突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 special
SP08

#8



美柑
 「うーん……無い!」

美柑がひたすら唸り声を上げてじっと見ていたのは海図と謎の地図だった。
あの宝箱の地図は何処かの島を表しているが、このワールドにそんな島は見当たらないのだ。


 「もしかしたら……それ一枚じゃ不十分なのかも」

よくある手法だけど、似たような地図を重ねると一枚の絵が出てきたり、そういうトリックかもしれない。

保美香
 「とりあえず大きな島片っ端から調べる必要がありますね」

そう言って保美香は船を走らせる。
一体何処に行けば良いのか。
前回はミニマップに向かうべき場所がマーキングされたけど、今回はない。
ウンザリするほど広大なマップ……せめて何を求めれば良いか掲示されれば。



***




 「○Q2の紋章集め思い出すな」

現在、茜たちはもう一枚の地図を探している。
実は2枚いると言うのは正解のようで、それを探すのが第1ミッションだと言える。

ジラーチ
 「ちょっと想定よりレベル高いかも……敵の強さ引き上げる必要あるかしら」

ジラーチはステージ4を制作しながらも、茜たちをモニターしている。
茜たちは想定より進行が遅いらしく、その分強くなっているようだ。
このままでは、想定しているボス戦もヌルゲーになる恐れがある。
それを引き上げるか、ジラーチは悩んでいるようだ。


 「頑張った分だけ、楽になるのは当然の対価だと思うけどな」

俺はそう言ってコーンポタージュを注ぐ。
それをジラーチの前に置くと、彼女はおもむろにカップを手に取って、ポタージュを飲む。

ジラーチ
 「難しい所ね……」

制作者側としては歯応えのある難易度で楽しんで貰いたいのだろうが、こっちに合わせて敵が強くなったら、頑張るのが馬鹿らしくなるだろう。
ソビエトの衰退した理由は努力の対価が認められなかったからだ。


 「ジラーチもそろそろ休憩しろよ、今日はドーナッツでも作ってやらぁ」

ジラーチ
 「……出来るの?」


 「見た目さえ無視するならな!」

実は既にマギアナとドーナッツには挑戦している。
おおよそ、食べる上では問題なく、なんだかんだで挑戦すればなんとかなるのさ!



……そして1時間後。


調理城で俺はこんがり揚がったドーナッツをジラーチに差し出した。

ジラーチ
 「……ドーナッツ?」

ジラーチは目を丸くして、それを見る。


 「あ、ありのまま今起きた事を話すぜ……俺はドーナッツを作っていた筈だったが、気が付いたらサーターアンダーギーが完成していた! 超能力とか超スピードとかそんなチャチなもんじゃねぇ……もっと恐ろしい恐怖の片鱗を味わったぜ!」

ジラーチ
 「まぁいいや……ん、見た目は最悪だけど味は良い」

俺はジラーチがそう言うとホッとした。
いかんな……料理の腕は着実に上がっている筈だが、既にマギアナの方が遥かに上手い。
俺って主夫向いてないなぁ……。

フーパ
 「おっ、沖縄銘菓! 1個もーらい!」

突然ジラーチの後ろからフーパが出現すると、沖縄ドーナッツを1つ頬張る。
フーパはドーナッツを口いっぱいに頬張ると嬉しそうに震えた。

マギアナ
 「まぁ、流石ご主人様……もうそんな応用技まで駆使されるとは!」

続いてリングからマギアナも現れる。
最近フーパとマギアナが一緒にいる事が増えたようで、もしかしたらマギアナも戦うのだろうか。
戦うと言えば……。


 (シェイミの奴……ステージ3にいるみたいだが、本当に戦えるのか?)

シェイミは最近この城にいない。
フーパと別の世界で特訓していたみたいで、今はステージ3で茜たちを待っている。


 「出来ることなら、これ……シェイミにもあげたいんだけどな」

なんだかんだでシェイミがいないと城は寂しい。
最近はフーパやマギアナまでいないことが増えたし、俺もジラーチの傍にいる時間が増えている。

フーパ
 「4個貰うよ」

フーパはそう言うと、揚げドーナッツを次々袋に入れていく。

フーパ
 「丁度、ゲストをステージ3に送らないといけないから、ついでにシェイミに渡して貰うよ」

マギアナ
 「シェイミさん、きっと喜びますね」


 「なら……今度は北海道銘菓にでも挑戦するか!」

俺は気を取り直して、自分に発破をかける。
俺が暗くなってたら皆に悪い。
ここはポジティブを突き抜けて、更に前を目指そう。

マギアナ
 「お手伝いしますね、ご主人様♪」

ジラーチ
 「……たまには私も憂さ晴らしにやろうかしら」

お、珍しい事にジラーチも協力してくれるみたいだ。
先ずはクックパッドでクッキーからチャレンジしてみるか!



***



悠和
 「貴女がシェイミちゃん?」

シェイミ
 「……? お姉さん誰でしゅ?」

私はフーパさんにゲームの世界に転送された。
フーパさんは私をとある孤島の城に送る、私はシェイミというポケモンを探すと、城の外で寂しそうに蹲っていた。

悠和
 「私はシルヴァディ、名前は悠和よ」

シェイミ
 「フーパの言っていたゲストでしゅか……」

悠和
 (……この子、随分落ち込んでいるみたい)

私はとりあえず袋に入れたお菓子をシェイミちゃんに差し出した。
シェイミちゃんは不思議そうにそれを受け取ると、袋から歪な形のサーターアンダーギーを取り出した。

シェイミ
 「初めて見るでしゅ」

悠和
 「伝言、帰ってくるのを待っています。それを食べて元気になってね……だそうです」

私が伝言を伝えると、シェイミちゃんは大きな目を見開いた。
ただ、その目からポロポロと涙が零れる。

シェイミ
 「あたしを……? あたしいらない子じゃないでしゅか?」

悠和
 「事情は知らないけど、あの城の人達にそんな事思っている人は一人もいないと思うわ」

私は全員に会った訳じゃない。
でもフーパさんも、マギアナさんも悪人ではなかった。
多分他の人達も気の許せる素敵な人たちなんだろう。
このお菓子だって、下手だけど愛情のこもった物だ。
シェイミも小さな口で食べると、顔を綻ばせた。

シェイミ
 「美味しいでしゅ、この味お兄たまでしゅね……とっても、とっても美味しいでしゅ」

シェイミちゃんは100センチ位の本当に小さな少女。
その少女が涙を流してお菓子を食べている事の私はいたたまれない。
ミュウスリー……三海のように救われたポケモンは本当に一握りの幸せ者なのかもしれない。
でも、私が白那様やあの方にして貰ったように、私もそんな救えない子を救いたい。
所詮身勝手なエゴかもしれないけど、きっとあの方だってこの子を見れば黙っていない筈。

悠和
 「お姉ちゃんが一緒にいてあげる、だから落ち着いて食べて、ね?」

シェイミ
 「うん、うんでしゅ」

私はシェイミちゃんの横に座ると、優しく頭を撫でてあげる。
頭部の髪の毛は草タイプらしく葉っぱだけど、撫でると清涼な香りがする。
多分小学生でも低学年位じゃないかしら。
こんな子供がどうしてこんな寂しい思いをしているのだろうか。

シェイミ
 「お姉ちゃん、こそばゆいでしゅ♪」

悠和
 「あ、ごめんなさい」

私は慌てて手を離すが、シェイミちゃんは嬉しそうに頭を私の胸元に擦り付けてきた。

シェイミ
 「悠和お姉ちゃん、とっても良い匂いでしゅ♪」

悠和
 「そ、そう? シャンプーの匂いかな?」

匂いならシェイミちゃんはもっと凄い、シトラス系のような匂いが身体からしているから、草タイプ独特の匂いは強烈である。
決して不快じゃないけど、シェイミちゃんは特別そういう匂いなのかも。

シェイミ
 「お姉ちゃん、これプレゼントでしゅ!」

シェイミちゃんは私から離れると、一輪の赤い花を差し出してきた。
それは見たこともない花で、パルキア城では少なくとも見たことがない。

シェイミ
 「グラデシアの花でしゅ、シェイミ族は感謝の印として差し出すでしゅ」

悠和
 「感謝の花……そう、ならありがとうね」

私はそう言って微笑むと、シェイミちゃんは私の胸にダイブしてくる。
私はシェイミちゃんを抱きかかえながら、私でもあの方のようになれたかなと考える。
シェイミちゃんのくれたグラデシアの花を髪飾りのように刺して、私はそっと頭を撫でた。

シェイミ
 「〜〜〜♪」

悠和
 (それにしてもどうしてこんな小さな子が、このゲームに参加しているんだろう?)

やはりそれだけが分からない。
仮にシェイミちゃんの戦える力があったとして、それは別の問題だ。
まだ小さなこの子に必要な愛情が足りていないのは、私でも分かる。

悠和
 (まさかとは思うけれど、フーパさんは私に単なるゲームアバター以上の何かを求めてるの?)

フーパさんから渡された指示はシェイミちゃんの前衛として戦うことだった。
私は城の前で迎撃に出る事になる。
勿論それがこのゲームの役回りによる物なのは理解している。
でも、大ボス役がシェイミちゃんなのは少し納得できない。
まずシェイミちゃんにちゃんと戦えるのか、そもそも演技出来るのか?

悠和
 (……せめて今は一緒にいてあげよう)

空を見上げると、満点の星々と大きな月が地上を照らしている。
とても美しく、そして夜風が気持ちよく吹く。



***



ビュウウウウ!

華凛
 「ち……嵐か」

アレから、2枚目の地図を手に入れた私たちはそれまでの晴天が嘘のように嵐に遭遇していた。
宝箱から手に入れた2枚の地図、それをある角度から重ねると一つの島を指していた。
私たちはその島に向かう途中、海上で嵐と立ち向かっている。

保美香
 「……定番ならリヴァイアサンとかその系ですわよね?」


 「ポケモン的にはカイオーガだよね」

嵐に揺れる船。
これが普通の中型船なら、大破してもおかしくないがそこはゲームの仕様。
私たちは嵐で視界の悪い中、目の前に光る何かを見捉えた。
間違いなく敵、それもこのステージで最初のボス戦にして、最大級の敵だ。

海竜
 「グオオオ!」

首長の海竜、シーサーペントが吼えると、嵐が吹き飛ばされた。
中型の木造帆船より遥かに大きな巨体が、まるで島へ向かうことを拒絶するように立ち塞がる。


 「皆、先ずは行動パターンから予測していこう」

伊吹
 「まぁ〜見た目通りストロングそうだけどねぇ〜」

海竜
 「グオオオー!」

海竜が水面を叩いた。
転覆しないのが不思議な波が中型船を襲い、全体にダメージを与えてくる。

美柑
 「いや、回避不能でしょ!」

まぁ当然だけどその巨体を相手にするとなると、ちっぽけな私たちがどうこう出来ないのは当然で。

伊吹
 「やぁぁ〜!」

華凛
 「はぁ!」

伊吹と華凛が海竜に攻撃するも、まるでダメージにならない。


 (……何となく察したかも)

海竜
 「グオオオー!」

海竜が天に吼えると、高さ10メートルを超える大津波が起きた。
中型船はその大きな津波に呑まれて荒れ狂う。
私たちは戦闘どころではなかった。
ただ、意識を奪われて……起きるべきイベントに備えるしかない。



………。



明くる日、嵐も過ぎ去り私たちはある小さな島に流れ着いていた。


 「……船を失ったな」

凪がそうぼやくと、私たちと一緒に辿り着いた大破した船が一部崩落する。

伊吹
 「……大破しているけど〜、一応回復拠点になるっぽい〜」

保美香
 「……つまり出戻り不可のダンジョンって訳ですか」

私たちは白浜の上にいる。
今いるエリアは船が大破した白洲のエリアと、大きな断崖に囲まれた密林の島に別れている。
ミニマップで見ても、どう考えても用があるのは島の方だろう。


 「……行こう」

私たちは、歩み出す。
皆悲壮感のような物はない。
寧ろ船を失った事で、出来る幅が少なくなった事で、よりするべき事が分かりやすくなった位だ。

大蟹
 「!」

雑魚敵が道を阻む。
敵は私が最初に戦ったボスだ。
いまじゃ雑魚として群れて出てくる辺り、ゲームとしては強さを実感出来るか。

保美香
 「面倒です、強行突破しますわよ!」


 「了解! ライトニング!」

凪の電撃魔法が大蟹を襲う。
大蟹はその一撃で泡を吹いて倒れた。
そのまま、過去の敵と化した旧ボスを蹴散らして島へと向かう。
途中の断崖もご丁寧に、登りやすいように組まれており、確信犯で島中央部に迎えと分かる。



………。



キラーマンティス
 「!!!」

体長ゆうに3メートルはある超巨大カマキリ。
島の中央部に向かう密林の中で、そいつは立ち塞がった。
キラーマンティスが振り下ろす鎌の一撃は驚異的で大木さえも一撃で刈り取った。


 「虫ポケモンならいざ知らず、リアルに大きな虫は生理感にくるな……」

伊吹
 「改めてストライクって見た目そんなにカマキリしてないよねぇ〜」

少なくとも顔が三角で、口が三等分に開くとか、リアルに虫過ぎて嫌悪感がある人も出るだろう。
ラランテスでもカマキリの口は再現してないもんね……。

伊吹
 「こういう大型虫系って〜、大体強敵だよね〜!」

伊吹が槍でキラーマンティスを攻撃する、しか相手は僅かに怯んだ程度。
流石にボスだけあって、攻撃力も防御力も高い。
でも、攻撃はすべて単体、対応はしやすく中ボス感ある。

キラーマンティス
 「!!」

伊吹
 「きゃぁ!?」

キラーマンティスの鎌が伊吹を捉え、拘束する。

伊吹
 「え!? ちょ、流石にそれはトラウマになっちゃうよ〜!?」

キラーマンティスがそのプレデターみたいな口を開くと伊吹にしゃぶりつく。
これは誰がされてもトラウマ物の攻撃だ、当然激昂するように美柑が飛びかかった!

美柑
 「このお! 伊吹さんを離せぇぇ!」

キラーマンティスの首を切り落としにかかる美柑。
しかし頑丈で、キラーマンティスは物ともしない。


 「ち! フレイムカッター!」

凪は炎の刃を生み出すと、それをキラーマンティスに放った。
キラーマンティスは炎が弱点なのか、苦しむがダメージは伊吹にも伝播する。

伊吹
 「熱い! でも助かった!」

伊吹はフレイムカッターのダメージを僅かであるが、受けるもののキラーマンティスは伊吹を離す。


 「キラーマンティスの行動パターンは重い一撃と拘束攻撃を交互に繰り返す?」

拘束攻撃が少し厄介だが、ダメージはそれほどでもない。
単体攻撃しかないから、こまめに回復すれば問題ないだろう。

美柑
 「とりあえずたたみかけるべき!」

皆の選択肢はガンガン行こうぜといった所。
私は回復を繰り返しながら、数巡攻防を繰り返すと、キラーマンティスも倒れた。

伊吹
 「はぁ〜、結構強敵だったねぇ〜」

美柑
 「まぁ後々わらわら雑魚として現れるタイプって感じでしたが」

皆薄々、大ボスではないと感じているね。
まぁアレで大ボスならパターンが少なくて雑魚って感じだったし仕方がない。

保美香
 「さて……それではこの先に何があるのでしょうか?」

キラーマンティスが塞いでいた道、私たちは先へと進む。
密林をかき分け、何処へと向かうのか……?



#9に続く。


KaZuKiNa ( 2019/05/04(土) 09:17 )