初に遭遇したのは体長10メートルを越える巨大な赤竜。
良くも悪くも西洋ドラゴンのテンプレだ。

伊吹
 「やーっと活躍出来るね〜」

この世界ではイマイチ特性上の強みを活かせなかった伊吹も、ようやく本領を発揮する。
シェイミを倒し、第3世界を解放したことで、伊吹が得たのはドラゴン系に特効の特性。
条件さえ噛み合えば、美柑や華凛よりかなり高いダメージを叩き出す。


 「定番なら炎属性かな」

ドラゴン赤
 「グオオオ!」

言ってる傍からドラゴンは激しい炎で攻撃してくる。
私はダメージ数値を確認して、回復アイテムを使う。
私が新たに得た回復アイテムの全体化は、極めてローコストで効果を発揮できる。

美柑
 「やぁぁぁぁ!」

伊吹
 「た〜!」

前衛アタッカーの攻撃力は頼れる。
敵の総ライフが分からないけど、間違いなくトップ火力の二人だろう。


 「アクアトルネード!」

最後に追撃をいれたのは凪、ドラゴンはその魔法を受けて沈黙した。

保美香
 「思ったより柔らかかったですわね」

伊吹
 「まぁ〜、登れば登るほど強力な敵が出てくると思うと〜、最初から強くても困るけどねぇ〜」

とはいえ、強力な雑魚パターンで襲ってきた時とさっきのドラゴンじゃ、雑魚戦の方が辛い。
この世界から本格的に雑魚も全体攻撃を多用してくるし、厄介な状態異常も多い。
今回のドラゴンのようなシンプルな敵の方が搦め手が少なくて結果的に楽だ。


 「まぁ、気にせず登ろう」


 「うん、結局逃げることは許されない」

どの道マギアナを倒さなければ次の世界にいけないなら、当然この塔の制覇も必要だ。
……とはいえ、まさかこの塔本当に一万階あるんじゃないかっていう大きな塔だということを私たちはまだ知らない……。



***




 「なぁジラーチ、これってアマージョ組が先にクリアしたらどうなるんだ?」

ジラーチ
 「残念だけどそれは無理、アマージョ組はバリアの破壊は可能でもマギアナは倒せない」


 「それってアイツらは知っているのか?」

ジラーチは首を横に振る、つまり報せていないか。

ジラーチ
 「いつも通りフーパの気まぐれよ、フーパは別名いたずらポケモン、人を引っかき回すのが大好きなのよ」


 「その分類ってさ……結局は第三者が決めるんだよな……誰がフーパをいたずら者だと決めつけたんだ?」

ジラーチは何も答えなかった。
いや、答えられなかったのだろう。
確かにフーパはいたずら者の側面はあると思うが、俺はフーパの本質には人を思いやる優しさがあると思う。
願い事ポケモン、いたずらポケモン、感謝ポケモン……どれも第三者が付けたエゴじゃないのか。
実際には、それをどうやって推し量る?
特にフーパには、俺には推し量れない大きな何かを秘めているように思える。


 「昨日フーパ、本気で怒ってた」

ジラーチ
 「うん……弱い私が嫌になったんだ」


 「……これは経験則なんだがな、本当に嫌いって奴は、その興味から失せるもんだ……ジラーチは心配で怒られたんだ、だからフーパは嫌った訳じゃないはずだ」

アレからまだ顔を合わせた訳じゃないが、フーパとジラーチの関係は嫌って程見た。
アイツが本気で嫌ったなら俺たち今頃別の世界にでも放り出されていただろう。


 「アイツいつも何処か、ほっつき歩いているみたいだけど、何してんだろうな」

ジラーチ
 「さぁ……何せあらゆる世界が庭みたいな娘だからね」



***



ドラゴン緑
 「グアアア……!」

ズシィィィン!

何体目だったか……気が長い程塔を登って、今何処にいるのか分からない程登った先に待ち構える緑竜を倒すと私たちはその場でへたり込む。

美柑
 「段々強くなってきましたねぇ」


 「あのドラゴン毒を使うようだが、あそこまで厄介とはな」

緑竜は毒を司るようで、毒のブレスに毒爪と、攻撃力や防御力もさる事ながらシンプルな戦闘能力は下手なボスに匹敵する。
いや、ある意味でボス戦なのかもしれない。

伊吹
 「えーと、倒したのは赤、青、黄色、緑……4体目だね」

ドラゴンはある程度進むと狭いエリアに一体だけ配置されてるパターンになる。
あと何回こんな戦いになるか分からないが……そろそろ終わりだと助かるんだけど。


 「皆回復終わってる、行こう」

私は最初に立ち上がる、皆もやれやれと立ち上がり始める。
肉体疲労はないんだけど、やっぱり精神は疲れる。
このままもう少し休みたいところだけど、流石にセローラたちも頑張っている以上、休んでいる暇はない。

華凛
 「……やれやれ、こうも何連戦させられているか分からないと、疲労は馬鹿にならんぞ」

保美香
 「ですが、ゆっくり休むのはだんな様を救ってからに致しましょう」

華凛
 「それを言われると泣き言を言えんな……!」

美柑
 「うん! 主殿にボクも早く会いたいです!」


 「情けない姿も茂さんには見せられないからな」

私たちは体勢を整えると再び階段を登る。
階段は一階につき4メートルくらいだろうか。
本来なら上に登れば塔は狭く細くなるはず、だけどこの塔ではそう言うことはない。
ゲームだからと片付ければそれまでだけど、やはり気にはなるよね。



………。



あれから、塔を20階程登ると、遂に私たちは最上階に辿り着いた。

保美香
 「……空が下に広がっているみたい」

そこは大きな神殿だった。
塔は既に雲の遥か上、私たちは何ものも存在しない清涼な空気の中にいた。
もはや地上すら大気に霞み、騒音はここまで届かない。


 「龍神は……」

バサァ!

突然影が横切った。
私たちは咄嗟に上を見上げると、そこには太陽がある。
その太陽から何かが降下しているのだ。

それは二匹のドラゴン。

ズシィィィン!

塔を揺らす!
私たちの前には二匹のドラゴンが立ちはだかった。

華凛
 「ほぅ……美しい、金竜に銀竜か……!」

華凛は柄に手を掛けた、しかしその額に汗が滴る。
華凛が緊張しているのだ、そうだ……私もその手を握っている。
明らかに感じるプレッシャーはそれまでのドラゴンたちと格が違う。
間違いなくこの塔のボスだ……それが二匹いるという絶望。

伊吹
 「……大丈夫、アタシたちはやれるよ〜……!」

伊吹がそう自分を鼓舞するように槍を構える。
皆も覚悟を決めた。
そうだ、大丈夫……私たちは強くなった。

華凛
 「先手は……貰う!」

金竜
 「ッ!」

華凛は刀を両手に持ち、金竜へと襲いかかる。
だけど金竜はそれに反応するように口を開く。


 「華凛耐えて!」

私はやばいと感じた。
金竜の口に収束するエネルギー、それが放射されると、幾つかの熱線が私たちを襲う!

華凛
 「く……あああ!?」

華凛の体が4メートル程吹き飛び、動かなくなる。
私は咄嗟に蘇生アイテムを華凛に使った。

伊吹
 「なにあれ〜……まさかブレス〜?」


 「レーザー……いやビームにしか見えないぞ!?」

金竜のブレス、それはすでに息吹の領域を越えている。
超圧縮された熱線を拡散させる。
超熱量拡散性ブレス、そう称すべき攻撃だ。

銀竜
 「ッ!」

一方、敵の攻撃に戦慄する間にも敵の猛攻は止まらない。
銀竜は翼を広げて私たちに飛びかかると、その爪で伊吹を攻撃する。

伊吹
 「く! えいやー!」

伊吹は爪を受けるも果敢に槍で銀竜を攻撃する。
銀竜は一瞬怯むと、後ろに下がった。

華凛
 「う……く! な、なんて攻撃力だ」

美柑
 「でも、効いてます……倒せない相手じゃないですよ!」

金竜銀竜は確かにここまでと比較にならないレベルの強敵だ。
だけど防御力は決して通せない堅さじゃない。
ダメージを与えれば、相手はいつか倒れる。
兎に角慌てない事だ。


 「皆バフアイテム優先で、華凛はすぐ回復するから!」

私は直ぐにでも華凛を戦えるように回復させる。
皆も直ぐにアイテム欄からバフアイテムを使用する。
伊吹と美柑は攻撃力を上昇させる。

金竜
 「ッ!」

金竜は尻尾を振るう、その体長から繰り出される一撃は容易に遠距離攻撃になり、美柑を襲う。

美柑
 「くっ!? 攻撃力は金竜の方が高いみたいだ……先に仕留める!」

美柑は敢えて危険ながら金竜に挑む。
金竜は攻撃力は高いが、美柑の一撃に怯む。
耐久性では銀竜が上だろう、その点は少し気になるところだった。

銀竜
 「ッ!」

銀竜が今度は口にエネルギーを溜め込む。
よく見れば、動作から危険予測できる。
直後銀竜は白銀のレーザーを拡散して放った!


 「くぅ!? 超低温拡散性ブレス……かな?」

それは超圧縮された冷気のブレス。
差し詰め拡散させた冷凍ビームだろうか。


 「回復!」

私は改めてブレス攻撃の後に回復アイテムを使い、全員をケアする。

華凛
 「とりあえず、金竜から!」

先ずは危険度の高い金竜から倒すべき、当然と言えば当然だけど……気がかりだ。

伊吹
 「保美香どう思う〜?」

保美香
 「集中攻撃ですか、定石かと?」


 「だが違う……そう考えるんだな?」

伊吹はコクリと頷いた。
どうやら伊吹は集中攻撃に反対のようだ。

伊吹
 「なんとなくまだ大人しい気がするんだよね〜……」


 「大人しい!? これで!?」

伊吹
 「RPG慣れしていると理解出来るというか〜……多分発狂あるね〜」

そう言うと伊吹は銀竜を攻撃する。
伊吹の危惧は実際の所分からない。
厳しい猛攻を少しでも楽にしたいのに、敢えて均等に倒す。
労力で言えば無駄にも思えるが、なんとなく私もそれに賛成する。


 「皆集中せず、的確に戦って!」



***



ジラーチ
 「結構鋭い、やっぱりあのおっぱい侮れないね」


 「伊吹って、結構聡明で鋭いからな」

作戦司令室で見た戦いは正に熾烈。
でも発狂すれば、その比じゃない攻撃が待っているという。

ジラーチ
 「金竜銀竜は片方が倒れると発狂を開始する、ほぼそこからは確定一発で倒されるから回復が無意味になるわ」


 「エグいなぁ……定石潰しかぁ」

ジラーチ
 「もうすぐ終わりだからね……あれ?」

ジラーチはふと手元を見た。
ジラーチのお気に入りのコーンポタージュの入ったカップが底をつく。


 「おかわりする?」

ジラーチ
 「……そうね、貰うわ」

ジラーチはカップの底を見た、そこにはコーンの残りカスが溜まっている。
ジラーチは何かを確認するが、直ぐに微笑を浮かべてお代わりをリクエストする。


 「どうぞ、お嬢さん」

俺はポッドからコーンポタージュをカップに注ぐ。
ジラーチはカップを口に付けると、不思議そうに俺を見た。

ジラーチ
 「お嬢さんって?」


 「なに、たまには執事に奉仕して貰う気分でも味わって貰おうかなって」

ジラーチは「はっ」と気付くと顔を真っ赤にした。
改めてジラーチは自分が尽くされる事に慣れていない、どちらかと言うと尽くす側だからだ。
だけどジラーチは悪い気分じゃないだろう、顔を真っ赤にしながら言った。

ジラーチ
 「そ、それじゃ……椅子になって」

そう言うとジラーチはソファーからどくと、座るよう促す。
俺はソファーに座るとその上にジラーチは座る。

ジラーチ
 「い、いい椅子ね……」


 「光栄です」

ジラーチの体は小さい。
でも暖かく、そしてその重みが心地良い。


 (なんかジラーチって少しだけ俺との距離が近づいた気がする)

気が付けばジラーチが怒ることは減った。
逆に距離は近くなって、今ではこうやって身を預けてくれる。
俺はジラーチの頭を撫でる。

ジラーチ
 「ん……その気がないなら止めて、エッチな気分になる」


 「え?」

ジラーチはモジモジしている。
それは……そのぅ、そうやって股間に尻を擦られるとこちらも。

ジラーチ
 「やっぱりロリは嫌い?」


 「あ……いや! そうじゃなく……!」

ジラーチは誘っている。
そうだ、そもそも椅子になれって思いっきりこれを狙っていたんだ!
てっきり父に甘える娘の感覚だったが、そもそもジラーチは俺を男として見ている。
このままではジラーチは俺の膝の上でオナニーを始めかねない。


 「俺はジラーチとする気はない! だからジラーチも止めろ……」

ジラーチ
 「……馬鹿」

ジラーチはそう言うと、動きを止めてキーボードに向き直る。
俺はそれにホッとしながらも、いつもなら現れるフーパが現れない事が気になった。


 「いつもならフーパがからかいにくるのに……やっぱりまだ怒ってるのか?」

ジラーチ
 「……もういい、フーパだって弱虫よ。自分が幸せになることには未だに否定的だもの」


 「どういうことだ?」

自分が幸せになるのは否定?
それじゃ、あいつは何のためにこんな壮大なゲームを開いたんだ?
でもそう言えばフーパはいつもジラーチを弄りながらも幸せを考えていた気がする。

ジラーチ
 「アイツはいつも私を幸せにしようって画策してた、でもフーパは神様じゃない。だからフーパは茂お兄ちゃんのこと好きなのに……否定してる」

ふと、フーパが俺の首筋をなぞり、妖艶に身体を預けたことを思い出した。
彼女がもう少し本気なら俺はフーパとしていたかもしれない。
それ位あの時はフーパの雰囲気に飲まれていた。
それは……遊びじゃない。
きっと慌ててフーパは遊びに変えたんだ。

ジラーチ
 「フーパだって私に望めば、茂お兄ちゃんとの幸せを叶えるのに……」


 「……」

それは、果たしてフーパを幸せにするのか?
ジラーチはフーパの幸せを願い、フーパはジラーチの幸せを願う。
それはとても矛盾していた。

ジラーチ
 「あ……金竜銀竜が」



***



ズッシィィン!

ほぼ同時、金竜と銀竜は倒れた。
私たちは必死に戦い、身をボロボロにしながらもこの強敵を倒す。

保美香
 「皆さん無事ですか!?」

華凛
 「……なんとかな」

美柑
 「現実なら何回死んでたかな?」

伊吹
 「しんどかったねぇ〜」


 「すぐ回復……あ」

皆HPはギリギリ、実際ダメージで動きが鈍ることはないとはいえ、皆ぶっ倒れたい程疲れている。
私は直ぐに回復しようと思ったが、神殿の奥に誰かが現れた。


 「カッカッカッ! 見事な戦いッぷりよ!」

突然そこに顕現したのは小さな少女だった。
随分豪快に笑っているが、その雰囲気は見た目通りの少女ではないことが分かる。
身長は130センチ位、緑色の髪が地面すれすれまで伸び、金色の瞳をしている。
長い緑の尾、そして二本の触覚。

保美香
 「……まさかレックウザ?」

レックウザ
 「その通りじゃ! 妾こそが龍神、名を鐃背(ドラセナ)よ!」



#13に続く。


KaZuKiNa ( 2019/05/04(土) 09:20 )