突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 special
SP06

#6



華凛
 「うーん、ダーリンもっと触って♪ あん……そこは」

保美香
 「この寝ぼすけに○獄の断頭台仕掛けても良いかしら?」

砂漠編クリアの翌日、皆の奮起によりオアシスの街アブラハムに僅かだが水が戻った。
だが、完全な姿を取り戻すにはまだ時間がかかるとのこと。
一先ず人々は帰ってきたため、拠点はこっちに移り新たな施設の利用も可能となった。
そして、目の前には今も寝ぼけている華凛の姿がある。


 「あ、ご主人様が……!」

華凛
 「ダーリン!?」

……あっさり起きたね。
ご主人様の名前が出ただけで跳ね起きるほどご主人様が大好きな華凛は周囲を見渡して呆ける。
しばらくそうしていると、ようやく華凛は現状に気が付いたようだ。

華凛
 「ここは何処だ……?」

保美香
 「地獄へようこそ〜」

美柑
 「説明しづらいんだけど、ゲームの中というか?」

華凛
 「ゲーム? 私はポケにゃんに向かう途中で……?」

……一応事の顛末は先に起きた凪に全部聞いている。
凪と華凛は家を出てポケにゃんの前で巨大なリングに飲み込まれたと言う。
時間を合わせると多分私たちの1時間前には拉致されたと考えられる。
ついでに漆黒の騎士団については全く覚えていなかった。
やはり予想通りだが、人格は魔王の瘴気ともいうべき物に上書きされていたようだ。
妙に口調も行動も人間的でないというか、NPCっぽさがあったけど、どうやら身体だけは本物でそれ以外は偽物というのが結論みたい。

華凛
 「……つまり、私たちは拉致されたと?」

ある程度の説明をすると華凛はおっぱいを持ち上げながらふーむと呟く。
柔軟性の高い華凛でも素直には受け入れられないだろうが、この世界に現実的な物理法則は通用しない。
凪も最初は戸惑ったけど、外に出ると納得したようだった。

華凛
 「……尻尾が動かない、本当のようだな」

華凛って小さいけど尻尾があるんだよね。
いつも服の下に隠れるから気付かないけど、私同様筋肉で動かせる。
しかしこの世界ではポケモンの身体は適用されない。
これに最も衝撃を受けていたのは凪だ。
飛行ポケモンが飛べないときたらその衝撃は計り知れない。
今も外で落ち込んでいるだろう。

華凛
 「……ダサいな」

美柑
 「は?」

突然華凛は自分の身体を触りながら不満を漏らす。

華凛
 「この着物……ただ白いだけだし、肌触りもない……全く制作者のセンスを疑うな」


 「………」

流石に呆れて物も言えないね。
華凛はこう見えても一番のお洒落さん。
普段は着流しを好むが、その着流しも花柄をあしらった物等、見目麗しい物を好む。
更に肌触りさえ気にするから、例え寒くても薄着だったりするからお洒落さんは凄い。
まぁあの世界の北部出身なら日本は冬でも暖かいだろうけどね。

華凛
 「とりあえず魔王とやらを倒せばいい訳だ、ふふ……世界を混沌に導いた魔王が今度は世界を救う旅にか……皮肉が効いてる」

本来なら誰よりももう戦いたくないと思っているのは間違いなく華凛だ。
今でもなお、何十万人ものポケモンたちを戦禍に巻き込み、自身を大量虐殺の張本人として咎を背負っている。
私たちはご主人様を含めて、華凛を責めないけど、孤独は華凛を殺すだろう。
そしてゲームの中でさえ、本当に華凛を解放することは出来ないのか。

華凛
 「クラスはサムライ? ふむ……白兵戦においてアタッカーになるわけか」

保美香
 「貴女、既にゲームの仕様に順応してますわね、もうメニューの確認まで理解しましたの?」

華凛
 「まぁ、私は天才型だからな」

保美香なんて、頭は良いのにゲームにあまりなれてないのか、UIを理解するのに手こずっていたものね。
それに対して華凛の順応力は凄い。

美柑
 「外で伊吹さんたちも待っていると思いますから、そろそろ出ましょう」

華凛
 「そうだな、良い女は無意味に焦らさないものだ」

華凛は立ち上がると、衣服を整える。
そのまま眠っていた小屋から出ると、照りついた太陽が出迎えた。

華凛
 「む……暑いな。砂漠は初めて見たぞ」


 「華凛、起きたか」

外ではオアシスの前に佇む二人がいた。
オアシスは相変わらず僅かに水が噴き出しているだけで、まだまだ砂を吐ききれていない。
それでも街はある程度活気を取り戻している。

ジラーチ
 『ぱんぱかぱーん。皆さんステージ2砂漠編クリアおめでとう御座います。さて、既にお気付きの方もいるかと思いますが、ここからは戦闘には4人までしか参加できません』

メニュー画面を見ると、私、保美香、美柑、伊吹が表示されている。
華凛と凪は表示が暗く、戦闘メンバーには含まれていないようだ。

ジラーチ
 『更にここから、アイテム生成が解禁します。詳しくは道具屋に』



***



ジラーチ
 「以上、これからもご活躍をご期待します」

通信終わり、ジラーチはスピーチを終えるとふぅ……とため息をついた。

フーパ
 「ブラボー、オーブラボー!」

パチパチパチ、フーパはジラーチの演技に拍手絶賛だ。
相変わらず慣れないであろうジラーチは疲れた様子を見せている。

ジラーチ
 「……計画通りとはいえ、突貫工事で作らないといけないから大変


突貫工事……と言うのはゲストの事だろう。
凪と華凛の参加は俺も驚きだった。
フーパはどうやらこうやってゲームに次々とゲストを参加させるつもりのようだ。
しかし……何故華凛と凪を巻き込んだ?
俺はフーパを本当に信用していいのか……。
だが、俺はジラーチやマギアナたちを疑いたくはない。

マギアナ
 「それで、次の舞台はどうなるのですか」

ジラーチ
 「舞台は大海原、幾つかの島を巡る事になるね」

フーパ
 「次のゲストも用意しているし、後シェイミ……ちょっと頼めるか?」

シェイミ
 「え!? 一体何を?」

フーパはシェイミを連れると作戦司令室から出ていった。
俺は画面に注目すると旅路を整えている段階のようだ。


 「海って言うけど、どうやって行くんだ?」

ジラーチ
 「砂漠船に乗ると自動的に港に着くようになっている」


 「砂船……ミニゲームが熱いな」

マギアナ
 「ミニゲームですか?」

○OF4のミニゲームはどれも完成度は高かったが、砂船レースは燃えたもんだ。
無論このゲームにはないだろうがな!

ジラーチ
 「ミニゲームイベント……作るの面倒くさい」


 「最近は必須みたいな風潮あるが、俺もプレイするのは面倒派だったわ」

稀にクリア必須のミニゲームとか、ただ鬱陶しいだけだったよな。
まぁシンプルなゲームも悪くない、アイツらがどちらを好むか知らんが。


 「……とりあえずお昼御飯を用意するかな」

マギアナ
 「お手伝いしますわ、ご主人様」

俺が作戦司令室を出ると、マギアナもついてきた。
本来なら俺はそのまま上階に進むのだが……今日だけは何故だか逆に下が気になった。


 「マギアナ、下をある程度見たんだよな?」

マギアナ
 「はい、想像以上に広く驚かされました」

フーパ
 「気になるなら……探索してみる!?」


 「フーパ!? なんで後ろから!?」

俺がふと、城の地下に興味を持つと、フーパがいきなり後ろから現れた。
俺が驚いているのもつかの間、フーパは目をキラキラさせて拳を強く握る。
この城を作ったのはジラーチらしいが、フーパは全容までは知らないようだ。
故にか、性格もありこういう冒険が気になって仕方がないのだろう。

フーパ
 「ジラーチも呼ぶから探検しよう!」

ジラーチ
 「アンタ、いつもそうやってクソ忙しい私を振り回すわよね」

ジラーチはフーパが開いたリングから上半身を出すと顎に手を当てて、呆れたようにため息をついた。

フーパ
 「でも、行くだろう?」

ジラーチ
 「……行くわよ、どうせ強制だし」

ジラーチはそう言うとリングから這い出た。
いつも思うが、ジラーチって妙なほどにフーパに逆らわないよな。
まるで依存……勘ぐるようだがジラーチってフーパに依存しているのか?


 「……一応聞くけど、この城って何階まであるんだ?」

ジラーチ
 「上は見た目通り、下は……分からないわね」

分からない?
この世界はジラーチが作った筈なのに分からないってどういうことだ?

ジラーチ
 「言ってみれば、コピペしただけだから、私だってこの城の秘密は知らないの」

フーパ
 「アタシが見た世界をジラーチの願いの力で疑似再現、それがこの城の正体……だから全てレプリカみたいな物だけど……見えてない部分は分からないんだな!」

なんだか、よく分からんがこの城……本当はなんの目的で建ってんだ?
色々ちぐはぐというか、妙なところで違和感あったり、似ているようで違う、西洋建築を真似たけど知識が足りなくて中途半端になったとか……そんな印象か。
そして謎の地下……そもそも地下1階に貯蔵庫らしき物はない割に、作戦司令室やバトル場……妙に部屋割りがおかしいんだよな。
誰がなんのために作ったのか、それはコピペしただけのジラーチにはもはや分からない。

フーパ
 「よーし! それじゃフーパ調査隊しゅっぱーつ!」

フーパはそう言うと、地下2階へと進んでいく。
地下は……真っ暗で狭い。

フーパ
 「とりあえずランタンいるね」

フーパはリングから携行ランタンを取り出すと、指向性ライトが前方を照らす。

マギアナ
 「この城は本当に不思議です、特に地下空間はもはや別の生き物のような感じでしょうか」

ジラーチ
 「貴女一体何処まで潜ったの?」

マギアナ
 「確か4階まででしたか」


 「地下4階……なんで無駄にそんな地下掘ってるんだ? 地盤大丈夫なのかよ」

流石に絶句した。
勿論空間の広さもあるだろうが、地下4階となれば、地表からマイナス何メートルだ?
地下に入れば当然空気は澱み湿度が上昇し気圧が上がる。
僅かに100メートル地下でも、人は生きていける空間ではないそうだ。
これはあくまで地球の話で、この異世界にまで物理法則が適用されるか知らん。
ただ、空調のない地下……地表でさえ長いトンネルには送風機が必要なのは、空気が澱み酸素濃度が低下するから。

当然この城の地下にそんな上等な装備があるとも思えんが……。



***



マギアナの案内で地下4階まではスムーズに進めた。
ただしこの城、やっぱりおかしい。
地下の空間は誰が設計したのか分からんがまるで4メートル四方で設計者がバラバラなのかと思えるほど、道の太さや部屋の大きさが異なっている。
おまけに行くすがら大岩が砕けた状態で放置されていたり、矢が大量に突き刺さった部屋なんてのもあった。

フーパ
 (自動生成か……ジラーチのコピペのお陰で前回の結果が反映されていると見るべき……とすると後半はバグるかも)


 「そういや今更なんだが、シェイミはどうしたんだ?」

フーパ
 「今ちょっと出かけてる〜、何、直ぐに帰って来るさ」

ふとちびっ子軍団の中で唯一いないシェイミを気にすると、フーパは何とも淡白な返しをしてきた。
フーパはたまに妙な秘密主義を見せやがる。
所謂お楽しみは後で、というタイプ。
と言うことは逆説的にネタバレは禁止ってことか。

フーパ
 「あ、それと気をつけて。まだ死んでないトラップあるかもしれんからーー」

ガコン!

なんかすっごい音がした。
何かのスイッチが入る音か、俺たちが警戒すると足下が開いた!

ジラーチ
 「っ!? 茂お兄ちゃん捕まって!」

フーパ
 「構わん、丁度良いや、地下の階層にワープ!」

落下する俺たち、それを包み込むようの展開するフーパのリングは下の階層へと直通で降りた。


 「痛ぁ!?」

フーパで空間転移は出来ても落下スピードは消せない。
俺は足が折れるかという衝撃に苦痛で顔を歪ませるが、ちびっ子たちは全く意に介さない。

マギアナ
 「大丈夫ですか、今お手当を」

フーパ
 「人間って脆いねぇ、たった4メートル位落下した程度でさ」

それって2階から飛び降りたような物で、体重の重い大人には厳しいです。
ポケモン娘なら当然という事か、見た目は子供でも中身はポケモンだわな。

ジラーチ
 「ここ何階?」

フーパ
 「多分地下6階だな」


 「おいおい、上階は4階までなのに地下の方が広いのかよ」

俺はゆっくりと起き上がり、周囲を確認するが勿論まだ先があると言わんばかりだ。
俺はゆっくり呼吸する……が苦しくない。
空調のない密閉空間にも関わらず、この空間にはやはり物理法則が機能していないのか?
普通なら内圧も上がる筈だが、地上にいるときとそれほど違いもないな。

ジラーチ
 「妙な物を発見」

ジラーチは奥へと駆け寄る。
フーパのランタンがジラーチの方を向くと、ジラーチの前方が照らされる。
そこには人骨と覚しき物と焼け焦げた台座があった。


 「おい、その骸骨は……」

フーパ
 「ただのレプリカだよ」

ジラーチ
 (ま、物質の炭素骨格モデムは同一なんだけどね)

俺たちは台座の傍まで駆け寄ると、台座に灰が積もっているのが分かる。
と言うことはここで何かが燃やされた?

マギアナ
 「明確に部屋の作りが異なる……ということはゴールでしょうか?」


 「ゴールだとしてもなんとも謎が残るな」

この灰は何を意味するのか、そして人骨らしき物体はなんなのか。

フーパ
 「ま、墓荒らしみたいで楽しかったけどな!」

ジラーチ
 「過去の遺跡に求めるのは浪漫だけ、か」

うむ……まぁこっちはゲームじゃない。
ゲームの中でダンジョンといえばお宝だが、現実の遺跡なんてのは何も残っていないのが普通だもんな。

フーパ
 「はいはーい、それじゃ帰りまーす」

フーパがリングを開くと、厨房に繋がっていた。
俺たちはリングを通ると、フーパが早速お腹を鳴らす。

フーパ
 「今日はラーメンが食べたいアル! お湯注いで3分の奴!」


 「インスタントかよ……」

今日の昼ご飯はカップラーメンで決定らしい。



***



港町、カモメも飛び交う平和な港町で私たちは船着き場にいた。
正確には船着き場の責任者の前にだ。

責任者
 「最近、モンスターの出現報告が増えて困っている! 原因を突き止めてくれるなら船を貸そう!」

私たちが港町に来た理由。
当然イベントもある訳だけど、オアシスの街で海の向こうに古の大地があり、そこに魔王の城があると聞いたのだ。
私たちの目的はこのゲームから脱出すること。
別に.○uckや○aoのような壮大な理由で戦っている訳じゃない。
ただ、日常に帰りたいだけ。
そしてその条件が魔王を倒してご主人様を救う事なら、その最短を進む。

伊吹
 「よーするに海のイベントを熟せばこのステージもクリアなんだよね」


 「……まだ納得いかないが、やるしかないな」

凪はこの世界では終始不満顔だった。
不満の理由は本人のジョブ、魔法戦士だ。
魔法戦士は接近戦と魔法による遠距離戦を両方熟せるジョブ。
しかし欠点としてどちらも中途半端であり、魔法は上級は使えないし、装備はガチガチの戦士ほどとは行かない。
要するに赤○道士だよね。
しかしそれ以外にも凪が一番不満なのは翼が動かない事だろう。
私たちポケモンの身体はあるのに、それはまるで存在しないかのように扱われる。
この世界ではあくまでもポケモンではなく、一人のアバターという事だろう。


 「飛べない鳥ポケモンはただの鳥以下だ……」


 「飛んだら領域離脱で、ロストしそうだけど」

ゲーム的メタを考えれば、多分空には見えない侵入不可判定があるだろうし、海面にも領域限界が設定されている可能性がある。
鳥ポケモンに飛ばれたらそれこそ、膨大な空間を作らないといけないし、シーケンスブレイクに繋がりかねない。

美柑
 「とりあえず船を貸してください、問題は我々が解決しますから」

責任者
 「……頼む、このままじゃ何れ港は乾涸らびる」

私たちは中型の帆船を借りることに成功した。
操縦を担当することになったのは保美香……というのも。

華凛
 「震えているぞ……大丈夫か保美香?」

保美香
 「ひ、人は、誰しも苦手な物が一つはあるものですわ」

保美香が苦手なと言えば水だ。
特に海は浅瀬でも怖がる保美香にとって外洋は恐怖でしかない。
冷静に考えてポケモン娘の身体は水に弱くないし、ましてゲームキャラならなおのこと恐れる必要はないはず。
それでも精神は本物である以上、露骨に本物染みた解像度の海は想像する恐怖が生まれるのだろう。
よって舵輪を握っていれば気が紛れると保美香が志願したのだ。

因みに船だけど、操縦は誰にでも簡単操作仕様だった。
エンジンを積んでいる訳でもないのに、自由に加減速出来て方向転換も自由。
見た目は帆船だけど、そこはゲームライクだね。
まぁ風向きで進む方向が決まっては自由に旅も出来ないから仕方ない。

伊吹
 「〜♪ ゲームなのに磯の香りを感じる気がする〜♪」

海の上を走らせて10分、船は平和で伊吹は船の縁に身体を持たれさせながら、気持ちよさそうに歌っていた。
このゲーム、あらゆる五感を利用して遊ぶスタイルという事もあり、実際に出している訳ではないはずだが、リアルな風が肌に感じられるのだ。
とはいえ、凪と華凛は機器に繋がっていないし、本当にゲームの世界なのか怪しいけど、中途半端にゲームライクな所があるからやはり現実としては認識しない。
でも何気に面倒なのは時間の感覚が現実と同じに感じるということ。
つまり、世界は広い。

サハギン
 「シュシュー!」

バシャァン! 水柱をあげてトライデントを持ったサハギンの集団が船に乗り込んでくる。
私たちは直ぐに迎撃だ。

華凛
 「ふ、まぁ楽しませて貰うか」


 「こんな経験二度とないだろうな」

今回戦闘メンバーは私と美柑、凪と華凛。
水上で戦いたくない保美香と、ステージ3ではハンターの特性も活きないだろうと、伊吹は裏方に回った。


 「叫べば良いのか? ライトニング!」

凪が魔法を唱えると、サハギンの周囲に電撃が発生し、サハギンを一撃で倒した。
しかし相手は残り3体。

華凛
 「はぁ!」

華凛の振り下ろした一撃がサハギンを捉えるが、サハギンは倒れない。
私はすかさずボウガンで倒しそびれたサハギンを追撃し、サハギンを倒した。

華凛
 「むぅ……現実なら真っ二つに出来た筈だが」

華凛もやはりゲーム的な自分に戸惑っているね。
かつて神速の辻斬りを見せていた華凛も今は鈍重な侍。
一撃こそ重いが、一発で倒せないと50%〜99%は全部確定2発なんだよね。

サハギン
 「シュシュ!」

美柑
 「ああもう! 鬱陶しい!」

サハギンたちの攻撃は美柑に集中する。
大した能力もない雑魚みたいだけど、長い航海を考えたら細かなダメージの蓄積も馬鹿には出来ない。

華凛
 「打ち方変えてみれば変わるか!?」

今度は水平に打つ華凛、今度はサハギンを倒すことに成功した。
低乱数1という所かな。
その後、凪と美柑の集中攻撃で残りのサハギンも倒し、ステージ3の最初の戦いを終えた。


 「慣れるまでは大変そうだな」

華凛
 「確かに、身体も重いし、どうも戦いのイメージから乖離がある」

二人は私たちより遙かに戦闘経験がある。
だから脳内にイメージできる戦闘から離れたそれは戸惑いである。
まぁこればっかりは慣れるしかないね。
レベルが上がれば強くなるし、ちょっとずつ頑張ればもしかしたら元の強さくらいになるかもしれない。



***



ジラーチ
 「ずず……とりあえず想定通りね」

キッチンで俺たちはカップラーメン食べている。
流石にキッチンにテレビはないが、そこはフーパの力の見せ所である。
フーパはリングを大きくすると、それをディスプレイの代わりにしていた。
ジラーチは次に画面に各員のステータスを表示していく。

茜 LV20
職業:ヒーラー
技能
・回復効果アップ&確率で状態異常回復
・防御選択でHPを回復

保美香 LV21
職業:シーフ
技能
・アイテムドロップ率2倍
・宝箱トラップ解除

美柑 LV20
職業:ファイター
技能
・白兵戦時ダメージ上昇
・ピンチの仲間を庇う

伊吹 LV21
職業:ハンター
技能
・獣系モンスターへのダメージ上昇
・鳥系モンスターへのダメージ上昇

凪 LV20
職業:魔法戦士
技能
・被魔法ダメージ低下
・魔法のMP消費低下

華凛 LV20
職業:侍
技能
・武器の両手持ち可能
・確率で武器攻撃無効



 「皆結構個性的だな、いつの間にか第二スキル習得しているし」

マギアナ
 「皆さんどんどん強くなっていますね、このまま強くなっていったらフーパが大変です」

ジラーチ
 「何言ってるの、フーパは負けるために存在するの、だから強くなって貰わないと」

フーパ
 「それ直接言われると結構効くよねぇ」

フーパは一応舞台ギミックで言えばラスボス、だからこそ負けるという宿命を持っている。
勿論フーパも理解しているだろうが、やはり言われるとそこそこキツいようだ。
それにしてもマギアナもやっぱり天然だよな。
ラスボスという物をよく理解せずフーパを心配する辺り優しい天然さんだ。


 (……しかしシェイミが帰ってこない、本当にどこに行ったんだ?)



#7に続く。


KaZuKiNa ( 2019/05/04(土) 09:15 )