突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 special
SP05

#5



冒険者
 「オアシスの街を塞いでいた竜巻が消えたらしいぞ!」

冒険者
 「だがまだ安心できん……竜巻の原因と思われる風牙竜がいる」

保美香
 「……いよいよ砂漠のラストバトルかしら」

私たちは最後の補給のために拠点に帰ってきた。
拠点ではイベントが進んだことで、NPCの会話内容も変化している。
風牙竜は砂漠の主とも言われる強力なドラゴンで、竜巻を起こし、空を飛び回る強敵だと言う。
弱点らしいヒントは、風牙竜は長くは飛べないという事だが……かなり持久戦を要求される?

伊吹
 「装備の最終確認オーケー?」


 「必要な消耗品も買いそろえた」

美柑
 「厳しい戦いになりそうですね」

だけど私たちは止まらない。
ご主人様を助け出すために突き進む。
悲壮感や苛立ちはないけど、ただ恋い焦がれる思いだけはある。


 「皆、行こう」



***



「あいつやっぱり変だよね」

「いつも何やっても大失敗、おまけに昼は煩いし、夜は役立たず」

「感謝されるどころか迷惑がられるポケモン」




 「シェイミ、危ない!」

シェイミ
 「え?」

昼間、流しソーメンを食べたいというフーパの要望に応えるため、俺は流し台とソーメンの用意をしていた。
そんな時、麺汁を冷やすため用意した氷水を大量にバケツに入れており、本当に偶々、窓際でボーっとしていたシェイミにバケツの氷をぶちまけてしまった。
当然冷水を頭から被るシェイミはランドフォルムに戻り、地面にへたり込んだ。

(あはは……お似合いよ、出来損ない!)


 「おい、だいじょ……!」

シェイミ
 「い、嫌ぁぁぁぁ!?」

突然だった、シェイミは顔面を蒼白にして頭を抱えてガタガタと震え始めた。
最初、俺は寒さに驚いたのかと思ったがそれは何かが違う。
シェイミは目の焦点も合わずまるで発狂したようなのだ。

シェイミ
 「ごめんなさいでしゅ、あたしは良い子になるでしゅ……だから見捨てないで……」


 「おい! シェイミどうした!? 見捨てるって誰がだ!?」

俺の声は彼女には届かない。
彼女の肩を持って顔を俺の方にも向かせるが、焦点が合っていない。
ただ絶望的な言葉を繰り返しながら、心此処に在らずだ。

フーパ
 「はーい、シェイミボッシュート」


 「は!?」

突然後ろからフーパが現れると、シェイミが穴に落ちた。
バッシャーンという音と水しぶきが穴から噴き上がる。


 「フーパ、一体何を……!?」

フーパ
 「ついでに茂君もボッシュート!」

俺がフーパに問いただそうとしたその瞬間、俺も穴に吸い込まれる。
直後、俺は温かいお湯の中にぶち込まれた。


 「ぷは!? 風呂!?」

俺は周囲を見渡すと大理石の豪奢な浴槽にぶち込まれたことに気付く。
浴槽には花が浮かんでおり、お湯もハーブの香りがする。
俺の目の前にはぽかーんとしたシェイミがいた。

シェイミ
 「お兄たま……びしょ濡れでしゅ」


 「シェイミ……お前大丈夫なんだな?」

シェイミ
 「何の事でしゅ?」

シェイミはさっきまでの発狂状態を覚えていないのだろうか?
流石に俺も子供のトラウマを刺激したくはないし、原因の究明も怖くて出来なかった。

シェイミ
 「あ、グラデシアの花……」

お湯の上に浮かぶ花、それがシェイミに引き寄せられるように近づくと、シェイミの身体に変化が起きる。

シェイミ
 「ん、あ……っしゃぁぁ!」

一瞬色っぽい喘ぎ声の後、身体が二回り程大きくなるとスカイフォルムのシェイミは立ち上がる。
ところで、シェイミってフォルムチェンジすると結構体格に変化があるんだよな。

普段は変化しても問題ないよう白いアオザイに身を包み、変化に余裕を持たせている。
だが着ている服には撥水性はないらしい。
まぁ何が言いたいかというとだ。

シェイミ
 「あれ? なんでお兄顔を背けてるの!?」


 「お前前隠せ! 丸見えなんだよ!」

シェイミ本当に薄着しかしていない。
そのため水を被ると肌に密着して、その……局部が、見えているのだ!

シェイミ
 「? 丸見え? お風呂なんだから当然でしょ?」

シェイミはそう言うと服を脱ぎだした。
俺はもはや止める事も叶わず、その場から離れようとするが。


 「ん? 何かが流れて……」

それは木の板だった。
木の板には文字と絵が描かれている。

『面倒を掛けた罰としてちゃんとシェイミをお風呂に入れること! byフーパ』

フーパの顔が描かれた板には罰と書かれている。
俺は自分の失態を思い出すとぐうの音も出ない。

シェイミ
 「お兄、脱がないと風邪引くよ?」


 「ちょっと待ってろ……もうヤケだ! おいフーパ! せめて着替えくらい用意しとけよ!?」

俺はその場で服を脱いで水分を絞る。


 「シェイミ、お前アオザイとスカーフだけは挑戦的過ぎるだろ」

シェイミ
 「? 挑戦ってどういうこと?」

シェイミは真っ白なアオザイと紅いスカーフ以外には何も身につけない。
そう、靴も身につけないし、下着もだ。
せめて下着位付けろと言いたいが、シェイミは理解してくれないだろうな。


 「シェイミ、身体冷えないか?」

シェイミ
 「冷水はびっくりしたけど今は大丈夫〜!」


 「一応頭洗ってやるからこっち来い」

此処は城の1階にある大浴場、見た目こそ少し古臭さを感じるが、シャワーも完備しており、洗剤も充実している。

シェイミ
 「はーい!」

シェイミは元気よく浴槽を飛び出すと、その翼で浴室を飛び回る。
流石に俺も浴室では遊ぶなと怒るが、シェイミはどこまでもフリーダムで俺の背中に抱きついた。

シェイミ
 「えへへ♪ お兄の背中大っきい♪」


 「ほら前に座って!」

シェイミ
 「痛くしない?」

子供って結構頭洗うの嫌いな子多いよな。
かく言う俺も小さい頃は嫌いだった。


 「痛くしないよ」

さっさと終わらせて、風呂から上がろう。
そう疲れているときに限って、世の中ってのは理不尽があるよな。

ガララ……。

浴場の扉が開くと、一人のポケモン娘が入ってきた。
それはよりにもよってシェイミが俺にじゃれついている時にだ。

ジラーチ
 「はぁ疲れた……朝風呂って至福よねぇ」

何ともおばさん臭い事を言うジラーチは当然ながら何も身につけていない。
浴室を進むと、当然鉢合わせるんだが。

ジラーチ
 「とりあえず頭あら……」

ジラーチが俺たちを見て固まった。


 「あのー……これにはですね? 深い訳が」

ジラーチ
 「……とりあえず、男は出て行け−!」

ジラーチが超能力を使うと俺は城の外にテレポートさせられた。
ドサッと、俺は芝生に倒れ込む。

フーパ
 「一応可哀想だから……服置いとくわ」

フーパが真上から上半身だけを出してそう言うと、別の穴から衣類だけが降ってきた。
俺は泣きそうになりながら理不尽に堪えて着替えた。
その間フーパは気まずそうに俺を見ている。

フーパ
 「死んだ魚の目で見ないでくれる?」


 「それ久し振りに言われたわ」

俺のあだ名は死んだ魚の目の男。
それも茜たちと触れ合う事で、随分俺も変わったらしい。
明るくなったら、死んだ魚って言われる事もなくなったし、でも俺自身肉体が変化した訳じゃないもんな。

フーパ
 「ああもう! 茂君がそんな顔したらアタシが悪党みたいじゃん!」


 「……悪い、昼飯用意するわ」

俺は立ち上がると、入口を探した。



***



ジラーチ
 「全く貴女……どうして茂お兄ちゃんと一緒にいたの?」

シェイミ
 「分かんない! 気が付いたら服を着たままお風呂にいた!」

ジラーチ
 「服着たまま? それで肌を密着させて何をしていたのかしら?」

シェイミ
 「洗って貰ってたんだ! あたし怖かったけど、痛くないって言うから!」

ジラーチ
 「……あの変態、こっちで射精管理しないとこんな子供にまで欲情したって訳?」

シェイミ
 「ジラーチ、怒ってるの?」

ジラーチ
 「……シェイミ、茂と一緒に入るのはやめなさい」

私はシェイミと浴槽に浸かりながらそう言うと、シェイミは「えー?」と嫌がる。
シェイミは男の事を知らなさすぎる。
口では巨乳好きを公言するが、欲情してしまえば男は皆狼なのだ。
貞操観念のないシェイミでは犯してくださいと言っているような物。

ジラーチ
 (そうよ、私が射精管理すればアイツだってシェイミを襲わない! アイツに必要なのは定期的に射精を管理する人)

……駄目だ、朝勃ちを見た時、アイツの大きなソレを思い出すと、未だに怖い。
でも壊されて、アヘ顔にさせられて、陵辱されれば茂の性欲も収まるだろうか。
……違うか、私の妄想が止まるか、か。



***




 「……今邪な思いが……!」

私はオアシスに向けて進みながら、何かがビビッと脳裏を過ぎる。
射精管理するのは私の仕事だ、なんて恥ずかしくて絶対に言えないことも一瞬だが過ぎってしまう。

伊吹
 「茜、大丈夫〜?」

伊吹は心配そうに私を見ていた。
私は首を振ると、正面をしっかり見定める。
大きな石の階段、オアシスの街アブラハムに辿り着いたのだ。

美柑
 「ボスは街の中でしょうか」

保美香
 「十中八九そうでしょうね」

私たちは周囲を索敵し、敵がいないことを確認すると階段を登っていく。
まるで遺跡のような風景の中、廃墟と化した街が私たちの前に立ち塞がる。

保美香
 「此処が……オアシスなんて何処にも」

街は砂で埋もれている。
そこには既にオアシスで栄えた街の面影はない。
その原因を作ったのは間違いなく。

風牙竜
 「ガオォォォン!」

枯れた大きな木の上にそれはいた。
全身は体長4メートルといった所、口に大きな牙があり、強靱な前肢には皮膜がある。
恐らくモモンガのように滑空して飛ぶのだろう。
風牙竜が咆哮をあげると、風が逆巻いた。
一気に竜巻が3つも生まれると、風牙竜は風に乗って飛び上がる。
そのまま竜巻は私たちを襲った!

伊吹
 「竜巻だけど、ドラゴンタイプの技じゃないから痛くないもん!」

保美香
 「まぁこの世界では私たちってポケモンじゃないから弱点もありませんけどね」

私たちは竜巻攻撃に堪えながら、攻撃の機会を待つ。
風牙竜は長くは飛べない。

風牙竜
 「ガオ!」


 「散開!」

風牙竜は強靱な前肢の爪で私たちに急降下攻撃を繰り出してくる。
私たちはそれを回避して一斉に攻撃を繰り出した。

伊吹
 「ていやー!」

美柑
 「チェスト−!」

風牙竜の背中に一斉攻撃をすると、風牙竜は苦しみながらも振り払う。
そして再び竜巻攻撃を出すと、飛び上がった。

保美香
 「全体攻撃が厄介ですが、攻撃の頻度もそれほど苛烈でもないですし、弱くありません?」

美柑
 「そう言うこと言っていると多分ダメージ発狂ありますよ?」

風牙竜が飛び上がっている間は流石に暇という事もあって、皆暢気だね。
私は一応ボウガンで攻撃してみるも、届かない。
ポケモンで言う空を飛ぶ状態な訳だ。

風牙竜
 「ガオ!」

竜巻は全員で回復して、急降下攻撃は回避すれば問題ない。
パターン化しながら、責め立てると流石に風牙竜もパターンに変化を見せてきた。

風牙竜
 「ガーオーーーン!!」

風牙竜が竜巻を纏った。
そのまま狙いを定めると、一直線に私に襲いかかってきた!


 「きゃあ!? この!?」

風牙竜の牙が私の身体にめり込む!
私は抵抗するが、力では全く敵わない。
何故風牙竜と言われるのか、その強靱な牙は正に風牙竜最強の武器。
そのまま風牙竜は私を投げ飛ばす。


 「く……はぁ、はぁ……?」

私は意識が朦朧としているのを感じた。
自分のパラメータを確認すると状態異常に出血とある。
効果はスリップダメージだ、思ったより辛い。

保美香
 「茜! しっかり!」

保美香が駆け寄ってくると、回復アイテムを投与してくれた。
しかし状態は良くならない。
それに出血の第二効果に驚かされる。

保美香
 「そんな通常の半分しか回復しない!?」

美柑
 「痛ぁっ!?」

そんな事している間にもリアルタイムで戦いは続く。
美柑までもが噛みつかれ、投げ飛ばされた。


 「出血……毒の上位互換の状態異常って訳だ」

スリップダメージ自体は大したことは無いけど、回復デバフメインって事かな。

風牙竜
 「ガオォォォン!」

風牙竜は再び竜巻を起こすと、飛び上がる。
私は自分に回復アイテムを使い、とりあえず急降下攻撃備える。
しかし今度の急降下攻撃は今までとは違った。
爪ではなく牙で襲いかかる。
しかもスピードが速く回避は出来ない!


 「この!」

私は風牙竜の前に飛び出し、牙の一撃を受ける!
どうせ状態異常に罹ってるなら蔓延させない方が良い!

そして私もタダでやられるつもりはない。
牙に向かってボウガンを放った!
すると牙が砕け散る。
風牙竜はもだえ苦しみ、その場でのたうち回る。

伊吹
 「もしかして! 牙に独立したダメージ判定があるの〜!?」

美柑
 「と、兎に角チャンス!」

風牙竜のスタンは数ターンに及んだ。
私はアイテムで回復していると運良くヒーラーの特性『確率で状態異常を回復』が発動する。
なお、出血自体は3〜5ターン前後で自然治癒するようで、改めてゲームの中で良かったわ。
現実なら噛み砕かれて即死だったろうし、怖くて攻撃なんて受けにいけなかった。

風牙竜
 「が……あ!」

ドシィィン!

風牙竜の身体は遂に倒れた。
厳しいボス戦であり、偶然に気付かなかったらやられていたかもしれない。
だが倒した以上勝ちだ……これで砂漠編は終了……と誰もが思ったが違った。



 「ほう、風牙竜を倒したか……」


 「魔王様に楯突く愚か者か」


 「はぁ、はぁ……? あの人たち?」

街の中央、正面の大きな木の下に気が付いたら漆黒の鎧に身を包んだ女性がいた。
片方は大きな翼を背中に持ち、もう一人は伊吹並みに大きな胸を持っている。
何処か見たことがある……というか。

伊吹
 「もしかして〜、凪ちゃんに華凛ちゃん〜?」

凪?
 「何の事だ? 私は魔王様の忠実なる部下、漆黒の騎士団の一員……」

華凛?
 「本当は私たちが手を出す相手ではないが、風牙竜がいなくなっては仕方がない」

華凛?が腰に差した刀を抜いた。
それはかつて敵として戦った時使っていた大業物ではない。
それに構えも違う、やっぱ別人?

華凛?
 「はぁ!」

華凛?は、有無を言わさず襲ってきた!
伊吹はすかさずインターラプト、華凛?の一撃を弾く。

伊吹
 (本物に比べたらかなり遅い? パワーもそこまでじゃない)

凪?
 「ウインドカッター!」

保美香
 「ああもう! 風牙竜戦でダメージ回復も出来てないのに!」

凪?は腰に剣を差しているが、それは抜かず、風の刃を放ち攻撃してくる。
凪のエアスラッシュとは性質が違う……はっきり言えば凪より遙かに弱い。

美柑
 「……やっぱタダのソックリさんでしょうか?」


 「ゲーム用にローカライズされただけかもしれないけどね」

私は急いで回復を行う。
相手はやっぱりただのNPCだろうか?
それにしてはあまりにも容姿が似ているし、だけど違和感は多い。


 「貴方達はご主人様の敵?」

華凛?
 「!? だ、ダーリンは……」

華凛?が怯んだ!
更に後ろの凪も頭を抱えている。

保美香
 「反応した……て言うことは本物だというの?」

私がカマを賭けた訳だけど、反応は黒だよね。
ただ、疑問がある。


 「二人はポケにゃんに行っていたはず……どうしてこのゲーム参加しているの?」

美柑
 「それになぜ敵として現れたんでしょうか?」

伊吹
 「単純に考えれば洗脳だよね〜」

……だとすると、相手のことを少し考えを改めないといけない?
本当に関係ないポケモンまで強制参加させる黒幕、更に洗脳までしてそれぞれのロールを演じさせる?

凪?
 「ち……鬱陶しい」

華凛?
 「風牙竜を討伐するだけの実力はあるようだ、本気でやる必要があるようだな」

相手はこちらの様子なんてお構いなしか。
そういった辺りもNPCっぽさがある。
あくまでも上から意思を上書きしている感じ……気に入らないね。

保美香
 「あーもう、性がありませんわね、少しお灸を据えると致しましょうか」

美柑
 「そうですね……防戦一方も面白くないですし」

伊吹
 「とりあえずゲームの仕様を信じるしかないねぇ」

皆も体勢が整った。
相手も少し攻撃が激しくなるが、こちらも容赦しない。

伊吹
 「せぇの〜!」

伊吹の横薙の一撃が華凛?を捉えるが、華凛?は少ししか怯まない。
こういう所はゲームだからこそだろう。
一方で向こうの攻撃も、こちらを一撃で仕留めるような物ではない。
あくまでも打ち合い、ダメージレースを繰り広げる。

凪?
 「フレイムカッター!」

後ろの凪?はさっきから魔法で援護ばかりしている。
ていうか、この世界一応魔法ってあったんだ。
炎の刃は、美柑を襲うが、後ろに僅かに後退する。
直ぐに私はダメージのケアに移る。


 「大丈夫美柑?」

美柑
 「痛いという感覚がないのって幸いですね……直ぐ反撃に移れる!


美柑の一撃が凪?の頭部を捉えた。
現実なら頭真っ二つで即死だろう、しかしゲーム内ではただのダメージとして処理されてしまう。
しかしダメージの蓄積のせいか、凪?のフェイスメットが砕け散る。

凪?
 「く……まさかここまで力が?」

丸見えとなった顔はまごう事なき凪だ。


 「もう一度聞くけど、ご主人様は貴方達の今を知ってるの?」


 「茂さん……? わた、しは……くぅ!」

凪は跪くと頭を抱える。
丁度その頃、保美香と伊吹が華凛を倒したようだ。
華凛も同様に刀を落として跪く。

華凛
 「く……? 私は……うあ!?」


 「なんだ!? 何かがくる!?」

倒した二人は漆黒の鎧に身を包んでいる。
その鎧から……黒い瘴気が漏れ出す!
凪と華凛の鎧が砕け散ると、煙となって空中に集まる。
瘴気は空中で禍禍しい顔を生み出すと、瘴気が何か呟いた。

瘴気
 「忌々しき勇者どもめ……これで勝ったと思うな……!」

保美香
 「あらあら、負け惜しみかしら?」

瘴気……恐らく二人を洗脳していた正体は舌打ちをすると、そのまま消え去った。

後に残ったのは気を失って倒れた華凛と凪だった。

伊吹
 「もう……これ以上は何もないよね〜?」

流石に三連戦はないと思うが、警戒していると、後ろから誰かが近づいてきた。

青年
 「そんなオアシスが枯れている……」

ハンター
 「……なんて事だ! これでは」

村長
 「諦めてはならん! 皆の物……我々は常に手を合わせて頑張ってきたではないか! 砂を掘るのだ、まだ水は消えてはいない!」


 「イベントが進行した感じ?」

伊吹
 「……手伝おうか、NPCとはいえ、街を復興しようって言うんだから、放っておけない」

伊吹は本当に優しい。
NPCたちは大きな木の下に集まると、必死に砂を外に運んだ。
伊吹もまた、それに黙々と参加している。
やがてため息を放ちながらも保美香も砂出しを手伝い始める。
私は、村長と思しき人に話しかけた。

村長
 「旅の方、貴女方にはなんとお礼をすればいいのか分かりません」


 「気にしないで、そういうものだもの」

村長
 「よろしければ、ゆっくり休める部屋をご用意致しますので、今日はお休みください」


 (……色々謎はあるけど、ステージ2はクリアみたいだね)

私たちを突然ヘンテコなゲームに巻き込んだ、謎の魔王。
更にご主人様を誘拐し、華凛と凪を洗脳して駒として利用した。
一方で子供のような無邪気さも感じながら、相手の正体が分からない。
私たちが戦っているのは、無邪気な子供なのか、それとも悪意を持った魔王なのか。



#6に続く。


KaZuKiNa ( 2019/05/04(土) 09:15 )