SP10
#10
シェイミ
「うぇぇぇん、負けちゃったでしゅ〜!」
茂
「おーよしよし、君はよく頑張ったよ、最高の少女さ」
第3世界で負けたシェイミは城へと送還されると、わんわんと大泣きしてしまった。
ジラーチも「よく頑張った 」と褒めたのだが、改めて自分の大根演技に恥ずかしさが倍増して泣いてしまう。
シェイミ
「うぅ〜、恥ずかしいでしゅ。もっと頑張れた筈でしゅ」
今の姿はランドシェイミのせいだろうか。
普段に比べても気弱というか、自分に自信がない。
悪い意味でかなり消極的だ。
茂
「あ、そうだお菓子食べてくれたか?」
シェイミ
「とっても、とってもとっても美味しかったでしゅ。だからこそあたしもっと頑張らないといけなかったでしゅ〜!」
フーパ
「面倒くさいなぁ、良い感じに幼女をいたぶる快感を相手に与えたんだから作戦的にはあれで成功なのに」
「個人的にはもっと喘いで欲しかった」、そんな事を呟くが、誰がシェイミがいたぶられて喜ぶんだよ、と思いつつもフーパはなにか意図があるのだろうな。
フーパ
「それこそ茂君? シェイミが服を強引に破かれて、白濁したものを全身にぶっかけられて虚ろな瞳で泣いてたりしたら最高にクるだろう?」
茂
「それ100%レイプ系のエロゲー展開!」
俺はそっち系は苦手なの!
どうもエロ嗜好においてフーパとは好みが違い過ぎる気がする。
フーパ
「よし、シェイミこのカンペに書かれた文字を読め!」
シェイミ
「ふえ? えと……お兄たまのご褒美欲しいでしゅ、下のお口にお兄たまのイカ臭いの一杯欲しいでしゅ?」
茂
「フーパ! お前シェイミに何を!?」
俺は慌ててシェイミからカンペを取り上げようとする。
しかし、僅かに遅かった。
バァン! 談話していた部屋の大扉が開かれると丁度憤怒の顔のジラーチが立っている。
なんの因果か今俺はシェイミを襲うかのような(実際にはカンペを奪い取ろうとしているだけだが)状況が最悪なまでに悪い。
ジラーチ
「茂……アンタは盛りのついた犬かーっ!」
ジラーチ怒りのアッパーカット(実際はサイコキネシス?)が俺の顎を捉え、俺は宙を舞った。
茂
(不幸だ……!)
***
茜
「当然現れる旅の扉、視界がグルグルと回って、暗闇を抜けるとそこは世紀末だった」
保美香
「雪国ですか……ていうか世界観安定しませんわね!?」
第3ステージをクリアした私たちはいつも通り謎の声の賛辞と共にその場にワープポイントが出現した。
いざ、そのワープポイントに乗ると、辿り着いたのは崩壊したコンクリートジャングルだった。
華凛
「……なんというか、戦争の跡にしても悲惨だな……」
伊吹
「まぁ、華凛や凪の世界じゃ〜、まだここまでコンクリートも普及してないし〜、対物兵器も進化してないしねぇ〜」
倒壊したビル群、荒れ果てたアスファルトの地面。
そこに現れるモンスターも、もはや機械系とミュータントだらけ。
美柑
「それにしても何があったらここまで荒れるんでしょう?」
茜
「199x年、世界は核の炎に包まれた?」
保美香
「核ってコンクリートに対してはそれほど破壊力高くないそうですわね」
凪
「そ、そう言う問題か?」
とりあえず、まず問題なのはいきなり知らないダンジョンに放り込まれた気分だ。
なにせ、とりあえず休みたいのに回復できる拠点がない。
仕方ないので迷路と化した崩壊した都市群を歩む。
高層ビルがなぎ倒されていれば、道にはコンクリートの壁があちこちに出来ており、実質ダンジョンよね。
?
「ヒャッハー! テメェら命惜しけりゃ水と食料――ッ!?」
なんか、世紀末ではテンプレートな物言いをする男が瓦礫の上からこちらを見下ろしていた。
皆そちらを向くと、そこには2メートル近い巨漢の男が立っている。
一見すると牙一族みたいな格好だが、毛は白く、口から氷の牙が生えている。
とりあえず何故か、こちらを見ると向こうは驚愕していたが?
大男
「あ、あああああ、貴方様はーっ!?」
大男がプルプル震えて指を指す先にいたのは保美香だった。
関係者? しかし保美香は首を傾げる。
凪
「なにか……既視感があるんだが?」
一方凪の方がなにか思い当たる節があるのか唸っていた。
皆どこであんな世紀末の住民と接触したんだろう?
大男
「そ、そこのピジョット! テメェにはこっちも恨みってもんが!」
凪
「失礼だと思うが、どこかで出会ったか?」
ズコーッ! 大男が瓦礫から転げ落ちる。
私たちの前に落ちてきた大男は怒りに血管を浮かべながら、立ち上がる。
大男
「くそう! テメェら俺を馬鹿にしやがってー! ツンベアーだけが体得出来る奥義、熊爪拳で皆殺しだー!」
……なんかよく分からないけどもしかしてNPCかな?
ツンベアーの大男は訳も分からないが襲いかかってくる。
華凛
「鬱陶しい、16分割殺していいか?」
美柑
「外部より寧ろ内部を破壊して、破裂させるべきでは?」
ツンベアー
「お前ら怖いよ! 山賊より怖い!」
とりあえず襲いかかってくるツンベアー、だけど自慢の攻撃力も行動順の遅さが災いし、攻撃する前に私たちの猛攻で1回も攻撃する前に倒れた。
ツンベアー
「もぽえ〜!? くそぅ……ゲームの世界でも俺はこのザマなのかぁ……!」
保美香
(……ツンベアーで、大男、妙にヘタレで弱い……もしかして?)
「貴方、フリズ山の確か……トンヌラだったかしら!?」
ツンベアー
「酷ぇ……お頭にすら俺は覚えて貰ってないのか……うおおお! お頭の馬鹿ーっ!?」
ツンベアーはそう言うと全速力で逃げていった。
結局誰だったのか私には分からないけど、何人か思い当たる節はあるようだ。
伊吹
「もしかしてアタシたちをレイプ目的で襲ったツンベアーじゃ〜……」
美柑
「妙に太ったユキノオーと一緒に現れた気もしますが……正直覚えてません」
華凛
「……いずれにせよ頭の悪そうな男だったな」
保美香
「うーむトンヌラじゃなかった……とうえいだったかしら?」
保美香は未だに名前を考えているみたい。
明らかにどうでもいいという雰囲気の華凛を除いて、凪たちはなにか思い当たる節があるらしく、思い出を共有出来ないのが少し寂しい。
***
アマージョ
「こーの! スカポンタン! また何も奪えなかったのかい!?」
アマージョのトロピカルキック(ただのふみつけだが)で苛められるツンベアー。
茜たちに負けて、秘密のアジトに帰れば、この世界で出会ったアマージョにやりたい放題されていた。
なんでもどっかの国の女王様らしいが、はっきり言って暴君だ。
自分は働かず、ツンベアーともう一人、同じく召喚されたユキノオーを顎で使っていた。
ユキノオー
「もう〜、なんでこうなるかな〜?」
アマージョ
「アンタも少しは運動しな! 腹が醜い!」
ツンベアー
(うぅ……お頭たちにはボコボコにされるし、アジトには訳わかんねぇ女王様にいびられるし、俺の人生呪われてるのか? とりあえず無能な上司は0ー人事、0ー人事!)
フーパ
『よー! 元気にやってるかい!?』
そこへ、突然空中に映像が映されると元凶であるフーパが映し出された。
アマージョ
「ふん! もう少し有能な奴はいないのかい?」
フーパ
『まぁどうせ失った命、二度目の人生楽しめよ』
アマージョはフーパの言葉を聞くと、相変わらず高圧さは変わらないが「ふん!」と鼻を鳴らした。
失った命、てーことはこの世界の外では既に死んでるのか? ツンベアーは無い知恵で考えるが、それは無駄な事だ。
アマージョ
「ちゃんとやれば、新しい世界を用意してくれるってのは本当だろうねぇ?」
フーパ
『ああ、お前の生存が確定している世界線位用意するのは訳ないからな! それより要望だが、さっき最高にイカした奴を送っといたぜ!』
アマージョ
「イカした奴? ふん! 私は早く楽園へと行きたいんだよ!」
?
「あー、天国(ヘブン)ですかー、アーイイ。凄く良いですねー、ハイ」
ツンベアー
「あん? て……なんだこいつー!?」
アマージョ
「あん? なんだこの気持ち悪い奴は?」
突然アジトに召喚されたのは、全身黒ずくめのポケモンだった。
まず最大の特徴が目を縫合糸で入念に縫合され、口のチャックも開かないように縫い込まれている。
全身が拘束具で固められた長身痩躯のポケモンに誰もが戦慄する。
長身痩躯
「ドーモ、ジュペッタのボーロンです。フーパ氏にデリバリーされました。エー」
ツンベアー
「ヒィィ!? こんなキモい奴が味方なのかよー!?」
あまりにもキモすぎる姿に絶句する一向。
あの高慢ちきなアマージョでさえ、呆然としていた。
ボーロン
「ところでー、エー、貴方楽園に行きたいと? 最高の快楽はなにかご存じ? ですか? エー」
アマージョ
「な、なんだって言うんだい!?」
その瞬間、ボーロンの両手でなにかが光っていた。
ドスドス!
その瞬間、アマージョの顔の両脇数ミリに畳み針が突き刺さっていた。
その男は見た目とは裏腹に三人が反応できない技を持っていた。
アマージョ
「な、何を―――!?」
ボーロン
「アーイイ。貴方のその顔最高です! 最高の快楽とは痛覚! そもそも快感とは痛覚神経からもたらされる物! つまり痛みこそが精神をエクスタシーさせるのです!」
ツンベアー
(も、もう嫌じゃー!? なんだこの変態は!? 俺の回りにはロクな奴がいねぇ!?)
ツンベアーは頭を抱えてその場で蹲りガタガタと震えた。
ツンベアー元々うだつの上がらない山賊に過ぎない。
そんな大それた野望もないし、小市民で充分なんだ。
ボーロン
「エー、では私の趣味をお見せしましょうー」
アマージョ
「趣味だ……と?」
ドス!
アマージョは最初それが判らなかった。
ただ下腹部が熱いと思い、目線を下に向けると針が下腹部に刺さっているのだ。
最初、訳が判らなかった。
何故ならそれが痛くないのだ。
ボーロン
「私、ツボについても知識があります。エー、今刺したのは快楽と痛覚を逆転させるツボです。エー」
アマージョ
「な……イギィィィ!?」
アマージョは絶叫した。
それはまるで瞬間的に何度もイカされたような絶頂だった。
痛みではなく、快感が脳を冒す。
ボーロン
「さーて、それでは楽しいオブジェを作りましょうー。エー、快楽でなら何十本堪えられるか楽しみですねー、人は絶頂しすぎても死ぬから注意深くいきましょうー」
ボーロンはその両手に何十本も畳み針を携える。
ツンベアーはガタガタ震えながら隣をみた。
ユキノオー
「…! ……、…!」
ユキノオーはしょんべんを散らしながら、言葉もなく震えている。
大の男とはいえ、サイコパスなんて慣れていない。
これから見せられる猟奇殺人を嫌でも見させられるのだ。
これなら心が壊れた方がよっぽどマシだ。
しかしツンベアーは残された健気な自我で涙をこぼした。
ツンベアー
(どうなってんだよ、人生クソゲーかよ!? これならお頭に寝返った方がよっぽどマシだよ! 救いはないのかよ!?)
もはやこの世に神はいないのか。
だが、救いの手は、今降臨する!
ボーロン
「さて、まずは一本目」
アマージョ
「や、やめろ……壊れる!?」
悪の限りを尽くし、元の世界ではそれが原因で殺されたアマージョも、ここまでの絶望ではなかったろう。
死して更なる地獄を味わう事に、自我は崩壊しかけている。
ボーロン
「まずは腕……アイエ?」
ボーロンは自分の腕が燃えている事に最初気が付かなかった。
その炎はまるで生きているようにボーロンの腕を這いずると、一瞬で燃料のように燃えだした!
ボーロン
「アイエエエ!? ナンデ!? 炎ナンデ!?」
?
「例えこの世に救いが無くても、私が笑顔で救いましょう! ゲームの世界に爆誕! 魔法少女セローラちゃん! 悪い子はお仕置きよ!?」
そこに現れたのは魔法少女というにはどう見ても普通のメイドにしか見えない女の子だ。
しかしその瞳は青く燃え上がり、そのヒーロー魂を感じさせる。
ツンベアー
(また変なの出てきたーっ!?)
セローラ
「ボーロンさん、オブジェを量産しようとしないでください! 一応チームメンバーなんですから!」
ボーロン
「……不意打ちは卑怯ですねー、最近のメイドはアグレッシブで困る」
セローラ
「噂では聞いてましたけど、帝国軍特殊任務部隊の方って変態ばかり」
ボーロンはプスプスと炭化しながら蹲る。
ここがゲームの世界じゃなきゃ即死だったろう。
まぁギャグ時空では灰になっても復活するものだが。
セローラ
「はい、魔法少女セローラ、只今より着任致しました!」
フーパの寄こしたイカした助っ人はボーロンとセローラ。
最悪すぎる助っ人にツンベアーの胃に穴が空くのは何時間後か!?
#11に続く。